登壇者が質問に答えるセッション「キャリアの虎」がスタート

佐藤拓哉氏(以下、佐藤):じゃあ、次のテーマにいきたいと思います。かわいいですね、この虎。僕が選びました。

(会場笑)

佐藤:「キャリアの虎、実名アンケートの質問に答える」と題しまして、この後、3パターンの質問をご紹介します。今回会場にいらっしゃる方から、ちょっとした悩みとか質問をまとめておりまして、それについてみんなで話してもらうというコーナーです。

まずケース1です。フリーランスを検討されてる男性29歳独身というところで、ちょっと長いんですけど、僕のほうからどういう経歴でどういう悩みがあるのかっていうのを、口頭でご説明させていただきます。

この29歳の男性は、大学卒業後メガバンクに入社されまして、リテール営業に従事するも“コレジャナイ感”を感じ、1年足らずで転職をしてしまうと。

大学時代の友人が楽しそうな仕事をしてるっていうのもあって、テック系ベンチャーにジョインする。最初はセールスに従事してたんですけども、顧客のところでヒアリングしてるうちに、新サービスの着想を得て、入社半年足らずながら経営陣に直談判し、新規開発事業を立ち上げリーダーを務める。で……これ長いな、まあいいや。

(会場笑)

佐藤:プロジェクトのリード自体が初めてのため、開発側に流されつつ、日々議論、むしろケンカをしながら、なんとか新サービスのローンチにこぎつけたと。

サービスの責任者として、新規の営業とサービスのブラッシュアップに向けたヒアリングに奔走。複数回の追加機能リリースを重ねてサービスがだいぶ安定してきたとともに、新たなフィールドを求め人づてでスタートアップに転職し、また新規事業の開発および営業部門の統括を任される。

ちょっと長いんで割愛して(笑)、どうやら新規事業開発とプロジェクトマネジメントとかでできるフリーランスの需要が一定数ありそうなので、テック系のフリーランスであればなんとかやっていけそうな気はしてる人みたいです。

ここからがおもしろいですね。フリーランスになろうと思ってるのに、彼女が猛烈に反対してると。

(会場笑)

佐藤:あるあるかもしれないですね(笑)。

安定した職を手放すことへの、反対の嵐の乗り越え方

中野賀通氏(以下、中野):わかりますね。

佐藤:わかりますか。独立しようとしたらすごい反対されて、「大丈夫なの? 収入安定するの?」っていうところがあるんだと。「どうしたものかと親に相談したところ、宇宙人を観るような目で見られた」と。

(会場笑)

佐藤:白い目で見られるみたいな、「世の中そんなに甘くない」っていうね、反対意見はやっぱり多いと思うんですけども、そんな中でみなさん独立したりとかしてるんで、一度きりの人生なのでどうせだったらフリーランスに……この方はフリーランスになろうと思ってるんですけど、勇気がないのかもしれないです。

どうせだったらフリーランスとして、自分の実力を試してみるのもありかと考えてるんですけども、周りが反対しまくって困ってると。社会人になってから自身の生き方について、身近な方に反対されたりっていうのはみなさんありますか? で、あった場合、どういう反論したというか、説得してきたのかっていうところをちょっと聞きたいと。

中野:これ、すごいわかるんですよ。「教員辞める」って言った瞬間に、みんなにもう反対の嵐ですね。

佐藤:こんな安定した職を手放すのか。

中野:もう「バカでしょ」ってみんなに言われて。

佐藤:(笑)。

中野:飲み会で言っても「バカでしょ」だし、自分の両親に言っても「アホでしょ」って泣かれるしみたいな。

佐藤:そうですよね。……泣かれたんですか?

中野:泣かれましたよ。

久保裕丈氏(以下、久保):まあ、別にね、相談しなきゃいいんじゃないですかね。

中野:あ、それも、だから、1つの正解だと思います。

久保:もうなんも相談しないで、やっちゃったらいいんじゃないですか。1回目の起業の時、その後彼女にけっこうすぐ別れを告げられたんで、もしかするとそのせいなのかもしれないですけど。

佐藤:そのせいじゃないですかね(笑)。

久保:やりたいことだったら、相談する必要ないと思うんですけどね、別に。

中野:あと、自分の人生だから周りにとやかく言われて決断することじゃないですからね。

佐藤:みんなに賛成……応援してほしいんでしょうね。やっぱ不安だから。

まずは副業からスタートするという選択肢も

黒田悠介氏(以下、黒田):事後報告でいいと思いますけどね。

中野:それが正解かもしれないですね。

黒田:「フリーランスになったわ」でもいいし、あとはさっき言ってた兼業フリーランスみたいなことやってみて、やってみたら意外といけたよっていう証拠があれば、少しもしかしたら安心するのかもしれないですね。

