「早く行くなら1人で行け、遠くに行くならみんなで行け」

新條隼人氏(以下、新條):今日のセッションは、たぶん「本音で生きる」に対して「自分と他者」という話と、「自分で自分を抑えている」という話があります。解決策のほうも、たぶん自分1人で解決できるものと、周りがいることでより前に進もうというのがあるのかなと。

前半は「こんな気づきがあるよね、だから自分でこうしてみようね」シリーズだったじゃないですか。後半はどちらかというと、コミュニティです。先ほどお話しされていた「本音で語るコミュニティってこんな意義があるよね」も含めて、具体的に「こんなことやったよ」とていう紹介を最後にさせていただけるといいなぁと思うんですけど。

池原真佐子氏(以下、池原):「早く行くなら1人で行け、遠くに行くならみんなで行け」ということわざがあります。

私も実は起業する2年半前に、さまざまなワークショップをやりたいと思ってたんですけれども、1人でやる勇気がなかったんです。そこで、日産の人材開発部の友人と2人で団体を立ち上げて、2年半ずっと2人で活動していました。

自分が「こういうのをやってみたいんだよね」と言った時に、意外に人は応援してくれるものです。「じゃあ一緒にやらない?」と仲間を見つけて始めると、行動も達成も早くなります。

まず仲間を見つける。そのためにも、本音を出し合うこと。自分がやってみたいことをみんなでとことん話して、1つの形にしていく。これが体現されているのがこのコミュニティ(池原真佐子氏とanother life.が共同で主催するオンラインコミュニティ)です。

このコミュニティは、私が一方的に先生みたいになにかをすることはありません。コミュニティでみなさんが仲間と本音でぶつかり、自信をつけていくためのコミュニティです。

新條:どちらかというと「このコミュニティってこうです」というよりは、「その中にあるこういう要素が、一人ひとりが自分のことを見つけていくのに寄与していますよ」みたいな、わりと一般的な話として捉えていただいて問題がないということですね。

池原:そうですね。キャリアについてなにか課題を持っている、なにか変えたい、新しいことい挑戦してみたいという人たちが対象です。各メンバーをグループ分けして、3ヶ月活動してもらいます。そして3ヶ月後にグループでキャリアの課題解決に関するアウトプットを出してもらいます。

新條:今日の前半もありましたけど、失敗できる環境など、安心安全であるがゆえにトライができるというのがけっこう肝だと思うんです。

池原:本当にこれをやってみたかったということ、「歌を歌ってみたかった」「ダンスしてみたかった」「料理を作ってみたかった」など、なんでもいいので本気で「自分はこれやってみたい」を仲間たちと話し合って、自分たちが3ヶ月後に他の人にシェアできるアウトプットの形にするコミュニティです。

「キャリア」「自信」に関わるものでしたら、どういうアウトプットでも構いません。メンバーも多彩です。転職したてのメンバーもいたり、海外に興味があったり、地域おこしのプロジェクトをやっている人、ソーシャルビジネスをやっている人、人事・会計の起業家の人など、いろんな人がいます。

新條:それをむしろ意識されてましたよね。このコミュニティもそうですし、それ以外も含めて、例えば独立されている方や組織の中で働かれている方など、たぶん違うバックボーンの人が集まることの意味みたいなことは狙われてましたよね?

池原:まさにそうですね。最初に話した、30歳を過ぎて活躍している人たちはどこに生息していたかというお話にもつながります。さまざまな人たちと社外で切磋琢磨して本音でぶつかりあえる場を作れたらいいなと思っています。そういう意味では私たちは全面的に応援しますね。

ハイパフォーマーは振り返り力が高い

新條:ありがとうございます。そうしたら大きく、具体的に3ヶ月になにをするかの流れと、あと、私たちがこう言ってもしょうがないと思うんですが、参加者の方がどう考えたのかというお話とかをおうかがいできたらなと思うんですけれども。

大きな流れとして、グループワークと個人ワークで進んでいきますよ」みたいなことですよね。個人ワークって、どんなことをするんですか?

