2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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南場智子氏(以下、南場):あと、新規の事業のあり方としては、自分たちでしっかりとつくるというのもあります。例えば、この有名なマンガボックス。皆さん、知ってますか?
マンガボックスといえば、もうわかりますよね。皆さんダウンロードしまくってると思いますが、すでに800万人ぐらいユーザーがいます。大丈夫ですね、皆さん。まさか乗り遅れてませんよね? この大学の学生が乗り遅れているなんて……何しろ無料ですよ。みんな貧乏でしょう?
(会場笑)
南場:大丈夫ですか? 貧乏な皆さんのために無料にしました。完全に無料な漫画サービスっていっぱいあるんですけれども、このマンガボックスは一味も二味も違う、特別な無料漫画アプリです。
どこが特別かっていうと、人気作家が描き下ろしをマンガボックスのために描いてくれてるんですね。すごいでしょう。これはみんながすごくびっくりするとこですよ。大丈夫ですか。すごいことなんですね。
編集長は『神の雫』の樹林(きばやし)さんです、樹林(伸)さんです。あとインディーズもあります。漫画家志望の人いる?
いない。漫画家になりたいなって思う人は、その世界に飛び込む前に、こちらのインディーズコーナーに出してみて、本当に自分は人気を博する漫画が描けるのかどうか、腕試しをしてみたらいいと思います。
マンガボックス同様、我が社が手づからつくっているものの例としてチラシルがあります。皆さん自炊してますか? 自炊している人、手を挙げてください。
(会場挙手)
南場:自炊している人、少ないですね。じゃあ、結構みんなお金持ち?自宅から通ってる人いる?
(会場挙手)
南場:ああ、そうなんだ。自炊をしてる人は間違いなく、使ってください。自炊してない人はお母さんにお勧めしてみてください。これは何かというと、近くのスーパーのチラシがスマホに入るんですね。
(会場笑)
南場:他社の有名なサービスだとチラシがPDFで送られてくるんですね。だけど、チラシルは価格などの情報がデータ化、数値化されて送られてくるんで。データですから、例えばうちの近くに成城石井があって、西友があって、イオンがあるとしたら、同じ商品の値段を並べて比較できます。ちょっと今日は牛肉で派手にやりたいなとか思ったら牛肉の値段を比べる。
あるいは、すき焼きはつくんないけど、自分は経済を読み解きたいと。玉子の値段を毎日比べるんだ。おもしろいじゃないですか。何でもいいです。データ化されてるので。そういうありがたいサービスです。これも我が社の社員が考えてつくってますね。
結構アナログなところもありますよ、毎晩遅くにアルバイトがやって来て、チラシに載っている情報を全部タイピングしてデータにするんですね。大変です。だから、コストかかっていてまだ赤字です。
ただ、これはいいサービスです。まだ首都圏でしかやってません。ユーザーさんに聞くと、このアプリをダウンロードしてから、購買行動が変わったと言ってます。「いつも間違いなく同じスーパーに行っていたけど、最近比べるようになりました」と言ってくれてますので、主婦の購買行動も変えています。
もう1つ、これは何でしょうか。有名な……あれですよ、皆さん! SHOWROOM! 大丈夫ですか、皆さん。
(会場笑)
南場:これタレントのライブです。リアルタイムで、今つながるっていうものです。このようにアイドルが出てきて、リアルタイムですから、そこでお話をしたり、例えば歌手だったら歌を歌ったり、漫才師も出ています。
ユーザーさんがこの部屋に入ると……こういうふうに自分のアバターが出てきます。私が例えば太郎君だとするじゃない?こちらがふみちゃん。 そして、「ふみちゃん、前髪切ったね」と言うと、「太郎君、気づいてくれたの、ありがとう」とか言ってくれる。たまんなくないですか?
