2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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業界業務の経験豊富な「その道のプロ」に、1時間からピンポイントに相談できる日本最大級のスポットコンサル「ビザスク」。そのビザスク主催のセミナーに、『AIが答えを出せない 問いの設定力』の著者で、グロービス経営大学院 教員の鳥潟幸志氏が登壇。「問いの設定力」と「決める力」の能力開発や、自社の提供価値を理解することの重要性などが語られました。
鳥潟幸志氏(以下、鳥潟):育成の話に戻ります。
育成は単独で決められるものではなく、多面的な視点が必要で、みなさんもご存じのようにHRM(ヒューマンリソースマネジメント)という人事戦略の一部です。採用、評価、報酬、育成がしっかりとアラインしているか、さらには上位の経営戦略に基づいているかを確認しなければなりません。
AIをどう社員に教えるかという話も、そもそもAIを使った経営戦略や事業戦略がなければ、育成プランには落とし込めないですよね。育成をしても、評価や報酬に反映されないと、誰も勉強しようとは思いませんし、結果も出てきません。さらに、(スライド下部の)活動はバリューチェーンのことですが、AI戦略がバリューチェーンにどのように影響を与えるのかも考える必要があります。
このように全体像が見えてくると、「こういう育成をすべきだよね」となるかもしれませんし、逆に「まだ育成する段階ではないかもしれない」と判断するのが正しい場合もあります。なぜなら、戦略が決まっていない段階で育成しても、効果がありませんよね。こうした視点が多面的なアプローチの1つであり、全体の位置づけやつながりを踏まえて意思決定する必要があります。
特に全体像やつながりを意識した問いのコントロールや意思決定が必要ですが、これが難しいところです。いきなり「やりましょう」と言っても、すぐに実行するのは簡単ではありません。特に、経験のない領域では、未知の分野に問いを立てて意思決定するのは非常に難しいです。
私自身、前職で経営していた時、営業やマーケティングに関する問いや意思決定はスムーズにできたのですが、組織開発や財務といった分野では、問いを立てること自体が難しく、決断もできず、そこでミスをしてしまうことが多々ありました。
鳥潟:これをどうするかが次のポイントになります。具体的な難所をどう乗り越えるのかについてご説明します。まず、「問いの設定力」と「決める力」の能力開発について。結論から申し上げると、「問いの設定力」の能力開発には2つの方法が必要だと考えます。
1つ目は、このフレームワークをしっかりと取得することです。
問いを設定する際の思考の枠組み、フレームワークを知っているかどうかで、適切な問いを立てられるかどうかが大きく変わります。逆に言えば、フレームワークを知っていれば、問いの設定はうまくいくということです。ですので、まずはフレームワークを取得しましょう。
次に、実践です。自分で問いを設定し、思考し、実践するという経験を積むことが不可欠です。日常の経験や、失敗・成功体験を通じて、問いを教訓化することが問いの設定力を向上させます。
この話を聞いている方の中には、コンサルタント出身の方もいらっしゃるかもしれませんが、戦略コンサルタントが1年目に徹底的に取り組むのは、まさにこれです。問いを設定する能力を養うためのトレーニングが行われます。
問題解決のプロセスを適切に進めるには、まず正しい問いを設定することが不可欠です。先ほどのWhat・Where・Why・Howの問いも、すべて問題解決における問いです。「問題はどこにあるのか?」「何が問題なのか?」「どう解決するのか?」と、すべてが問いで構成されています。
