データを活用して強力なクリエイティブを作り出す

西村真理子氏(以下、西村):では、続きましてアクセンチュアの望月さんにお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

望月良太氏(以下、望月):アクセンチュア インタラクティブの望月と申します。よろしくお願いします。

(会場拍手)

簡単に自己紹介させていただきますと、「コンサル10年・広告10年」という言い方をしていまして。実は新卒でアクセンチュアに入って10年間、コンサルティングやシステムの開発をしてまいりました。

2006年に電通へ転職して、インタラクティブ、インテグレーション、それからプロモーション局を経て、昨年の10月に出戻ってまいりました。

アクセンチュアは出戻りがけっこう許される会社で、今はアクセンチュア インタラクティブというところにおりますので、ここの説明を少しだけさせてもらいたいと思います。

アクセンチュアの名前を知っている方はいらっしゃるかと思います。一応世界最大級のコンサルティング会社で、現在全世界45万9千人の従業員がおります。日本の社員も今年1万人を超えました。

僕が入ったときは(従業員が)1,000人弱くらいだったのですが、どうやって人を増やしたんだろうなというくらいの勢いです。「アクセンチュアデジタル」という名前を聞いたことがあるかもしれないですけれども、いわゆる電通デジタルさん、博報堂デジタルさんは違う法人格、会社なんですが、アクセンチュアデジタルはアクセンチュアという会社内の一組織です。デジタル局のようなイメージです。

さらにそのデジタルの中に、「アクセンチュア インタラクティブ」というブランドがあるという、わかりにくい構造です。もしアクセンチュア インタラクティブにお声がけいただくときは、会社ではありませんので、アクセンチュアに(連絡を)お願いいたします。

手前味噌で恐縮ですが、アクセンチュア インタラクティブ自体も、全世界で共通した組織・ブランドでして、Ad Ageさんで、3年連続で世界最大のデジタルエージェンシーであると評価されました。

今回、私はCreative Dataというところの審査をさせていただきました。Creative Dataはいわゆるデータやテクノロジーを活用して、いかに強力なクリエイティブやアイデアを作り出すことができるかを審査する部門です。

AI を使って偉人の自画像を作成

望月:(スライドを指して)次のページにいっていただきまして、みなさん、これはご存知ですか? 2016年のグランプリ受賞作で「The Next Rembrand」ですね。こういったものが、この1、2年グランプリを獲っています。

西村:これ(について)一応補足するとAIが描いたもの、ですよね。

望月:そうですね。レンブラントの作品をAIでディープラーニングして、それを基にして彼のタッチや描き方を習得させて、3Dプリンターを使って、自画像を没後370年くらい経って作ったというやつですね。

現在カンヌのトレンドとして、偉人を復活させるというアイデアがありますが、まさにその先駆になったものではないかなと思います。今回は審査員が10人でした。今年のカンヌの特徴として、審査員がダイバーシティをけっこう配慮していて、まず(審査員の)男女比率を同じにしていました。

それから、これまで審査員が出ていなかった国からも、審査員が出ていました。Creative Dataも男女5人5人でした。見ていただくとわかるとおり、おそらく他の部門と比べると、いわゆる広告代理店やエージェンシー出身者がわりと少ないのではないかと思っています。New York TimesやMasterCardの方も審査員メンバーにいらっしゃいました。

西村:望月さん、もしご存知だったら教えてほしいんですけれど、昨年もこういう、検索もあればメディアもあればコンサルもあれば、というようなバリエーションだったんですか?

望月:昨年はわからないですけれど……。

西村:了解です。

望月:2年前の……3年前かな? 当時の審査員のお話を聞いたときは、わりとそういう(バリエーションの)傾向があるのではないかとは言っていました。

西村:わかりました。ありがとうございます。

Dataという単なる成分を使って、ビジネスゴールを達成

望月:(スライドを指して)これは審査員室ですね。カンヌに行く前は、みんな地下室に閉じ込められて、3~4日間は太陽が見られないと聞いていたんですが、実際はオーシャンビューで、けっこうよかったです。ただ、すごく部屋がせまくて。そんなところで(審査を)やっていました。