佐藤:なるほど、なるほど。サラリーマンを経験しながら、副業とか横側でやりながら、「これ、いけるな」って見込みが立って独立するほうがいいと。

黒田:さっきの図にもあったスキルシェアリング系のサービスって、最近すごく増えてるんですよ。「ココナラ」とか「WoWme」とか。ああいうところでまずやってみて「500円儲かったよ」だけでも、まずはいいかなって気がします。

佐藤:なるほどなるほど。

小林伸行氏(以下、小林):その人の気持ちもよくわかる。僕もよく反対されるんで。

反対されるって、周りの友達だったりに心配されるってことなんですけど、考え方としては、「周りの人が反対するってことは、それってもしかしたら成功する」っていう考え方もひとつあると思うんですよね。だから、やってみられたらいいんじゃないのかなって私は思います。

久保:まあ、あと、……あ、(マイクが)入った!

(会場笑)

久保:もしかしたら周りの人がその人の資質とかを見て、「向いてないんじゃないのか」っていってるのかもしれないと。なんで反対してるのかっていうのが、「単にリスキーだからやめときな」って言ってるのか、もしくは「資質的にまだ不十分だったり不安なところがあるからやめときな」って言ってるのか。それ次第かなと思いますね。

(マイクが切れる)……あの、すぐマイク切れちゃうんです、すいません。

(会場笑)

佐藤:なるほどなあ。ちなみにフリーランス以外でもいいんですけども、この中でなにかやろうと思って反対された経験ある方。

(会場挙手)

佐藤:あ、けっこういらっしゃいますね。やっぱチャレンジするとね。

黒田:そうなんですよね。

佐藤:なるほど。じゃあ、結論としては、「そもそも相談すんな」っていうところか、「ちょっとずつ副業しながら」とか、そういうことで大丈夫ですか?

久保:あ、もうそのとおりです。

労働集約的なフリーランス業を続けていくことの不安

佐藤:ありがとうございます。じゃあ、次。ケース2のほういきますね。

次は専業のフリーランスさんで、33歳既婚で子供がいらっしゃると。ちょっとまた読み上げさせていただきます。

大学卒業後、外資系戦略コンサルティングファームに入社し、これも近いですね、29歳を機にフリーランスとして独立して現在に至ります。入社3年経ったあたりで、友人からスタートアップ企業に誘われたんですけども、当時はリスクテイクに及び腰、ちょっとビビっちゃったっていうのもあって、ジョインしなかった経験がある方ですと。誘われたけど断っちゃった人ですね。

自分自身でマネジメントする必要は大いにあるんですが、ワークスタイル自体はコンサルティングファーム時の激務とか、どうしても受け入れがたい理不尽な環境に追い込まれることはフリーランスになって無くなったと。また、当時に比べて収入も増えたため、現状には満足してるみたいですね。

ただし、フリーランス業というのは、少なくともこの人の場合は労働集約的……わかりますかね、時間を切り売りするみたいな感じですね。このまま続けていくか、将来どこかの時点で限界がこないかっていう不安だと。年齢的、体力的、あとITだったらスキルもどんどんついていけなくなったりするんで、そういうところに危機感と不安があると。

とくに最近は、受注するにもコンペティティブ……何ですかね? 「コンペティティブ」って。

久保:競合がいる。

佐藤:競合か、はい。……だと感じるケースもあり、今はこの若さがゆえになんとか食えていけてるのかと思ったりもしています。5歳になる娘もすくすく成長し、ライフステージが如実に変化している実感の中、将来の収支を考えるとリアルに寝付けない時もあると。自分も当時の友人のように起業できていればと思うんですが、これといった事業アイデアや資金があるわけではないと。

そこでパネラーの方々にお聞きしたい悩みです。今後もフリーランスをして続けていくべきか、それとも、それ、ちょっとあきらめて再就職すべきか。勤めの時はその時の人生が見えなかったためフリーランスになってみましたが、現在の立ち位置も将来像をイメージできてないっていうところが、正直なところです。

パネラーのみなさまが仮に私のような現状だと想像した時に、独断と偏見でかまわないので、ご自身であればどういうふうにやっていくか。フリーランスをどうにか不安な中続けていくか、再就職を検討すべきなのか。そういう経験については、みなさんはどうですか?

「自分はなにができるのか」を更新し続けること

小林:今、その人何歳でしたっけ? 三十いくつ?

