2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
提供:サイボウズ株式会社
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深澤修一郎氏(以下、深澤):では続いてのポイントにいきたいと思います。漏れてはいけない社員情報や給与データの管理についてです。
ここは、他社さんでもよく耳にする悩みかなと思っています。やはり、社員情報や給与データは重要な情報なので、会社のシステムに保存されており、出社しないと見られない仕組みを取っていたり。
また、テレワークを実施しようとすると、私物PC端末でそういった情報を見ていいのかと、お悩みを持たれているお客さまがけっこういらっしゃるかなと思います。サイボウズの場合はどのように行っているのでしょうか?
野間美賀子氏(以下、野間):そうですね。まずそういった社員の個人情報に対しては、ほとんどがkintone上で保管している状況になっております。
例えばこのような社員名簿はkintoneのデータベースに溜めています。あとは給与辞令といったものも、社員への通知公開までこの中で行っていて、kintoneが我々の給与情報のデータベースにもなっているかたちです。
深澤:確か4~5年ぐらい前は、給与辞令は紙でもらっていましたよね?
野間:そうなんです。kintoneに移行したのがちょうど4、5年前ぐらいですね。
深澤:なるほどですね。こういった情報はかなり重要な情報だと思うのですが、外部から使う際のセキュリティの面については、どのような対策を取られているのでしょうか?
野間:kintoneはクラウドサービスなんですが、セキュアアクセスという仕組みがあります。サイボウズではこの仕組みを利用し、クライアント証明書が入ったパソコンやスマートフォンからしかアクセスができないようにしています。
なので、会社から貸与されたパソコンに証明書を入れて、そのパソコンからアクセスする対策を取っています。このクライアント証明書は、システム管理者であれば機能を失効することもできるので、万が一PCを失くした場合も速やかに対応することができます。
パスワード等についても、明確なパスワードポリシーが社内にありますので、それを守ることでセキュリティ面は担保しています。
深澤:ありがとうございます。社外から使っても大丈夫な体制を取っているんですね。もう1点気になるのは、kintoneで社員の情報や給与の情報を管理していると、自分の給料が関係者以外に見られていないかという心配があるんですが、その辺りは何か対策されているのでしょうか?
野間:サイボウズの場合は、全社員分のkintoneアカウントがあるので、そういった不安はあると思います。しかし、kintoneは細かくアクセス権の設定ができるようになっています。
例えば給与情報は全社員には見られないけど、上長や人事だけ情報を閲覧できる、という設定がチェックボックス形式で選択できるようになっています。ですので、私たちが情報にアクセスする必要がある人を把握した上で、適切な設定をすれば、必要な範囲にだけ公開することができるようになっています。
深澤:情報システム部の方に依頼しなくても、人事部の方だけでアクセス権設定ができるということですね。
野間:そうなっています。
深澤:安心ですね。
野間:よかったです。
深澤:ありがとうございます。社員の個人情報等については、こういったかたちで管理をしているとのことでした。
深澤:では4つ目、入社の手続きについてです。テレワークが中心という現状ですが、どのような対応をしているのか気になっております。私が社内で情報を見ている限りだと、今年の新入社員はフルリモートで入社式などをしていると伺っています。
こちらは弊社の情報システム部の社員のTwitter投稿なんですが、「テレワークに対応するために端末を用意しています!」というつぶやきを目にしていました。リモートで入社式をしていることは知っていたのですが、実際の裏側はどう準備されていたのでしょうか?
野間:まず、リモートでの人事の手続きは、以前と変わらないフローがあります。内定承諾されたところからアナウンスが始まり、入社前、入社日、入社後と、書類が必要なシーンが出てくると思います。
深澤:これはすごい量ですよね。
野間:そうですね(笑)。
深澤:リモートではどのように対応したのでしょうか?
野間:順番にご紹介していこうと思います。
まず、内定承諾のフェーズでは、kintoneにある「ゲストスペース」という機能を使って、内定者とのやり取りやアナウンスを実施しています。ゲストスペースは、外部の人を特定のスペースにだけ招待できる機能を持っているので、必要な人に必要な情報だけを届けられるスペースになっています。
深澤:社内アカウントを持っていなくてもやり取りできるオンラインの環境を作って、そこで案内しているわけですね。
野間:その通りです。そして私から一斉に内定者にアナウンスするのですが、誰かが質問をくれることによって、回答がみんなに見られる環境になっています。なので、同じような質問が人事に届くことを回避できるようになっています。
深澤:確かにメールでやり取りをしていると同じ質問がいろんな人から来てしまいますが、こういった掲示板のような機能なら、オープンに質問してみんなが理解できて便利ですね。あとは「いいね」とかも付くと、どの質問に興味があるのかわかってきますよね。
野間:そうなんです。興味関心が多い“よくある質問”については、あらかじめ、よくある質問集を用意しておくことで、「事前にそこを見てね」と言うだけで、質問の数を減らすことも可能です。
深澤:なるほど、ありがとうございます。こういった質問をオープンな場所で行うことは問題ないと思うのですが、入社手続きをする際に、個人情報の登録に個別のやりとりも必要だと思います。そこに対してはどうしているのでしょうか?
