2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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質問者:こんにちは、アレクサンダー・ビューコレリーと申します。コース16で博士号を取得して、最近、航空宇宙研究の会社を立ち上げたところです。今取り組んでいるのがレーザー推進というもので、これは外部エネルギーを活用して、ロケットの動力とするものです。マイクロ波やレーザーは高出力で高レベルの比推力を得られますので、それを応用したアイデアなのですけれども、スペースXではこのような技術をどう捉えてらっしゃるのか、お聞かせください。
イーロン・マスク氏(以下、イーロン):レーザー推進は面白いですよね。研究のしがいのある分野だと思いますし、何らかの形で実現できたらいいですね。レーザー推進で軌道に乗せたり、速度を稼いだりして、実際にどの程度機能するか見てみるとか。いくつか懸念点もありますが、だからといってやるべきではない、とは思いませんね。むしろやるべきだとまず前置きしておきます。
ですが、レーザー推進にはスケールの問題でいくつか難しい課題があると思います。ファルコン9級のロケットを軌道に乗せるための出力を考えてみると、相当のものが必要になるわけです。東海岸全体をカバーできるレベルの出力が必要になってきますから。
ファルコン級のものを打ち上げるには本当に莫大な出力が必要で、出力に関しては、例えばフロリダ州住民全員の電気利用を規制するわけにはいきませんからね。となると、大規模な発電所や蓄電器、あるいは高出力密度のバッテリー配列が必要になってきます。
ですので、スケールを見てみて、今言ったような大規模な発電所やレーザー配列のコストを考えて、それに対して自分たちで酸素を持って、低ISPの場合との単位質量あたりのコストを比べてみることですね。
質問者:こんにちは、1年のエリオット・オーウェンと申します。ハイパーループにとても興味がありまして、高校の卒業研究でハイパーループの小さな実用模型を制作したのですが。
イーロン:いいですね。
質問者:難しかったのが、チューブの許容差でした。350マイル(約563キロ)のチューブを建設する場合の許容差と熱膨張について、どんな問題が生じるかお考えを聞かせていただけますか。
イーロン:ポッド対チューブ直径の比率はどの程度でした?
質問者:およそ内径2.5インチ(6.35センチ)で、長さ20フィート(約6メートル)くらいでした。
イーロン:ああ、長さではなくて、ポッドの直径とチューブ直径の比率は?
質問者:ポッドはチューブより数インチ小さい程度でした。
イーロン:そこが問題ですね(笑)。チューブとポッドの断面積がおよそ2:1ないといけません。ポッドはチューブの断面積の約半分くらいです。ポッドの上に空気の流れがある程度必要になりますからね。
質問者:カントロヴィッツ制限に対応するためですか?
イーロン:そうですね。先端の圧縮機でいくらか対応できますけれど、完全には処理できないですね。ほかはポッド周りの気流です。サイズ的に余裕のないものは望ましくないですよ。許容差の制約もありますし。ある程度はアソビが必要になるわけです。
スピードを出すときは、チューブ上の小さな不備ですら問題になってきます。これはチューブが完成したあと、何かで表面を滑らかにすれば対処できることですけれども。グラインダのようなものをチューブに走らせて、表面を磨くとともに起伏がないようにすることですね。
質問者:なるほど。あと熱膨張についてなのですが、20度上げると350マイル(約563キロ)あるパイプは450フィート(約137メートル)も長くなってしまうわけですが、どのようにして真空シールを伸縮継手で維持されているのですか?
イーロン:ターミナル部分では膨張させても構わないわけです。ターミナル部ではその長さ分の膨張と、それを支えるパイロンについても同じですね。パイロンについては無理に抑えこむことはできません。
質問者:ジョンと申します。地球では常に資源の需要は上がり続けているわけですが、スペースXはいずれ月や火星や、他の星から資源を得ることに意識を向けていくのでしょうか? そういった計画はありますか?
イーロン:月に資源を求めることはないですね。月にいるのならそれも有効な手段ですが、地球に持って帰ってくるとなると話が違います。月面に基地があるとすれば、きっと資源を抽出することもあると思いますが、あくまで自分たち用ですね。
質問者:ボブと申します。いままでにないイノベーションを起こすため人工知能の分野に取り組もうと考えたことはありますか? また、人工知能に対してどういった考えをお持ちかお聞かせください。人工知能が一般的になる時代は近いのでしょうか?