池原:実は、私が起業するタイミングで他の起業家たちがやっていたものを真似させてもらったんです。グループを作って、1週間に1回、自分が達成したことや気づいたこと、まだ達成してないこと、あと周りに感謝することを報告し合っていました。

それを「週報」というかたちで、1週間に1回、全員にシェアする。それをやると、みんなすごいスピードで目標達成していったんです。 なので、オンラインコミュニティにも取り入れました。毎週日曜日に全員で1週間の振り返りと達成したことをシェアし合っています。

新條:振り返りの習慣がつくっていくことと、なんの観点で振り返るか。そして自分1人じゃないみたいなのが大きい感じですよね。

池原:振り返りはすごく大事です。経験学習理論によると、ハイパフォーマーの特徴は振り返り力が高いこと。内省する人が結果を出す。なので、振り返りをコミュニティで自動化してやってしまえば、みんなの目標達成が早くなります。

新條:ありがとうございます。もう1つのほうがグループワークです。だいたい3ヶ月あり、チームの矛先が合う人でグループになって、キックオフして、発表があって……。それから、振り返りの卒業制作みたいなものがあるんですよね。

池原:グルーピング後に顔合わせをします。3ヶ月後の発表の日に向けて、グループワークが開始になります。グループによっては毎週集まったり、Zoom(オンライン会議システム)で会議をしながら「プロジェクトをなににしよう? なに話す?」みたいなところからスタートしてもらいます。

途中でオフィスアワーとして私が個別にチームの相談に乗ったりしています。最終的に成果発表の場を作ります。その後は、卒業制作プロジェクトをしてもらいます。

活動の振り返りが自信につながる

新條:というところで、若干無茶振りなんですけど、例えばフジバヤシさん(オンラインコミュニティのメンバー)とか、いかがでしょうかね?(笑)。よかったら前に来ていただいて。どんな背景で入って、どう思ったみたいなのを。

池原:フジバヤシさんは、すごい活動量なんです。

フジバヤシ氏(以下、フジバヤシ):おそらく私も、さっきのフェーズのところでいうと、転職もしてるんですけれど、海外から帰ってきて、「次、果たして本当にやりたいことは?」みたいなものをずっと探していたんです。その時に、このコミュニティを見つけて入って。

活動していく中で、自分の強みみたいなものがすごくわかっていきました。グループ活動の中で、それぞれの役割みたいなのがだんだんできてくるんですけど、そういう時に、自分の自信になるところなどがだんだん見えてくる。

今ちょうど動画を作るにあたって、活動の振り返りをしているところなんですけれど、けっこう自信になったし、それを次のキャリアに活かしていけたらいいなと考えています。そういう気づきがすごく多かったですね。週報もすごく良くて……。

池原:週報とは、さっきの1週間の振り返りのことですね。

フジバヤシ:それも自分の日記じゃなくて、活動、ワーク、グループワークでやってきたことをアウトプットとして公開するかたちで書いておく。そうすると、わりと「そうだった、そうだった」みたいなことで、自分の中にとどめておくだけじゃなくて、俯瞰して見れるようにもなる。そういう意味では、すごくいい場所だったなと感じていました。

池原:じゃあせっかくなので、ナルセさん一言。今日はワークショップのメンバーが来てるので。

新條:なにが一番印象に残りましたか?

ナルセ氏(以下、ナルセ):印象に残ったことは、週報もそうなんですけれども、グループの活動ですね。バックボーンも違う何人かで集まって、話し合って、そして発表に向けて準備をしていく。その過程でも気づきがありました。わりと他のグループに比べて、メンバーとぶつかる機会が多かったんですけれども。

池原:よくぶつかってましたよね(笑)。

ナルセ:でも、その中で最後はまとまっていく過程があって、なにかを運営するとか、なにかを一緒に作るっていうのはこういうことなんだなっていうのをつくづく実感しました。

池原:ありがとうございます。チームを運営していくとか、プロマネをやるって、なかなか会社の中でも特定のポジションにならないとできないことはけっこうあると思うんですね。

ここでは、それこそプロジェクトマネージメント、チームリード、あるいは自分の役割を自分で作っていくところからやるので、会社の中でなかなかそういう機会がないっていう方、あるいはもうやっているけれどもなにかしらそこにヒントがほしいという方も、チーム運営というかたちですごく仕事にも応用できるかなと思っています。

大人が本気で喧嘩し合える場

新條:驚いたことが2つあります。大人がケンカしていることにすごく驚いたのと(笑)。

(会場笑)

池原:けっこうびっくりしましたよね(笑)。

新條:でもたぶん、ケンカするまで至ったんだ、みたいな。3ヶ月なので、初対面でそこまで至ったことはけっこうすごいなぁと。「私たちはケンカしました、ここがモメた時期です、ここが学びがありました」みたいに書いて報告して(笑)。

(会場笑)

これはすごいなと思いました。具体的に、3ヶ月間刻みで10月開始で12月31日まで一応1期目は11人でやったんですけど、マックス30人ですね。

池原:本当に5,000円でこんなに活動ができるんだってけっこうびっくりしたぐらいです。あと、私の会社のMANABICIA自体でもいろんなワークショップをやっています。

