2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
キャリアのNew Norm(全1記事)
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池澤あやか氏(以下、池澤):セッション4のテーマが「キャリアのNew Norm」です。改めまして、司会の池澤あやかです。どうぞよろしくお願いします。
一同:よろしくお願いします。
池澤:今回のゲストをご紹介します。Managing Director of Mistletoe Singapore Pte. Ltd. の大蘿淳司さんです。よろしくお願いします。
大蘿淳司氏(以下、大蘿):よろしくお願いします。
池澤:続きまして、株式会社デジタルハーツプラス代表取締役の畑田康二郎さんです。
畑田康二郎氏(以下、畑田):よろしくお願いします。
池澤:そして最後に、リンクトイン・ジャパン株式会社日本代表の村上臣さんです。よろしくお願いします。
村上臣氏(以下、村上):どうも~村上です。よろしくお願いいたしまーす。
池澤:大蘿さんは肩書きにも入っていたとおり、現在シンガポールにいらっしゃいます。
大蘿:はい、そうですね。
池澤:シンガポールを含めて、海外では今どんな状況ですか?
大蘿:そうですね。海外の投資先もけっこうあるんですけど、基本的にはソフトロックダウンかロックダウンというみんな出られないという状況で、ステイホームしてここを乗り切ろうみたいな感じで。世界中がそうなってますよね。
池澤:今回テーマが「キャリアのNew Norm」なので、そういった海外から見たキャリアみたいな視点もお話いただければなと思います。さっそくなんですが「withコロナの時代、人材採用はどう変化していくか」というお話をしていきたいと思います。
とくに今回、村上さんがリンクトインの日本代表を務めてらっしゃるので、リンクトインが出てきてから採用がどんどん変わってきたと思いますし、これからの時代もそこに果たせる役割が大きいんじゃないかなと思うので。「これから果たしていきたい役割」というところをお聞かせいただければなと思います。
村上:池澤さん、ありがとうございます。リンクトインは「採用に役立つ」というイメージでご存知の方はご存知だと思うんですけども。今はどっちかというと、ビジネスコミュニティみたいなかたちでプロフェッショナルが集まっていろんな悩み相談をしたりとか、ニュースを得たりとか、いろんなバリューが整ってきてます。
ただ日本だと外資系のGAFAとか含めて、だいたいの求人はリンクトインに出してますので、そういったところでは非常に役に立つかなと。また今、明確にきているのがダイレクトリクルーティングの波だと思います。
なので今までみたいにエージェントさん経由でやるっていうよりかは、これから採用自体が一旦縮小すると思うんですね。トレンドとしては。みなさん、一旦引き締めモードに入るんですけども。ただやっぱり日本って人材が足りないので、特定のロールに関しては厳選採用を続けていくと。ただコスト意識も高くなるっていうと、やっぱり直接採用したいっていう思いが企業側は強くなると思います。
なのでリンクトインもそうですし、直接企業と人とがつながるっていうところをみんなやろうとしてくるので。これは転職を考えている人にとっても非常にいいことですし。企業としても、今すぐ採らないにしてもタレントプールを作るっていうところが、日本はまだ意識があんまりない企業も多いので。囲い込んで長期的に良い関係を会社と個人が作る、というような転換点になるんじゃないかなと思っています。
池澤:そういった関係性を作るのに、リンクトインは向いていると言えますか?
