2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
提供:株式会社ベルシステム24
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川崎佑治氏(以下、川崎):みなさんお集まりいただき、ありがとうございます。(本日のテーマは)「AIのゴミ屋敷脱出大作戦」。「AIのゴミ屋敷ってなんだ?」というところも含めて、お届けできればと思っております。
ベルシステム24は、イノベーションとコミュニケーションで社会の豊かさを支えると掲げる、こんな企業でございます。取引先約1,300社に、どういったサービスをご提供しているかを詳しく申し上げますと、事務、営業、窓口、コンタクトセンターから始まった会社です。
(今では)マーケティング、クリエイティブ、経理、事務、人事、情報システムなどということで、従業員4万人が、デジタルと人とを織り交ぜて、みなさまを強力にバックアップさせていただいております。
伊藤忠商事の「デジタル群戦略」の中の1社と考えていただければと思いますし、株主として他にはTOPPANがございます。現場を知っているからこそ任せられるっていいね、という会社です。
私はデジタル&クリエイティブ局局長の川崎と申しまして、さまざまなデジタル系の(イベントに)登壇などをさせていただいています。そんな私が、日本では有数の、この分野はこの方にぜひお聞きしたいという方のお一人。
それが今回ゲストでお越しいただいている、リバネス社の取締役CIOの吉田丈治さんです。また、ITの専門の企業である株式会社リバネスナレッジの代表取締役社長でもあります。
2019年のセールスフォース社の年次の世界イベント「Dreamforce」で、日本人として初めて基調講演を務められた方です。まさにデジタルやデータ、あるいはAIに関してのエキスパート中のエキスパート。
2024年のセールスフォース・ジャパン主催の「SFUG CUP 2024(セールスフォース・ユーザグループ・カップ:Salesforce製品を導入している企業による年1回の活用事例のプレゼンコンテスト)」でも、準優勝を果たしています。今日はなんと、この準優勝の時のネタを詳しくおうかがいしたいと思います。
川崎:さっそくですが、丈治さん、よろしくお願いいたします。本日はありがとうございます。
吉田丈治氏(以下、吉田):ありがとうございます。よろしくお願いします。
川崎:準優勝おめでとうございます。
吉田:ありがとうございます。ついうっかり。
川崎:もう常連すぎて、こういうのは取れないんじゃないかと思ってたんですけど、取れるものなんですね。
吉田:そうですね。「まさか出るのか」と言われましたけれども、せっかくテーマが「生成AI」ということもあったので。
川崎:新しいテーマということですよね。今日のタイトルは「AIのゴミ屋敷脱出大作戦」なんですけれども、どうやらAIの利用をしていくにあたって、「AIのゴミ屋敷」という状態がちらほら見えてきた感じなんでしょうか。
吉田:そうですね。この1年ぐらい、生成AIというキーワードが当たり前に聞かれるようになってきました。それを使って事業インパクトを出したいなと思った時に、やっぱり各企業・組織が持っている情報を参照して、生成AIががんばって情報を読んでアウトプットを返すわけですけれども。
「その中の情報って、本当にそれでいいのか?」というところがだんだんわかるようになってきたのが今の段階です。昨今はよく、その次に行くためにどうすればいいのかということを考えております。
川崎:生成AIのフルパワーを出そうと思った時に、企業が持っている情報が今どういう状態なのか。この「入力」がとっても大切になりそうだということですね。
吉田:まさにそのとおりだと思っていますね。
川崎:さっそくSFUGにご登壇いただいた時の資料を基にお話をいただきながら、質問もちょくちょく挟んでいこうかなと思っております。
吉田:「Garbage in, Garbage outにならない為に」と題したプレゼンテーションなんですけれども、生成AI時代を見据えた変革の話をしております。中身をかいつまんでお話ししながら、川崎さんと一緒に「一体どうなの?」とディスカッションしつつ、進行できればと思っております。
