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ゲスト:池原真佐子さん(全4記事)

本音を言えないのは「否定された過去がくすぶっているから」 本心を隠しがちな人の背景を紐解く

なぜ本音を言いにくいのか、本音で生きることのメリットは? 日曜朝に行われるトークイベント「Sunday Morning Cafe」、2回目に行われた「本音で生きる」に株式会社MANABICIAの池原真佐子氏が登壇しました。小学生時代に「学校へ行きたくない」という思いを親に受け入れてもらえず、なんとなく本音を言えずに生きてきたと語る池原氏。そんな彼女が「本音で生きる」ができるようになるまでの経緯と、本音だからこそ得られるメリットについて振り返りました。

エグゼクティブの意識を変え、生産性を上げる

池原真佐子氏(以下、池原):おはようございます、池原です。株式会社MANABICIAの代表、池原と申します。よろしくお願いいたします。

私は今、MANABICIAという会社を立ち上げて、9月で4年目になりました。今やっていることは2つあります。1つは企業の役員、経営者のエグゼクティブコーチング。エグゼクティブの意識やとかマインドを変えることで、生産性を上げる、働きやすい組織を作る。対象は男性がまだ多いのですが、最近は女性のリーダーも増えてきました。

もう1つは働く女性、特にワーキングマザーのキャリア支援です。それは、ずっと人材育成やキャリア支援がを専門にしてきたことと、私の場合は夫が臨月から海外転勤になったことで、ワーキングマザーとしての働き方を真剣に考えるようになったからです。

パートナーとお互いのキャリアをどうやって実現するのか、育児をどうしていくのかとか、女性がいろんなライフイベントを経ても自分らしいキャリアを立てていくにはどうしたらいいのか、などを考える場を作っていきたいと思っています。

簡単に私のバックグラウンドをお話ししますね。福岡県出身です。この中で福岡の方は? 

(会場挙手)

池原:どちらですか?

参加者:(福岡)市内で、東区です。

池原:都会ですね(笑)。

(会場笑)

池原:私は「修羅の国」といわれている北九州出身です(笑)。大学で早稲田で、「成人教育」を専攻します。大人が学校を卒業したあとにどうやって学んでいくか、どう成長していくかということを学んできました。その後、早稲田の大学院まで行って研究していました。

新卒での就職はPR会社でした。女性向けのプロダクトアート、NGOなど幅広いクライアントのお仕事をさせてもらいます。その後、国際教育を推進するNPOに転職をします。

さらにそこから、もっとビジネスマンの人材教育に特化したいという思いが湧き、コンサルティング会社の人材開発部で、国内外のコンサルタントの育成の仕事をします。その途中で結婚し、INSEADに国際通学をします。私が行ったのはパートタイムでコーチングの修士が取れるコースで。

日本で結婚もしていましたし、仕事を辞めずに家庭も持ちながら海外で勉強したいという思いを叶えるために、シンガポールまで飛行機で通学していました。卒業手前でコンサル会社を退社、起業をして、今に至ります。なかなか忙しい人生ですね(笑)。

「本音で生きる」が人生のオーナーシップにつながる

司会:ありがとうございます。それではトークセッションに移らせていただきます。

新條隼人氏(以下、新條):それではトークセッションをやらせていただければと思います。今日はテーマが「本音で生きる」というところで、大きくこんな流れでうかがっていこうかなというのが3点ほどありまして。

1つが、そもそも本音が出せないような状況ってなんと呼ばれるでしょうという話であったりとか、池原さん自身のご経験もうかがいたいなというところで、どう向き合っていたのかというところ。

たぶん、なんらかインプットを明日からの行動に落とせないとなかなか来た意味が見出せないかなというところで、今日明日からできることはなんでしょうみたいなところに、前半30分ぐらい少し触れられればと思います。

せっかくこの距離感でやっているので、途中からでもQ&Aを拾えればと思いますし、なにか「ここがわからない」というところは止めてやっていければと思います。

そもそもこのテーマ「本音で生きる」って、どんな背景でこのテーマにしたのか、というところから少しうかがっていきたいと思います。

池原:人から「真佐子さんは、なに考えてるのかわからない」と言われることが多かったんです。それは話してる時に、自分の意見を言うのがすごく苦手だったんです。

自分の意見を言う、意思を言うときも、相手がどう思うかとか、忖度(そんたく)をしてしまう(笑)。相手の期待に沿った答えを言おうと、無駄に気遣いをしてしまう癖があったんですね。そういうのが、自分でもすごく嫌だなと思っていました。