村上:そうですね。企業は企業ページとか、採用目的で使っている会社も多くて。日本で知られているのだと、たぶん楽天さんとかヤフーさんとかメルカリさんとかは、けっこうカルチャー発信も含めてリンクトインでしっかりとしたページを持っているんですね。
そういうところから、会社ももちろんページをフォローするっていうのもそうですし。実際に働いている人とどんどんネットワークがつながっていくわけですから。メッセージも簡単に送れるということですので、気軽に「実際のところどうなの?」っていう意見が聞けると思うんですよね。
もちろん「それってTwitterとかFacebookでもできるじゃん」と思うんですけれども。やっぱりFacebookとかは、学生時代からの積み重ねとビジネスが若干混じってきて、良いところと悪いところがあったりする。
TwitterはTwitterでまた別の世界があって、どちらかと言うと匿名で楽しむような文化があるので。実際に企業に入ろうって思うと、やっぱり実名でやってしっかり自分のプロフェッショナルな姿を理解してもらってつながっていくほうが、いいと思うんですね。
そういう意味だと、こういった新しいプロフェッショナルコミュニティをみんなで作っていくというところを、このコロナのタイミングで意識し始めるんじゃないかなと思っています。
池澤:大蘿さんはこの点、どう考えていらっしゃいますか?
大蘿:僕はキャリアって何だろうって考えたときに、僕自身もキャリアチェンジでいうと、たぶん十何回しちゃってるんですけども。
池澤:お~、多い(笑)。
大蘿:たぶんね、異常だと(笑)。海外からすれば別にいるんでしょうけど。僕、最初は「スキルや会社のポジションというのがキャリア」だとすごく信じてて。30何年社会でやってますけど、20年くらいはそれを信じてたんですよ。
それが10年くらいで海外中心に働くようになったりとか。あと今回のcovidで先行きが不明になって、みんながいろいろ今やってることに疑問を持ち始めて。「スキルとか会社のポジションだけでキャリアっていう時代が終わってきたな」って感じてたのが、今回のcovidで。みんな1回、自分の立ち位置と「何やるんだろう? 何のために生きているんだろう?」っていう根源的な質問を投げかけて。
やっぱりやりたいことをやるべきじゃないか、って言い始めている人もけっこういて。海外の人ってわりとそういう人が多いんですけど。でもやっぱり、なんか縛られていたところが解放されている感があって。
僕も10年くらい前から、ダイナミックにいろんな仕事をするようになって。キャリアってむしろ「誰と働くか」とか「どういう環境か」っていう2つの組み合わせで。自分自身が変わっていったり成長したりするっていうふうに、感じたんです。別にきれいにまとめようとしてるわけじゃないんですけど(笑)。
そういう意味でリンクトインは、どっちかというと「会社を変わっていく」とか「スキルを向上させていく」っていうので。臣さんはどっちかというと、そっちを推してると思うんですけど。僕はね、その時代はちょっと終わってきてるんじゃないかって勝手に妄想してます(笑)。
池澤:なるほど。キャリアチェンジといえば最近、と言っても2年前ですけど。畑田さんは経産省から今の会社に移られたということで。これからのキャリアチェンジがどう変わっていくのか、そしてキャリアチェンジがどうだったかみたいなお話をしていただければと。
畑田:私自身は経済産業省に14年勤めていましたので、なにか不満があったとか自分のキャリアがどうとか、そういう感じでもなくて。すごく楽しかったんですよ。ZOOMの背景を宇宙にしているのも意味があって。内閣府に出向していたんですね、一時期。そのときにやったのは「宇宙活動法」っていう、民間宇宙ビジネスを作るための法律を作ろうという日本政府50年越しの悲願を、自分がパズルの最後をはめるっていうすごく楽しい仕事をやらせてもらったりとか。
もちろん、法律ができるだけで民間宇宙ビジネスが出てくるわけじゃないので「宇宙産業ビジョン」という、政府の政策支援をもっと宇宙分野につぎ込もうっていう報告書を書いたりとか。報告書のペーパーワークをしただけじゃもちろん動かないので「ビジネスアイデアコンテストやるぞ」って、JAXAとかいろんな人たちを巻き込んで立ち上げるとかっていう、すごくやりがいのある仕事だったんです。なので「僕はずっとこれをやっていくんだろうな」って思っていたんですけど。