佐藤:33ですね。

黒田:私と同い年ですか。33なんで。

久保:出身の業界も近いのであれですけど、何て言うのか。漠然とした不安がどこからきてるのかなと。これは想像なんですけども、自分の今持っている知識だったりとかスキルセットっていうのが、いずれ陳腐化するんじゃないのかなっていうところからくる不安なのかなって思うんですよね。

だから「コンペティティブだ」ってことも、たぶん自分と近しいことができる人が徐々に増えちゃっているとか。

佐藤:そうですね。競合が増えてるんでしょうね。

久保:ですよね。だから、自分よりも安い時間単価で受けられる人が増えてきちゃってるっていうことの表れかなと思っています。

フリーランスをやっているにせよ会社勤めにせよ、たぶんなにかしら自分のトラックレコードとかノウハウって、アップデートし続けないことには絶対置いてかれちゃうし、生き残れないものだと思うんですね。

別にこれは「フリーランスを続けるべきか? 会社に入るべきか?」っていう議論ではなくて、どっちかっていうと自分自身の仕事のうえでのトラックレコードを常にちゃんと更新し続ける、「私はこれをやっている人間です」っていうのをちゃんと更新し続けられるかっていうようなところと、そのために必要なインプットをどれだけ増やし続けられるかっていう感じじゃないのかなって思いました。

佐藤:なるほどですね。

佐藤:どうですか? 中野さん。

中野:まあ、でも本当にそのまま。っていうか、(久保さんが)「イケメンだな」と思って。

(会場笑)

黒田:イケメンですね。

中野:「イケメンやなあ」と思って。でも、本当におっしゃるとおりだと思いますね。だから、働き方というかね。未来に対しての考え方自体がブレてなかったら、別に大丈夫なんじゃないかなって。

佐藤:この中でお子さんいらっしゃる方、いらっしゃいます?

(中野氏&小林氏挙手)

佐藤:お子さんができて不安になることとかありますか? 起業も安定……さっき言ってたライブドアショックみたいなのとか、いろんな外的環境とかの影響によって、いろいろ振れるリスクがあると思いますけど、そういうところって心配されたりしますか?

中野:いやまあ、不安になりましたし、今の会社自体、僕は創業メンバーじゃなくて後追いなので。当時3〜4年前は13、4人ぐらいしかいなくて。上場会社のそれなりのポジションにいて、そっち移るって話の時はやっぱり「不安だよ」って周りには言われましたけど。

でも、子供から見て「なんかイキイキしてる父ちゃん」と「いつまでもくだ巻いてる父ちゃん」とどっちがいいかなって思いまして。もうそれぐらいの気持ちで決めてもいいんじゃないって思いましたけどね。

キャリアに正のフィードバックループを組み込む

佐藤:あー、なるほど。僕、夜眠れなくなったりとか今だによくあるんです。不安にけっこう押しつぶされそうで。どうですかね? そういう時ってありますかね?

小林:会社で働いてた時のほうがすごくありましたね。

佐藤:あ、そうなんですか?

小林:プレッシャーって、たぶん自分でつくるプレッシャーと、他の人からもらうプレッシャーっていうのがあると思うんですよ。後者って自分の決断でやってるわけじゃないから、それのせいで歯ぎしりして目が覚めたりとかはありましたね。

佐藤:今はないですか?

小林:はい。自分で楽しもうと思ってやってるので。

佐藤:なるほど、なるほど。どうですか? みなさん。

黒田:自分もフリーランスなりたての時は、なんのアイデアもなくフリーランスになったのですごい不安で、もちろん寝れない時もあって。寝付きが良くなってきたのは、労働集約じゃなくて、何て言うんですかね、知識集約型というか。時間が味方するタイプの事業を始めてからだとは思っていて。

佐藤:どういうことですか?

黒田:それこそ「FreelanceNow」っていうサービスをやってるんですけど、そこって最初フリーランス100人ぐらいで始めたところなんです。その100人に仕事を取ってきて、仕事をそこで回すってことをやってたんですけど、それをやってる内に「ここにいると仕事がくるらしい」ってフリーランスが集まりだしたんですね。

そうやってフリーランスが集まってくると、今度は「ここって仕事を依頼できるらしい」っていう企業があつまってきたりもする。そうすると今度はもっとフリーランスが集まってくるみたいな感じで、こういうループが回りだしたりすると、あとはもう勝手に雪だるまで転がっていく感じになるんですね。

そういう正のフィードバックループみたいなものが存在する仕組みを、自分のキャリアに組み込むのも1つの手だなと思ってやってたりしますね。

小林:それってすごいことだと思うんですよね。同感です。Konnetの「Project BASE」っていうエージェントサービスもうちの麹池自身のニーズから生まれていますし。自分のスキルを労働集約型的にやっていくと、体は1つなので限界はあるんです。けど、別にフリーランスだって自分でサービスつくっていいわけで。

佐藤:自分でサービスつくって。あー。

小林:そうですね。

黒田:そう。最近なんか、フリーランスとか1人のエンジニアがサービスつくって売却するみたいなこともあったりするんで。事業つくって、作品つくって売ればいいと思うんですよね。

