会話の中でうまく気持ちがまとまらないなら「メモ」を使う
斉田英子氏(以下、斉田英子):では質問タイムに入りますね。いただいた質問に答えていきたいと思います。
斉田季実治氏(以下、斉田季実治):では残りの時間が許す限り。こちらからいってみましょうか。
「会話の中でうまく自分の気持ちをまとめることができません。あとでゆっくり考えると『こういうことか』とわかるのですが、会話の途中で自身の考えをまとめるにはどうしたらいいでしょうか? また、まとめられないのだとしたら煙に巻くのではなく、どういった言葉で『後日もう1度話そう』と伝えたらよいのでしょうか?」という質問になります。
斉田英子:もう1度、後日に話したいというのは、素直に伝えたらいいですよね。この「気持ちをうまく伝えられない」というのは、そういった練習をしたことがないからだと思うんです。子どもたちを見ていても、支離滅裂に話をします。なんとなく自分の中ではわかっているんだけど、あっちこっち飛んじゃうんですよね。
斉田季実治:「主語は何?」というのは、よく聞くね。何のことかわからないけど、パーッと言い出しちゃう。
斉田英子:(笑)。本にも書きましたが、「Iメッセージ」のように「私はこうこうこうで」と点でつなげ過ぎずに、いったん短い文章で終わらせるんです。「私は今日このことを話したいと思っています、まる。」「1つ目に気になっているのはこのことなんです、まる。」みたいに、しっかりと整理をしていくんです。
苦手だったらメモ書きでもいいですね。私はよく付箋に書き出します。ゴチャゴチャある自分の思いや、「季実治さんに伝えたいんだけど、どうやったらスマートに伝えられるのかな?」というので、思いをワーッと書くんです。そしてその付箋の順番を入れ替えるんです。
斉田季実治:「書く」というのは「話す」と違って、考えが整理されたりもするので良いと思います。
斉田英子:ぜひご質問者の方も、慣れていない時には自分の中でメモ書きをして、主語と「。(まる)」で終わるところも意識して、練習を重ねてください。
管理して育てたら、自分で動ける子にはならない
斉田季実治:次の質問にいってもいいですかね。
「妻が中学1年生の子どもに対して、かなり厳しく管理します。LINEとゲームは合わせて1日1時間以下。毎日申告するようにし、1日に1.5時間は必ず勉強するように指導して、できる限り監視するようにしています。守れなかった場合はねちねちと叱るため、子どもは疲弊しており、小さな行き違いなどがあると母親に噛みついてしょっちゅう喧嘩しています」。
「厳しすぎるのではないか? と言っても、『きちんと子どもを見てあげないと、子どもは幸せにならない』と言い張り自分を曲げません。この状況を改善するにはどうすればよいでしょうか?」。
斉田英子:けっこうきちっとしている感じですね。でもズバッと言うなら、「管理して育てたら自分で動ける子にならないです。自分で動けないと、幸せにはなれないです」。
斉田季実治:管理ではないなら、どうしたらいいんでしょうね。
斉田英子:お母さんが子どもに厳しいようですが、やっぱりみんなでテーブルについて話をしてほしいです。子どもが今こういう状況で、どんなふうに思っているのか。どんなことは良いと思っていて、どれが不満なのか。お母さんが1.5時間勉強するように言うのはどういう理由なのか。それを子どもはどう思っているのか。
もう中学生ですもんね。中学生であれば1.5時間と管理するより、勉強の中身、室が大事ではないと思います。
斉田季実治:勉強って時間じゃないからね(笑)。
斉田英子:勉強は時間じゃない(笑)。
子ども本人に、決まりに対する「ハッピー度」を聞く
斉田季実治:我が家では、例えば一度ルールをつくっても、必要なら同じテーブルについて「こう変えよう」という話をするよね。あとは、子どもから交渉してくるよね。
斉田英子:交渉してきますよね。ゲームをしたい、プラスアルファが欲しいなという時に、交渉をしてきます。「こういうことをするから」とか「したから」とか「今度受ける試験に合格したらこんなことはどうか?」とか(笑)。
斉田季実治:そうそう(笑)。だからアメとムチがあっていいんです。ムチだけじゃなくてアメも与えていいし、ちゃんとその時に「どうしたいか」という子どもの意見も聞きながらやったほうがいいのかなと思います。「自分の意見を持つ」というのが大事だからね。
斉田英子:子どもが本当に、今、幸せかどうか。みんなで正直にテーブルについた時に、子どもに「今は幸せ度が何パーセントですか?」と聞いてみたらどうでしょうか。
「今こういう生活のリズムやルールがあるけれども、ハッピーはMAX100パーセントとしたら何パーセント?」と聞いてみるんです。
斉田季実治:たぶん、こっちが思っているのと本人って違うんだよね。
斉田英子:「○パーセント」と答えた時に、0パーセントではないと思います。怖いけどね、0パーセントって(笑)。
斉田季実治:言われたらね(笑)。
