2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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2002年8月16日のことです。ある2体の軍機がアフガニスタン上空を飛行していました。この軍機は戦いの装備をたくさん積んでいたので、ゆっくりと低空飛行するのに適していました。さらにこの2機は戦闘の際、陸軍部隊を上空からバックアップする役割を担っていました。この夜、嵐が近づいていて空は曇っていました。2機はもしもの時に備え、上空で待機していました。
雲は雪のよう、月はとても明るく、たくさんの星が見える美しい夜でした。谷の下では22人の特別部隊が移動中でした。しかしこの夜、「何かが違う。何か様子がおかしいぞ」と皆が感じていました。空を飛んでいたパイロットのうちのひとりだったジョニー・ブラボーも、そう感じていました。なので彼は雲の下へ出て、問題がないか確認しようと思いました。彼は僚機パイロットにそのまま待機するように伝え、下降を始めました。
雲の下へ出ていこうとしていたときに無線から「戦闘開始! 射撃準備!」と聞こえてきました。大変です! 銃撃戦が始まったようです! ジョニー・ブラボーは猛スピードで直滑降します。雲からやっと出たと思ったら、もう少しで地上に激突するところでした! 彼が雲から飛び出た地点は、地上から300m (1000フィート)もなかったのです。さらにそこは谷間で、彼の両側には岩壁があります。
2002年ではありましたが、機は充分に備えられていませんでした。レーダー性能が良くなかった上に、昔のロシアの地図を使っていたのです。今までに見たことがない情景が彼の目に飛び込んできました。米陸軍がいる谷間に向かって、谷の両サイドから攻撃が仕掛けられていたのです。
岩壁にぶつかりそうになりながら、彼は反撃に出ます。視界は悪い、地図とレーダーは頼りになりません。彼は速度と地図で見た距離を頭で計算し、文字どおりカウントしながら攻撃をしかけます。1(秒)1000(フィート)、2(秒)1000(フィート)、3(秒)1000(フィート) 、4(秒)1000(フィート)、5(秒)1000(フィート)。そして操縦機を思い切り引き雲の中へ。また戻り1、1000、 2、1000、3、 1000、 4 、1000、 5、 1000……。
「その調子だ! いいぞ!」と無線から声が聞こえてきます。彼は方向を変えて仕掛けます。1、1000、 2、1000、3、 1000……。弾切れです! でも燃料はまだ残っている!
そこで彼はまた上空高く飛び、僚機パイロットに言います。「一緒に下降しろ! 攻撃開始だ!」。僚機パイロットは何がなんだかわからないまま、ジョニー・ブラボーに続いて下降します。
ジョニー・ブラボーがカウント、位置についての指示を出すその横で、僚機パイロットが対抗射撃に出ます。2機の距離はほんの1メートルほどしかありません。1、1000、 2、1000、3、 1000、 4 、1000、 5、 1000……。上空に一度上がりまた下降。1、1000、 2、1000、3、 1000、 4 、1000、 5、 1000……。
その夜、22人のアメリカ人が無事に帰還しました。死亡者は0です。
ジョニー・ブラボーのような人は、どのようにして生まれるのでしょうか? みなさんは自分を犠牲にしても皆を助けようとしますか? 私は彼に聞きました。「なぜそのようなことができたのですか?」。彼は言いました。「それは、皆も僕と同じ状況にいたら、僕のために同じことをしてくれただろうから」。
米軍は、自己を犠牲にしても他人を救おうとする人々をたたえます。ビジネスでは、他者を踏み台にしてでも勝とうとする人、そしてその結果組織に利益をもたらす人を称え、ボーナスを与えます。
(会場笑)
でも、それって逆ですよね? どんなときでも組織は助けてくれる、たとえ失敗したとしても、組織のなかの誰かがカバーしてくれると信じられる組織で働きたいと思いませんか? でも私たちが誰かのために命を差し出すなんてことはあり得ないですよね。だって、お互いの業績を認めることすらしないんですから。
(会場笑)
では、ジョニーブラボーのような人はどのようにして生まれるか。昔から言われています、「生まれつきなんてことはあり得ない」と。
人間の体は機械です。どういうことかと言えば、人間の身体は私たち自身が生き残れるように行動をとらせる機械です。ビジネスでいえば、期待する行動を取らせるために報酬を与えたり、罰したりしますよね? ゴールを達成して欲しいときにはボーナスをちらつかせますよね? みんなボーナスが欲しいから一生懸命働く、そして目標達成することができる。とてもシンプルです。
人間の体も全く同じように働きます。私たちの体のなかには、私たちが生き残れるような行動を取らせる化学物質があります。幸福、プライド、喜び、愛、達成感……。感情はすべて化学物質が生み出したものです。
そしてその化学物質は大きく分けて4種類あります。これらは「幸せ」に影響する化学物質です。どんな化学物質かというと、エンドルフィン、ドーパミン、セロトニン、オキシトシンです。エンドルフィンとドーパミンは自己中心的化学物質とでも呼びましょうか。誰の力を借りずとも作用することができる。ご説明しましょう。