この順番を誤ると、解決策が間違った方向に進んでしまいますが、このフレームワークをしっかり頭に叩き込むことで、より良い問いを出せるようになります。リーダーとして事業全体や広範な組織を捉える際、このフレームワークをしっかりとインプットすることは非常に効果的だと感じます。
鳥潟:せっかくなので、このフレームワークを学ぶ利点について少し触れたいと思います。私が担当している「GLOBIS学び放題」に良い動画があるので、その中から2〜3分のクイックな動画をみなさんに紹介したいと思います。
【「GLOBIS学び放題」の動画再生】
ナレーター:例えば、みなさんも日頃目にすることが多いペットボトル飲料。この商品があなたの元に届くまでにどれだけの人が関わっているか想像してみてください。
商品を企画する人がいて、作るために原材料を仕入れる人、生産を管理する人、パッケージをデザインする人、広告を考える人、販売店に商品を営業する人、商品を売る人。たくさんの人が携わって初めてあなたの元に届きます。そう、多くの人の連携によって実現しているのです。
でも、ビジネスにおける連携はとても難しいのが現実。例えば、部門間で意見が合わない、自分の意見を周囲が理解してくれない、課題意識がバラバラ、そもそも事業の戦略を理解していないなど、みなさんの周りでも起きていたりしませんか。
もしうまく連携ができたら、もっと多くの価値を生み出せるかもしれないのに、こんな状況はなんだか残念ですよね。では、どうしたらもっとうまくいくのでしょうか。
ここで大切なのが、あなた自身の仕事だけでなく、会社や経営といったあなたとビジネスを取り巻く全体像を知ることなんです。
ここでちょっと質問です。あなたは、自分が携わるビジネスの提供価値を理解していますか? 同じ会社で働く他の人も同じように認識してるでしょうか。そして、その価値を提供する顧客とはいったいどんな人でしょうか。その人たちは、どんな生活スタイルで、どんな行動をする人でしょうか。
いかがですか。ぱっと頭に浮かびましたか。それとも少し難しかったですか。でも、顧客をみんなが理解し、顧客が求める価値を提供できたら、きっと売上は上がりそうですね。
ナレーター:でも、ちょっと待ってください。人気もあって売れていたのに、気づいたら倒産していた。お客さんもたくさん来ていたのに閉店してしまった。そんな話を聞いたことありませんか。なぜでしょう?
それは、いくら売上が上がっても適切な収益性が確保できていなければ、ビジネスは継続できないからです。
では、収益性が確保できたとしても、競合が現れたらどうなるでしょうか。似たような商品を安く売る会社が出てきたら? 似たようなお店が近くにできたら?
これらも、事業における経済性をあらかじめ理解していれば、競合が入りにくい状況を自ら築くことができます。競合にも負けず、順調に事業が拡大したら、もっとヒト・モノ・カネといったリソースが必要になりますよね。
それらをどのように調達しますか? 調達に成功したら、どのように分配しますか。
日々変化するビジネス環境の中でその戦略を練るのが経営者あるいは経営層です。経営層の仕事なら自分は関係ないって思いましたか? 経営層が判断に必要な情報を上げていくのは、そこで働く人たちです。まさにそこで働く一人ひとりが経営に携わっているのです。
いかがでしょうか。経営戦略は経営層だけのものではないことがご理解いただけたのではないでしょうか。
また、経営戦略を策定する上では、その企業は何のために存在するのか。目指すところは何かといった経営理念がとても重要になります。さらに、あなた自身にとって、その仕事は何なのか。企業の理念に共鳴するものがあるか。あなた自身が自分の志を理解していることも、日々働く上でとても大事なことではないでしょうか。
最後に、ビジネスを前に進める上でとっても大切なスキルがあります。さあ、何でしょう?