佐藤:なるほど。

黒田:それは労働集約型じゃない。

佐藤:はい。そうですね。価値をつけて売っていく、っていうことですね。

黒田:そうそうそうそう。

フリーランスのお金事情

佐藤:なるほどなあ。もうちょっと時間があるんで、いろいろ話をしていきたいんですけど、僕が不安になるところで言うと、「眠れなくなる」っていうのはやっぱり資金的なものとか、何だろう、借入ができなくなるとかで。

フリーランスだと信用がなくなっちゃって借入とか家のローンが組めなくなっちゃうとかっていうのが、とくに日本ではあると思うんですけども。そこってどうですか? どうやって解決していくとかありますか?

中野:銀行とかは確かにちょっとあれかもしれないですけど、今はソーシャルレンディングとかあるので、そっちとかだと意外と貸してくれたりとかするんじゃないかな、って思いますけどね。

黒田:そうですね。

佐藤:それ、個人の方でも貸してくれるんですかね?

中野:ソーシャルレンディングで、例えば某社サービスとかだと、いろんな情報を入力していったり経歴とか入力していくと「あなたのスコアはいくつですよ」っていうのが出ますと。

佐藤:あ、個人の価値。

中野:はい、個人の価値としての算定。例えば、みずほ銀行と連携したりすると「預金残高いくらぐらいあるので、この人のスコアはいくつです」みたいな。そのスコアに合わせて限度額が決まる、っていうレンディングのスタイルがあるんですよ。

佐藤:なるほど。

黒田:これからそこに「自分はクラウドソーシングで何をやってきた」とか、いろんな経歴が乗っかってきたりする。だからフリーランスでも別に、そんな「お金借りにくいね」みたいなことは……。

佐藤:もうなくなってくると。

黒田:はい、たぶんこれからどんどん減っていくはずで、傾向としてはありますね。

中野:あとはクラウドファンディングとかもね。「サービスやります」とかの話だったら、ぜんぜんお金のことは問題にならない。

黒田:結婚式をクラウドファンディングで挙げた人もいますしね。

佐藤:いいですねぇ。

黒田:「浅草の花やしきを貸し切ってウェディングやるんで、お金出してくれたら出席できます」みたいなことをやってる人もいましたからね。

佐藤:確かに。僕も実は、クラウドファンディングで1個事業を立ち上げたことがあるんです。赤坂見附で「sanmi」というお店を出して。酸味がきいた食事を出すところなんですけど、Makuakeで飲食店部門で1位取りましたね。

中野:それはすごい。

佐藤:これはどういうやり方だったかっていうと、プロジェクトメンバーが10人ぐらいいて一気に仕掛けたっていう。プロジェクト型でやってみたのもあって、トータル4,000万近く集まってスタートができました。

中野:すごいですね!

家族経営で考えるフリーランスのワークスタイル

佐藤:そういった意味で言うと、確かにお金を生み出すっていうところは、昔よりやりやすくなってると思いますね。だからお金の不安についてはあんまり考えなくてもいいのかな。

中野:あとはランサーズとかクラウドワークスで、最近は中小とか個人事業主向けやってるフリーランス向けのクレジットカードサービスもあったりするし。

黒田:そういえば始めますね。そんなプロジェクトが動いてます。

佐藤:そういうのもあるんですか?

中野:そうですね。だから昔ほど「クレジットつくれないなあ」とかって言わなくなると思います。

黒田:あとはあれですね、妻に信用力がある人を娶る(笑)。

(会場笑)

佐藤:あーーー! すごく大事です。それは知恵ですね。

黒田:うちの妻が銀行員なんで、その信用力たるや、みたいな。

佐藤:なるほど。奥さんが家を買ってくれる。

黒田:あ、買ってくれましたね。

(会場笑)

佐藤:そうか! それはちょっと勉強になりました。

中野:クレジットカードも家族カードでね。

黒田:ね、ぜんぜんできますからね。

中野:(笑)。

黒田:だから、フリーランスは家族経営だと思えばいいかなと思っていて。家族単位でファイナンスするといいかなと思うんですよね。

佐藤:家族を味方にすると。それはおもしろいですね。じゃあ、奥さんにがんばってもらうということで。

中野:結論。

佐藤:まあ、結論ね。

黒田:そこじゃないです。そこじゃないですけど、まあね(笑)。

佐藤:あ、でも、これ1個だけ聞きたいのは、今はけっこうサービスつくれる人とか、ITエンジニアでスキルレベルが高くて価値が上がってきてる人とかって多いと思うんですけども、そうではなくて美容師さんとか、サービスっていっても職人型のフリーランスをやる人もたぶん参加されてると思うので、そういう人たちになってくるとどうなんですかね? けっこう悩んじゃいますかね。