今はそのようなことはほとんどなくなりましたが、きっと昔の私と同じように「本音を人に言えない」と悩んでいる人は多いだろうと思い、今回このテーマにしました。

そういえば、私は今36歳なんですけれども、30過ぎてくると、際立った活動をしてくる人がまわりに増えてきたんですね。「この人すごく活躍しているな」「いろんなところでこの人の名前を目にするな」っていう人がけっこう出てきたんですね。

そういう友人たちと、どういう場所で出会ったかな、というのを最近振り返っていて、気づいたんです。それは、本音をぶつけ合えるような社外の学びの場で出会っている人たちなんです。

そのような場に集まる人たちは、仲間たちと本音でぶつかり、語り合うことに躊躇がありません。そういう人たちが、やはり30過ぎてくると頭角を現してきている。「本音を言うこと」「本音で生きる」ことが、自分の人生のオーナーシップをとることにつながるのではないかと思いました。なので、新條さんとこのテーマにしました。

「学校へ行きたくない」の本音を折られた記憶

新條:それはご自身の、ある種自己肯定感なり、自己実現の話してもそうだし、社会でのパフォーマンスに関しても、そっちの方が幸せに生きられるんじゃないかと。

さっきのご自身の話もうかがいたいなと思うんですけど、最初の、あんまり自分の意見を言わないみたいな話があったじゃないですか。

例えばシンガポールのINSEADだって、経営大学院で、かなりアクティブに参加されて、議論してみたいなイメージがすごくあるんですけど、ご自身が周りに対してあまり自分の意見を言わないのは昔からなんですか? あるとき変わってきたみたいな感じなんですか?

池原:わりと昔から本音を言わない傾向があって、「なんでだろう?」と思った時に、過去に本音を言って傷ついたことがあったんですね。

新條:なるほど。

池原:誰しも子どもの時って、無邪気に「これやりたい」「僕こういうふうになる」「私、花屋さんになる」があるじゃないですか。でも、どこかの段階で「そんなの無理だよ」「そんなことよりもいい学校行きなさい」って、本音を折られてきた経験が私たちの中に必ず1度や2度あるはずなんですよね。

その折れてきた本音たちが、なんかぐにゅぐにゅって心の中で発酵してしまって、「本音を言ったら否定されるんじゃないか?」という思い込みが、ずーっとどこかにある。私の場合はとくにそういうのが強かったので、なかなか本音を言うことができなかった。

私は節目節目で大きな決断をするのはわりと得意なんです、社会人になってから海外の大学院に行く、夫が海外に行くのに日本に残って1人で子どもを産むなど。でも逆に、小さな日常のところで「私こういうことをしたいの」「こういうのに行きたい」「こういうのをちょっとやってみたい」がすごく苦手だったんですよね。

新條:ご自身の中で、「これは折られたな」っていうので覚えていることとか、こうしたかった、発信もしたけどそれが受け入れられなかったりとかって、どんなものがあったりします?

池原:一番覚えているのは、私は小中高一貫のちょっとめずらしい学校で育って。

新條:地元の福岡で?

池原:はい。すごく嫌だったんですね、学校が。校則も厳しいし、本当によくわからない校則があって。ペンは3本までとか(笑)。

(会場笑)

キーホルダー禁止とか。小学校3年生まで髪型も決まってて、全員おかっぱとか。そういうのがすごく嫌で1回「やめたい」と言ったんですよ、小学校を(笑)。そういう時に母親が、「今さら違う学校に行くと勉強についていけなくなるし、がんばって続けなさい」と。

ただ、それは私にとっては人生で最初の大きな意思表明だったんですね、「学校をやめたい」と。それを「いいからとにかく学校に行きなさい」ということで道を塞がれてしまった。大人になると自分で道を選ぶ力があるはずなのに、無力感だけを覚えてしまうんですね。それがたぶん20代ぐらいまで私は続いてたんじゃないかなぁというふうに思いました。

人の変化は、違和感から始まる

新條:それはちなみに、小中高一貫校でしたっけ?

池原:小中高一貫です。

新條:じゃあ、どちらかというと、もう自分の意思でというよりは、進学の、ご家庭の方針でということですね。

池原:そうですね。

新條:その違和感って、いつぐらいから感じられてました?

池原:小学校1年ぐらいからです。

新條:早いですね。なるほど。それは、なにが気持ち悪かったんですか?