それは、論理思考力です。論理思考力とは、さまざまなビジネスナレッジがアプリだとするならば、OSのようなもの。アプリはOSがないと動きませんよね。
同じように、自分の考えを組み立て、周囲に伝える力がなければ、どんなにヒト・モノ・カネの知識を身につけても、ビジネスはよりよく動かせません。ビジネスはもちろんのこと、物事を進める上で必須のスキルです。
いかがですか。ビジネスを学ぶイメージが少し湧きましたか。「うわぁ、たくさんやらなきゃいけない。難しそう」。そう思った人もいるのではないでしょうか。安心してください。「GLOBIS学び放題」は……。
【再生終了】
鳥潟:この後は、「GLOBIS学び放題」の説明なので、ここまでご紹介しました。フレームワークを学ぶ意味やその利点について、少しご理解いただけたのではないかと思います。
「決める力」についても、同じようなかたちだと考えています。
まずは、(スライドの)左側にあるようにビジネスや経営の全体像を見るレンズを取得することが大切です。これがあれば、多面的な視点をしっかりと担保できます。さらに、意思決定の総量を増やすことも重要です。経験を積むことで、決断力が強化されます。
もう少し深掘りすると、多面的な視点というのはビジネスの全体像を理解することに関わってきます。先ほどの動画でも触れましたが、(スライドは)私自身が経営をしていて難しいと感じた部分を整理した図になります。
問いを立てる時や決断を下す時に、見えていない領域には問いを立てられず、決められない、という問題が背景にあるのです。
そして、決断の総量を増やすためには、いくつか方法があります。参考までに書きましたが、私がよく行うのは、上位役職者の判断を追体験するという方法です。
自分よりも役職が上の方が意思決定を行う際に、その決定をただ聞くだけではなく、「自分だったらどう意思決定するかな?」と考えることが大切です。これにより、疑似的に意思決定のプロセスを経験し、答え合わせができるわけです。
グロービスでも毎年、代表の堀が新年の方針を発表しますが、私が入社した時の最初の上司はおもしろいことをしてくれました。方針が出る前に「堀がどんな方針を出すか予想しよう」という議論をチームで行ったんです。それによって、グロービスの現状や課題について話し合い、「これが方針になるんじゃないか?」と予想するんです。
その後、実際に方針が発表されると、「ああ、ぜんぜん違った。でもこの視点ならこうなるよね」と納得することができました。こうした追体験を繰り返すことで、決める力が自然と上がっていくんです。また、当たり前のことですが、決断後の結果を振り返ることも非常に重要です。
鳥潟:さらに、決める機会を増やすために意図的にスタンスを取り、意思決定に参加するということも大切です。これを図で表現していますが、私はこれを非常に重視しています。
意思決定のパターンについて、書籍の中では「実況中継型」「決めうち型」「主張・根拠のセット型」として紹介しています。
「主張・根拠のセット型」は理想的でわかりやすいですね。主張がAで、それを支える根拠がB・C・Dとしっかり整っている意見です。これはまさに理想のかたちです。
一方、左端の「実況中継型」は、事象を並べてはいるけれど、自分の意見を述べていないパターンです。「決めうち型」は、「自分はこう思います!」と主張して、根拠があまり明確でない状態ですね。「ん?それ本当にそうなの?」と思わせるようなケースです。
理想はもちろん「主張・根拠のセット型」ですが、なかなかそういかない場合もあります。その時、どのタイプで発言するかが重要です。
私は「決めうち型」で発言するほうが成長スピードが上がると信じていて、実際そうだと思います。理由は、自分の意見を明確に表明することにはリスクも伴い怖いものですが、そのことで必ず「なんでそう思うの?」という問いが返ってきます。それに答える過程で、自分の考えがどんどんアップデートされていきます。
一方、「実況中継型」は、状況を整理して説明するだけで、「で、あなたの意見は?」という問いが出てこないこともあります。こういうパターンでは、意見がまったく表明されないまま終わってしまうことがあります。
実況中継型に慣れてしまうと問題になるのが、AIでもできるという点です。情報をAIに入力すれば、きれいに整理してくれるので、今後は実況中継のような単なる整理役はいらなくなってくるということです。
ですので、意思決定の能力を高めたいのであれば、小さな場面で勇気を振り絞って、自分の意見をパンと表明し、その結果を突っ込まれることが大切です。悔しい思いや恥ずかしい思いを繰り返すことで、能力開発のスピードがどんどん上がっていきます。
これは参考までですが、ケーススタディなどで他者の判断を追体験することも、非常に有効です。グロービスでもリーダー教育の一環として、さまざまなケーススタディを通じて、優れたリーダーがどのような意思決定をして、どのような結果を生んだのかを学ぶプログラムがあります。
こうしたケースを通じて、自分がまだ経験していない領域での判断を追体験し、フレームワークを駆使する訓練を行うことは、能力開発に非常に有効だと思います。
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