黒田:いや、ぜんぜん……。

久保:そういう方たちは、自分で仕事をつくっていく人たちがやっぱり強いのかなと思うんですね。既存の、普通に美容院に来た人を切ってるとかじゃなくて、今フリーランスの美容師の人って、場所貸しで髪を切ってたりするじゃないですか。

佐藤:そうですね。

久保:でもそれだけだと難しくなったりするので、今は「読モ」って言わずに「インフルエンサー」って言うのかもしれないですけど、そういう人たちっていうのはどんどん自分で仕事をつくっていくとか、自分を売り込んでいったりしている。そんな人たちは強いですよね。

佐藤:なるほど。

黒田:そうですね。うまくやってる人は、LINE@でグループをつくりだして、「今日ここにいるから、空いてる人来なよ」って言うと即行予約が埋まる、みたいな美容師さんがいたりするんで。だから、大事なのは「今時のツールを使いこなす」とかなのかなって気もするんですよね。

注目すべきは「価値を売る仕事」

中野:そうですね。あと、さっき言ってたように「時間を切り売りする仕事」も当然あると思うんですよね。仕事って、僕、大別すると3つしかないと思うんですよ。

佐藤:はい。

中野:まず時間を売る仕事。これは普通ですよね。次がノウハウを売る仕事。

佐藤:あー、わかりやすいですね。

中野:そして価値を売る仕事。この3つしかないと思うんですよ。

佐藤:なるほど。

中野:僕はこの「価値を売る仕事」っていうところにけっこう注目をしていて。価値って、例えば物の価値もそうですけど、ソーシャルとかリアルっていうところで言うと、無機質なものよりリアルを求める傾向があったりとか。

佐藤:そうですね。

中野:価値の中にも「体験」というものがあったりとかするので。それこそ「こうやってオーダーしたらきれいに切ってくれますよ」とかもサロンでできるでしょうし、友達の家で「教室やります」とソーシャルで人を集めてやってもいいし、メイクの勉強だっていいし。だから、いろんなことができると思うんですよね。

佐藤:なるほど。そういうのが増えてきてますからね。

中野:はい。発想の転換をすると意外とお金になるというか、継続したビジネスになるんじゃないかって。

黒田:例えばですけども、おじいちゃん・おばあちゃん向けの美容師みたいになって、いろんな介護施設とかを回っていくだけでも新しい市場をつくれそうですね。

中野:いいですね。

黒田:相手を変えるだけで、ちょっと変わったりしますからね。

中野:切り口変えるだけで、ぜんぜん違うビジネスとか市場がつくれるんで。あ、なんか僕、会社起こしたくなりましたね。

久保:ですよね(笑)。

(会場笑)

久保:社長向けの、「イメージコンサル」って言っちゃうとなんかあれですけど、そういうのもありますし。きれいにしてあげるとかも価値ですよね。

黒田:そうですね。「『バチェラー』に出よう」みたいな感じで。

中野:『バチェラー』対象(笑)。

黒田:『バチェラー』対象者みたいな。

久保:コーポレートサイトとかの写真とかも、案外みんなあんまり考えてないなって思うんですよ。ちゃんとヘアメイクさんとかカメラマンさんを入れて、とかだったらいいのになって。例えばそういうところ専門のチームを組んで、カメラマンさん、ヘアメイクをやってあげるとか。

中野:そうですよね。

黒田:チームを組んだほうがいいですね、確かに。チームだとできる幅がぜんぜん増えるんで。

久保:ですね。

小林:実際、フリーランスの人も多くないですか?

黒田:あ、写真とかですか?

小林:もちろん全員じゃないんですけど、フリーランスの方にお会いしてて、「この人もうちょっと服装を変えたらいいのに」とか思ったりしません?

佐藤:あーー、はいはいはい。

中野:なるほど。起業家だけじゃないと。

小林:結局、書類を通った後はそこで決まるんで。けっこう惜しい人も多いんですよね。うちではそういうところもコンサルできるように、ちゃんとしてあげたいなと。

佐藤:ちょっと見た目を整えるとか。

小林:見た目のレベルだけじゃなくて、しゃべり方とかも。いろいろありますよね。

黒田:なるほど。

中野:スーツとかのレンタルサービスとかもそうですよね。それこそ面接向けのレンタルサービスとかコーディネートサービスなんてものもあるかもしれないですね。

黒田:そういうのをつくっちゃえばいいですよね、すごくライトに。

メンバーが離れていく不安と、この先のキャリア

佐藤:結局サービスなんて、チーム組めばなんでもつくれるっていうところがあるっていうことですね。なるほど、なるほど、わかりました。

じゃあ、ちょっと最後のケースになるんですけども。はい。ケース3、ベンチャー経営者の方ですね。男性25歳、若いですね、独身の方です。

大学院生時代、仲間と立ち上げたWebサービスがバズり法人化。自分は開発全般を請け負っていたため、大学院卒業と同時にCTOに就任しフルコミットしてます。サービスはしばらく人気を維持してたんですが、最近伸びが止まって、収益は多少出ているけど全員が食べられるほどサービスがうまくいってないと。