(会場笑)
南場:それでさらに、タレントを応援できます。星を贈る。星をもらってもあんまりうれしくないですよ。デジタルの星ですから。ただ、星やダルマを贈ることでタレントに応援資金が届くわけです。ちっちゃなお金です。100円とかとってもちっちゃなお金ですけれども、ユーザーさんが自分のお小遣いを活動資金してもらう形で応援できるっていうことですね。これ、すばらしいでしょう。出たいでしょう? どうですか? 皆さん。
それで、一番大きい贈り物は東京タワーです。東京タワーは1万円ぐらいします。東京タワーを投げると、ふみちゃんはなんと、「太郎君、そんなに無理しないで」って言ってくれるんですよ。それはもうたまんないでしょう。
みんなアキバかぶりつきってやったことないと思います。女性ってあんまりそういうのをやらないんですってね。みんなのお父さんは行ってますね。でもアキバに行くと、もうお父さん、一流企業の社員で、課長さんにもなってちょっと恥ずかしいですね。
でも、これは便利です。アキバに行かなくても(アイドルが)アキバから来る。 すばらしいです。ということで、このSHOWROOMをやってみてください。最近ですと、DeNAベイスターズの試合も、ホームの試合は全部観られます。有料(月額500円)ですが。無料のでも3回裏終了時まで観られますね。
あと最近増えてるのが……あ、そう! そうそう! 画家! 画家が絵を描いてました。先週土曜日の朝、SHOWROOMのぞいたら、画家が朝から絵を描いていました。
鉛筆で写実的な絵って見たことあるけれども、プロセスを見たことは、私は初めてだったので、とっても感動したんです。ちょっと手で擦ったり、いろいろな技があるんですね。見たら目が離せなくなっちゃって、何千円にしようかな、なんて思っちゃうぐらい本当に応援したくなるような感じです。
ということで、このように自分たちでサービスをゼロからつくってます。あと意外と他の会社との提携というのがあります。
ヘルスケアで遺伝子検査サービス、これは東京大学医科学研究所と組んでいます。あとコマースですとKDDI、例えばエブリスタっていう携帯小説、小説をみんなが書いて披露できるサービスがあるんです。それはdocomoさんとやってます。
マンガボックスでは、講談社さんとの提携を行っています。最近は小学館さんとも。あとさっき言ったようなゲームですと、任天堂やバンダイナムコさんなど。そういった親密先と提携をして、一緒に力を合わせて、サービスをつくるのが我々は得意です。
我々いろんなバラバラなことをやっているようですけど、目指すことは1つです。デライト。「デライトって何?」っていう感じですか?
ユーザーさんを、いい意味で驚かす、喜んでもらう。英語で「I was delighted.」って言うときは、どういうことか? 単にうれしいというよりも、ちょっと驚きのニュアンスがあるんですね。明るいイメージがありますね。そのちょっとした明るい、ポジティブな驚きをともなう喜びを提供する、世界中のみんなに。サービスはとことんこだわるということです。
それで、私がここに来てる理由が大体わかりましたね? ユーザーさんにデライトを届けるには、企画やアイデアをどのように表現するかが全てなんです。
それは例えばUI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)、あるいはグラフィックスそのものであったりします。そこをすごく強化したいというふうに思っているのはそのためです。
さて、バラバラの事業をやってるようですけれども、実は全ての事業で共通した、我々が極めてることがあります。どうやって関心を持ってもらえるのか。特にネット上のサービスです。競争ははびこってます。
さっき言ったように、玉石混交の情報・サービス、わんさかあります。例えば無料漫画アプリもはびこっています。その中でマンガボックスにどうやったら関心を持ってもらえるのかな。数多ある情報やサービスの中で、どうやって我々のサービスに関心を持っていただけるのか。