斉田英子:何十パーセントと答えたら、そこは良さとして、自分のこと、お母さんのことやお父さんのこと、いろんな生活のことを評価しているんです。でも残りの何十パーセントでは、どうなったらハッピーになるのか。自分の今の生活がさらに満たされるにはどうしたらいいかと考え、子ども自身が実感することが大事です。
なので、ぜひテーブルに一緒について、おいしいケーキとお茶と、お気に入りの空間でやっていただきたいです。
リラックスして話し合える場と時間をつくる工夫
斉田季実治:こういう質問もありました。「リラックスしてお話をする時は、場所や時間などをどのようにセッティングしますか?」と来ています。
斉田英子:私たちは今日、珍しく日曜日に夫婦で出掛けることができたので、「明日が結婚記念日だから、早めの夕ご飯を食べてくるからお留守番していてね」と言いました。
斉田季実治:今日言いましたね。
斉田英子:あとはさっきのスケジュールアプリを見て、空いている平日のお昼があれば「この日に一緒にランチへ行こうか」としたりしています。
平日、私は9時過ぎにはもう消灯して子どもたちと一緒に寝ています。なのでテレビ番組も見ていないし、(季実治さんは)帰って来た時1人なんです(笑)。でも予定のない金曜日や、予定のない休日の前日の夜は「今日は起きて待っているね」とLINEをします。
そうすると、(季実治さんが)じゃあと言ってコンビニや空いているお店でワインを買ってきて、一緒に飲んだりします。たくさんではないけど、そういった時間を作っています。
斉田季実治:まさにアポイントを取ってやっていますね。
夫が意見を聞き入れてくれない場合に有効なのは「共通の楽しい話題」
斉田季実治:では、あと3つ質問があります。
「話し合いには応じてくれるのですが、夫がかなり古風なタイプで、二言目には『それは違う』と言い、私の意見を聞き入れてくれません。『黙って俺の言うことに従えばいい』という圧力を感じます。こんな夫と建設的な話し合いをするためにはどうすればよいでしょうか?」。
斉田英子:私の亡き父親のような感じで、こういう方も多くいらっしゃいますね。私が経験者だったからか、この相談はよく受けます。ご質問の方がおいくつぐらいなのか、結婚されてどれくらいの年月かはわからないのですが、きっとお二人の共通の楽しい話題や共通のものがあると思うんです。
私の両親も真逆の性格でした。激しい夫婦喧嘩もするような「なんで(一緒に居るの)!?」という関係性でも、趣味の文学の話や小説などの話は共通のことで、すごく仲が良く、話が盛り上がるんです。共通のことを楽しむ時間を増やしながら、その中で話したいことを関連付けていくといいですね。
斉田季実治:そこから突破口を広げていくといいのかな。
斉田英子:いかがでしょうか。きっとあると思います。
斉田季実治:「無理だよ!」と思わずに、まずはやってみる。行動に移してみることが大事だと思います。
斉田英子:季実治さん、この「圧力を感じます」とありますが、感じているだけで、本当に圧をかけているかどうかはわからなくて、本当はそんな気がない場合もあるんですよね。
この人はこういうふうに私を思っている。こういう言い方をするし、そう聞こえると思っていても、「私にとってあなたはむっちゃ圧があって辛いと感じるんだけど」と伝えたら、相手は「え⁉」と驚くかもしれません。
斉田季実治:本人はそう思ってないこともあるからね。そのへんは確認してもいいかもしれないですよね。時間がもう少しです。次にいきます。
心が折れそうなときは「リセットするルール」を作っておく
斉田季実治:「本日の企画、ありがとうございます。ご著書の『はじめに』にある、『家族になるプロセスは人生の最期まで続く、本当に長い旅のようなもの』という言葉に勇気づけられています。
夫婦ともに50歳を過ぎた、人生の後半にいます。夫婦の会話もトライアンドエラーの繰り返し、相手の冷たい言葉に心が折れそうになることもあります。心が折れそうになる時に復活するお二人のエネルギー源は、それぞれ何ですか? 諦めずに家族の会話に取り組みます」ということです。
すごく前向きな方ですね。お二人の復活するエネルギー源はそれぞれ何ですか? というのが質問ですね。
斉田英子:冷たい言葉をつい言ってしまうのは、その人の悪気のない一面もあると思うんです。冷たく言いたくないし、言っているつもりじゃないかもしれない。だけど、冷たく聞こえてしまうということ。
斉田季実治:私も忙しすぎたり寝不足だったら、言い方が短く厳しくなっている可能性もありますね。
斉田英子:自分に置き換えると、私は厳しい父が、私に厳しい言葉を投げかけて、冷たい言葉で心が折れたことが何回もありました。ですが、そういうふうにしか表現ができない人であって、私のことを嫌いとか愛していないとか、そうではない。
それがしっかりとわかっていれば、「なぜその人はそういう言い方になるんだろう?」と寄り添って理解しようとします。それこそ、学びのゾーンにいけるのかなと思うんです。
斉田季実治:時間なので端的に。「お二人の復活エネルギー源はそれぞれ何ですか?」という質問があります。無理そうになった時、復活はどうやってしますか?