エンジニア3名雇っているんですが、そのうちの1名が最近フリーランスとして独立し、自分より高いフィーを複数の会社と契約してるのを目にしてしまったと。きっつい、これ。

(会場笑)

佐藤:その人は自分より、技術力は明らかに劣っていたがコミュニケーション能力が高く、たまにおもしろいアイデアを出すので経営陣からもウケはいい奴だったと。また別の、その3名のうちの1名も、副業で別のWebサービスの開発をチームを組んでやってるのを知ってます。

自分は責任ある立場として会社にしがみついてるものの、ビジネス的なことは社長と副社長、自分でやってきた。人材がどんどん離れていったり流動することに対して、すごい不安を抱えてるっていうことですね。

パネラーの方々にお聞きしたい悩みというのが、いわゆる学生起業で就職経験がないこと。最近増えてるかもしれないですね。CTOという肩書はあるんですけども、フルスタックエンジニアの、なんでもできるエンジニアとして1つのWebサービスを軌道に乗せるまでやってきたっていう自負はあります。

ただ、ビジネスサイドはちょっと自信がない。エンジニア気質の方なのかもしれないですね。このまま会社がうまくいかなくなった時、辞めていった方のようにフリーランスとしてやっていこうかというのも考えています。自分は時間の切り売りのエンジニアとしては食っていけるが、彼のようなコミュ力は正直ないので、フリーランスとしてうまくやっていくイメージはない。

「それなら、別のスタートアップに転職しちゃったほうがいいのかな? CTOとして入っちゃったほうがいいのかな?」などと、次のキャリアのことをよく考えてしまう。こんなことは経営陣とか、取締役をやってる人に相談はなかなかできない。責任ある立場なんですね。

フリーランスや転職市場において、エンジニアが技術力以外に身につけるものっていうのがあれば教えてください。他にもこういう不安を持っている人がいらっしゃるかもしれないんで、こういうスタッフが離れていく不安とか、「誰でも副業できる」って我々も今言ったぐらいなので、責任ある立場になった人はそういう不安を抱えてしまうんですけども。どうしたらいいですかね? これは。受け入れるしかないのか。

役員だって副業する時代

黒田:売っちゃったらいいんじゃないかな、って思う。

(会場笑)

黒田:Twitterとかで、「こういうサービスやってるけど売ります」って言ったら、たぶん何社か手が上がるんじゃないですか。

佐藤:1つ、売るっていう選択肢ですね。サービスの事業をやれてるのであれば。

小林:こういう人こそうちの「Stage UP」サービスに登録してもらいたいですね。

中野:これ、立場ある人が副業しちゃいけないとか、ないですよね?

佐藤:まあ、個人はそうですね。

中野:うちは上場してる会社ですけど、執行役員が普通に自分でECの事業やってますからね。

佐藤:あ、別の会社のですか?

中野:個人事業主というか家族で経営みたいな感じですね。

黒田:いいですね。

中野:そういうところも含めて、なにか固定概念を1回壊してみればいいんじゃですか、って思いますけどね。

佐藤:なるほど。じゃあ、代表だけども自分でまた別の副業やってみたりとか。

中野:けっこういますよね? 代表やりながら他の会社の顧問やるとかね。技術アドバイザーやるとかそういうのって、もう今の時代は普通なんで。そこをいちいち気にして、後ろめたいみたいな気持ち持つのはもったいないというか。

だって、会社を継続させることが企業活動で、それをやるために自分の給料を下げるのも決断だし、その減らした給料分の食い扶持を他でつくるっていうのも仕事だと思いますよ。

佐藤:なるほど。

中野:そこに経済合理性が働くんだったら、気にすることないんじゃないかなって思います。

佐藤:まだ若いですしね、25歳で。僕も実は起業したのが24歳で。最初はぜんぜんうまくいかなくて、夜中は警備のバイトしてましたね。

黒田:おー。

佐藤:カッコ良く「起業した」って言った手前、みんなには言えなかったですけど(笑)。そういう時期とかも経験すると、こうやってみんなにしゃべれるようなこともあったりするんで、バイトするのもいいんじゃないかと思う。スターバックスでバイトとかね、いろいろ出会いもありそうだし(笑)。

(会場笑)

佐藤:土日バイトするとか。バイトしながらとかもできるかもしれないなと思うんですけど。

中野:うちの代表なんか、3回起業して失敗して、今4回目とかですよ。

佐藤:あ、そうなんですか?