そして関心を持つだけじゃなく、ダウンロードをしたり、そこのサイトにアクセスをしたりして利用を開始していただく。競合サービスが多い中、どうやったら我々のサービスの利用を開始してもらえるのか。
そして、次に重要なのは何ですか? その利用を継続してもらうっていうことです。例えばゲーム。ダウンロードしても、なかなか続かないよね? でもそれを使って、おもしろくてやめられない、どうしてもまた遊ぶっていうふうになってもらいたいです。それぐらいユーザーさんに支持されるゲームをつくりたいです。
サービスでもそうです。やっぱり毎日SHOWROOM見てほしい。「今日、おそろしく暇だな。」って見るんじゃなくて、毎日来てほしいです。例えばこのマンガボックスもそうね。ウィークリーで描き下ろしだから、毎週読んでほしいですね。ニュースサービスだってそうです。毎週、毎日、できれば毎時間ニュースをのぞいてほしい。
いろんなコンテンツやサービスの提供をしていますけれども、そういうことですね。さっき言ったファッション、それからインテリア。インテリアに関心があったときは必ず来てほしい。1回目だけじゃなくて、2回でも3回でも4回でも来てほしい。利用を続けてもらう。楽しみ続けてもらう。重要なことです。
ということなんですが。まず、利用を始めてもらう力。いろんな数多あるサービスの中で、利用を始めてもらう力というのに、「マーケティング」。聞いたことあるでしょ?
何かの情報を提供して、それに反応してもらわなきゃいけないですね。そのときに、万人に同じ刺激を与える、同じ情報を提供するというのを、仮にこのグラフだとすると、年代、性別という……これいわゆる属性と呼んでますね。この属性に応じて最適化するというと、この効果がぐんと上がります。
例えば20代。女性だったらお肌や美容に関心がある。大体そうでしょう? それから何?35〜45歳の独身男性でIT企業に勤めてる人は、ほぼ間違いなくAKBのファンです。
(会場笑)
南場:とか……こういうの属性ですよね。属性マーケティングと呼びます。かなりの確率で当たるのですよ。でも100パーじゃないよね。かなりの確率で当たるって言ったんだけど、でもこの時代はもう終わりつつあんですよ。
今、どうなっているのか。各個人についての情報がいろんなとこに散在してます。南場智子さんについても、南場智子という固有名詞はわからなくても、リアルの世界では名前も、性別も、住所も、何もわからんけれども、この人は何か知らないけど、ベイスターズの情報を見ているなとか。
それで全然AKBには反応しないけれども、何に反応する? 例えば経済。あの人は女なのに、化粧品とか全く関心がない、などなど。ネット上の行動を見てるとかなりわかります。それに応じて最適な情報をぶつけろと。
例えばニュースコンテンツにしても、トップニュースってあるでしょう? もうみんなに同じニュース出しているのは紙のニュースだよね。それに対して、そのトップのページの中の1コーナー目立つところに、あなたにお勧めのニュースとして、あなたに関心のありそうなものをドンピシャで出します。
(スライドを見て)利用開始してもらうパワーが、属性による最適化と比べて3.8倍ですね。これは我々で2014年の中で半年間、年齢とか性別などの属性による最適化と、それから個々人による最適化を比較するデータをずっと収集してわかった数字ですね。これは実はゲームでデータ取ってます。
これは「だから何に関心があるの?」だけではないです。最近はソーシャルグラフや、誰の影響を受けているのかなど。
ダウンロードをしたゲームとかアプリ。あなたのスマホに「新着ゲームです」っていうのが並んでますね。その順番を「30代・男性というのはこれだよね」とやって並べるのと「この人は過去にこういったゲーム楽しんだ」とか「誰の影響を受けた」などの個別の情報で並びかえたものと全然違います。3.8倍違った。
さらに言うと、このスライド見てください。これ何ですか? 理屈っぽいですね。これは数字はあんまり出さないんですが、今回全部出してしまいました(笑)。
(会場笑)