川崎:丈治さん、「Garbage in, Garbage out」というのは、もう慣用句化しちゃってる言葉ですよね。
吉田:そうですね。この後のスライドにまさに集約されている言葉なんですけれども。AIを使うタイミングで表に出てきたキーワードになっています。いくらAIといっても、中にGarbageを入れてしまったら、出てくる情報もゴミですよねと。それをいかに回避していくかというところに、AIのエンジニアたちはものすごく苦心してきたという時代でした。
ただ一方で、この1年半ぐらいで生成AIが当たり前になりつつある現代において、従来の機械学習といったところで、プロたちが「Garbage in, Garbage out」という話をしてきたわけなんですけれども。
今まさに、一般の人たちもだんだん生成AIに触れられるようになっていると思います。これを意識せずに使い続けると「Garbage out」になっちゃう。実は、こういうところはまだあまり意識されてないんじゃないかなと思っています。そこに対してどうアプローチしていくのかを考えていきたいなぁという話ですね。
川崎:「Garbage in, Garbage out」。「ゴミを入れればゴミが出てくる」というのは、そもそもAIのモデルを開発されている開発者側で言われていた言葉だったわけですけれども。
つまり、これまで我々一般ユーザーはあまり意識しなくてもよかったのが、生成AIの登場によって、一般の人も意識したほうがいい言葉になってきているということですか?
吉田:まさにそのとおりです。そこ(情報の蓄積)に頭を使わずに、実際に(生成AIを)使いこなせるのかというと、やっぱり難しくなってくるんじゃないかなと。
吉田:今日のプレゼンに入る前に、ちょっと自己紹介をさせてください。私は吉田丈治と申します。株式会社リバネスを22年前に立ち上げました。リバネスが(創業)20年になったタイミングで、2年前にリバネスナレッジというITビジネスを行う会社を立ち上げました。
写真の右側にあるのが、先ほど川崎さんからもお話にあったDreamforceの時の写真です。「Salesforce Einstein Keynote」というキーノートでお話をしたんですけれども。
我々は、Salesforce製品をかなり活用して事業を行っています。Einsteinは、セールスフォース社のAIの話になるんですが、この当時はどちらかというと生成AIというよりは、機械学習系の異なるデータをしっかり使ってアウトプットを出すようなAIについてお話を差し上げたことがあります。
川崎:これがもう2019年なんですね。
吉田:そうですね。もうすぐ5年になるんですけれども。
川崎:ちょうど1年前の2023年、このイベントの日本版が東京で開催された時も、たしか基調講演に丈治さんがお出になっていて。セールスフォース・ジャパン社長の小出伸一さんから、「生成AIを使うにはどうしたらいいですか。アドバイスをください」という一幕もあったわけなんですけど。
2019年からAIと言ってたものが、2023年、2022年ぐらいから生成AIにどんどんどんどん変わっていって。やっぱりAIに触れる方たちが多くなってるんでしょうか。
吉田:そうですね。2019年は、やっぱりAIや機械学習の理論がある程度わかっている必要がありました。そのためのデータクリーニングをどうやるのかもわかっていないと、実は使いこなせない。そういうちょっとレベルの高いAI製品だったわけです。ここからもうだいぶ……。
川崎:クリーニングというと、お掃除という概念と紐づいてきて、ゴミ屋敷ともなんとなく近づいてきた感じがするんですけど。あくまでもプロの人たちだけだったけど、一般の人もお掃除の概念についてわかってないといけないと。
吉田:その当時は、例えば「データの前処理」と言っていました。ある一定の機械学習でアウトプットを出そうとしたら、ものすごく外れ値になるようなものとか、データの欠損値が含まれていると、そもそもちゃんと計算が成り立たない感じになっちゃうんですよね。
それをしっかりフィルタリングしたり、先に掃除してデータを整えたり。そういうことをエンジニアがしっかりやった上じゃないと活用できなかったのが、当時の機械学習系ですね。