エンドルフィンは身体的痛みをやわらげる働きをします。それしかしません。走るとエンドルフィンが高まる、ランナーズハイが起きる、なんてことを聞いたことがあると思います。これが何かというと、自分の限界を超えて走るとき、人は快感を感じます。走り終えると最高の気持ちです。1時間後、酷使した筋肉に痛みを感じ始めます。エンドルフィンはこのように、人間に身体的痛みを感じなくさせます。
昔々、旧石器時代。ヒト科の動物はホモ・サピエンスだけではありませんでした。でも私たちだけが生き残りました。それは私たちがこの世で一番賢い生き物だからでも、一番速く走れるからでもありません。私たちが社会的で、仲間と共存しなくては生きていけない種族だからです。お互いを助け合って生き延びてきたのです。
4種の化学物質が、私たちを他者と共存し生き残れるように作用します。50,000年前の旧石器時代、私たちは一番強いわけでもなければ一番早く走れるわけでもない。しかし生きるためには食糧を確保しなければならなかった。どうして生き残ることができたのか?
それは、私たちの持つ特性、忍耐によってです。獲物を何マイルでも何時間でも追い、疲れても、怪我をしても、何があっても住処に食べ物を持ち帰りました。それはもうエクササイズ中毒のように、何があっても次の日にはまた自主的に狩りに出かけました。「昨日ものすごく楽しかった! よし! 今日も絶対に狩りにいくぞ!」みたいな感じです。
(会場笑)
グループとして生き残るのに素晴らしいシステムなのです。ところで、笑うことで気分がよくなるのもエンドルフィンの作用です。笑うことで内臓が振動し、エンドルフィンがその痛みを紛らわします。みなさん笑いすぎてエンドルフィン分泌が間に合わなくなり、その結果お腹が痛くなる。「もうやめて! お腹痛い!」なんてことがたまにあると思います。
(会場笑)
気分が良くなる、これがエンドルフィンの作用です。
次はドーパミンです。ドーパミンは、たとえるなら探しているものが見つかったとき、何かをやり遂げたとき、やることリストを消したときの気分です。すごく気分がいいですよね。目標を達成した時「やった!」という気分になりますよね? それがドーパミンです。
ドーパミンが私たちに物事をやり遂げさせます。たとえば旧石器時代、「空腹になったら狩りに行けばいいや」というスタイルでは、実際に空腹なとき、すぐに獲物にありつけない場合もあるということですよね。後々に備えて満腹の人間を狩りに向かわせる。それがドーパミンの作用です。
食べるときもドーパミンは分泌されます。私たちは気分が良かったときの記憶を甦らせる「何か」を見ると、そのときの記憶を頼りに、再度そのときに感じた良い気分を味わおうとします。気持ちがいいことを繰り返すのです。
たとえば、歩いているとき遠くにりんごの木を見つけるとします。すると少しドーパミンが分泌されます。つまり、私たちはりんごを取る、というゴールを設定するわけです。そしてりんごの木に近づきます。りんごの木が大きく見え始めると「おお、目標に近づいている!」と思うわけです。そこでさらにドーパミンが分泌されます。近づくにつれて、どんどんドーパミンが分泌されます。それが体内に蓄積され、遂にりんごの木に到着すると「やったぞ!!」と達成感を感じるのです。
これが、よく言う「目標を紙に書きだしなさい」ということの理由です。目標は明確で目に見えるものでなくてはなりません。これには生物学的根拠があるのです。私たちは視覚にものすごく頼っています。つまり、生物学的にもフォーカスし続けるためには、必ず「目標を見る」ことが必要なのです。目標を書き出さなければ目標は見えません。目標が見えなければ、モチベーションを高め、それを維持することが難しくなるのです。たとえば、企業のビジョン。企業方針は見えなければならない、だからこそ企業の「ビジョン」と呼ばれるのです。
誰かに成果を上げてもらうため「もっと頑張ればボーナスをあげます」と言うのは、まったく効果的ではありません。その人は聞いてくるでしょう、「あとどれくらい頑張ればいいんですか?」。それに対しての答えが、「今よりももっとです」では話になりません。「見える」目標が必要なのです。
マーティン・ルーサー・キングは言いました。「私には夢があります」と。いつか黒人と白人の子どもが仲良く手を繋ぎ、同じ公園で遊ぶ日が来ることを。そう具体的に言われれば、私たちは想像することができますよね? 達成が目に見えれば、私たちはそれを成功するまでやり続けます。私たちには「見ること」が必要なのです。これがドーパミンの役割です。先ほども言いましたが、ドーパミンとは探し物を見つけたときの気持ちでもあります。
先日、旅行から帰ってきたのですが、帰ってきたらやることがたくさんありました。なので、用事を済ませるため、やることリストを作って出かけました。出先で「あ、あれもやらなくてはいけなかったんだ!」と、リストには書き出していなかったけれどもやらなくてはいけないことを思い出しました。忘れないうちにすぐにその用事を済ませ、自宅から持って来たリストを取り出し、たった今完了した用事をやることリストに追加! すぐさまその項目をリストから消しました! だって達成感! ドーパミンは気持ちがいいですからね!