でも私の中でけっこう衝撃的だったのが、トランプがアメリカの大統領になるっていうのはまったく予想もしてなくて。「これはすごい時代が来たな」と。周りを見渡せばやっぱり役人の人たちはすごく緻密に、寸分の狂いもない歯車を組み上げていろんな制度とかを作っていくんですけど。問答無用でTwitterで撃破してくる人が交渉相手のときに、とてもじゃないけど今の自分および周りの人たちで、この世界の中で伍していくっていうのは難しいだろうな、っていう衝撃を受けたんです。
私も経産省に14年も勤めていたので、自分のことを立派でまじめな人間だと誤解し始めてたんですけど、そんなことはなくてですね(笑)。僕はどっちかというとフラフラしているような人間なので「ここが居場所じゃないんじゃないかな」みたいに思ったときに。デジタルハーツという会社は、ベンチャー支援を担当していた10年前くらいからずっと知り合いだったんですけど。そこの創業者の宮澤さんが「畑田がいるべき場所はそこじゃないだろ」と。
「霞ヶ関の中も知っている君が、外に出て感じることをうまく外と中をつなげていくみたいなことがもしできたら、そっちのほうが社会にとって価値があるんじゃないの?」っていうことを、サクッと言われちゃいまして。そうですねみたいな話から。
デジタルハーツにはゲームが大好きでニート、フリーター、引きこもりと呼ばれるような人たちがむしろ主戦力になっていて。ゲームのバグを日々探しているっていう、すごくすばらしい会社で、最高だなと。こういう人たちがこれから活躍していく、新しい当たり前になっていくと僕は思うので。まさにそこを自分が手伝うことができるんだったら、それはすごく楽しい仕事だなと思って、サクッと転職しちゃいました。
池澤:なるほど。これから求められていく人材というのは、まさにそういった人たちだと考えられているんですか?
畑田:まさに今、世界中の人たちが強制的に引きこもりにさせられているわけじゃないですか。これっておもしろくて。これまでは「通勤電車に乗って毎日働くなんてできないない」っていう人とか、あるいはもしかしたら「身体障害があって電車で通勤なんてとてもできません」みたいな人たちは、やむを得ず在宅で仕事をするか、あるいは在宅の仕事なんてほとんどないので労働参加できなかった人たちが、すごくいっぱいいるわけですよね。
一方で今、健常だといわれていた人たちが強制的に引きこもりにさせられて、リモートワークになってるのって、実はそこの競争条件が埋まっている可能性があってですね。通勤という制約がなくなることで、労働参加する人が増えると思うんですね。
これから起きることってたぶん、引きこもりの逆襲で。今までは学校で画一的な教育になじめないとかね。就活で嘘ついて「御社が第一希望です」って言えない人たちが、社会から排除されてたわけですけど。むしろそういう人たちが、どんどん入ってくるっていう社会になっていくと思うので。むしろ引きこもり至上主義みたいな。「どんどん引きこもってがんばるぞ」みたいな社会になっていくんじゃないかなと思ってます。
池澤:村上さんと大蘿さんにもお聞きしたいんですけど。この時代を経て求められてくる人材っていうのは、変わってくると思いますか?
大蘿:僕はどっちかというと世界というか、日本と海外で比較するという意味じゃないですけれども。そういう意味でいうと、環境適応能力の最大化っていうんですか。それがすごく大きくなると思っているんですよね。
さっきも言いましたように、自分のキャリアをなんて考えるかというときに、僕は「誰とどういう環境で仕事をするか」っていうのが今後のキャリアの考え方ってなったときに、自分も10回くらい変えたからっていうわけではないですけれども。やっぱり常に、1年ごと2年ごとに転職とはいわないまでも仕事を変えていくっていうこと。しかも意図的に。
たぶん世の中が変わるより自分が早いスピードで変わっていけば、変化はきっと怖くなくて。むしろ変化を楽しむことができると思うんですよ。「そういう人が求められる」って言い方は変かもしれませんけど、きっと楽しく生きていけるって最近すごく思っています。
僕も最近好きなことしかやってないので(笑)。よく「いいね」って言われてますけど。でも好きなことをやりながらも、自分を常に変えていかなきゃいけないので。それはそれで人知れず努力はしてるんですけど。そんな感じがします。
池澤:会社に属するというよりも、今後はワクワク心躍るプロジェクトベースで仕事に関わっていくほうがいいのかもしれないですね。
大蘿:そうですね。会社の組織であっても、会社の中をプロジェクト型にするっていうのは絶対できるので。そういうふうにしていく環境がたぶん求められるし、そういうところに人が集まってくるんじゃないかっていう気はしますけどね。
池澤:村上さんはいかがですか?