南場:これ、最初の刺激で反応した割合を1として、2回目見せる、3回目見せると…そして40回見せ続けると、ものすごい勢いで反応率が下がってきます。
1人の人間に同じ刺激を与えても、ほとんど反応しません。1回目で反応しなければ、ドンドン反応率が下がってきますっていうことです。
何でしょうか? この人、AKBの情報をやたら見ているなとか。この人、こういう対戦型バトル大好きだよねとか。この人、FF(FIANL FANTASY)といったら何でもやるよねとか。そう思っていたのに、FF出しても反応しない! あるいはAKBのニュースを出しても反応しない! となる。
そしたらすぐに引っ込めろ、ということです。日に4~5回、多いコンテンツだと我が社の場合は、1時間単位で見直してます。「あ、この人はこの情報を見たのに反応しない」とぱっと変える。これが個別化マーケティングですね。
これは一人ひとりやっていたら大変ですよ。不可能です。我が社のユーザーさんは数千万、6,000万人ぐらいいますから。その6,000万人に向けて個別最適化、1時間単位で。これは6,000万人ぐらいの社員が必要になるんじゃないですか? それは無理です。機械が算出するからできるんです。
もう1つ見せます。 さっきは利用を開始してもらう力の話をしました。今度は利用を継続してもらう力。これはもっとすごい。利用を継続してもらう力というのは、さっき言ったように、ゲームだったら「あ、この人にはちょっと簡単すぎたな」とか「ちょっと難しすぎて、いつもここのボスのとこで止まってるな」とか、そういうふうに個別に合わせて、レベルを変えてあげるんです。
そういうことをずっとやってると、ちょうどよくてやめない。楽しいじゃないですか。だから「この人平均40秒しか遊ばないな」という人と「やり始めると1時間やってるな」っていう人たちがいますね。
そうしたら、やっぱり40秒で終わる単位の何か単位づけとか。やっぱりやり始めたら1時間がっつりやるタイプだったら、それだけの1時間やりがいのあるものを用意するなども可能になるでしょう。
あるいはニュースや漫画などの他のコンテンツについても同様のことが可能です。どんな内容の情報やサービスを展開するのかを個別最適化するわけです。
それがこの属性マーケティングと比べて、何と9.7倍の効果があると。利用開始してもらう力は3.8倍。でも、1回利用を開始したサービスの利用を継続するこの力は個別に最適化すると9.7倍。これは我々がゲーム事業で2014年に半年間、比較検討して数字を算出したものです。
ということで、何言ってんだということなんですが、私この個別の最適化というのが、当然ユーザーインターフェース、ユーザーエクスペリエンス、グラフィックス、こういったところも、究極は個々人に最適化をする時代というのが来るし、それを行った企業が生き残って、そして発展するというふうに思っています。
つまり、今だとゲームの難しさとか、コンテンツの内容とか、どんどんニュースを流すとかで止まっているんだけど。この人はこういうタッチの絵が好きだよね、とか。この人はこういう色合いの世界にコンフォート、つまり心地よさを感じるよね。あるいは、ユーザーインターフェースとしてもみんな確立された「これどうだ!」っていう同じパターンに今ハマっちゃっているんだけれども、全然違う見せ方があるじゃないですか。
この人の生活パターンとかだと、ニュースを見せるインターフェースとかデザインもこうしたほうが便利なんじゃないか? 心地いいだけじゃなくて、この人のニュースの取得の仕方っていうのは、ものすごい細切れの時間にちらっと見てるよねと。だったら、こういう見せ方だよね、とか。
あるいは、この人は日中ほとんどスマホとか触ることが禁止されている人だよね、何となく。だとすればどうなの? ってことですね。違ってくるデザイン、ユーザーインターフェース、それからさっき言ったような色とかグラフィックスを。この要素はものすごく好みがあるものなのに、同じものを示してしまってないだろうか。ここがまさにフロンティアなんじゃないの? と思っているわけです。