(会場笑)
ドーパミンには悪いところもあります。それは、ドーパミンは非常に非常に高い中毒性があるということです。たとえば、飲酒、喫煙、ギャンブル、携帯電話もドーパミンを分泌します。
冗談だと思っていらっしゃるでしょう? 朝起きてお酒が飲みたい! と思ったらアルコール中毒だ、とよく言われていると思います。朝起きてすぐ、ベッドから出る前に、一番最初にすることが携帯電話をチェックする……。考えてみてください。携帯電話中毒かもしれません。家じゅうどこへ行くにも携帯電話を手に持って移動する……。
中毒だと思いませんか? 車を運転中、メールが届きます。あと10分で目的地に到着するのに、メールが届いた瞬間に見なくては気が収まらない。
(会場笑)
そんなあなたは中毒かもしれません。メールを開く。内容はこうだとします。「次の金曜日の夜、ディナーでもどうですか?」。金曜のディナーの誘いに、あと10分で目的地に着くのにも関わらず、今すぐ返信しなければ気が済まないあなた。携帯電話中毒かもしれません。
みなさんは「私はマルチタスクをすることができるデジタル世代の人間だ」というかもしれません。であれば、なぜ携帯電話でメール中の交通事故がこんなに頻繁に起こるのでしょうか?
(会場笑)
みなさんはマルチタスクをこなすようになったのではなく、注意散漫になっているだけです。
さらに言えば、統計を見てみましょう。ADDとADHDと診断を受ける人はここ10年で66%も上がっています。ADDとADHDは前頭葉の病気です。最近の若者の66%が前頭葉に問題があるということでしょうか?
いいえ、それは違います。これは誤診です。テクノロジーが進化したおかげで注意散漫な人が増え、やらなければいけないことをきちんとできなくなっている。集中できる時間が短くなる。これはADD とADHD患者の症状と同じです。なので誤診が増えている。それがこれ、ドーパミンの中毒性!
私たちは社内パフォーマンスにも依存します! 具体的な数々の目標数! 数字! ボーナス! コンスタントに目に見える目標や数字を提示されると、私たちはドーパミンを分泌し続けます。私たちは「もっと!もっと!」とパフォーマンスに依存するのです。
これにより銀行もつぶれます。数字を達成するためなら、なんでもする。たとえそれで自分たちが破滅することになっても。どんなドーパミン中毒者もそうなのです。アルコール依存症の人に聞いてみてください。ギャンブル依存症、ドラッグ依存症の人に聞いてみてください。「あなたの人間関係はどうですか? あなたの人生はどうなっていますか?」
中毒性があるドーパミンはとても危険なのです。でもそれはアンバランスなときだけです。バランスがとれているときには、ドーパミンはとても役立ちます。しかし物事のバランスが取れていないとき、それはとても危険で破壊的な力を持ちます。
もっと言いたいところですが、次にいきます。
(会場笑)
人は走るだけで、目標を達成するだけで、エンドルフィンやドーパミンを得ることができます。でもそれは愛や信頼をもたらしません。そこで関係してくるのがこちら(セロトニン)です。これらが私たちの社会を円滑にし、ジョニー・ブラボーのような人をつくります。こちらの化学物質のおかげで、リーダーはリーダーとしての責任を果たすことができます。
外の世界には危険がいっぱいです。どんな時代でもそうです。旧石器時代の危険はサーベルタイガー、気候、限られた資源等、他にもたくさんあったでしょう。そんな厳しい環境のなか、私たちはどうやって生き延びてきたのでしょうか?