村上:そうですね。やっぱり今回の件ってすごく大きくて。とくに日本って、実際に会って仕事をすることが多くて。夜も飲み会とかあったじゃないですか。
池澤:過去形(笑)。
村上:いやいや、そうですよ。だってもう「New Norm」ですから過去形ですよ(笑)。ただ、自分を振り返るきっかけになったと思うんですよね。とくに「家にいなくちゃいけない」「自粛だ」ってなったときに、じゃあどうやって人とコミュニケーションを取ろうかとか。あとは、実際に会うことの価値が変わりましたよね、今回。
人と会うことがリスクでもあり、かつバリューでもあると。こんなに誰とフィジカルに会おうかっていうことを、真剣に考えたこともなかったでしょうし、そこに優先度をつけなくちゃいけないっていうことも、初めてだと思うんですよね。家族だったらいいけど、ほかの人と出て行って遊んで罹っちゃったら嫌だ、とかいろいろあるじゃないですか。なので仕事のみならず、プライベートも変わってきていて。
そうするとやっぱり、何を優先するか。仕事でも何を優先して何を大事にして、何を楽しくするか、とか。今勤めている会社も実際どれくらい社員を守ろうとしているか、というのが如実に出ちゃったわけですよね。「うちの会社のこと、見直した」って思ってる人もいると思うんですよね。こんなに早く動いて、すごく自分たちのことを考えてくれると。
その逆もたぶんあると思うんですよね。意外と「来い来い」言われたりとか。安全よりも利益を優先するとか。それは人それぞれの価値観ではあるんですけども。それが自分の想いと合う合わないっていうのが、より出てくると。
大蘿さんはそこの基準が「楽しい」ってことだと思うんですけれども。私も楽しいプラス、振り返って自分に何が一番合うのか。どういうプロジェクト、どういう会社、働き方も含めてですよね。そういったバリエーション、多様性が出てくることによって、それを合わせていくってことをし始めるきっかけになるんだろうなと思います。
池澤:キャリアチェンジの仕方っていうのも、どんどん変わってきますよね。転職活動もすごく変わってきそうですね。そうなってくると会社の名前で選べないじゃないですか。どうすればいいんですかね?
村上:一番はリファラルとか、直接企業を探して会話をして。今までの「数回の面接で働く場所を決める」って、けっこう異常だと思うんですよね。人事の人って、やっぱり欲しければいいことしか言わないですし。聞けば、なんとなく悪いこともぼんやりと言ってくれるんですけども、どっちかと言うとプロモーションじゃないですか、やっぱり。それが仕事なので。入ってもらうのが仕事。
やっぱり知り合いの輪を広げていって「人事はそう言ってるんだけど、実際働いている人はどうよ?」とか。あとリファレンスも重要になってきますよね。お互い見極めるうえで、会社側もいろんなネットワークを使って「この人、前職でどうでしたか?」みたいな。海外では、一般的にリファレンス絡ませて採るじゃないですか。
日本もそういったリファレンスの文化とか、あとは直接情報を取りに行って、長期のプランで自分のキャリアを考えたときに「こういう会社いいよね」って思ったら、そこに能動的に働きかけていく。自分のことも「今こういうことをやっているんです」と。「会社に興味があります。こういうところがいいと思っています。ぜひ働きたいですね。いつか」みたいな会話をお互いし始めるっていうこと。
「転職するぞ」って言って「3ヶ月以内にやるぞ」で。「面接して、通りました、イエイ」ってなると、やっぱり入ってからのギャップ、オンボーディングが困るんですよね。それの最たる例が、新卒なんですよ。新卒も今までって、ジョブフェアやって説明会でいいこと聞いて、書類選考、SPIやって、数回の面接で行くじゃないですか。
ただ3年以内に50パーセント、半数以上の人が辞めてるわけですよ。これだけコストをかけてお互い時間をかけて。第2新卒というマーケットがここまででかくなってしまったのは、今までの採用プロセス、大量一括採用っていうのが一番原因なんじゃないかなと。これが変わっていくんだろうなと思います。
