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Launch Padの講評と日本のスタートアップの現状(全1記事)

「レベルが低い」 KLabの真田社長、Launch Padのトップ5入り企業をぶった斬り

気鋭のIT経営者3名―Klab・真田哲弥氏、クラウドワークス・吉田浩一郎氏、WIL伊佐山元氏―が一同に会し、IVS 2014 SpringのLaunch Padの講評を行ったセッション。KLab真田氏が若手起業家がつくるモノマネの域を脱しないプロダクトを酷評しました。(IVS 2014 Springより)

マネタイズの匂いが少なかった

伊佐山元氏(以下、伊佐山):皆さん、こんにちは。ただ今札幌で開催中のIVS Spring 2014のインタビュールームにゲストをお招きしております。まず私の左、Klabの真田さん。

真田哲弥氏(以下、真田):どうもこんにちは。KLab株式会社の真田です。よろしくお願いします。

伊佐山:そして期待されるベンチャーのクラウドワークスの吉田さん。

吉田浩一郎氏(以下、吉田):クラウドワークスの吉田と申します。Launch Padの2012年Springで優勝させていただいて賞品のこのブライトリングもいただいて、現在頑張っております。ありがとうございます。よろしくお願いします。

伊佐山:今日のLaunch Padに14社登壇しましたけれども、せっかくなんで皆さんの率直な総評といいますか、ご意見を伺いたいんですけども。吉田さん、実際自分が出たときと今回見てどのように感じられましたか。

吉田:やっぱりすごいなと思うのは、プレゼンのレベルが確実に上がってるというか、みんな動画も非常にまとまってますし音楽も入っていて非常になめらかで、私は当時Windowsのマシンでプレゼンをしてたんですけど、ほとんど今Macなんじゃないかなという感じで、プレゼンは全然レベルが上がったなっていう感じがありますね。

ただ一方でお金、マネタイズの匂いみたいな話では、やっぱりスペースマーケットとかWHILLとか1位、2位のあたりは結構感じたんですけど、それ以外のところで、そういうマネタイズポイントというのは……。

私のときは、もうほとんどBtoBなんでマネタイズそのもの、みたいなプラットフォームなんですけど、そういったものがなんかちょっと課題かなと思ったところもありますね。

Launch Padに増えた、過去のモノマネプロダクト

伊佐山:確かにプレゼンテーションするレベルって小林さんのメンタリングもあってすごく上がったんですけど、今度、逆に言うとプレゼンテーションに走っちゃってるかなという感覚はあったのかもしれないですよね。真田さん、もういろんなビジネス見ていらっしゃいますけど、今回のLaunch Padはいかがでしたか。

真田:まずIVSのもともとの選び方が変わったのかなという。いつもはネット系ソーシャルとかアプリとかそういうものが多かったんですけど、今回ハードウェアとか遺伝子とかですね、ITインダストリ以外のカテゴリが増えたというところがひとつ面白かったですね。

ネット系ばかりだったときに比べて、そういう意味でキャラクターも面白い人が多くて、なんか地上げ屋っぽい人とか小保方さんみたいな人とかですね(笑)。小保方さんみたいな人にはぜひ白衣か割烹着でプレゼンやってほしかったですけどね。

吉田:そうすれば相当つかみはよかったですね。

伊佐山:確かにね。それぐらいの余裕は欲しかったですね。

真田:そういう意味では楽しかったですね。ただ一方でね、ビジネス的には玉石混淆、当たり前ですけども玉石混淆だなと思いました。

伊佐山:テーマが今回、すごくバラエティに富んでたんで、昔は一時期、本当にゲームが多かったりとか、特にモバイルばっかりだったり、最近はハンドメイドもあればライフサイエンスみたいなのもあって非常に楽しかったんですけど、個人的には。

私は普段、シリコンバレーにいるということもあって、結構モノマネが多かったなという印象が強いんですね。しかも最近のものをぱっとまねたというよりは、1~2年前にブームだったものをモノマネしてるものが結構増えたかなと思っていて、そういう意味で言うと正直目新しさというか、すごいスマートになっちゃってるかなという印象がすごくあったんですよね。

モノマネが悪いかというと、そういうことじゃないと思うんですけれども、ただやっぱり何となく見た目とかやってることをそのまま、1年前にアメリカではやったものをここでモノマネして日本の国内だけで金もうけするというのが、まさにここに、Launch Padに出る人が本当に目指すべきミッションなのか、っていうのはすごく考えながら今回は見てました。

その中でも電動車いすみたいに、新しいジャンルに果敢にトライしている人たちがいますので、そういう人たちには期待していきたいなというふうには感じますね。

マーケットサイズ×IT化が遅れているジャンルを攻める

吉田:そうですね。先ほどのお話でいくとうちもモノマネっちゃモノマネというか(笑)、2006年とかにアメリカのほうで言ったらoDeskというクラウソーシングのビジネスの焼き直しではあるんですけど、おっしゃるとおり日本の商慣習とアメリカの商慣習は全然違うので。