皆で協力してきたのです! 信頼しあうことで「安心感」「仲間意識」を感じてきたのです! 忘れないでください。外の世界は常に危険でいっぱいです。たとえば、あなたを蹴落としたり、アイディアを盗もうとする競合会社、経済悪化かもしれない、テロがあるかもしれない。外部からの危険は、ある日突然私たちを奈落の底に突き落とす可能性があるのです。
組織のなかの危険が生じるとき、そこには理由があります。リーダーが皆に安心感を与えられていないときに、危険はやってきます。つまりリーダーの仕事は、組織のなかの人々が「安心」を感じられるようにすることです。
イソップ物語に、とてもよい例があります。4頭の雄牛がお尻合わせで立っています。ライオンが、この4頭の雄牛を食べようと狙っています。ライオンがどんな角度で襲おうとも、ライオンが噛みつけるのは彼らの立派な角だけでした。しかし、この4頭は意見の互い違い、それにともなう言い合いの結果、お尻合わせの完璧な防御フォーメーションを解いて、別々の方向に歩き出したのです。結果、ライオンは雄牛を1頭ずつ仕留め、4頭すべて食べてしまいました。
皆で協力しあえば、外の危険に一緒に立ち向かうことができるのです。4頭の雄牛の例のように、内部に亀裂が入ると、組織内で働く人たちは安心感を感じられません。そしてそのような組織で働く人たちは、外部の敵から身を守るのとまったく同じように、内部の人間からも自分を守ることに全力を注ぐようになります。内部の人間関係の揉め事について心配したり、誰かが自分の業績を横取りしていくんじゃないかと不安になります。上司は自分の味方をしてくれないと不満に思います。
考えてみてください、どれだけ自分の身の安全を確保するために時間と労力を費やしているかを。その時間と労力を製品開発、ビジネス、あらゆる仕事に集中してつぎこめたとしたら……。自分の身を守るのに一生懸命で、仕事がおろそかになるなんて破滅的ですよね。
リーダーがやらなくてはならないのはこの2つです。
会社にとって必要な人と必要でない人、守るべき人と守りたくない人を決める。これは会社の価値観を確立することに繋がります。
「安心感」「身内意識」を内部の誰に感じて欲しいかを決める。重役だけが「安心」を感じていればいいのか、それとも仲間意識を重役の部下たちにも広げていくか。そのさらに外まで広げるか、どこまで広げるかを決めること。
素晴らしいリーダーたちは例外なく、組織の誰もが安心と仲間意識を感じられるように全力を尽くしています。そんなリーダーが率いる組織では、新入社員ですら「ここが自分の場所なんだ!」「ここは安全だ!」と感じるのです。すぐれたリーダーがいる組織では、「何かあれば、会社が自分たちを守ってくれるに違いない」と組織全体が感じているのです。
リーダーシップ、これが残り2つの化学物質の作用です。セロトニンはリーダーシップを司ります。セロトニンはプライド、ステータスを私たちに感じさせる役割がある物質です。これが私たちが皆から受け入れられ、認められることに心を砕く理由です。私たちは社会的な動物なので、他者から認められることが必要なのです。だからオスカー賞なんでいう賞があったり、表彰式なんかがあったりするんです。だから卒業するときに学位授与式なんでいうものがあるのです。
考えてみてください。大学を卒業するのに何が必要か? 授業料を払って、必要な単位を取っていく。それだけのことですよ。卒業するとき、それはメールでも事足りるわけです。「おめでとうございます! 全ての単位を履修されたので卒業を認めます。添付PDFは卒業証書です」。
(会場笑)
あまり嬉しくないですよね(笑)。なので、卒業は盛大に祝います。これは皆の功績をたたえるためです。そこに集まってくるのは、家族、友人、家族等、これまで私たちを支え、助けてくれた人達です。卒業式当日、ステージの上に立ち、卒業証書をもらう。すごく嬉しいですよね。ステータスが上がったような気分、誇らしい気分になります。そういえば、セロトニンが分泌されると自信にも繋がるんですよ。
次にお話するのが、セロトニンの一番すごいところです。
卒業証書を受け取るその瞬間、セロトニン分泌は最高潮に達します。そしてその全く同じ瞬間、それを客席で見守る両親のセロトニンレベルも最高潮に達し、ものすごく誇らしい気分になるのです。これがセロトニンの役割です。セロトニンは親子間の絆を深める、上司と部下の絆を深める、コーチと選手間の絆を深めるために作用するのです。
考えてみてください。授賞式等で大抵の受賞者は何というか? 「彼らのサポートなしにはここまでやってこれませんでした」じゃないですか? 私たちは、私たちをこれまでサポートしてくれた人たちに感謝するのです。「彼らのサポートなしにはここまでやってこれませんでした」と受賞者が言えば、名前を挙げられた人たちは「君のことを誇りに思うよ!」と言いますよね?