中野:不屈の精神が大事っていう。

佐藤:大事ですねー。あきらめないですよね、結果出し続けるまで。

正しいピボットのためにどこまでトライできるか

久保:ちょっとだけ別の角度から言うとすると、たぶん今CTOをやられていて、取締役はその方を含めて3人なのかな。たぶん、正しいピボットをしないと、もう死に体になっているっていうことだと思うんですけど。

例えば、その方自身のキャリアのためとか成長のためっていうのであるならば、ちゃんと取締役の一員として、その会社のピボットをきちんとしたほうがいいと。まあ、ビジネスサイドがけっこう苦手っていう悩みはあるかもしれないんですけども、やっぱり取締役である以上は、そこからは決して逃げてはいけない立場でもあるので。会社の経営というか、死んでいく会社を守る立場ではあるので、ちゃんとピボットさせられるかは大事ですよね。

社長や副社長だけでどうにもならないんであれば、3人目の取締役としてどこまでピボットすることにコミットできるかっていうのは、トライしてみてもいいのかなと。そうなれば、自分自身のスキルの補完にもなると思いますし。

どうしてもそこには口を出させないっていうことであれば、非常に難しいのであれば、もう副業するっていうのもありですね。取締役って別に従業員ではないので、ある程度本当は自由に動いていいはずなんですよね。副業することがむしろ会社の利益になるってこともあるので、ノウハウの面、それは資金的な面とかでもあるので、すごく柔軟に考えていいのかなって思います。

佐藤:なるほど。ありがとうございます。

中野:あと、コミュニケーション能力が低くても、最近はチャットとかで技術顧問も普通にできるんで。会場にいらっしゃる誰なのかわからないですけど、そういう需要もありますよってお伝えしたいですね。

佐藤:コミュニケーション能力なくても、Slackとか。

中野:エンジニアはフェイス・トゥ・フェイスが苦手でも、チャット上では毒舌言う奴がいっぱいいますからね(笑)。

(会場笑)

中野:いますよね?(笑)。

久保:いますね(笑)。

中野:なんかめちゃくちゃ、「すげえ滑舌よくタイピングするな、こいつ」みたいな(笑)。

久保:超おしゃべり(笑)。

中野:もうおしゃべりな奴、いっぱいいますよね(笑)

佐藤:(笑)。最後に「身につけといたほうがいいスキルっていうのはありますか?」っていうのもあったんですけども。エンジニアとしての技術力以外に、身につけておくべきスキル。

黒田:売却経験ですよね。

(会場笑)

佐藤:すごいな。

黒田:とかとか。スキルに限らないかなと思いますんで、今の状況でどういう経験ができるかを深掘ったらいろんなことができそうな気がしますね。

佐藤:なるほど。

中野:ITの世界は流れが早いので、「IT × ○○」を考えられないと、エンジニアとしてもぜんぜん通用しないんで。

佐藤:そうですね。

中野:それは例えばマーケティングとかなのかもしれないし、特定の不動産の知識なのかもしれない。ちっちゃい業界知識でも「ここは俺の得意な部分」っていうのをつくったほうがいいと思いますね。

佐藤:なるほど。身につけておくってことですね。堀江貴文さんの『多動力』っていう本を僕も読ませてもらいましたけども、あれも1つのものにとらわれずに、いろんなスキルをまたいでいくというか、業界をまたいでいこうぜって話だったと思うんで。そういうことはすごく必要ってことですね。

リソースマネジメントとその決断

佐藤:じゃあ、ちょっとお時間になりましたんで、ここで1回ディスカッションの時間は終えたいんですけども、最後に1人だけ質問したい方はいますか?

(会場挙手)

佐藤:早いなあ! こういうとこよ、こういうとこ。じゃあお願いします。

(会場笑)

質問者:はい、私は今大学3年生で、今日は友人に「久保さんに会いに行こう」って言われて来ました。

久保:(笑)。

(会場笑)

中野:すごいなあ(笑)。

質問者:3つぐらい聞きたいんですけど、いいですか?

佐藤:あ……1個にしよう。

質問者:はい。ケース3つ目の話なんですけれども、自分の本業をやりながらいろんなことをやってもいいと。『多動力』っていう話も出ましたけども、リソースってだいたい限られてるじゃないですか。時間にしても能力にしても限られてて。

私自身も大学生をやりながらスタートアップのITベンチャー2社でインターンさせていただきまして、リソース限られてるなってすごい最近思ってて。例えばそのIT企業2社ともにすごい熱中して没頭した結果、学校の成績が追いつかなくて、奨学金がちょっとヤバいみたいな、そんな感じなんですけれども。

取るべきアクションとかって限られてくると思うんですけれども、それを1個1個検証するのか。例えば「これはちょっと」って思ったら次にいくって1個1個検証していくのか、それとも、取るべきアクションを考えたうえでアクションしていって、それから決めるのか。

もし後者だとしたら、取るべきアクションの基準ってどういうものなのか。お聞きしたいと思います。

佐藤:ありがとうございます。リソースマネジメントと、それに対する決断はどうされてますか、ってことなのかな。

5年後のことを考える意味はあるのか?