池澤:とはいえ今、ソーシャルディスタンスの時代で。なかなか初めましての人とコミュニケーションを取る機会というのが、どんどん減っていると思うんですけど。そんな中で、どうやって新しい転職活動をしていったらいいのかな? みたいなところを畑田さんに伺いたいなと思います。
畑田:前半のセッションのところで「タバコ部屋に代わる、なにか別の目的」っていう話があったじゃないですか。僕、このデジタルハーツに来てから積極的にやっているのがですね。うちゲーマーがいっぱいいるんですね。若者を支援しているNPOとかソーシャルスクール、学校に行けない子どもたちとかの面倒を見ているところとかと一緒に、eスポーツの大会やったりとかしてるんです。
ゲームっていう目的があると……例えば若者支援とかやってるNPOの「育て上げネット」さんというところと、今一緒にいろいろやってるんですけど。「働こう!」と言うとその最初の一歩、そこがもしブラック企業で自分が潰されたらどうなるんだろうとか、不安があっていきなり働こうってやっぱり行けないんですけど。
「ゲームのイベントやるけど来る?」って言うと「ゲームなら家でもやってるし、ちょっと外に出ろって親もうるさいし、まあ行くか」っていうことで、ゲームっていう目的というか言い訳で一歩外に出てくる。
そこにデジタルハーツの人とかがいて「ゲームのデバックで仕事してるんだよ」なんて話をすると「え、好きなゲームで仕事になって楽しいですね」みたいな話から。「それだったら僕でもできるかもしれない」みたいな。
そのもうちょっと段階が……「いきなり面接を受けてスーツを着て働こう」とかじゃなくてであれば、スムーズに社会がなめらかになっていくなっていう感覚がありまして。今、育て上げネットさんと一緒にバグトレっていうのを始めまして。こういうコロナの時代なのでオンラインで。
「みなさん、今からこのゲームを起動してください」って言ってですね。項目書ごとにまず電源を押したら起動するかとか。順番にアイテムを使ったりとかして。「あら、これ動きません」「バグですね」ってなったら「バグレポートを書いてみましょう」っていう感じ。今までやっていたゲームの延長線上で自然に働く、ってことを体験してもらうプログラムを、今、一緒に開発中でして。
こんなのも、どんどんフリーで提供していこうと思ってまして。そうすると全国で若者支援をしている人たちが「ゲームが好きなんだったらこういう仕事があるよ」っていうふうに、まず知ってもらう。
僕がやりたいのは、そこからどんどん興味関心を掘り下げていくと、この国に一番必要なサイバーセキュリティ人材、デジタル社会の不具合を見つけるスペシャリストに育てていくところまでいきたいなと思っていまして。
これもデジタルハーツの中で、今、50人くらいハッカーを育ててまして。めちゃくちゃすごいわけですよ。やっぱり。興味関心の掘り下げ方が。「なんとしてでもここのバグ見つけるぞ」っていうところから「こんなことできちゃいました」みたいなのまで見つける天才たちがいて。
今まで、こういう天才が社会に入っていく道がなかった。まさに「面接3回やって入る」なんていうのでは、絶対出てこないわけですよ。そういう人たちが社会に入っていく道さえ作れば、むしろ「withコロナの時代」というのは引きこもりの人たちが主戦力になる。そういう社会になっていくんじゃないか、と思っていますし。
あともう1つお話したいのが、今、障害者雇用のための子会社を作って、私が代表をやってるんですね。この障害者支援の世界もけっこう奥が深くてですね。私もまったく素人で無邪気にいろんな支援機関とかを回ると、これまでの伝統的な「知的障害があります」とか「身体障害があります」という方が社会に入っていく道っていうのは、もうすごく整備されているんですね。
一方で、最近すごく増えている「鬱になりました」とか「発達障害ですね」とか。そういう新しいタイプの障害がある方々って、けっこう知的にはレベルが高くて、むしろプログラミングとかアルゴリズム思考とかすごく高いんですけど。「社会一般でするようなコミュニケーション力」っていう、よくわからないものが解けないがために社会参加できない、っていう人がすごくいっぱいいて。
