「子どもたちはすでに全てを持っている」

小笠原舞氏(以下、小笠原):おはようございます。私は今、合同会社こどもみらい探求社の共同代表と、asobi基地という子育てコミュニティの代表をしています。

甲田さん(甲田恵子氏)と吉岡さん(吉岡マコ氏)は、お母さんでいらっしゃいますが、私はまだ結婚もしていないですし、子どももいません。ですが保育士としていろいろな活動をする中で「社会に声を上げることで役に立てることがあるんじゃないか?」と思い、いろんな活動をしています。

もしかしたら保育士の話なんて聞いたことのない人が多いのかなと思うのですが、皆さんの新しい気づきになればということで、子ども視点からお話をさせていただきたいなと思っています。

いきなりですが、問いをぶつけてみようかなと思います。質問を出すのでちょっと考えてみてください。

「子どもたちに学んでもらいたいと思うことは、どんなことですか?」

という問いです。本当は当てたいところですが、今日は時間があまりないので、頭に思い浮かべながら話を聞いてもらえたらなと思います。

私は、保育園の現場に入った時にいろいろなことを感じて、それが今やっている「子育てコミュニティ」や「起業」ということになりました。その感じたことの1つが、さっきの問いに対して、「そもそもそれって大人達はみんなができているのか?」ということでした。

現場に入った時に、「もっと子どもの教育はこうがいい」とかいろんな大人たちの話が聞こえてきて「え、大人たちはそもそもそれができてるかな?」という疑問が生まれました。そして、私が子どもたちを毎日見ていて感じたことは、これに尽きるなと思いました。

「子どもたちはすでに全てを持っている」ということでした。

子どもの力を大人が奪っている

「レッジョ・エミリア アプローチ」というイタリアの小さい町の中で始まった教育メソッドに出会い、その中にあった「100の言葉」というものがあるのですが、まさに私が思ったことが書かれていました。

今読みたいところですが、読むと時間がかかるので、「100の言葉」で調べると出てくるので、あとでゆっくりじっくり、見ていただきたいです。

お話しすると、大人たちがつくり出した社会とか概念によって、子どもたちがもともと持ってるものって奪われてるんじゃないかという文章です。

「子どもも1人の市民である」「子ども達にも人権があるよ」っていう考え方に私は出会って、「保育士ってなんて素晴らしい仕事だろう。」と思うと同時に、「子どもたちが自分で発信できないことを、近くにいる代弁者として社会に伝えていかなきゃいけないな」と思いました。

私はもともと福祉の学部で学んでいました。そのあとすぐに保育士をしたわけではなくて、1回社会人経験をして、オフィスの空間デザインの会社で営業をしました。

18歳からボランティアを始め、社会人になっても続けてく中で、思いの部分とビジネスの部分の中で、自分の中でどうやってバランスを取っていこうかな? というところで悩みました。でも「やっぱり子どもたちの現場にいきたい」という思いが強く、会社を辞めて保育士になることにしました。社会人から保育士になって、子どもたちの現場に入ってみて様々な出来事に出会いました。

5歳児からのショッキングな質問

私が1個目に行った保育園で、5歳児たちのクラスに入っていったとき、「先生、何階住んでるの?」「車、何に乗ってるの?」「どの塾が偉いと思う?」こんなことを突然聞かれて、私正直すごく驚きました。

家に帰って考えた時に、どこからこの質問が出てきたのだろう?と思った時に、社会の価値観が子どもたちにこんなにも反映しているのかと思いました。きっと親たちも悪気があるわけではもちろんないので、親を責めることはできないと思いました。

社会の価値基準がそのまま影響してしまっているので、私がいくら現場でいい保育を追求しても、この先この子たちは保育園にずっといるわけではない。「社会」っていうところを意識していかないといけないなと思い、園を出ることになる1つの出来事でした。

子育てコミュニティを作ったきっかけ

もうひとつの理由ですが、「保育士になったよ」といってSNSなどで友達に言ったときのこと。私は今31歳なので、子育てをしている友達がいっぱいいました。ご飯についてとか、どうやったら賢くなるか? とかそういったことを、結構聞かれるようになりました。

これって1人が思ってるってことは、多分何千人も思ってる人とか、思ってきた人がいるんじゃないかな、と思ったと同時に、そういった悩みを保育士に聞けないというお母さんもいたりして、そこに何かニーズがあるのかなと思いました。

あとは今でも相談が多いのですが、自分が子育てを完璧にできていないっていうことに対してすごく罪悪感を持っていたり、働きたいんだけど子育てとの両立が不安ですという相談も多いです。

そもそも人に完璧はないので、どっちも全部100パーセントっていうのはなかなか難しいと思いますし、みなさんそれぞれバランスがあるもので答えがないんですが、どうしても子育てのHow toがほしくなってしまうんだなと感じました。もちろん私は自分の子ではないからそう考えられるのもあると思います。

「保育士です」と言った瞬間に質問を受けたり、電車で座っていて赤ちゃんが泣いていたときも、私は赤ちゃんとか子どもがもちろん好きなので声を掛けると、「実はミルク飲まなくて……」みたいな育児相談が街中で始まるという経験が何度もありました。保育士仲間に聞いてみると、よくあるよと言うんです。

「あ、これ、もっともっと保育士としてできることが何かあるなあ」と思って、起業することや子育てコミュニティをつくるところに至りました。

今でもニュースで山のように報道される子どもや子育てを取り巻く社会の課題を見ていると、こんな中で子育てを楽しむにはどうしたらいいんだろうということを考えます。

全国60万人以上の就業しない潜在保育士

保育士になってみてわかったことですが、みんな「3年いたらいいほうだよ」と言うぐらい、どんどん入れ替わっていきます。体力勝負なのもありますし、出産するとなかなか両立が難しかったり、あとは自分には向いてないんじゃないか?ということまで。

子どもが好きなのはもちろんですが、保育士の仕事で大事なのって親御さんだったり同僚とのコミュニケーションだなと 。

コミュニケーションスキルが高くないとなかなか難しい仕事なんだなというのを感じました。

私は親御さんと話すのが大好きだったのですが、なかなかそういう保育士ばかりではない。保育士も個性があるので。

みなさんご存じかもしれませんが、潜在保育士は全国に今60万人以上いるといわれていますが、その人たちがなぜ戻ってこないのかっていうのをデータで見てみると、人間関係の問題だったり、賃金の問題が多くあがっています。

保育現場も一生懸命やっていますが、やはりここだけに頼る子育てのシステムにも限界もあると思ったので、もっと違うところで子育て支援をできないかという考えが、子育てコミュニティをつくる大きなきっかけになりました。