次はCreative Dataとは結局なんだということですよね。「Dataの定義とはそもそもなに?」という話や、「Dataを使ったCreativeの活用とはいったいなに?」というのが、人によってもすごく違うし、結局なんでもDataになり得るし、「Dataを使わないキャンペーンやアイデアなんてあるの?」という話もあると思うんですね。

そのクライテリアはどんなものなのかというところについて、Havasのグローバルディレクターのマークという審査員が最初に説明しました。Dataそれ自体は単なる成分、ingredient(成分)だと。

(データは)成分に過ぎなくて、それを使ってどうやってアイデアを作り、ビジネスゴールを達成できたかが重要なんだと。一方で、キャンペーンにおいて、そのDataが存在しなかったら、作品がまったく成立しないと言えるというのが、この部門におけるクライテリアでした。

ですので、「このキャンペーン、すごくいいよね」「このアイデア、すごくいいよね」と言っていても、Data活用ができていないから、メダルが獲れなかったりして。そういうので評価されないというのは、一見すると手段と目的が逆になってしまうような、難しい側面を持った部門なのかなとも思いました。

そのため、みんな口癖が「It's cool! But……」というような。「I love this one,but……」というような、そういう「But」がつくようなところがけっこうありました。

日本の作品はこじんまりしている?

望月:このあと、審査の過程を少しプラスでお話しようと思ったんですが、たまたまAdverTimesで寄稿したCreative Dataライオンの審査に関する記事が出ましたので、詳しくはそちらをご覧いただいて、私のここでの説明は軽くにさせていただこうと思います。

先ほど小助川さんは2,400本も審査をしたと仰っていましたが、Creative Dataでは5分の1でした。総エントリーが516本で、ユニークで数えると300強でしたね。

ですので、1エントリーあたり1.7ぐらい出しているという状況ですね。プレ審査は日本で行いました。投票方法は審査員は全員一緒で、パソコンで投票する形でした。

6月18日PMと書いています。ここからはカンヌの初日です。このタイミングで516本のうち半分ぐらいが落ちていました。なので、プレ審査の段階で半分は落ちてしまって、そのあとは、もう復活の手段は一切ありません。話にも上らないというところです。

ロングリストを見て、この240本に関してはCaseFilmを観ながら、ひたすらvoting(投票)なんですね。これを1日ぐらいずっとやっていて、審査員もだんだんフラストレーションが溜まってくる。しゃべりたいんだけれど、しゃべっていると時間が経ってしまって進まないので、ひたすらvoteをして、ショートリストについては240votingして、そこでの採点でだいたい60本ぐらいに絞られました。

ここからやっとディスカッションがスタートになって、みんなもうしゃべれなかったうっぷんを爆発させるような感じでした。最後にブロンズ以上のメダリストが26本決まったというところです。

今回、日本のエントリーは少なく、のべ13本でした。そのうち、ショートリストに残ったのが1本。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、それがブロンズを獲ったMAKE IT METALという作品でした。

西村:(エントリーが)一番多かった国はどこらへんですか?

望月:アメリカですね。アメリカ、オーストラリア、ブラジルがやっぱり圧倒的に多くて。とくにブラジルやオーストラリアは、わりと国の文化的な許容背景が大きいというか。キャンペーンでもけっこう無茶なことができるのが特長ですよね。社会的な責任といったものもあるかもしれませんけれども、日本はどうしてもこじんまりという傾向にあると思います。

ジョン・F・ケネディ元大統領のスピーチを蘇らせた「JFK Unsilenced」

望月:グランプリの作品を見ていただきたいので、「JFK Unsilenced」をお願いします。

これはジョン・F・ケネディ元大統領が1963年に暗殺されたときに、当日行うはずだったスピーチを、過去に行ったスピーチやインタビューから音声ユニットデータを抽出し、そのデータをもとにして彼自身の声で再現したというものですね。この作品がどうしてグランプリになったのかを噛み砕いていきたいと思います。

そもそもグランプリに関しては、どの部門も一緒だと思いますが、ただすごいキャンペーンやすごいビジネスリザルトというよりは、その作品が業界、インダストリーに対する新しい提言になっているか。新しいメッセージを出しているかということが、非常に重要視されるんですね。

そのため、キャンペーンやビジネスリザルトという点では、このあとに出てくるゴールド作品の方が勝っているかもしれません。新しいメッセージを何か投げかけているのかという視点でこちらが選ばれています。