今は、例えばOpenAI社のChatGPTといった生成AIをみなさんが使っている。もう簡単にアプリ上で、今なんかWeb上で無料で使える部分もあったりするので、アクセスすればすぐに使えちゃうわけなんですけれども。
それこそ、1年前にChatGPTが出たての頃なんかは、ハルシネーションと言って生成AIが嘘をつくみたいな話を聞いたことがある人も少なくないんじゃないかと思います。初期はGoogleや検索エンジンと一緒みたいなかたちで検索してみたという使い方をしたんですけれども、あり得ない情報を返すようになるわけです。
それって結局、データセットが整っていないからで、例えばちょっとChatGPTで「吉田丈治って何?」って聞くとぜんぜん違う人の話が出てきたり。
業務上で利用したい時は、それじゃ困るわけですね。何も知らない一般ユーザーが「社長の経歴をいい感じに整えて」と頼んだりして、そこに正確な情報が入ってない状況って、たぶん簡単に起こりうるんじゃないかなと思うんです。
そういったインターフェースが、本当にチャットとか、Salesforceで言えば画面上に簡単にボタン1つで呼び出せる時代が来てしまっているので。その裏側にあるデータがどうなってるのかに関心がないと、出てきたものを鵜呑みにしてアウトプットを出す。そういう危険な状況が、おそらく生まれてしまうんじゃないかなと思っています。
川崎:確かに何が正しいかどうかは、生成AIやAIの提供側というよりも、事業を持っている側じゃないと判断できなさそうでもありますよね。
吉田:そうですね。本当に事業の中でやろうとすると、結局会社の中のデータを使うわけですから。それってWeb上にも答えがないですし、生成AIって学習をしてるわけですけれども、(自社の情報は)学習された辞書の中にはないので、正確な答えが出るわけないんですよね。
そう考えてみると、やっぱり(AIには)正しいデータをしっかり与えてあげないといけないし、自分はこういうふうに読みたいからと、与えたものを再構成するのは得意なんですけど、それがない状態だとやっぱり簡単に嘘をつくのが今の限界値ではありますね。
川崎:なるほど。じゃあ、そういう時代が来てしまったというのを踏まえて、続きをお願いします。
吉田:そもそも、なぜ私は生成AIをやっているのかという話に近いんですけれども。リバネスは、22年前に研究者ばかりで集まった会社です。今は日本だけじゃなくて、各国の会社に修士と博士を持ったメンバーがいっぱいいるんですけれども。
私はもともと電気・電子工学出身なものですから、電子回路や半導体を作っていた人間です。そのままITの道に進んで、今は会社の中で、いかに構成メンバーのみんながより楽に、よりクオリティの高い仕事ができるようになるかということをCIOという立場で考えている人間です。
先ほども言ったとおり、我々はいろんな情報をSalesforceの中に入れてきたんですけれども、そういうCRMみたいなものを使っていると、必ず活動した内容が記録されます。
ちょっと極端な例で言うと、Salesforceがすごく高機能な日記帳になっている会社もあるわけです。本当にその活動の記録しかあげてないみたいなやつですね。それも基本的な機能なので、やっていただくのはぜんぜんいいんですけれど。それにプラスして、いろんなことを実現できるシステムだよねというのはまた別でお話しします。
今回は、こういった行動の記録をどんどんSalesforceの中に入れていくことは、基本機能なんだけど、実際にそれを進んでやりたい人はいないんだよねという話から……。
川崎:まぁ、ぶっちゃけ面倒くさいですよね。
吉田:ぶっちゃけ面倒くさいです。自分がやってきたことをまとめて保存するというとで、1回脳みそを再構成しないといけないところがあります。やっぱりそこにハードルが出てきてしまう。
川崎:確かに。
吉田:これはたぶん、みんなやりたくてもやってないよねという話だと思うんですけれども。
「営業はいろんなところに訪問してるのに、その履歴を残してくれない」という話をよく聞きますよね。なんか行ってるみたいですとか、カレンダーを見るとそうなっているという感じなんですけど。なぜなんだっけとなると面倒くさいんですよね。
我々リバネスは、修士・博士まで出た、いわゆる高学歴と言われるような人たちが多いんですけれども、やっぱり……。
川崎:そういう人たちは、けっこう記録を残すんじゃないんですか?