斉田英子:私は季実治さんに言われて冷たいなと思ったら「冷たいよ」と言います(笑)。
斉田季実治:あはは(笑)。
斉田英子:ちょっと今のは冷たいんじゃない? と言って泣きつく(笑)。「それ冷たいよー!」と言って泣きます(笑)。その次に、誤解を解きながら話す。でも本当に心が折れた時は寝るというように、自分でリセットします。
斉田季実治:寝て起きると、復活しますね。リセットするルールを作っておくといいんですよね。
チーム家族でいるために
斉田季実治:私はどんなに忙しくても、仕事ばっかりしていたら、あえて夜中にゲームをして遊んでみたりします。そういうどうでもいいことをやると気分転換になって、気持ちがリセットされたりします。なので、リセットする自分の中のルールを決めておくと、復活は早いですよね。
斉田英子:この「諦めずに続ける」というのも、本当にたまたまあてがわれた「チーム家族」だと思うんです。なぜか結婚して、なぜかこのキャラクターの子どもがいて、なにかしらの学びの場だとしか思えないぐらい、自分にとってちょうどいい人が周りにいます。あるいは登場人物として出てきます。
なので、それが自分の内面に気づく時間になると思います。「諦めずに続ける」は、イコール「自分を諦めない」ということです。自分を諦めずに進んでいけるかなと思います。
斉田季実治:最後の質問です。「斉田ご夫妻は、お二人の最終ゴールについて話されていますか?」。最終ゴール?
斉田英子:あれかな。もう本当に最期の、さよならの時。
斉田季実治:死ぬ時ということでしょうか。でも私は最終のゴールより、そこまでの過程をどう一緒に過ごすかのほうがすごく大事だと思っています。
斉田英子:例えば最終が「死」だとします。70歳、80歳、何歳かでいつかはみんな絶対に死にますよね。でも、そのプロセスでどんな年月を重ねるかという話が、究極は最期につながると思っています。
もうめちゃめちゃ笑って、曾孫ぐらいのたくさんの親戚に囲まれている。そんなおばあちゃんでいるためのゴールをビジョンとして、「ご臨終です」と言われるまでニコニコしながら生きるために、子どもや夫婦、あるいは友人や知人とどんな生活をしていくのか。そういったプロセスを作っていかないといけないと、私は子どもたちによく言っています。
人生は「ネタ作り」だと思って生きる
斉田季実治:最終的に死ぬまで、この人生が良かったのか悪かったのかわからないという面もあります。それこそ、そこまでのアップダウンはみんないろんなことがあるので。
斉田英子:ありますね。
斉田季実治:それをネタ作りだと思って楽しめたらいいのかなと思います。答えになっていますでしょうか。質問は以上になりました。全部答えられたでしょうか。
斉田英子:私たちの公式LINEやヒンメルカレッジでも、どんどんコミュニケーションをしています。ぜひ参加をしていただければと思います。ありがとうございました。
斉田季実治:ありがとうございました。
司会者:どうもありがとうございました。僕も結婚をしているのですが、例えば自分のパートナーに対して「なんでこの人と結婚したんだろう?」と、ふと考える時があります。先ほどお話がありましたように「この方と結婚したこの人がパートナーであることに、何かの学びがあると捉える」ということ。
また、「人生はアップダウンだけど、それが何かのネタ作りだと思って一生懸命、一歩一歩を歩んでいく」ということ。ここから自分をもう1回見直して生活していきたいなと思いました。ありがとうございます。
それでは斉田英子さん、斉田季実治さん。最後にみなさまに対して一言ずつお願いできますでしょうか。
斉田季実治:今日はいろんな話があったと思いますが、大事なのは(セミナーを)聞くことではなくて、実際に行動に移すことだと思っています。
斉田英子:そうですね。
斉田季実治:天気予報はいつもそういう思いで伝えています。きっと防災も、それぞれが実際に行動に移して、はじめてその情報は意味があると思うんです。なので、ぜひ今日聞いたことの中から1つでもいいので、実際にやってみてもらえたらいいなと思います。
斉田英子:私はいろいろな仕事を通して、人が大切にされて、1人でも多く笑顔の人が増えて、いろいろあるけど立ち直れるやさしい社会になると、暮らしが豊かになります。行き着くところは、究極の世界平和だと思っているんです。
今ある「チーム家族」が笑顔になるお手伝いを、私はずっと続けていきたいと思います。また、そういう発信を続けていきますので、ぜひこれからも引き続きよろしくお願いいたします。