イーロン:人工知能についてはかなり慎重にならないといけないと思います。おそらく人類の一番大きな脅威となりうるものですね。ですので、本当に慎重さが求められます。
規制や監視が国レベル、あるいは国際レベルで必要だと思いますね。私たちが何か分別に欠けるようなことをしないためにね。人工知能は悪魔を呼び出すようなものですから。そういうテーマの話は色々ありますよね、五芒星と聖水を持っている人が悪魔をコントロールできると思って、でも結果的にできなかった、というような(笑)。
質問者:「2001年宇宙の旅」のHAL9000のようなものが火星に行くことはないだろうと。
イーロン:人工知能の脅威に比べれば、HAL9000はたいしたことないですよ(笑)。HAL9000など可愛いと思えるくらい、もっと複雑なものですから。
質問者:こんにちは、レイシャレナ・サドウと申します。航空宇宙学科2年です。火星へのミッションはスペースXのロケットと関連のあるものが当然多いわけですが、電気通信や通信衛星の役割についてのお考えをお聞かせください。火星の入植においても重要になってくると思うのですが。
イーロン:ごめんなさい、もう一度繰り返していただけますか? まだ人工知能のことが頭にあって(笑)。
質問者:もちろんです(笑)。火星へのミッションにおいて、スペースXやロケットに注目が集まっていますが、火星入植には電気通信や通信衛星も重要な役割を果たすことになると私は思っています。イーロンさんの目指されているところと、こうした分野はどのように関わってくると思われますか?
イーロン:コミュニケーションは当然、とても重要なものだと思っています。テラビットレベルでの通信が地球と火星の間では必要になりますので、緊密なレーザーが必要になってきますね。レーザーのコミュニケーションですとか。
あとは中継局もですね、中継してくれる衛星も必要です。火星は太陽の反対側にある場合もあるので、光子を太陽の周りを通るように反射させないといけませんから。まっすぐ太陽の中を通すのではなく。ですから、コミュニケーションは間違いなく重要ですよ。
地球は宇宙との通信に関してまだまだ伸びしろがあると思っています。世界中をカバーできるような回線容量のある衛星通信を実現するにはまだまだ発展が必要ですし、火星についても同じですね。
質問者:エリックと申します。システムデザイン・マネジメント研究を専攻している大学院生です。つい最近、日本の建設会社、確か大林組だったと思いますが、宇宙エレベーターの構想を発表しました。2050年が目標だったと記憶しています。
イーロン:いいですね(笑)。
質問者:この技術は、イーロンさんご自身のビジョンや目標に何か影響を与えることになるのでしょうか?
イーロン:あったらいいですね、宇宙エレベーター。期待はしませんが。現実的だとは思いませんのでね。ですが実現できたらいいですね。
宇宙エレベーターと聞くと「チャーリーとチョコレート工場」を思い出しますね。エレベーターというと、上ボタンを押して宇宙に行けると思う人が多くて(笑)。しかし実際には、とても複雑なものです。私には現実的とは思えませんね。
例えばロサンゼルスから東京へ橋を渡すことを考えてみてください。このほうが簡単なはずですけれども。大西洋でもいいのですが、2000マイル(約3218キロ)や3000マイル(約4828キロ)の橋があるとしたら、カーボンナノチューブで作ることになりますよね。
ですがカーボンナノチューブの歩道橋ですらまだないわけですから、長さ6万マイル(約96キロ)の宇宙エレベーターとなるとね。とにかく現時点では私には理にかなっているとは思えませんね。ですが、実現できたら素晴らしいですね。
質問者:こんにちは、コウキ・ホウと申します。MITの博士課程に所属しています。マーズ・ワン計画についてのお考えをお聞かせください。これはバラエティ番組のために2年に一度、火星に片道で人を送る、という計画ですが、ドラゴンカプセルの改良版を着陸のために使おうとしているようです。この計画の考え方は技術的に可能なのかどうか、どう見ていらっしゃいますか。
イーロン:私が見た図解ではスペースXロケットや宇宙船「ドラゴン」をたくさん活用しているようでした。もしドラゴンやファルコン9ロケットが欲しいなら、喜んで販売しますよ。
(会場笑)
ですが1機買うような財源もないようですし、現実的だとは思っていません。それに、ドラゴンで火星に行くのはあまり理想的とは言えませんしね。かなりの速度で行っても3ヶ月はかかりますし、通常は6~8ヶ月の行程になりますから。SUV車程度のスペースしか無いものの中で過ごす期間としては長過ぎます。次世代の技術が出てくるまで待つことをおすすめしますね。
質問者:ベンと申します。MIT卒業生です。また宇宙エレベーターに関して伺いたいのですが、もしイーロンさんたちがロケットの代わりに宇宙エレベーターを作っていたとしたら、社会からはどう受け取られたとお考えですか? 紹介ビデオはどう変わってくるでしょうか。
イーロン:うまくいかないと思いますね。現実的な中身のない、いわばただのイラストのようなものになってしまいますよ。違いはそこですね。宇宙エレベーターは現実的だとは思いません。
質問者:2年生のエヴァンと申します。スーパーチャージャーネットワークの未来について質問させてください。再生エネルギーはこのネットワークのエネルギー源として重要な役割を果たすことになるのでしょうか?