そうした方々が社会に入っていく仕組みっていうのが、支援者もないし、NPOとかってあんまりデジタル武装されてないので、いったいどうしたらいいのかわからない。みたいなギャップがあって。ここをもし埋めることができれば、アフターコロナの社会では日本というのは世界でも戦える国になるんじゃないかと思っています。
池澤:たしかにキャリアはもっとね、今までは誰でもできるような仕事をやっているみたいなところもあったかもしれないんですけど、もうちょっと個人の能力にフィットしたような仕事が増えてくるのかもしれないですね。大蘿さん、その点はいかがですか?
大蘿:さっき言いましたけど、僕も本当に20年間くらいドグマっていうか「スキルとポジションさえ履歴書に積み上げたら、自分は誰からも求められる」って信じ切ってやってたんですけど。そのドグマがもう通用しないというか、もう意味がないって考えているんですよね。
自分しかできないというか、自分だからこそできるっていうものを見つけられるかどうか。それはさっき言った、楽しいということとも関係してるんですけど。いわゆるコンペティティブでありたいというか、競争力を持ちたいってみんな言うじゃないですか。
でもそれって本当に終わってて。むしろコンプリメント、補い合う関係になったほうがいいじゃないですか。自分は違うと。ユニークで。でも2人合わさると、3人合わさるともっとすごくなるねっていうほうが、プロジェクト型としては最強なわけですよ。
だからそういうふうに変わっていくんじゃないですかね。コンペティティブが! 「俺はすごいぞ!」っていうんじゃなくて「俺はいろんな奴と補い合って動けるぞ」っていうくらい、180度変わる気がします。
池澤:まさにそういう世の中になっていくのかなっていう。
大蘿:いや、もうなってますよ!
池澤:もうなってますか! うわ~もうなってるのかぁ(笑)。
大蘿:なってるかもなんて言ってるようじゃダメですよ。もうなってますよ。みなさん。
村上:現在進行形ですよ。
池澤:時代に乗り遅れている!
大蘿:申し訳ないけど、日本って日本語のメディアしか読んでない人が多いでしょ? あのね、やっぱり英語とか別の言語で読んでください。もうね、世の中変わってますから(笑)。
池澤:うわ~。
村上:本当そうですよ。
大蘿:うん。まじに。
池澤:え、ここの参加者はみんなご存知だった(笑)。変わってるんですね。
大蘿:変わってますよ。「ねば」とか「たら」じゃないですよ(笑)。たらればじゃないですよ。
池澤:そうなんですね(笑)。そろそろ終了時間が近づいてきたということで、プレスの方からの質問があれば、受け付けたいと思います。あ、Twitterのほうにありました。1つ読み上げさせていただきます。
「オンライン時代のアウトプットの変質についてはいかがでしょうか? 面談や面接、プレゼン、さまざまなものがWebもしくはほかに変わるかたちになるのでしょうか?」という質問が来ています。こちら、村上さんに聞いてみようかな。
村上:やっぱり在宅になって明らかになったのは、日本の今までの総合職文化って会社にいる時間で測られているんですよね。「何のアウトプットを出せばいいのか」とか「ゴールが何なのか」っていうのを日常的に、例えばチームとか上司とちゃんとアラインできてるかっていうと、けっこうダウトだったりすると。
これがリモート管理になったときに「あれ、どうやってそれをやろう?」ってみんな考えたと思うんですよね。それがやりやすい職種もありますし、やりにくい職種もあって。ただやっぱりそれって1on1とかで話し合いながら、共通の「今週はこれを達成するぞ」みたいな会話があって然るべき。
これをできてないとリモートでも、リモートじゃなくても、これからの時代ってメンバーシップ型からジョブ型にどんどん仕事が変わってきますので。そういう意識をつけていくというのが、一番重要なんじゃないかなと思います。
池澤:ありがとうございます。
畑田:私からもいいですか?
