2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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朝倉祐介氏:常識的に考えて、ミクシィはSNSの会社ですので、会社の価値はSNSとしてのmixiの価値をベースに判断されるものです。しかし、会社を捉える視点をずらしてみると、その会社の違う側面が見えてきます。私は、ミクシィ社の根本的な価値はSNSとは別の部分にあると捉えました。
1つ目は、サービスの開発力です。ミクシィには突出した技能を持つ才能溢れたエンジニアが多くいました。彼らの才能は他所では得がたいものです。つまり、ミクシィ社の中に新たなサービスを生み出すことができるポテンシャルがあったということです。
2つ目は資金です。ミクシィには1億2000万ドル以上の潤沢なキャッシュがありました。上場時に市場から多くの資本を調達し、その後も安定した利益を上げていたのは素晴らしいことです。しかしそうして得た資金を積極的に事業拡大に向けて投資できていなかった。だからこれを有効活用せねばと思いました。
そして3つ目はmixiのブランドです。日本のインターネット利用者は、たとえmixiを使ったことがなかったとしても、たいていそのブランドは認知していました。実際、多くのインターネット利用者がmixiを使ったことがあり、多くの人がmixiを知っている。これは決定的な価値です。
こうした3つの要素は、スタートアップを経営していたときには喉から手が出るほど欲しくても得られなかったものですが、ミクシィはこれらの価値を十分に活用できていませんでした。
スタートアップを経営していた頃、私はよく悪夢を見ました。資金がショートする夢を見て、自分の叫び声で夜中に飛び起きたことが何度あることか。それに比べたら、ミクシィははるかにいい状況なんです。これだけの素晴らしいリソースを持っているのですから。
そう考えると、何もできていない状況にイライラしてきました。そして直感的に自分がなんとかしなければと思ったんです。なぜそう思ったのか、特に理由はありません。なぜかそう思ってしまったんです。私は信頼できる社内の仲間を集め、彼らと一緒に会社の立て直しに向けて行動を起こしました。
私たちの基本的な戦略はとてもシンプルなものでした。まず、既存事業の収益改善、次に社内での新規事業開発と外部の事業買収による事業の多角化、そして企業文化の再構築です。
前述したように、私がCEOになったのと時を同じくして、会社は赤字化しました。時間は限られていました。まずは身の丈に合わせた規模まで収益性を改善する必要がありました。それが1つです。
コストを削減する一方で、新規事業へも積極的に投資しました。自社内での新規事業開発と並行して、外部の事業買収にも費やしました。当時の財務状況を振り返ると、PLは非常に悪い状態でした。業績は赤字転落していましたから。
一方でBSは非常にきれいな状態でした。多くの資金があり、債務はほぼない状態でしたからね。通常、こうした財務状態の会社は、PLの改善を図ると同時に、新規事業への投資にも保守的になり、控えるものです。我々は異なるアプローチをとりました。
大方針は、今あるキャッシュを未来のキャシュフローに転換することです。そしてスタッフを既存サービスから新規事業へとシフトする。日本では法規上、原則としてレイオフというオプションはありません。だから新しい事業を開拓して仕事を作り出す必要があるのです。
私たちはそれを救命ボートと呼んでいました。新たに救命ボートを作り、タイタニックから移行するわけです。従ってコスト削減と新規事業への投資という、相反する打ち手を並行して実施しました。
3つ目は企業文化についてですね。起業家精神を養成し、新規事業を始めるための施策を打ちました。ミクシィはかつてスタートアップとして大きな成長を遂げた会社です。これはそうしたスタートアップの精神を取り戻すプロセスでした。
以上、とてもシンプルな3つの基本方針です。
しかし当時、こうした取り組みについて、ほとんどの人は理解しませんでした。一般的にミクシィはイコールSNSの会社だからです。社内もメディアも、なぜミクシィがSNS以外の事業に取り組むのか理解できませんでした。そうしたある種の固定観念が会社の可能性を妨げるのです。新たな成長をもたらす可能性を。
ここに私たちが実施したアクションプランを列挙しました。多くのことに挑戦し、多くの失敗を重ねました。ここでこれらを読み上げる気はありませんが、私たちがこうしたアクションプランを通して実現しようとしたのは、会社を既存の事業から脱却させ、大きく前進させることでした。
この一貫した大原則のもと、諸々の打ち手を実行しました。会社は前に進まねばいけないからです。挑戦することで多くの失敗を重ねましたが、いくつかの幸運を掴むこともできました。