吉田:……って思いますよね。残してほしいんですけどねぇ。やっぱり面倒くさいっていう気持ちに勝てないということですね(笑)。
川崎:やっぱり研究者もそういうところは人間なんですね。
吉田:いや、もうめちゃくちゃ人ですからね。ただの人なので。
川崎:(笑)。
吉田:論文を書いて博士号を持っていても、ここはもうみんなと変わらないということです。我々リバネスという会社は、その面倒くささと戦ってきたんですが。情報の蓄積量が、この10年でどう変化してきたのかという話の図がこれです。
川崎:これはそれこそ外れ値というか、なんかのバグじゃなくて。
吉田:バグに見えるじゃないですか。なんでこうなっているのかという話をこれからしていきます。
川崎:3回ぐらいカウントしてるとかじゃないですよね。
吉田:違います(笑)。
川崎:1件につき4~5回のカウントが走ってるとかではなくて、本当にレコード件数が伸びてるということですね。
吉田:そういうことになります。2023年にどーんとこう復活するという感じの。
川崎:2022年では1,000件を切ってたのに、2023年には1万2,000件。2024年はまだ途中だけども、もう8,000件と。
吉田:そういうふうになっていると。2024年は、2023年の倍ぐらい入る予定を考えています。それぐらい情報量が蓄積されていっていると。
川崎:これは記録を残す人をわざわざ雇ったりなんかはしてない?
吉田:もちろんしてないです。
川崎:もちろんしてない(笑)。
吉田:わざわざそんなことしないですよね。その変化がけっこう大事だというところになります。
僕らはそもそも大学発ベンチャー的なところで立ち上げた会社だったので、普通に事業をやっていく中で、どういった活動をしていけばサステナブルに伸びていくのかということを、あんまりよく考えてなかったんですね。
10年前にSalesforceを導入した時に、「商談の管理機能があるらしい」と。商談の管理に付随して活動を残すのがけっこう重要なんだという話を、アメリカのセールスフォース社から仕入れてきて。それを実直にやっていたのが一番最初の立ち上げ期だったんですね。
川崎:どの企業もやりますよね。やっぱりこれ(きちんと入力すること)がグローバルスタンダードだし、やっぱりマネジメントしたほうがいいような気がするし、やるんですけど。ある種のパワープレイになっちゃうんですね。
吉田:いや、もう最初は意味もわからずにみんなやり始めると思うので、もちろんパワープレイせざるを得ないところはあると思うんですけれど。
それに加えて、弊社の場合は、カルチャー作りをちゃんとやろうよということで、「蓄積・開示・分析・統合」という、4つの行動規範を作りました。社員のみなさんにこれに則った活動をしてくれと命名して進めていったわけです。
そうすると、最初の2年はちょっと調子がいいですよね。千数百から三千弱ぐらいまでバーンと伸びたんですけれども。これはもうパワープレイとカルチャー作りこそが最上位概念みたいな感じですね。
川崎:でも、2015年をピークに右肩下がりという感じもあるという。
吉田:結果的にはそうですね。
川崎:でも、企業は成長してるんですよね?
