CLOSE

ゲスト:池原真佐子さん(全4記事)

「違和感に気づく」が変化の始まり とある女性起業家が語った、本音で生きるための行動プロセス

なぜ本音を言いにくいのか、本音で生きることのメリットは? 日曜朝に行われるトークイベント「Sunday Morning Cafe」、2回目に行われた「本音で生きる」に株式会社MANABICIAの池原真佐子氏が登壇しました。小学生時代に「学校へ行きたくない」という思いを親に受け入れてもらえず、なんとなく本音を言えずに生きてきたと語る池原氏。そんな彼女が「本音で生きる」ができるようになるまでの経緯と、本音だからこそ得られるメリットについて振り返りました。

成長とは、以前の状態に戻れないこと

新條隼人氏(以下、新條):(本音を言えない理由は「抑圧されて本音を言えない」「本音がわからない」「本音を言える間柄じゃない」と池原氏が話したことについて)基本的には「本音を言えたほうがハッピーだよね」という前提でセッションが始まっているじゃないですか。

例えば2番目のケースって、自分のなにが本音なのか、というか、意思みたいなものがクリアじゃない状態でした。考えているけど抑圧されているみたいなのが1番、まぁ3番とかもそうかな。

2番目のように、考えているものもクリアじゃないと、自分的には気持ち悪くはないんですか? 本音が言えないけど、自分の本音がなにかわからないし……となる。それは、コンフォートゾーンにはいるんですかね?

池原真佐子氏(以下、池原):この場合の本音って、たぶんいろんな前提があると思うんです。例えば嫌いな人に、職場で「あなたが嫌いだよ」と言うことが本音なのかといったら、それも1つの本音かもしれないんですけれども。

ここで定義している本音は、そういうことではありません。「生きる上で、自分が本当に望んでいること」「自分のコアに基づく価値観や信条」を本音と呼びたいですね。そういう意味では、本音に気づいてない状況は「人生ってこんなもんか」と満足しているのであれば、それはそれでハッピーなのかもしれない。

でも、どこかで「あっ、私は今、本音で生きてない」と認知してしまったら、それは本音を自分で言葉にして実現していかないと、たぶんすごく気持ち悪い状況が続くと思います。何年も。

新條:なるほど。じゃあまさに理想と現実のギャップで、理想側に本音を見出して、今がそうである可能性があるよと思っちゃうと、ここをなんとか埋めたいと?

池原:ただ、先ほどの自分のキャリアの変化っていうスタートとも同じだと思うんですけれども。違和感を感じた瞬間からは、もう後には戻れないんです。

昔、教育哲学の教授はこう言っていました。「成長とは、以前の状態に戻れないことだ」と。だから、「本音に気づいた、でもすっかり忘れた」っていうのはたぶん変化じゃないんですよ。「気づいてしまった、もうモヤモヤが止まらない」が人の変化の始まり。なので、気づいてしまったらせっかくなのでとことん本音を探っていきましょう。

違和感を掘り下げた結果、たどり着いた「教育」

新條:なるほど。じゃあちょっとあれですね、もう1回池原さんの少女時代に戻るとして。もう、そこから違和感が始まったじゃないですか。

とはいえ、自分があげたことを拒否されるから、小さいことを単発であげるよりも、溜め込んだ大きな意思決定みたいな話で、小中学生以降で爆発した次の大きな意思表示っていつなんですか?

池原:1つは転職かもしれないですね。

新條:そこまで行くんですね。

池原:まぁ途中でたくさんあるにはありますが。大きな節目という意味では、転職でしょうね。転職すると両親に話したら、大反対されました。「我慢が足りない」などさまざまなことを言われました。

ただ、もう大人でしたし、自分で意思決定できるんだっていう強い思いがあったので、転職を辞める気はまったくありませんでした。とはいえ裏腹に、どこかで親に認められたいという気持ちもあり、理解されないことに悩みました。

やはり、自分の本音、どう生きていきたいか。「ここじゃない」っていう思いはもう明確でしたし、これが本音だったので、正解はわからないけれど行動に移しました。

新條:新卒で入られたのはどこでしたっけ?