池原:私は小学校でさっそくいじめに遭ったんですけれども。その理由が、なんか人と見た目が違うと。すごく色が黒かったんですね、真っ黒に焼けて。それがなんか「インド人みたい」と言われて。

人と違う。そこが私は、例えば成人教育など、人との違いを認めて成長していくっていうところに、自分のルーツを持ったきっかけでもあるんですが。人と違うことはいけないことだ、人と違う見た目がダメだ。それがもしかしたら、「人と違う意見を言ってはいけない」にもつながっていったんだろうなと思います。

新條:例えば「公立高校に行きたいんだ」は、「地元の高校へ行きたいな」「こういう学校へ行きたいな」は、もう少し今の環境より多様性が認められるんじゃないか、みたいな感覚だったんですか?

池原:たぶんそこまでは考えてなくて。人が周りから拒否反応を受けたときって、「まずここから逃げたい」っていう意識が出てくると思うんですね。

ちなみに、人の変化の始まりは、違和感から始まると言われいます。今いる場所が違う、なんか違う、合わない。次がどこなのかが決まるのは、実はすごくあとの部分です。なので、まずはそこがスタートでした。

子ども時代に選べなかった逃げ道

新條:小1ぐらいの記憶をずっと辿ってますけど、それは1回発信されるわけじゃないですか。

親御さんとかに「ここを変えたいんだけど」みたいな話をするわけじゃないですか。それを「がんばりなさいよ」「ここにい続けなさい」みたいなときは、どんな感想なんですか? 「しょうがないな」って思う感じなんですかね?

池原:当時は他に道は残されていなかったので、じゃあそこの中でどう適応するかっていうところを当時は必死に考えていました。

ただ、そこが大人になってふと気づくと癖になっていて、合わない仕事、合わないキャリア、合わないパートナー……。どう適応していくかは、日本人は特に得意ですよね。「相手に合わせて目立たないようにしよう」というのは美徳と言われ、癖になってしまう。

でも今は、大人になって自分の選択肢が自分で作れる、自分にパワーがあるっていう自信を持てると、ここが合わないんだったら次の道はなにかっていうのも探れるなと、今なら思います。当時は思えなかったですけど。

新條:さっきのお話じゃないですけど、比喩としておもしろいなと思ったのが、折られたやつらが発酵して、壁を作っていくみたいな話って、それから「私はこんなことしたいよ」っていうのを、とくに親御さんとかに当てに行く回数が少し減ったっていう感じなんですか?

池原:回数が減って、すごく1回の威力が高まった感じがします(笑)。

新條:なるほど。小出しにせずに。例えば今のって、承認されなかったというか、拒否されたのって、例えば別にいい悪いじゃなくて、親御さんとかじゃないですか。先生に本音を言うとかは、できるっちゃできるんですか? そこもセットになっちゃう感じなんですか?

池原:私の場合は大人が怖かったですね。「大人というものはこういうものだ」と。ラベリングでもあるかもしれないんですけど、大人には本音を言わない。

みなさんのなかにもたぶんいくつかの経験があって、「この人に言いにくい」というより、「こういう人に言いにくい」があると思うんです。「女性には本音を言いにくい」「上司には言いにくい」とか。たぶんそれも似たようなものなのかなという気がします。

「本音を言えない」のか、「本音に気付いていない」のか

新條:なるほど。それが仕事みたいな大きいカテゴリーに基づくものと、さっきみたいに上司みたいな、1人の部分もあるなぁと思うんですけど。

それって例えば、Aさんは言えなくてBさんには言えるのは、ラベリングの違いみたいな感じなんですかね? なんかここに近いですけど、なんでそうなるのかなぁみたいな。

池原:まず、本音が言えない状況でお話しすると、いくつかあると思ってます。1つは、自分の過去の経験からラベリングにつながっていって、「大人に言いにくい」「女性に言いにくい」っていう、特定の対象クラスタには本音は言いにくいということ。

あともう1つは、本音自体が自分でわかってないという場合です。状況適応型で生きてくると、自分の本音が見えなくなって、「その場の正解、みんなが求める答えってなんだっけ?」っていう答えを探す。

新條:そこのルールで私はどう振る舞えばいいのか、みたいな。

池原:だからそもそも本音が出せない。というか、ない。

余談ですが、話していて、自分がなぜか本音を出せないっていうことは、相手も本音を出してない可能性があるんですね。人って無意識に、相手が本音を言ってるいかどうかを0.1秒ぐらいで察知するんですよ。

新條:へぇ~!(笑)。

池原:もう無意識に。だから、相手が本音を言わないと「自分が言うとカウンターパンチを食らうんじゃないか」「この人、心を閉ざしてるんじゃないか」と感じて、本音を言わない。

整理すると本音を言えないという理由は、過去の体験から特定の対象には苦手意識があって本音は話しにくい・そもそも本音がない・本音を言いたくても相手が言わないので自分も言えない。この3つかなということになると思います。

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