吉田:事業的にはぜんぜん成長しています。
川崎:企業は右肩上がりなのに、情報の蓄積は右肩下がりになってたと。
吉田:なんでだろうなぁと思ったんですが、「事業がうまくいってるからいいだろう」的なところもありますし、うまくいってるとやっぱり忙しくなるところはあるんでしょうね。それでの蓄積量が下がっていって。僕もその当時はちょっと忙しかったので、そこまで気にしてなかったのも問題ではあるんですけれども。
そんなかたちで、最初はいい感じで伸びたのに、だんだん右肩下がりに推移していきました。そのあとはご存じのとおり、コロナ禍が2019年以降スタートしていくわけです。
Salesforceも2〜3年ぐらいは、だいたいキラキラした「なんか最先端のシステムっぽい」感じで、みんなに受け入れられていくわけですが。だんだん魔法が解けていって、「あ~、面倒くさいな」「なんだこのシステムは」という感じになっちゃうわけです。
川崎:「もうやめちゃおうか」ということにもつながってきますよね(笑)。
吉田:使わないと結果的にそういう話になっていくところを、このままじゃやばいなぁと思いながら、なるべく負担にならずに、情報蓄積量を増やしていけないかと考えるようになるわけですね。
吉田:我々は(クライアントを)訪問して提案することが多かったので、コロナ禍でバーチャルにいく時に、やっぱり1回提案数が減ってしまいました。それが輪をかけて、こんな感じで低くなっていきました。そこからちゃんとV字回復させていくために何をしたのかが大事な話です。
システム的には「面倒くさい」をまず最初に解決しようと思ったんですね。なるべく簡単にしたいと。弊社はGoogleカレンダーを使っているので、予定を自動で同期したら、自動で通知が来て、「そこに書けばいいじゃん」という感じでやってみたんですけれども。
川崎:カレンダーに「○○社ミーティング」みたいな予定があって、それが終わったら「○○社とのミーティングが終わったみたいですけど、そろそろ書いたらどうですか」という通知が来るんですか?
吉田:そうですね。こんな感じで画面上に出ます。
川崎:「営業報告を書きませんか?」って、ずいぶんなんかこう……下から弱気な……。お願いベースなんですね。
吉田:これは当時の僕の苦悩が表されている感じではあるんです(笑)。
川崎:心の声がそのまんま書いてあるんですね。
吉田:出ちゃいました。ただ、やっぱり効果はそこそこでした。面倒くさいに勝てなかったんですよね。
川崎:やっぱり通知じゃダメなんすね。
吉田:通知も控えめですしね。やっぱりこれぐらいだと誰もやってくれるようにはならないという結果に終わりまして、ちょっと踏み込みが甘かったなぁと思うわけです。
吉田:私は、システム的に便利に使ってくれればそれで済むんじゃないかなと思ったんですけど、それを現場でしっかり掛け合っていくような体制作りをしないと、やっぱり何も変わらないなと痛感しまして。
その後は体制作りもしっかりやっていきましょうということで、ちょっと考えを変えたわけですね。失敗した後にやったことは、Slackから簡単に登録できるということで、もうそもそもSalesforceのシステムを変えちゃえというのが1つです。
川崎:Salesforceに書き込むのは変わらないんですよね。
吉田:変わらないです。データの保存の先はSalesforceなんですけど、システムのUIの受け口となる入力フォームをSlack上に置きましょうと。
川崎:わざわざSalesforceの画面を開かなくても、同じことをできるようにしたってことですね。
吉田:それによって、ものすごく簡単に登録ができるようになっています。もう1個は最初に決めた行動規範は概念だけだったんですが、評価指標と連動するようにしました。
我々リバネスは、科学技術に根ざしたいろいろなことをやる会社なので、いろんな情報が蓄積されていかないとならない。属人化されていると、この分野に関してこの人に聞かないと絶対に進まないとかで、ちょっと困っちゃうんですよね。
もしかしたら、別の人をコネクトして、チームにしたらなにかおもしろいことができそうなのに、その人がめちゃくちゃ忙しくて、質問しても返してくれないような環境にいると。そうすると、チャンスが失われる可能性が大きいわけじゃないですか。