池原:最初はPR会社でした。とにかく華やかで、化粧品などを扱っていたところなので、キラキラ部署でした。

最初は仕事を覚えることに必死で、その中で成果を出すことは楽しかったんです。でも数年経つとモヤモヤして「私はこの会社でどうなりたいのだろう」と悩み始めました。自分のミッション、目指している姿、この会社でこの専門性を積んで自分が生きたい姿と、なんだかわからないけど、自分が欲しているものに違和感があったのだと思います。

違和感を掘り下げて、掘り下げて、掘り下げた時に、足りなかったのが「教育」というエッセンスだったんです。やっぱり自分は、人と接して、人の成長を助けるとか、そういう場を作るとかというところを私はずっと望んでいたんです。

PR会社も楽しいけれど、ここは私のライフミッションを叶える場ではないなと。

新條:なるほど。じゃあ感情移入するために、もうちょっと前提を広げていった。就職をする前に、教育がライフミッションだと言い出したのはなぜでしょうか。さらにいうと、就職の時にPR会社を選んだのはなんでだろうみたいなところを少しおうかがいできれば。

池原:早稲田の大学院で成人教育、多文化教育を専攻していた時、ある政府系の国際団体でインターンをさせてもらったんですね。その時の配属がたまたま広報部で、活動を外部の人に知らせていくという仕事を初めて知りました。その中で、「人になにかを伝える、広報、PRの仕事は素敵だな」と思い、新卒でPR会社に入ったんです。

教育という軸はありつつ、その時のご縁や経験や興味から、PRを選んだということです。でも実際、PRのお仕事をやってみて初めて、「やっぱりミッションは教育だ」と気づいたんですよね。違うことをしてみて気づくということもあるのだと思います。

好きなものが見つからなければ「嫌いなもの」を洗い出す

池原:そういえば、最近はもうやってないんですけれども、創業した当時、女性のキャリアコーチングをずっとやっていました。トータル400人ぐらい。そこで「自分のミッションってなんでしょう?」と掘り下げるお手伝いをしていました。

いろんな考え方があると思うんですけれども、私は1つの目安としては、「小さい頃から触れていて違和感がなかった価値観」なのかなと思っているんです。

私の両親は教師なので、「人の成長ってすばらしい」「教育ってすばらしい」という価値観は昔から浴びて育ってきたので、そこに対しては違和感がなかったんです。それが軸になっているのだと思います。

あとは、自分が無意識に時間を費やしているものですね。私の場合は、教育関係の本を読むことが多かった。苦じゃない。こういう無意識の行動からも、自分のミッション、本当にしたいこと、つまり本音は見つけていけると思います。

新條:はいはい。

池原:あともう1つは、そうだ、あの図を……。

新條:そうですね。

池原:ミッションの見つけ方っていうことで、参考になると思います。

Googleで「ikigai(生きがい)」とローマ字で打って検索すれば出てくるんですけれども。世界が求めているものと、自分が得意なもの、お金になるもの、そして自分が好きなもの。そのすべてが重なるところが「ikigai」であり人生を通してやっていきたいことなんだなって気づいたんですね。

この中で私たちが一番忘れがちなのが「自分が好きなこと」。好きなものを見つけるのが難しい人は、まず好きじゃないものを洗い出して、その残ったものから削り出していくというのもあるかなぁと思います。

新條:なるほど。このへんは後半のワークショップでも。

池原:そうですね。ここも後半でやっていただくと思います。

人は3年~5年周期でキャリアに違和感が生まれる

新條:ありがとうございます。そんなにシステマチックな分析していないものの、学生時代、池原さんは教育とかっていうテーマなんじゃないかっていう仮説があったじゃないですか。その一発目がPR会社だったのはどんな感じだったんですか?

池原:PRのプロにまずなろうと思ってPR会社に入りました。しかし、先ほどもお話ししたように、途中から違和感を感じるようになりました。

新條:違和感を感じられたのはいつぐらいなんですか? 

池原:入って2年目ぐらいですね。

新條:それはさっきの、(会社に)いる人とか、雰囲気への違和感なんですかね?

池原:おもしろいことに、人がキャリアに違和感を感じる時は、3年~5年周期というデータがありました。私もそうだったんじゃないかと思いますけど(笑)。

新條:じゃあなんらかの特定の要素というよりは、「私ってこれなんだっけ?」が少し芽生えたと。

池原:たぶん就職したばっかりの時って……。会社がなにを求めているのか、その中で自分がなにができるか、なにが得意かっていうのがだんだん2~3年で見えてくると思うんですね。

その中に、ようやく自分の好き嫌いが見えてくる。好き嫌いが見え始めた時に、好きなものが少なかったら、違和感って感じるんだろうなぁと思いますね。

新條:なるほど。

違和感はある、けれど本音に合う選択肢を出せない

新條:ちょっと先ほどの具体的なプロセスをまたうかがいたいなと思うんですけど。意思決定としては、違和感があるじゃないですか。次の環境をどこへ行くかとかではなくて、離れることを先に決めるっていう感じなんですかね?