久保:そうでしょうね。「どう優先順位をつけてけばいいの?」みたいな。自分の今やってることの中で大事なことが何なのか、ってことからシンプルに考えたらと思うんですけども。もうちょっと先、今だと5年先のことを考えるのって、僕はあんまり意味のあることじゃないと思ってて。

佐藤:あ、それ、とても共感します。

久保:うん、正直そう思うので。2年でいいと思うんですよ。3年先でもわかんないから。2年先のことを考えた時に、何が自分にとっておいしいのか。考えるとしたら僕はこの2軸ですね。今現在大事にしなきゃいけないことと、2年先を考えた時に大事にしなきゃいけないことは何か。そこから考えたらどうかなと思います。

例えば2年先を考えた時に、学校をある程度優先するっていうのが大事なのであれば、どっちかのスタートアップのインターンを「ごめんなさい」するっていうのもそうだし。

「もう別に今更学校出てようがなんだろうがどうでもいいや」ってなるんなら、いったん休学するなりなんなりして、インターンシップにフルコミットするとか。そこできちんとしたトラックレコードをつくって、起業だったり、その先のキャリアにつなげるみたいな。今と2年後っていう、そのぐらいシンプルな軸で思ってますけどね。

佐藤:なるほど。ありがとうございます。みなさん、どうですか?

黒田:今みたいなAを取るかBを取るか、そういった話も私はすごく重要だと思っていて。そのトレードオフがある時に、私がもう1つ考えたいなと思うのは、A or BじゃなくてA and Bを取れるなら、そっちを検討したいなと思っていて。その場合どうすればいいのかを考えると、例えば3つぐらいプロジェクトがあったとして、それに1日8時間使うともう寝れないじゃないですか。

なんだけど、Aプロジェクトでやったことが、実はBプロジェクトにちょっと影響していて、Bプロジェクトでやったことが実は学業にも影響していて、学業でやったことがAプロジェクトに実は還元されるみたいな。そういうシステム図みたいなものが頭の中で描けるんだったら、それはやったほうがいいと思いますね。

佐藤:全部取っちゃう、みたいな。

黒田:そうそうそう。私がやってるコミュニティがいくつかあるんですけど、それは全部関連し合っていて。こっちで会った人がこっちに入るとか、こっちで会った人が今度は顧客を紹介してくれるとか。顧客が今度こっちに入るとかってなったりするので、そういうシステム図を頭の中で育てていくみたいな考え方も、一応ありかなという気がしますね。

なんで、トレードオフにするか、A or Bにするか。まあ、A and Bみたいなのを狙うなら、たぶんシステマティックに連携させるのがいいかなと思いますね。

佐藤:なるほど。ありがとうございます。

中野:思い出したんですけど、僕、2足の草鞋履いてたんですよ。教員やりながら夜大学行ってたんです。

佐藤:あ、ご自身で。

中野:それで、僕は大学を辞めました。その理由は、時間をかける価値がなかったから。

リソースの価値って、20代はマジで高いと思うんですよ。30代・40代の人と並べた時に、「唯一無二平等なものが時間だ」って言ったりすると思うんですけど、「ウソだ」っていつも言ってるんですよ。時間の濃縮度が違うし、失敗しても許される時間はやっぱり20代しかなかなか難しいところがあるんで。時間という価値は平等じゃないと僕は思ってます。

なので、その時できる失敗とか、将来につながるシーズとか、そのことを選択の優先順位としてつけるのが僕はいいと思います。

佐藤:わかりました、ありがとうございます。じゃあ、最後に小林さん。

小林:みんなレベル高いな、って思ったんですけど。

佐藤:高いですね(笑)。

小林:いろんな考え方があっていいと思うし、今おっしゃったような、「そういうものさしがほしい」っていうようなご質問だったので。

僕自身がそういう局面でどうするかというと、いろいろ考えても正直しょうがないんで。何が本当に自分がしたいことなのかって、センスというかひらめきだったりって、いろいろ悩んだ結果降りてくるものだと思っているで、そこに賭けてみるっていうのも、今の年齢を考えたらありなのかなっていうふうに思いますね。

佐藤:ありがとうございます。じゃあ、時間になりましたので、ここでパネルディスカッションを終えたいと思います。みなさん、お疲れさまでした。ありがとうございました。