この人が何も(これまでやってきたことを)蓄積していなくて、情報が属人化されていて、他の人が取り出せない状況になっていると、もうまずいでしょと。
だから、みんながそれぞれの知識をしっかり蓄積して開示していく。そもそも評価指標に、そういう概念を連動させて、リバネス本体自体のバリューと連動してるよねと全社展開したんですね。利便性を向上させ、カルチャーをしっかり再確認させて、我々のバリューと合わせるということ。
吉田:あともう1つ、大事なことがあります。弊社は国内だけではなく、シンガポール、マレーシア、フィリピンに海外のブランチもあります。支社にもしっかり浸透させていかないと、ちょっと片手落ちというところがあるので。
ここは利便性の話なので、画面をご覧いただくとわかるんですけれども。アプリを自分で開発して、Slack上からデータをパパパっと。
川崎:今、呼び出したんですね! へぇ~。
吉田:(データを)呼び出して、Slack上で取引先の情報を選択して、内容を書いて終了みたいな感じですね。Salesforce自体は多機能なので、いろんなことができます。ただ、いろんなことができすぎてしまうので、Salesforceを開くと気が散るんですよね。
ちょっとしたメモを残したいだけなのに、わざわざそんなリッチなところにいって何かやろうとすると、例えばレポートから通知が来ていて「この商談、編集してください」みたいな通知がぽっと出てきたり。「やらなきゃ、やらなきゃ」みたいな感じで心理的な負担も高いので。
そうではなく、Slack上でシンプルな単機能に誘導して処理をしていくことで、ものすごく楽になりました。かつ、情報を蓄積してる人がSlack上で見えるので、情報共有の壁みたいなものも低くなるわけです。
吉田:今までも、Salesforce上に入れた情報をSlackに流すようにしてるんですが、それでも報告用のチャンネルに流れるだけです。例えば、自分の所属してる事業部の人がそれを知ることはちょっと難しかったりと、いろんなハードルがありました。
そうじゃなくて、Slack上で自分が関連するところからこういうデータを投入すると。入力した内容はそのままSlack上に残るので、「わかりやすいよね」となりました。
川崎:だから、個人の体験としては“情報ダイエット”をされているわけですよね。UIがすごく「記録を残すぞ」ということだけになって、「いろいろ見れますよ~」「こっちも見てね、あっちも気にしてね~」みたいなUIじゃなくなったんですね。もうシンプルに「これだけやる」というUIだから負担が少ないと。ただ一方で、組織としては情報が増えてるわけですよね。
吉田:増えてますね。
川崎:「あぁ、あの人、あそことこんな話したんだ~」みたいなことがわかっちゃうってことですもんね。
吉田:Slack上で見てるだけで、「こいつ、こことこんな話してきたんだ」というのがぱーっとわかるようになっていく。しかも報告の中にスタンプみたいな絵文字をつけてみれば、誰が読んだかもすぐわかるわけです。
吉田:情報って、蓄積した後に放置されるということがよく起こりうるんですけれども。そうじゃなくて、情報の共有効率も上げて、書いた人にもちょっと承認欲求と言ったらあれですけど、「あ、見てくれたんだ」というのが伝わる環境を作ることが大事ですね。
川崎:やっぱり、けっこう効いたんですか。
吉田:これはもう、ものすごく効きましたね。インパクトがありました。それに加えて、先ほどのカルチャーと評価指標の連動みたいなところで、誰がどれぐらい蓄積したんだっけということを面談資料としてぱっと出てくるようにしています。
いくら上のほうのマネージャーにいますと言っても、蓄積量がある程度の量までいってなかったら、お前わかってるよなという話になるわけです。
リバネスは、いろんな人と人がつながって、その情報が蓄積されていくことに投資をしている会社なので、それに見合わないような活動をされると困っちゃうわけです。
「そこはしっかりやっていこうよ」というところが、みんながみんな(情報を)見られるようになったのが1個大事なところです。そうすると、みんながやっていることが結果として見えます。
川崎:科学の発展は当然、発表されるから誰かが利用して発展していくわけで、まさに科学者集団らしい観点とも言えますよね。