男性が可能なものもあれば、女性限定のもので産後のキャリアについて考えたり、なにか英語でディスカッションする場がほしかったりなど、いろんなワークショップをやっています。そのようなワークショップの優先的な申込みと、できるものに関しては割引をどんどんさせていただくという特典もあります。

あと、「こういうことをやってみたいけれども」という意思があれば、私の知り合いを紹介したり、私のリソースをフル活用してみなさんがどんどん出ていけるような場にしていきたいなと思っています。

新條:ありがとうございます。みなさんもご年齢は、20代、30代、40代って多様で。

池原:そうですね。ちょっと来てない方もいらっしゃるんですが、もう本当に最初はびっくりするぐらいバラバラだったんです。でも、最後はなんかまとまっちゃったみたいな(笑)。

原動力として常にある「悔しさ」

新條:いったん全体のQ&Aにしようと思います。ご自身が明日以降、今日以降、なにかしていくことについて不明点だったり、こんなことも聞きたいなということがありましたらぜひ。

質問者3:書籍を読ませていただいたんですけれども、池原さん自身、すごくいろんなことを今までされてきて、けっこう大変だった時期もあると思うんです。その中で自分を動かしてきたなと思うものって、どういったものでしょうか?

池原:原動力って、かっこいいものが言えたらいいんですけど、私はわりと「悔しさ」です。負けず嫌いで、勝ち気なところがあるので。悔しいと思うところがいつも先に来た気がします。

人によっては、キラキラしたビジョンが天から降りてきて「こうなるんだ」「世界を変えるんだ」みたいな人も、もちろん一部いると思うんです。しかし、私はどちらかというと、「現状に対して悔しい」「自分だったらもっとこうできるのに」「こうしていきたいのに」というところが、いつも大きなものになっているかなと思います。

質問者3:それは、「過去にこういうことがあって、こういう世界を見たいんだ」ではなくて、「この現状が悔しい、じゃあ次はその世界に行って叶えるぞ」みたいな感じなんでしょうか?

池原:前までは私、本当に自信がなくて、いつも人と比べちゃっていたんですね。なんか素敵な人がいると悔しいとか、自分だったらこうできるのに悔しいとか。

でも最近では、過去の自分とよく比べるようになりました。「過去の自分よりこうできるはずだ」「自分はもっと変えられるはずだ」など。なんだろう、自分の課題に対しての力不足感をいつも感じている気がします。

例えば今だったら、女性が働きやすいところにするなどがあります。子どもを産んだあとでも自信を持って自己実現していけるようにする。でもなかなか現状、日本はそうなっていない。それって悔しいと思うんですね。それが原動力にある気がします。

質問者3:ありがとうございます。

新條:ありがとうございます。

未来への不安を拭い、チャレンジするには?

新條:最後よかったら1つ2つぐらい。ありがとうございます。

質問者4:お話ありがとうございました。1点質問なんですけど、今ここに集中をされることって、すごい大切なことだとおっしゃっていたんですけれども。私もそれはけっこう大事にしたいなと思いつつ、どうしても過去を振り返ってしまうんです。

それは次の原動力にするように心がけているんですけど、今後、先に起きること。例えば今、社会人1年目なんですけど、これから会社の編成が変わる、自分が今入社してからやってきた1ヶ月のものが、全部もしかしたらパーになってしまうかもしれないとか。

そういう状況に置かれながら、起きるかわからないことに対しても不安になってしまう。現状に集中しきれない状況になってしまうことがあるので。

今ここに集中しなきゃいけない、集中しようという時に、どういう心持ちというか、どうしたら今の現状に集中できるのか。池原さんご自身が意識されていたことがもしあれば、おうかがいしたいなと思います。

池原:ありがとうございます。未来の不安ってよく聞くんですけど、未来の不安の中で、自分がコントロールできないことと、コントロールできることをまず分けるんですね。

例えば、会社の組織編成って、マネジメントは別かもしれないんですが、一般的には自分がコントロールできないこと。それを今心配しても、神のみぞ知る、経営者のみぞ知る判断ですよね。

でも未来……例えば会社が分割されて自分がなにか違う部署に行ったとしても、「じゃあ今準備できること」は自分が関与できること。そちらに集中して磨いていけば、未来の不確定要素に対しても対応できるのではないでしょうか。

質問者4:ありがとうございます。

新條:ありがとうございます。というところで、ごめんなさい、若干時間が来ているので。まだ聞きたいことはたくさんあると思いますが、いったんこれで終了させていただきます。最後は大きな拍手でお願いします。

池原:ありがとうございました。

(会場拍手)