池原:いい質問をありがとうございます。

新條:ありがとうございます。よく言われるんですよ(笑)。

(会場笑)

池原:そのプロセスを分解すると、5つあると思います。

まず、今いる場所に違和感を感じる。「なんかこれ違う」「なんだかわからないけど、今の私には窮屈」とか。それが第1フェーズ。第2フェーズになると、「そこは違う、自分は飛び出すんだ」と、勢いよく飛び出したはいいけれども、どこに行ったらいいかわからない状態。一番つらくて、長くて、どん底と言われています。もう元には戻れないけど、どこに行っていいかわからない、板挟み。

第3フェーズになると、ようやく選択肢が見える。

「本音で生きる」というのは、実はこの第3フェーズで一番大事なものになります。次のステップの選択肢を出す時に本音で出しておかないと、本音に沿った生き方を選べません。

私たちはこのフェーズで、得意なこととか、経験に基づくこと、想像しやすいこと、お金になること、世間が求めていることを出しがちです。でも、ここのフェーズの時には、本当に好きなこと、本音で心からやってみたかったことを選択肢に入れてあげるのが重要です。

本音に沿った選択肢が出せたら、第4フェーズ。選択肢を絞り込んでいく。あれやこれや試行錯誤して、ちょっと試してみて、「これ違った、じゃあこっち試してみよう」みたいな感じ。最後、第5フェーズ。ここでようやく、絞り込んだ選択肢に基づいて変化の活動を始めていきます。

新條:なるほど。例えば転職を思いとどまったりとか悩んだりしている人って、どこで悩んでるっていう感じなんですかね? それはご自身のコーチングなどのご経験だと、みなさんどこのステップで滞留するみたいなものはありますか?

池原:わりとみなさん、第1フェーズの違和感は繊細にキャッチするじゃないですか。一番多いのが、第2フェーズにいる方。停滞しています。あとは第3フェーズで、本音に合わせた選択肢を出すことができず、停滞する方も多いですね。

女性に多い「お母さんになんて言われるかな」

池原:女性に多いのが、母親が認めてくれそうなもの。無意識に「お母さんからなんて言われるかな」と思っている方が、実は30代、40代ってすごく多い。自分の本音よりも、親の期待を満たすことを優先する場合もすごく多いです。

新條:なるほど。例えば、もう一度具体的な池原さんのケースに戻って、PR会社にいました、違和感がありますよと。環境を出てしまうことは決めて、さっきの教育にたどり着くまでって、スパンはどれぐらいだったんですか?

池原:そうですね、そんなに長くはなかった気がします。掘り下げている期間は長かったですが、行動を決めてからは早かったです。

新條:じゃあ、いわゆるさっきみたいな、内省でむちゃくちゃいろんな深掘りをして……というよりは、選択肢群を見ている中で「ピンとくるものがこっちだから、私はこっちかも」みたいなこともあり得るんですね?

池原:内省とたぶんセットだと思うんです。

新條:なるほど。それはちなみにPR会社から2つ目へ行く時って、他の選択肢と迷われたりしました?

池原:あまりありませんでした。

新條:なるほど。というのでいくと、また大題に戻って、本音を出せない状況はなんでか、池原さんはそれに対してどうアプローチしたかという話だと、例えば今の話で転職、違和感がある。そして、ちょっと転職サイトとか見てると教育の方向性の話がある。ご自身的にはピンと来てるじゃないですか。

とはいえ親御さんからはプレッシャーが来て……みたいな感じなんですか? さっきの本音を阻む要因としては、親御さんに対して「転職のこと言えるかな」みたいな悩みがあって?

池原:私の場合は親にっていうのもあったし、あと自分が次はNPOで働きたいと言っているのに「落ちたらどうしようか」「本音をくじかれたら、拒否されたらどうしよう」という恐怖はありましたね。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • ファシリテーターは「しゃべらないほうがいい」理由 入山章栄氏が語る、心理的安全性の高い場を作るポイント

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!