吉田:ありがとうございます。本当にそのとおりで、独りよがりにやっているんだったら、外注でいいわけですよ。せっかくチームでやるので、血肉になるような活動をしっかりデータでトラッキングして増やしていく。これが我々の筋肉であるという話をして、それがみんなに受け入れられる。
川崎:やっぱり、データの投入コストが高すぎると、なかなかデータを入力してくれない。そこのコストが高すぎるという評価が「面倒くさいよね」という一言になるんだと思うんですけど。
今度はまた、データのシェアコストみたいなものもあるような気がするんですよ。シェアをするコストもできるだけ下げたほうがいいと思うんですけど。そこはどういうふうにしたら下がるのか、あるいは上がると思いますか。
吉田:我々も情報のシェアコストはものすごく気にしています。Slack上でやるのは、まさにその究極の形なんですよね。情報を届けたい人がいるチャンネルでまず書き始めて、キーワードを書いていく。我々の場合は「.report」と入れるとアプリが立ち上がります。
それで蓄積されるんですけど、もう記入してる段階でほぼ情報の共有は終わってるみたいな感じなんですよね。(情報を)欲しい人がいるチャンネルで書き出すところを意識すればそれだけでOKという感じになっていますと。
川崎:蓄積をすると同時に共有してるから、一手間で2つのことができちゃうってことですね。そうすると……。
吉田:なんなら共有が先ですからね。
川崎:共有したものが、逆に自動的に蓄積されてるみたいなユーザー体験。
吉田:そう。あとでこうぽちぽちってやって蓄積されるという。
吉田:そこで蓄積されたものをAIが活用するという話になりました。これは体制的には、日本でも海外でもやりますよと。
川崎:みなさんのリアクションはすごく良かったんですか? 数字的には上がってたと思うんですけど。
吉田:そうですね。良かったと思いますね。なんなら情報が流れてきますので、すぐそこでディスカッションが始まっちゃうという感じです。
川崎:極めてスピーディーですね。週次の報告とかを待たずして「さっき行ってきました」みたいなところから会話がもう始まっちゃうってことですね。
吉田:始まっちゃいます。それがSlackのいいところなので。なるべく定例ミーティングの内容を薄くしたいんですよね。というのは……。
川崎:定例ミーティングの内容は薄くしたい。その心は?
吉田:やっぱり(会議が)増えていっちゃってね。いろんなことを決議しなきゃいけないのに報告だけで終わっちゃうと時間の無駄なので、なるべく情報共有コストを下げて、共有はもう終わっているという感じにして。ミーティング自体は、もう何かを決めるところに集中したいという方向性ですね。
川崎:共有コストを高くし過ぎると、決めるという行為が阻害されるってことですね。決めるのは決めるのでけっこう大変ですもんね。
吉田:大変だと思いますね。いろんな思惑をまとめていかなきゃいけないというところで、そこは人間がやらざるを得ないと。
川崎:決めるのにかける人間の電池残量ってけっこう要りますよね。
吉田:要ります(笑)。頭も使いますし。
川崎:でも、決める前には絶対(情報)共有しなきゃいけないから、共有でバッテリーを消費しすぎちゃうと、決める電池残量が残ってないよみたいな。
吉田:いや、本当にそうですね。そういう組織がけっこうあるんじゃないかなぁと思っていますけれども。そうならないための仕組み作りとか、時間の使い方はたぶん重要になるでしょうね。
そこと体制ですね。ちゃんと体制作りをしたので、行動原理が変わってグループ全体として原理原則が変わってきたので、2023年にどーんと上がるんですけれども。
このカルチャー、利便性、グループ、全体の巻き込みによって、情報蓄積量が回復しました。プラスして、蓄積された情報をどう活用したらいいのかというレクチャーも行っています。
リバネスの中では、「○○さんとこの話をするぞ!」というタイミングで、どのページでどういう情報が見られるのかがわかっていて、それを基に提案などができるところまでいってますね。
株式会社ベルシステム24
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