私たちは、サポートしてくれる人の期待に応えるために頑張るのです。素晴らしいチームはトロフィーを勝ち取りたいわけではないのです。素晴らしいチームは、コーチにトロフィーを渡したい一心で頑張るのです。コーチを誇らしい気持ちにしたい一心で頑張るのです。両親を誇らしく思ってもらいたいから頑張るのです。ステータスが上がったような気分にさせ、誇らしい気分にさせる。とても気分をよくさせる、そしてその周りの人たちも同じ気分にさせ、皆を一緒に成功させようとする。それがセロトニンが人間に働きかける作用なのです。
問題は、私たちがセロトニンを錯覚することもあるという点です。私たちは収入によって、お互いの社会的ステータスを判断します。なので、高価な物を持つということは、あなたのステータスを上げることになります。だから服のロゴは外側に付いているんです! 内側に付けたらブランド物だってわからないじゃないですか!
プラダのメガネの赤いラインもそうですよ。グッチの靴を履くとどんな気分ですか? すごく気分がいいんじゃないですか? グッチの靴を履いて歩くと、自分がすごくお金持ちになったような、ステータスが上がり、自信が湧き出てくるような感じじゃないですか? 靴にステータスがあらわれる、そしてそれはとても気持ちがいいことです。
でも、ここで問題が出てきます。本当の意味での自分への自信や成功と、グッチの靴を履くことには何の関係もないということです。これが私たちが「セロトニンを錯覚する」ということの意味なのです。そしてこれが、私たちが成功したような気分になりたくて高価なものを買い集めるけれども、実際には成功した気分にはならないことの理由です。成功したと錯覚するだけなのです。
セロトニンはリーダシップを司ります。ここにはシンプルな歴史的理由があります。ホモ・サピエンスが進化する過程でとても現実的な問題がありました。私たちははるか昔、100人から 150人でコミュニティを形成し、グループで共存していました。
現実的な問題とは、お腹が空けば誰かが獲物を取ってこなくてはならない。そして誰かが取ってきた獲物をドンっと地面に置いたとしたら、皆が競い合い、我先にと獲物にありつこうとする。もしあなたがラッキーで、たくましい体つきであれば、皆にひじてつを食らわせて、真っ先に獲物にありつくことができたでしょう。もしあなたが、繊細なアーティストタイプの人だったら……。確実に顔面にひじてつを食らうでしょう。
(会場笑)
これでは皆で生き残ることはできませんし、共存からは程遠いですよね。思い出してください。皆で団結し、ひとつの共同体として住むということは、皆でお互いを信頼しあうから、夜も安心して眠ることができるということ。そして誰かが危険を察知したら、すぐさま全員に知らせるという暗黙の了解があるということ。仲間を信じることができなければ、夜もおちおち眠っていられません。
会社も同じです。お互いを信じていれば、ときに新しいものを開発するリスクを取ったりして、世界に新しいものを生み出そうとします。信頼がなければそれはできません。グループで一致団結することが必要なのです。夜中、敵が近づいているのに、「こいつは俺に昼間ひじてつを食らわせた」という理由でひじてつ男を起こしてやらない……というのは悪いシステムの例です。
なので、私たちは階級制を持つ動物として進化してきたのです。お互いを常に監視し、批判し、誰が上で、誰が下かを決めてきました。旧石器時代、一番強かったのは体が大きく筋肉があり、身体能力の優れた人だったことでしょう。クリエイティブな業界でのそれは才能かもしれません。米軍では勇気でしょう。上下関係を決めるのに、すべてに共通する決定的な要素はありません。その業界によって、求められる才能が違うからです。
誰かと一緒にいて、皆さんがとても緊張しているとする。皆さんはその状況下では上下の「下」です。逆に、誰かと一緒にいて「この人ものすごく緊張しているな」と思うこともあるでしょう。彼らは皆さんと一緒にいることでとても緊張しているのです。そのときは皆さんが上下の「上」です。
(会場笑)
もっと言いたいところですが、次にいきます。
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