そうするとウェブサイトの画面も全然違ってきますし、日本語のいわゆる表意文字と表形文字というか、アルファベットでもUIって全然変わるはずじゃないですか。だから、そこら辺とかは全く変えていったっていうか、それはあるかなと思います。

伊佐山:日本独自のテイストが入っているとか、なんかそういうところがあるとすごくいいかなと。

真田:モノマネはモノマネでも、日本へのローカライズとかカルチャライズみたいなことをしっかりすると、本家より日本ではしっかり売れるということが可能な領域もありますよね。

伊佐山:早速、せっかくトップ5があったんで具体的に1個ずつ感想を伺いたいんですけど、5位のREPULさん。まさにフィットネスジムで経験された方が飛び出して始めたダイエットのための支援ツールというかサービスですけれども、何か感想はありますか、真田さん。

真田:日本でもアメリカでも先進国では非常にマーケットサイズがでかいところで、わりとIT化が遅れている領域なのでいいところに目をつけたのかなと思いますね。ちょうどライザップというのが流行っていて、そこって要は客単価が高いんですよね。

ライザップさんで20万とか30万、30万いくらかな。とか、健康食品にしても痩せるほにゃららにしても大体客単価が高くて、それなりに高い金額をしっかりそこのユーザー層の人たちは払うので、そういう意味で客単価がしっかり取れるマーケットのいい着眼だなと思いますね。

そこの領域って本当にIT化が遅れていたのでライザップのオンライン版、アプリ版みたいな感じですけども、なかなかそことITあるいはアプリとかインターネットという世界が遠かった中で、いい着目をしたのかなという気はします。

ユーザーに最適化してもただのサプリには変わらない

伊佐山:吉田さん。

吉田:プレゼンが結構インターネットっぽくないというか、既存の本当にライザップの広告を見てるような感じだったので、逆にマネタイズの雰囲気はすごくした、みたいな感じなんだけど、インターネットを活用して本当にどこまで変わっていくのかなというところがもう少しイメージがあるといいなというか、インターネット畑の人をもうちょっとメンバーに入れると何か変わってくるのかなという。

真田:ただやっぱりね、僕はあまり好きなビジネスではないですけどね(笑)。

伊佐山:ダイエットとかは……。

真田:というかね、サプリを「あなた向けのパッケージをしたオリジナルサプリです」って言ったって、結局中身ただのサプリなのにね(笑)。そういう商法は好きじゃないですけどね。でも、儲かりますよね。

伊佐山:なんとなくダイエットとか健康って永遠の課題で、それがサプリだったり健康商品がこういうアプリっていろんな進化を遂げていて。僕が面白いなと思ったのはやっぱり現役でそういうことを現場でやってた方が、ITからちょっと遠い人が出てきたっていうのはいい兆しかなって。

真田:いいことですね。

「IT系から現場系へ」起業家たちの新潮流

伊佐山:10年前のIVSってやっぱりIT系の人がなんか面白いこと考えようっていうアプローチだったのが、最近現場にいた人が出てくるっていうのってすごくいい流れかなと思うんで、ああいう方がITのエキスパートと一緒にやりながら、なんか斬新なアイデアになるといいかなとは思ったんですけれども。

じゃあ、今度は4位のファクトリエ。シャツの会社、カスタムメイドってすごくいいシャツをお手軽な価格でということですけど、真田さん、いつもおしゃれですけれどもああいうのをどう思われますか。

真田:僕正直、なんであれがそもそも14の登壇の中に選ばれたのか、そして5位以内に入賞できたのかが全くわからなくて。ものづくりをやってる会社はあのぐらいの工夫はどんな会社でもしてるし、安い工場でいい物をつくる工場を探してつくる。当たり前じゃないですか、そんなこと。

どんなものづくりをやってる人でもみんなやってることで、それがどうしたんですかって感じが僕はしましたね(笑)。そんなのやってない会社のほうが少ない。その次元の会社がなんで5位以内に入ったのか、僕には全く理解ができないです。なんの珍しさもないし、当たり前過ぎることを当たり前程度にしかできていないレベルだなと思いました。

伊佐山:直球でいい感じですね。吉田さん。辛口のコメントでも甘口でもいいです。どっちでもいいですけど。

圧倒的な差別化ができなければ意味がない

吉田:そもそもそんなにあれ覚えてなかったので。ただ、シャツっていうそのものづくりの分野にかけるインターネットっていうのは今後絶対来るので、我々のクラウドソーシングでも最近やっぱりものづくり系のクラウドソーシング。例えば3Dプリンターのデータをつくるとか……。

真田:ものづくり×インターネットっていうのが来るのはもう絶対それは間違いない。そこには何の異論もないんですけども、あのシャツの会社は……、別に単なる全国にシャツ屋さん何10万件とありますけども、それと何が違うのかが、違うレベルが五十歩百歩レベルでしかなかった感じなんです。

吉田:確かにそれはおっしゃるとおりのところがあって、私、クラウドソーシングを始めたときに、やっぱりYahooの小澤さんに個人投資していただいて、小澤さんに言われたのは、今後営業するときにクラウドソーシングって言うなと。要はあなたが相手にしているのは外注という市場だと。