イーロン:もちろん。いずれ我々のスーパーチャージステーションは100%、再生エネルギーでまかなおうと考えています。太陽熱は今のところ入れていません。国内でも国外でも、アメリカ、ヨーロッパ、アジアのどこでもスーパーチャージャーを使って運転はできますが、ソーラーパネルを使用しないとスーパーチャージャーを利用できないような制限はとくにしておりませんので。ソーラーパネル付きのものもありますが、今はほとんどがなしです。
ですが、そのうちすべてソーラーパネルか再生エネルギーから動力をまかなうようにするつもりです。そしていずれは、ソーラーパネルから備え付けのバッテリーパックにつなげたいと考えています。そのうえでさらに、週の間にソーラーパネルで備え付けの電池パックを充電して、このパックでエネルギーを溜めておいたあとピーク時に放電する、といった具合ですね。
スーパーチャージャーから見えてくるのは、利用に関する大きな差です。例えば皆さん週末は出かけますよね。金曜夜や日曜の夜は、利用量が大きいわけです。週末の家族旅行などで出かける方がいるので。
一方、例えば水曜の午前11時は利用量が小さい。ですから備え付けの電池パックと、ソーラーパネルはあったほうがいい。そうすれば送電網がダウンしても機能しますしね。大災害の後だとしても車を運転できたらいいですよね(笑)。
プレール:短い質問でしたらまだいくつか受け付けましょう。
質問者:こんにちは、リタと申します。2年生でコース2に所属しています、機械工学です。私は車好きなのでテスラについてうかがいたいのですが、電気自動車分野に参入しようとしている新しい企業、例えばTevaのような会社ですが、これにはどのように対応されるおつもりですか? 技術共有などによって協力して、近い将来電気自動車を実現させる方向で考えていらっしゃるのか、それとも競争的な体制をとられるのでしょうか?
イーロン:今年のはじめのほうに特許を公開しまして……。
(会場拍手)
つまり協力的な体制をとりたい、と受け取っていただけるといいのですが。テスラができることで、特に車の製造に支障が出ないことであれば、喜んでいたします。ベンツやトヨタにバッテリーシステムや伝動装置も提供しましたし。
現在の障壁はバッテリー生産ですね。この制約を突破して電気自動車を次の段階へ進めるために、ギガファクトリーの計画が出てきたわけです。あとは値段をもっと手頃にしないといけません。魅力的で、値段も手頃な電気自動車が必要なわけです。これが目標で、なるべく早く実現できるように努力しているところです。
質問者:ダニエルと申します。MIT2年生です。テクノロジー以外のことについて質問させてください。イーロンさんはSF文学や映画をたくさんお持ちだとうかがいました。人類の未来をよいものにするためにイーロンさんは努力されているわけですが、ご自身のモチベーションに影響した作品はありますか? 怖いと感じたもの、あるいは例えば『スタートレック』のように、前向きな気持ちになれたものなどあれば、教えていただけますでしょうか。
イーロン:そうですね。テクノロジーが好きなので、若いころはSFやファンタジーの映画や本は片っ端からいろいろ買いました。たいした作品でなくともね。大きな影響を受けたものでいうと、スタートレックは好きですね。
明るい未来を描いているので。未来はひどいとか、そういう描き方ではないのでね。悲観的に未来を描く作品が多すぎるので、明るいものがあってもいいですよね、少しくらい(笑)。その点からも、スタートレックは好きですね。
他に影響を受けた本や映画というと、やはり『スター・ウォーズ』ですね。初めて見た映画がスター・ウォーズだったので、本当に影響を受けました。映画館で映画を見たのもそれが初めてでしたしね。一方、本でいうと、『指輪物語』は大好きな作品のひとつです。SFではないですけれども。むしろJ・R・Rトールキンは、どちらかと言うとテクノロジーに対して否定的でしたしね。
質問者:SFとファンタジーは反発しあう仲ですしね。
イーロン:そうですね。指輪物語はアンチテクノロジー的な作品ですが、素晴らしいですよね。それと、アシモフのファウンデーションシリーズは最高ですね。あとはアーサー・C・クラークやハインライン。この3人は三大SF作家と言ってもいいでしょうし。あと最近、イアン・バンクスの小説がいいと勧められましたね。何かおすすめありますか?
質問者:特に好きな作品は「月は無慈悲な夜の女王」ですね。
イーロン:ああいいですね。あの作品はハインラインの中でもベストだと思います。
プレール:それでは最後の質問になります。
質問者:エリー・サイモンソンと申します。2年生で、コース16に所属しています。NASAはSLS(スペースローンチシステム)を計画していて、何度かの試みののちに火星上陸を達成しようと考えているようですが、もしこれがスペースXよりも先に実現した場合、スペースXはどのように目標を変えることになるのでしょうか?
イーロン:はは(笑)。私たちの目標は、あくまでロケット技術を向上させていくことです。 SLSが火星に人を送るのはまだ先になると思いますし、もし達成できれば素晴らしいですが、必要なのは沢山の人と、貨物を載せて火星に行くための技術なわけです。ミッションひとつあるのもいいですが、それで人類の未来に影響があるとはいえません。
大切なのは自律した文明を火星に築くことで、そういった点から取り組んでいるのはスペースX以外にいないように思います。スペースXなら成功する、と言いたいわけではなく、この観点から取り組んでいる人たちが他にいないというのが現状です。
プレール:イーロンさん、ありがとうございました。
イーロン:ありがとうございました。
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