野間:通常のフローですと、Excelやメールを駆使して連絡を取っていくと思うのですが、そうするとExcel添付忘れや、修正ポイントの指示がわかりにくいなどのコミュニケーションで苦労することがあると思います。
そこでサイボウズでは、kintoneの「アプリ」という機能を使って、本人と人事しか見られないフォームを用意しています。アプリの中の情報が常に最新情報ですので、「どれが新しいファイルだっけ?」といったことはないですし、個別にコミュニケーションが取れるようになっています。
なので、「ここの欄に追記がほしいです」というコミュニケーションが伝わりやすい仕組みになっています。
深澤:ありがとうございます。Excelとメールでのやり取りに比べて、より安全で楽なやり方なのかなと思いました。ちなみに、アカウントの配布などはどうやっているんでしょうか?
野間:パソコンを郵送するタイミングで、情報システム部と人事部が協力して対応しています。オンライン上で、本人にしか見られないようにアカウント情報を配布しており、それを利用することで届いたパソコンがすぐに使える状況になるように整えていきました。
深澤:これもゲストスペースでやり方を事前に共有して、アカウントを把握してもらっているんですよね。
野間:はい、そうですね。
深澤:ありがとうございます。あとはもう1つ、社労士とのやりとりについてはどうでしょうか?
野間:そうですね。入社式を迎えて、初めてのお給料の払い込みまでがなかなか大変だと思います。サイボウズでは、社労士との契約で給与の事務を委託していますので、社労士のご担当者とのやり取りについても、同じようにkintoneのゲストスペースでいつでも受けています。
内定者から預かった情報をこの中で提出していたり、そこに対する質問や応答もこのスペース中で行っています。
深澤:ありがとうございます。外部の専門家とのやり取りもkintoneで記録を残しているというかたちですね。サイボウズの入社手続きについて、野間さんに教えていただきました。
次に5つ目のポイントに移っていきます。「在宅勤務が長期化する中で社員の健康管理はどのようにしているのか」についてです。この部分はかなり気になる方も多いのではないでしょうか?
やはり在宅勤務が長くなってきますと、今までと環境が違いますので、メンタルのケアが必要になってくると思っています。ずっと在宅で気分が落ち込むとか、チームメンバーと話せなくて寂しいといった需要があるのではないかと思っています。
これは実際にサイボウズのとあるマネージャーのつぶやきです。kintoneには、社内SNSのような機能がございまして、自分の思っていることを書き込めるようになっています。その中に、「メンタルの不調が出てきました」というつぶやきもありました。こういったメンタル面でのサポートに対して、人事労務部ではどのような対策をされていたのでしょうか?
野間:そうですね。サイボウズでは「Cybozu Condition Survey」という名前でパルスサーベイ(注:簡易的な質問を短期間に繰り返し実施する調査)を実施しています。数分で答えられる簡単な質問の回答を高頻度に、長期的に行っていく手法になっています。
まず左側のフォームで、週1回を目処に自分のペースで回答をしていきます。回答が溜まってくると、自動でグラフが作成されます。すると、自分のコンディションの変化を見られるような仕組みになっています。このサーベイを作る上で工夫したところは、左側のフォーム入力のところです。
Q1がフィジカルで、Q2がメンタル、Q3がサイボウズらしくチームワークについての質問を入れています。このサーベイも自分たちで作っておりますので、「サイボウズで実施するためには、どういった設問がどういう頻度でどう答えられるのがいいかな」というところから考えて作られるので、ここから議論を重ねて作り上げています。
継続的に使い続けてもらうこと、知ってもらうことが大事になってきますので、社員全員が使うポータルのトップに、コンディションサーベイのリンクを配置しております。
これに気付いた方はここからサーベイの回答をしますし、一度回答すると1週間後に通知が来て「また回答しましょうね」というリマインドが来るようになっています。より続けやすい仕組みを日々検討し続けているかたちです。
深澤:ふだん利用しているシステムのトップ画面にサーベイのリンクがあると、非常にわかりやすいですよね。ちなみにシステムを作るところから始めていると思うんですが、準備にどれくらい時間が掛かったのでしょうか。
野間:そうですね。準備期間は約1ヶ月ちょっとでした。具体的には、衛生委員会のメンバーから「テレワークで社員の健康状況が見えづらくなっている」という声を中心に、産業医の先生にもアドバイスをいただいたことがきっかけでした。
そのあとはkintoneのスレッドの中で、「サイボウズの場合は、どうやっていこうかな」という議論を日々積み重ねました。一度ベータ版を作りまして、人事本部の有志メンバーに回答してもらうことで、そこでのフィードバックを取り入れながら正式リリースに向けて改善した経緯がありました。
深澤:想像していたよりずいぶん早い印象がありました。
野間:本当ですか?