今までたくさんある、何千何万の外注を受ける会社が競合であって、それに対してどういうバリューがあるのかっていうのを明確にしないと、それより圧倒的に早い、圧倒的に安い、圧倒的に質が高いとか、そういうふうにならないとクラウドソーシングなんてものは興味ないから、ちゃんと既存の人たちに比べてどういうバリューがあるかって明確にしろって言われたんですね。要はそういうことですよね。

「企業のストーリー」を見せられるか重要

真田:そうですね。単なるシャツ屋さんでしたね。びっくりしました(笑)。だからね、僕ね、IVSにこれは何回も言ってるんですけど、誰が何に投票したかを公開してほしいと思うんですよね。僕はあれに投票してる人はかなりレベルが低いんじゃないかなと(笑)。審査員のレベルを疑ってますね(笑)。

伊佐山:真田さん、今回審査員ですよね。

真田:審査員です。審査員のレベルが低いから今こういうことが起こってるんだと思うんですよ。前回でも、技術をわかってない人が技術的にレベルが低いものに投票してるわけですよ。

だから、審査員が何に投票したかを開示すると、審査員のレベルがばれるじゃないですか。それはやったほうがいいんじゃないかなと思いますね。

伊佐山:審査員びびりまくってると思いますけど(笑)。でも、確かに審査員に緊張感を持たすという意味ではいいですよね。

真田:いいんじゃないですかね。

伊佐山:これのまさにパクリがいっぱいあるんですよ、北米に。やっぱりアメリカで僕がやったのも、ソーシャル疲れとかゲーム疲れにアンチテーゼでものづくりをやってて、アパレルはECが流行ってたんですが、ECは人のものを横流しするだけだから自分でつくってみようみたいなノリで。

売り上げは伸びるんですけど、でも、これってそもそも何がバリューなんだっけと冷静に考えたときに、ただ余ってるキャパを使ってるから安く作れるだけ止まりでは、あまり能がない。

ECというインターネットインフラで売ってるだけで、リテールがないから安く売れますといった、当たり前のことを当たり前にやってて、それは、普通のアパレル業界では、みんな同じような努力はしているけれども、ただ構造がちょっと違うから値段が違うというところだと思うんですよね。だから、そこにもうちょっと、あの先に何があるのかというところがストーリーとしてあるとか。

新規事業なら戦う業種の商業構造から抜け出すべき

真田:多分、僕がね、これはただの生業、「生業」と書いて「なりわい」のうちのひとつでしかないなと思った重要なポイントは、ファッションという業種で、ファッションを彼が自分でデザインをして、その発注をかけている。その構造がある限り生業から抜け出せないんですよ。

なので、あまり投資したいとか思わないじゃないですか、生業。「彼がデザインしたシャツを安い工場に発注してます。以上!」ですよね。どこのシャツ会社もちょっとでも安いところに発注しようとみんな探してますよ。

吉田:フォロー入れると、もしかしたらそういう差別化があったのかもしれないけど、そういうのをちゃんとプレゼンで入れるべきだということですよね。

伊佐山:もしくはいろいろなパターン選べますとか、多分、そういう進化をしていくんだと思うんですけど、そうすると普通の生業的じゃない、スケールできるようなモデルだったりとか、ITがあるからできるんだよねっていうような発想につながって面白いかなとは思ったんですけど。

ベンチャーの仮面を被って市場参入してくるリクルートの脅威

伊佐山:次は3つ目のAirREGI。まさに今風といいますか、流行りのやつですけど、真田さん、AirREGIどうですか。

真田:横綱相撲だなと思いました(笑)。リクルートにしかできないバリューチェーンをうまく活用してて、ホットペッパーという資産、同じものを今さらあれだけのネットワークをつくれない。

そのバリューチェーンをしっかり活用してビジネスをつなげていくという、そこの手法はもう横綱相撲ですね。勝てないですね。本当、素晴らしいと思いました。

伊佐山:吉田さん。

吉田:私も同じ印象でして、実はリクルートさんって本当、こういうところに普通にベンチャーの体で入り込んでくること自体が結構怖いなっていうか。うち自体も新卒採用って、ガチで他のベンチャーとかぶるときと、リクルートとかぶるっていう。リクルートかうちかみたいなことって結構あるんですよね。

リクルートが普通にスタートアップ的な働き方をするってところに対して、わりと価値をみんなが感じてる。かつこういうLaunch Padにも出てきてあんな感じで結構アグレッシブにプレゼンするっていうのは、ちょっとすごい会社だなと思いますね。

伊佐山:でも、そうするともうなんかわかんないですけど、リクルートがああいうのを始めちゃうと、ベンチャーはチャンスがないんですかね。

吉田:そういう意味ではひとつあるのは、リブセンスさんの事例で、リクルートさんって今までは利益率35%以下の事業は手を出さないというルールがあったので、そこにリブセンスが差し込んで35%以下のところで人材のネットビジネスを始めたというところがあると聞いています。そんな形でリクルートと被らない市場もあるとは思っています。

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