その世界にいち早く行きたいんですね。DeNAはそこまでやりたい。インターネットなんだから、個別化できるんだから。スマートデバイス、スマホはみんなのポケットに入ってんだよ。ポケットに入ってるのに、同じのを流すのって嫌だよね。
そして日本の教育もものすごく画一化されたエリートをつくってる。これはおかしいじゃないですかとずっと言ってるんですね。教育を変えようよと言ってる私が、DeNAという自分の会社で同じコンテンツ流してしまってる。
そうじゃないよね。個性をもっと伸ばしていこうよ。人の好みだとか得意なものとかを、もっとバラバラでいいじゃないって言っているんだったら、だったらもっとサービスをバラバラにしろよと。
どういうインターフェース、あるいは表現系ですね、それをバラバラにしてくというのは、次のステップなんじゃないのかなっていうふうに、私は思ってるんですよ。今、それをとことんやっている会社は見当たらないです。
DeNAという会社の将来の発展の肝がここにあるのではと感じています。UI、デザイン、グラフィックス、クリエイティブに。それで今日もスケジュールが大変な中、命からがらここにやって来ました。美大にはそこの世界の達人たちの卵がいるっていうことで来たんです。
DeNAはこういう人たちに、いっぱい参加してもらって、そして我々の強いITの力と、クリエイティブな力を合わせて、ユーザーに対して、もっともっと個別のデライトを提供したい、そんなふうに思っています。さて、キャリア講座。大体大学3年生が多かったじゃない? キャリアの選択って、結構面倒くさいよね。
こうなりたいっていう夢、みんなはもう夢がしっかりあるのかな? ない人もいると思うから、何をしていいのかわかんない人もいると思う。私は、自分が大学3年生のときは全くなかったからね。全然焦らないでください。社会に出てからでも、全然間に合いますから。
デートと一緒ですね。いろいろな男の人とデートして、ああ、この人いいかな、この人ちょっと……そしてようやく、自分はこの人だって、自分の好みとか、自分の性格も発見して、こういう人を伴侶にしたいなってわかるでしょ? それと同じですね。
職をぺろぺろ変えろと言っているわけじゃなくて、世界観っていうのは、だんだん視野を広げて築いていけばいいのかなと思うので、あんまり心配しなくていいと思うんです。
何がやりたいかわかってない人は、何かアイデアを自分で見つけたら、それは自分から来たアイデアかどうかっていうのは、そんな重要じゃない。これをやろうと思う、そういうものが決まったら、それを達成するっていうことの千本ノックをやって欲しい。
これはもう別に美大じゃなくても、みんな同じなんだけれども「これをやろう」ということを決めたら、それを何としてでも達成するっということを繰り返すことで、力を蓄えていくという。
その訓練をやっていくということが、本当に自分がやりたいことが見つかったときに立ち上がれるかどうかということなんで。ぜひ、やってほしいな。それを絵にするならば……絵にするならばって、美大の方にすごい恥ずかしい(笑)。
(スライドを見て)これですね。アイデアがあったら、達成するでしょう。1個達成したら、また次のアイデアをって。また達成して、そしてまた……こういうふうに繰り返して自分のキャリアっていうか、スキルや経験を高めていってください。
ときどき挫折することもあるけれども、必ずまた何らかの再設定をして、また達成をする。
そして、私はやっぱりグローバルな人材になってほしいって言います。でもそれは必ずしもアメリカに行きましょうとか、中国に行きましょうじゃないです。日本のローカルからアメリカのローカルになってどうする? と思います。
そういうことではなくて、環境を選ばずにことが成せる。例えばこの会社じゃなきゃできないとか、こういう仲間とじゃなきゃできないとか、そうじゃなくて、目標が決まったら、とにかく彼女に任せればできるんだ。できる。周りがそう思うように。そして実際に任せられたら、本当にやる。