深澤:やはり自分たちでシステムが作れることで、早くリリースできたのでしょうか?
野間:そうですね。自分たちで実際に使いながら変えられるところがkintoneのいいところなので、便利に活用したなと思っています。
深澤:ありがとうございます。社員の健康管理について、野間さんにご紹介いただきました。まとめに入っていきたいと思います。
野間さんから話を受けて、人事労務部の方が大切にしていることを3つにまとめてみました。1つ目は「まず思い込みを疑ってみる」という視点です。
これはかなり大事かなと思いました。やはり押印が必要だから出社しないといけないですとか、入社手続きは出社しないと絶対できないといった思い込みがあると思うのですが、本当にそうなのか。自分たちで変えられることはないかと、現状を疑ってみる。こういった姿勢が大切なのではないかと思いました。
2つ目は「理想のために妥協しない」という視点です。そもそもの押印の意味から考えることは大変だと思いますし、ふだんの定例業務もある中で、そこまで検討するのは非常に大変だったと思います。
サイボウズは人事制度に関して、「100人100通りの人事制度」という理想を抱えておりまして、これを達成するためにはやる、といった姿勢がサイボウズの人事労務部にはあると感じました。
最後に3つ目。「ツールの力を借りる」ということです。やはり思いだけがあっても、改善していくことはなかなか難しいと思いました。メールやExcelや電話を使っていたら人事労務部はパンクしてしまいますので、自社に合ったツールをうまく活用する姿勢が非常に大事なんじゃないかなと思いました。
ということで、私が感じたポイントをみなさんにお伝えさせていただきました。
野間:ありがとうございます。
深澤:では最後に、野間さんからまとめのお話をいただきたいと思います。人事労務部の視点から見て、サイボウズの今後の課題と展望を教えていただけますでしょうか?
野間:そうですね。ここまでテレワークの話を続けてきましたが、テレワークが良いとか出社が悪いということではなく、双方を両立しながら働きやすい環境を整えていきたいと思っています。
一人ひとりが働きやすい環境は、業務内容や自分の特性によって変わってくると思うんです。それを自分で選べることが大事だと思っていて、先ほどあった100人100通りの働き方にもつながってくると思っています。
そのために我々としては、まず、リモートでも健やかに働き続けられるような環境や仕組みを作ることに時間を割いて議論をしてきたのですが、どんどん状況も変わっていきますので、ここは引き続きがんばっていきたいと思っています。
そして、「今後のオフィスの在り方」について日々議論を重ねています。現在のサイボウズは、在宅勤務も当たり前になってきていますが、今後オフィスをどのようにアップデートしていくか。みんなが出社したいと思うような環境はどんなものなのかについて一生懸命、議論をしているところです。
最後に、一度整備しただけではなくて、今後どんどんアップデートしていくことが一番大事だと思っています。1回施策を実施してOKではなくて、みんなが働きやすい環境日々探求して、それが日々変わっていくことがいいんじゃないかと思っています。
深澤:常に職場の環境を整えることを討論していただき、ありがとうございます。私もサイボウズの一員ですので、こういった働き方をよくしていくことに、貢献していきたいと思っております。野間さんありがとうございました。
野間:ありがとうございます。
深澤:会場のみなさん、いかがでしたでしょうか。サイボウズ 人事労務部の野間さんにテレワークの働き方について伺ってきました。今回ご紹介した内容が、みなさんの何か良いきっかけになればと思っております。
ということで本セッションを終了とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
野間:ありがとうございました。
(会場拍手)
サイボウズ株式会社
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