まず1つ目は大ヒットアプリを開発できたことです。私たちは多くのアプリを開発しました。多くは失敗に終わりましたが、その中の1つが日本で人気を博しました。「モンスターストライク」です。
2つ目は収益性の高い事業の買収に成功したことです。今あるキャッシュを未来のキャシュフローへ転換するという考えのもと、立て続けにEV/EBITDA倍率が低い複数の事業を買収しました。私たちは意識的にバイアウト・ファンドが狙うような条件の事業を買収しました。
3つ目は事業部門を売却したことです。CEOに就任した後、会社の一事業部門を分社化しました。非常に大きな事業部でした。分社後、新規事業の開発などに取り組んできましたが、ある時、その部門を買収したいという会社が現れました。
メンバーは非常に優秀でしたが、時として、好業績を上げていた部門が時間の経過とともに、事業環境にフィットしなくなるということが起ります。そういった時、経営者は難しい決断を迫られます。こうした困難な決断を下し、幸運を掴んだ結果、売上は大幅に回復しました。
何よりもエキサイティングなことは、今でもその成長が続いているということです。
また株価も大幅に改善しました。前述した通り、ミクシィの上場時、株価は20億ドルでしたが、私のCEO就任時には、2億ドル程度に減少していました。しかし1年を経て、一時は50億ドル程度に達しました。
このケースにはいくつかの学びがあります。
1つ目は、上場企業は成長する義務があるということ。自己資本のみで経営しているのであれば、会社を自分の好きなようにしてもかまいません。しかし上場企業となると話は別です。ひとたび上場すれば、全ての状況が変わります。上場企業は将来に渡って事業を継続することを前提として埋め込まれています。
しかし、この前提と事業の間には明確なコンフリクトがあります。どんなサービスやプロダクトにもそれぞれ寿命があり、永遠に成長し続けるサービスやプロダクトなど存在しないことです。
GEを見るとよくわかりますが、事業ポートフォリオを絶えず入れ換えています。GEにはもはや、祖業の面影はありません。会社を永続的に成長させるためには、既存の事業に囚われてはいけないのです。
時に、既存の事業に対する愛着が経営判断をにぶらせます。だから時として、CEOは難しい決断をくださねばならないのです。もしCEOが意志決定できないのであれば、そのCEOは職を辞すべきです。CEOが決断できないことほど悪いことはありません。
それは会社や事業にとって悪いだけでなく、CEOとしての責務を放棄しているという点で道義的にも悪いことです。
とても基本的な原則ですが、得てして見逃されがちな点です。強調して言いますが、もしあなたが決断できないCEOであるならば、即刻会社から去るべきです。これが1つ目です。
2つ目は積極的に新しい事業領域を開拓することです。企業が成長し続けるためには、新しい事業を作り続けるしかありません。
また、新しい事業を立ち上げるにあたっては、軌道に乗るまでには非常に時間がかかることを理解する必要があります。既存の事業と比べると、新規事業からの収益はあまりにも小さく見えるものです。大企業の中で新規事業に取り組む際には、今あるサービスの利益やマージンのことは一旦忘れるべきです。さもなければ何も始めることはできません。
また、人は今ある事業とのシナジー効果の見込める事業領域を求めがちなものです。ですが、実際にはシナジー効果なんてものはめったに生じません。既存事業の部門にはそれぞれのアジェンダがあり、興味のない新規事業などに干渉されたいとは誰も思いません。
為すべきは、事業をしっかりと分け、各事業が独立独歩で事業展開するよう調整することです。
新規事業が十分に軌道に乗れば、いつの日か既存事業の部門から一緒に事業に取り組もうと提案されるかもしれません。このとき、はじめてシナジー効果が生まれるのです。
逆に、新規事業が既存事業に競合する場合もあります。その場合、経営者であればそうした新規事業に反対したくなるかもしれません。しかしその時は、カニバリズムを受け入れたほうが良いと思います。さもないとある日、見知らぬ競合に、あなたの市場を全て奪われることになるかもしれません。
最後に、大企業病は予防することが大切です。今日ここでお話しする中で最も重要なメッセージかもしれません。企業が成長している過程で予防を考えるべきなんです。
企業が成長しているときは、誰も大企業病だなんて真剣には考えません。ですが、成長段階から、徐々に大企業病は進行しています。業績がいいときは、誰も症状に気づきません。ある日、ビジネスに陰りが見えたとき、それらの問題は一気に症状として噴出します。
ですが実際には、一気に大企業病にかかったわけではありません。成功している段階から、会社は成長痛を克服できていないのです。成功が会社の現実を隠します。ある日それに気づきますが、それでは遅いのです。
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