本当に申し訳ないんだけど、私は何万人という学生っていうか人材を見てきましたが、人類は目標に合意した後に、この人に任せたら大丈夫と思って目が離せる人と、こいつに任せたら多分だめだろうなっていう2種類しかいません、本当に。
ぜひ前者になってほしいです。そのためにはこれを繰り返して、小さな目標でもいいので、高い目標じゃなくていいので、目標を定めてそれを達成する。それを繰り返してほしい。
しかしながら、実際はこんなにシンプルじゃなくて、こういう感じですね。道のりは非常にぐじょぐじょです。英語で言うと、Messyっていう言葉ありますね、Messです。非常に混沌としてる。
ときどき目標に向かってないで、逆戻りしてるような瞬間もあって「何やってんの、私」と思うことがありますね。そういう中で、乗り越えて達成しないと、あんまり意味ないです。こんなにシンプルな達成って、あんまり力はつかないです。右側を繰り返してほしいなというふうに思います。
あとはすごく抽象的な話かもしんないんだけど、この絵でどこが楽しいの? アイデアを思いついたとき、これもすごく楽しいよね。ワクワクします。
私がDeNA立ち上げようと思ったとき、もうそのときはマッキンゼーっていう経営コンサルティング会社にいたんだけれども、自分で会社をつくって、こういうサービスをやろうと思った。それを決めた瞬間、ワクワクしました。それもとってもいい瞬間だよね。
あとは、目標を達成したときっていうのは、達成感っていうんですか? なかなかいいですよ。おいしいビールが飲めますよ。達成を感じて飲むビールはうまい。
このタイミングもすごく幸せ。でも一番幸せなときは、私はこの真ん中のときですね。この試行錯誤してる「ああ、これはだめだな」「これは失敗した」とか、あるいは「あ、ちょっとこれはいけそうじゃない?」とか、そうやって試行錯誤しているとき。この達成に向けて一緒にチームを組んでるわけだよね。そのときそのとき違うチームだったりするけど、その仲間たちと「いけるんじゃない?」とか「ああ、またやらかしたか」とか、そういうことをやりながら「じゃあ、今度これやってみる?」「今度はうまくいくかな」と、そんなことをやってる道のりが楽しいです。
どこが楽しいかっていうのは、人によって違うと思います。もうとにかくアイデアが浮かんだ瞬間が一番好きっていうのもいるし。
上場して、金持ちになって酒池肉林。もう六本木に行ったらすごいモテるし、苦労や試行錯誤はそのためにやってたんだから、もう仕事しなくていいよっていう人もいる。
もちろんいろいろなタイプがいて、価値観だから、誰がいいとかじゃないんだけれども、私はこの真ん中がとても楽しいんです。だからやめられないです。そう、やめらんない。繰り返す。
1個達成したら、また次の目標を掲げてしまう。そしてまた七転八倒してしまいます。「道」って言葉があるでしょ? 茶道とか華道とか。日本ではこの「道」っていう言葉をよく使うよね。
この「道」っていう字は、私はこの道のこと言ってるんだと思います。亡くなるときに、最後に人生を終わるときに「ああ、自分はお茶の大家(たいか)になってよかったな」というふうに思って死ぬ人っていうのは本当の大家じゃないと思う。
道を極めている人というのは、もっともっとお茶に対して謙虚な畏怖を持ってるというか「ああ、僕はまだまだ一流にはならない。でも、この道を極めてきた。その人生はすばらしかった」と思って亡くなるんじゃないかな、と想像しているんだけど。道を極めることを喜びとして取り組む、私はそれが道じゃないのかな、と思います。
達成したときもおいしいビール飲める。思いついたときも、もうワクワクする。だけど、何かに夢中になっているときの幸せたるや、美大のみんなは何となくわかるよね?
それは人生、卒業して、社会人になっても同じだけど、その道はものすごく入り組んでたり、ときどきつらいけれども、この道をぜひ楽しんでほしいなというふうに思います。
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