カンヌライオンズの日本人審査員3名が登場

西村真理子氏(以下、西村):では、ただいまより開始したいと思います。改めまして、みなさまご来場いただきましてありがとうございます。

I.C.E. Creative Loungeですね。「カンヌはどう進化した? 変わりゆくクリエイティブの意義」ということで、非常に豪華なゲスト4名を迎えて、ただいまより9時までセッションを行い、その後、懇親会へと流れていきたいと思います。

私は、本日のモデレーターを務めさせていただきますHEART CATCHの西村と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

(会場拍手)

さて、豪華なゲストにはどういう方々がいらっしゃるかというところで、まずご紹介したいのが、電通の尾上さんです。尾上さん、どうぞよろしくお願いいたします。

尾上永晃氏(以下、尾上):よろしくお願いします。

(会場拍手)

西村:尾上さんは今回審査員として(参加された)。

尾上:そうですね。今年できたSocial&Influencer部門の審査員をやらせていただきました。

西村:尾上さん自身、今までにカンヌへ行ったご経験は?

尾上:今回で4回目です。

西村:4回目なんですね。4年連続という感じですか?

尾上:3年連続で。

西村:3年連続で。では、ちょっと1回飛びがあって、というような。

尾上:はい、1回抜かして。よろしくお願いします。

(会場拍手)

西村:次ですね。アクセンチュアの望月さん。よろしくお願いいたします。

望月良太氏(以下、望月):望月と申します。よろしくお願いします。

(会場拍手)

西村:望月さんは初カンヌですか?

望月:プライベートでは20年前に1回行ったことがあるんですけれど(笑)。

西村:20年前(に行っていた)とはすごいですね。

望月:ビジネスというか、この件では初めてです。

西村:なるほど。今回は審査員で参加されたということですね。(参加されたのは)どの部門か教えていただいてもいいですか?

望月:Creative Data部門という、確か4年くらい前に新設された部門の審査員をさせていただきました。よろしくお願いします。

(会場拍手)

西村:続きまして、資生堂の小助川さん。よろしくお願いいたします。

小助川雅人氏(以下、小助川):資生堂の小助川と申します。よろしくお願いします。

(会場拍手)

小助川:カンヌへは、2000年に1回行っているんですよ。それは仕事なんですが、それから2016年、1年おいて今年という3回目です。

西村:了解です。今回は審査員で(参加されたんですね)。

小助川:そうですね。Film Craftと言いまして、FilmとFilmの中のそれぞれの技術というか、それを審査する部門で行ってまいりました。

西村:今日はそのFilmもご紹介いただけるとのことで、楽しみにしています。

小助川:そうですね。

西村:よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

カンヌに8年連続で参加

西村:ゲストの4人目は、ワントゥーテンデザインの小川さんです。よろしくお願いします。

小川丈人氏(以下、小川):小川です。よろしくお願いします。

(会場拍手)

西村:小川さんは、この中では一番カンヌ歴が長いということですよね。何年連続でしたっけ。

小川:8年間連続で。2011年から参加させていただいております。

西村:すごい。ちなみに、この会場の中で「俺はもうちょっと行っている。9年連続だ」という方はいらっしゃいますか? そんな猛者さんは? なかなかいないですよね。ということは、ここのところの流れでは、やっぱり小川さんが一番トレンドをご存知なのかなと思います。

小川:いやいや(笑)。

西村:今回はいろんな変化があったところをご紹介いただけるということで。

小川:のちほどお話しさせていただきます。

西村:よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

ということで、この非常に豪華な4名のゲストと進めていこうと思います。私は、HEART CATCHという会社を持っています。ビジネスとクリエイティブとテクノロジーを繋ぐ「分野を越境するプロデューサー」というかたちで紹介させていただいています。

私自身も本当に今まで繋がりのなかった領域を繋げていくというような、ポリネーター、あるいはカタリストというような仕事をさせていただいております。

私が今ハマっているのがアートシンキングです。デザインシンキングの前段階でイノベーションを起こすために、起業家のマインド・モチベーションを上げるアート思考プログラムという講義があって、カンヌの2週間くらい前にフランスで受けてきました。今それを日本に展開しようと目論んでいる人間です。

カンヌとの関わりで言うと、そのHEART CATCHを起ち上げる前に、バスキュールというクリエイティブの会社にいて、その際に関わったプロジェクトで、カンヌのゴールドを取らせていただきました。

ソーシャルとテレビを繋げるような番組で、新しいデジタルの可能性と、テレビの可能性を拡張するという内容で、カンヌで受賞しています。ただ、私自身はカンヌへ行ったことがないので、カンヌライオンズに関わらせてもらうことに非常に興味があります。

ですので、今日はどちらかというとカンヌへ行ったことのない人間として興味を持ちながらも、モデレーターとして聞いていく、という視点を持って進めていきます。

広告代理店がカンヌに出る代わりに人工知能にお金を使う

西村:それから、もう1つは、カンヌへは行ったことがないんですけれども、けっこうテック系のCESと言われてるものやSXSW(には行っています)。

CESは6年連続、SXSWは5年連続で行っていたり。フランスで3年前から始まったVivaTechにも行きました。こういうオープンイノベーションやテック系のイベントには行っているので、カンヌ以外の海外のいろんなイベントを見ている人間としての視点からもモデレートさせていただきます。

そのVivaTechが、今回のクリエイティブの質がどう変わったか、というお題にもつながっていて。カンヌが始まる1ヶ月くらい前に行った、フランスのVivaTechというカンファレンスが私の中ですごく衝撃だったんです。

どういうことかと言うと、今けっこう日本でも言われているオープンイノベーションが、大企業とスタートアップが一緒にコラボレーションするための座組みというのはご存知だと思います。