池澤:はい、お願いします。
畑田:たしかに成果の測り方って客観的なようにいってるけど、本当はすごく主観的なものだったりとかして。さらにいうと精神がタフな人って別に「俺はすごいんだ」って無条件に思ってるから、批判も受け止められるんですけど。多くの人って、普通は自分の評価とかもされたくないわけじゃないですか。
これからの会社っていうか組織、コミュニティの役割って、まずその人を無条件に肯定してあげる。承認してあげて「あなたのバリューが一番発揮できるところってどこか、一緒に探していこうね」みたいな伴走型のコミュニケーションができないと、これまでのような「ここをアウトパフォーマンスしたらボーナス出すから、お前もがんばれや」みたいに、鞭を振るうみたいなことだけじゃない方法みたいなのが。たぶんこれから、いろんな人たちが開発してくのかなという気がしています。
池澤:ありがとうございます。tsumug edgeのライターのフジイさんが手を挙げていらっしゃるので、ちょっとお聞きしてみましょう。
質問者1:tsumug edgeでライターやってる、フジイと申します。実はサラリーマン、SIerで働きながらtsumugのライターもやってるっていう者なんですけども。みなさん本当に人事のプロっぽくて、僕らから見るとめちゃくちゃすごくて、なんでITの最先端走っている人たちがこんなに集まってるんだろうみたいなところで。
聞いてみたかったのは、一応tsumugのライターもやってて、SIerでも働いている2つのキャリアトラックがあって。それをどこかで融合したいなと思ってるんですけど。なにかアイデアみたいなのがあればお聞きしたいなと思っています。
ちなみにコロナになっても在宅ワークやりまくりで、原稿も書きまくれるんですよね。SIの仕事もやりまくれてめっちゃ楽しい感じなんですけど。
大蘿:融合しなくていいんじゃないですか(笑)。もっとパラにしたしたほうが。
村上:なんで融合したいんだろうって思っちゃった(笑)。
大蘿:あのね、似たようなものをやらないほうがいいですよ。なるべくばらけたほうが。だってそうじゃないですか。
質問者1:あ、そうなんですかね。
村上:違ったほうがぜんぜん良くて、仕事の疲れって仕事で癒すじゃないですか。あんまり近いとぜんぜん癒されないんですよね。別の種類の仕事をやると、(一方に)飽きたときにもう一方で成果出すと「イエーイ!」ってなるじゃないですか。そうやって精神のバランスを取るためにも、合わせないほうがいいと思いますよ。
質問者1:なるほど~。
大蘿:オンラインだと仕事が平面になるから、スイッチングするっていうのはけっこう大事で。ムードも変わるし。だからあともう1個くらい付け加えて。
質問者1:やっぱ離れてたほうがおもしろいってことですね。
村上:振り幅があったほうがおもしろいじゃないですか。
大蘿:コンプリメントだし。お互い補うっていうか。インスパイアされるじゃないですか。違うことのほうが。
池澤:お、今日のキーワード。コンプリメント。
質問者1:complement each other ですね。ありがとうございます。
池澤:ありがとうございました。以上の質問をもって今回のセッション4「キャリアのNew Norm」を終わりたいと思います。みなさんありがとうございました!
一同:ありがとうございました。
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