フランスのVivaTechは、大企業も複数いるし、スタートアップも複数いるという状況でやっていて、非常にダイナミズムを感じてまいりましたと。

ここからカンヌに近付いてくるんですけれども、このVivaTechという、(エマニュエル・)マクロン大統領も登壇するような、国としても非常に力を入れているイベントを主催しているのがPublicisという世界大手の広告代理店と、フランスの経済紙のLes Echosというところなんですね。

私はカンヌへ行ったことがないけれど、憧れでいつか行きたいなと思っているところで、ぐさっとくさびが打たれたのが、昨年のPublicisの発表です。あとで小川さんの話もあると思います。

Publicisは今まで広告代理店として当たり前のように、カンヌを目指していました。でも、これが昨年11月の記事で(スライドを指して)「Publicis Groupe salutes」というのは、要はカンヌから離れるということを言っていて。「2018年はいったんカンヌから離れて2019年から戻ってくるよ」という話を発表しました。

そこで何が起こっているんだと。今まで大手の代理店やクリエイティブの方々がカンヌを目指すのは当たり前だと思っていたのに、どうも「カンヌに出ないで、その代わりに人工知能を使った仕組みを作ることにお金をかけている」というので、「何が起きているんだろう」と思いました。

カンヌで今なにが起きているのか?

西村:実際、今年のVivaTechに行ったときにも、Publicisという大手代理店さんで30年くらい社長をやっていて、今は大会長になっているモーリス・レヴィという方が、Googleの持株会社Alphabetのエリック・シュミットや、Facebookのマーク・ザッカーバーグと対談をしていて。

あたかもこのPublicis大会長さんが、IT系のトップと対談し、ITの企業かのように……という言い方がいいかわからないんですけれど、セッションを回していることが非常に印象的でした。

(Publicsが)今年のカンヌに出展するお金を削減して作っている人工知能の仕組みは、Marcelというものです。これは、クライアントから案件がきたときに、Publicis Groupeで働いている人材がどういうスキルセットを持っているかを判断し、それによって適切なチームを作るというものです。人工知能がチーミングするようなものですけれども、それをこのVivaTechのタイミングで発表したんですね。

実際にはMarcelの画面などは見られなかったんですけれども、ライオニウムというその場で使えるコインを渡して、「MarcelやPublicisがVivaTechにいる」と呟いたら、そのコインがもらえるというソーシャルのキャンペーンをしていました。

非常に衝撃的だったのが、来場者の方でいっぱい呟いた方には、カンヌライオンズのアワードのトロフィーをプレゼントするということをやっていて。Publicisが非常に刺激的なことをやっているなと。

でも結果としては、Publicisは今年のカンヌでもセッションを持って、そのMarcelの話をやっていたり、エントリーもしているので、ちゃんと(カンヌへ)出ているじゃんというところもあるんですけれども。

私としては、今までずっと出ていたPublicisが、今年いったん出展を大幅にやめて、人工知能を開発していてというところもそうですし、新設されたり、なくなっている部門もあったりというところで、「今年、カンヌで何が起きていたんだろう」ということが、非常に気になっている状態です。

高額な参加費、どんどん増えていくカテゴリー

西村:では、ここからは実際に行ってきたみなさんが、どういう経験をしてきたのかを聞いてみたいと思っています。憧れと、何が起きているんだろうというところを、みんなと一緒に掘り下げていければと。まず最初に小川さんから、今年カンヌがどうだったのかをお話しいただきたいと思います。

小川:審査員のみなさんの深いお話を聞く前に、簡単に今年の概要等々のお話をしていきたいと思います。みなさんはもちろんご存知だと思うので、簡単に話しますと、カンヌは今年で65回目になりました。60回目となる2013年にものすごく(規模の)大きいカンヌが開かれて、それから5年経っても毎年1万5千人くらいは参加をしています。

そう考えると、さっきいろんなセッション(の紹介)がありましたけれど、参加人数で比べたらカンヌのほうがぜんぜん小さいですね。

西村:でも、けっこう質が濃いというか。クリエイティブ業界に特化している方々が集まっていて、人数というよりも深い話が行われているのかなと思いますね。

小川:確かに。ありがとうございます。カンヌの歴史的な流れですね。ちょっとまとめたところ、2008年くらいから、ものすごい勢いでカテゴリーがどんどん増えてきています。

2014年~2016年はライオンズヘルス、イノベーション、エンターテインメントというように、サブイベントのようなかたちへどんどん成長してきているんですけれども、2017年にその増幅傾向をやめまして。

そして、2018年にトランスフォーメーションをしなければならないという状況に陥ったのが、先ほどお話しいただいたところです。「Publicisが反乱」という書かれ方をされていますように、2018年は撤退すると。

それで、2019年には(Publicsは)戻ってきますよというお話で、この自社AIのMarcelの開発に全部を注ぎ込みますよ、と。Publicis自体はここで大きい発表をしたんですけれども、その裏で(世界)1位の(広告代理店)グループのWPPは、実は1,000人いた参加人数をこっそり500人まで大幅に削減していました。

要は、カンヌへ参加すること自体にものすごくお金がかかり過ぎているということで、この1位と2位の会社自体が参加を縮小ないしは取りやめるというような発表がありまして。(これに)カンヌサイドが即座に反応をしてまいります。

Ascentialは改革委員会を立ち上げ「カンヌを生まれ変わらせますよ」という話をして、広告主側のトップクラスのメンバーをその改革委員会の中に入れていくんですね。Burger Kingのヘッド・ブランドとか、AT&TのCBO、Heinekenのチーフとか。