サイコパスと起業家の遺伝子はほぼ同じ?

真田哲弥氏(以下、真田):(笑)。それでは家入さん、なんでしたっけ? 逃げてしまう、引きこもる。それを克服するための努力として、なにか。

家入一真氏(以下、家入):これはもう、克服できないんだろうなあと。さっきの本田さんと近いかもしれませんけど、怠惰であったりとかそういう、起業家って基本的にみんなダメじゃないですか。どこか闇を抱えてるんじゃないですかね。

アメリカの統計で、サイコパスと起業家の遺伝子はほぼ一致するっていう話を聞いたことがあるんですよ。だから僕、起業する人は基本的にサイコパスだと思うんですよね。だから、あれ? 伝わってます?

(会場笑)

真田:伝わっていると思う人、拍手してください。

(会場拍手)

伝わってますよ。

家入:世界を変えていかないと、こんな自分を受け入れてもらえないんですよ。だから僕が自分で会社をつくるのは、自分の居場所がほしいからなんです。自分が考える世界だったら生きていけるなって思うから、そういう会社をつくる。

真田:僕、以前自分が思っていたこととして、経営者のプログラマーの共通点は、楽するための努力なら惜しまないこと。プログラマーも、自分が面倒臭い作業を全部自動化できて、プログラムがポンとやってくれたら楽できるなって思ったら、俄然がんばってプログラミングするじゃないですか。

経営者も、こんなこといちいち自分でやってられないわ、といってどう仕組化するか考える人種で、楽するための努力は惜しまないけども、努力のための努力が大嫌い。って思ってるんですけど。

家入:そういうことだと思います。要するに、生きづらさを抱えてみんな生きていて、そんな自分でも楽に生きられる世界をどうやったら実現できるか。自分が世界をつくれたら、他のたくさんの人も幸せになれるんじゃないか? っていう、1点のみを信じてやるわけじゃないですか。だから僕はこのままでいいんだって、自分に言い聞かせてます。

あれ?(笑)。ダメ?

真田:本日のテーマは「進化」なんですけども(笑)。はい。

家入:あ、「進化」? 脱成長ですからね、はい。

(会場笑)

真田:ということで、ちゃんと伝わっているみたいです。

家入:よかった。

怠惰は治らない、むしろ自分の特性である

真田:じゃあその次……本田さん、いってみましょう。

本田謙氏(以下、本田):はい。僕も家入さんと感覚が近くて。まず、その怠惰であることを治すべきなのか、受け入れるべきなのかで言ったら、僕は後者というか、治らないものだと。これはもう自分の特性だと理解していて。

真田:自己肯定化ですね。

本田:そのうえで、なにができるかという考え方かなと思っています。つまり、自分はそのままで、環境を変えて、やらざるを得ない方向に持っていっちゃう。これならだらしない人でもとりあえずやる。

さっき朝倉(祐介)さんがIVS DOJOで、「走らない馬を走らせる」みたいな話。自分の場合は、自分が馬だと思っていて、「この走らない馬をどう走らせるか?」という考え方に近いなあと考えているんです。そう心がけているのが1つと。

あと自分が31歳でIT業界に飛び込む前、バイオの研究をアメリカでやっていて。研究職だったんで、自分というだらしない人間を研究対象だと思って見ています。こうイジったらこうなった、じゃあこうしよう。っていう、その繰り返しをやる。それ自体は好きなんで。その2点で、だらしない自分をどうにか騙し騙し走らせているようなそんな感じでおります。

真田:世の中の経営者で、例えば孫(正義)さんとか、猛烈・苛烈にガンガン仕事をやりまくっていた。

昔、孫さんって1日100個のKPIをチェックしてとか、そんなことを記事で読んだことがあるんですけど、そういうタイプの経営者に対してどう思いますか?

本田:もう別のタイプかなーとは思いつつも……。ただ、もちろんエッセンスは学びたいとは思っているけど、完全に同じ方向を目指したら絶対勝てない。なので、なにか違うアプローチをしないと。

家入:今日、僕と本田さんを呼んだの、間違ってたかもしれないですね。

(一同笑)

本田:僕はこのテーマで呼ばれた時、キワモノ役かなと思ってました。そうしたら家入さんが入ってたんで、「負けたー!」ぐらいに思ったんですけど(笑)。なんとなくそういう立ち位置になってきました。

経営者に必要な「お前が言うか力」

真田:(笑)。じゃあもう1つ、ついでに聞きたいんですけど。自分の部下に対して、自分と同じように怠惰な部下は認めますか? それとも、そういうヤツはそもそもダメだと思いますか? どっちですか?

本田:それは怠惰であるかよりも、与えたミッションに対して、おもしろいと思っているか? 思っていないか?っていうところを見てますね。

会社のサイズが数百人になってくると、僕がおもしろいと思ったことをおもしろいと思ってくれる社員もいれば、まったく逆の感覚の人もいるというのが、経営してきて学んだことです。要は、そこの使い分けかなと思ってるんです。あまり相手が怠惰であるかは見てないですね。

家入:これ、僕もちょっといいですか? すいません。これは明らかな答えがあります。

「自分のことをいかに棚に上げるか力」が必要とされるんですよ。これはすごく辛いんですよね。時間にルーズだから僕は遅刻するんだけど、社員がみんな遅刻し始めるのはよくないじゃないですか。

僕は怒らなきゃいけない。でも怒った瞬間に、「お前、人のこと言えるのか?」っていうなにかが、天から降りてくるんですよ。そうするとなにも言えなくなるじゃないですか。でも、言わなきゃいけないときもあるじゃないですか。そんなときに、いかに自分のことを棚に上げるかなんですよ。それってけっこう辛いんですよね……あれ?

真田:「自分のことをいかに棚に上げるか」という力。この能力が経営者には必要だ。

家入:本当にそう思います。

真田:この意見に賛成の方、拍手してください。

(会場拍手)

家入:ほら!

真田:お、圧倒的。

家入:「お前が言うか力」、みたいなやつですね。

真田:「お前が言うか」力。なるほど、経営者に必要な能力はこれだと。今日勉強になりましたね、みなさん。これを持って帰ってください(笑)。

コミュニケーションには相手が必要

ということで最後、平尾くん。

平尾丈氏(以下、平尾):はい。コミュニケーションですよね……。

真田:これ、佐藤さんも一緒ですね。

平尾:佐藤さんと一緒に、仲間になっていただきたいんですけど。グループで分かれましたね。

真田:「克服するためにどんなことをしてきたか?」ってことを、2人でディスカッションしてください。

平尾:僕は大学に入るまで論理的に話せないことが弱点だったと思います。「AだからB」というときのAとBの距離が大きすぎて。「ロジックが飛んだよね」と指摘されることが結構ありました。

なので、論理的思考能力を後天的に学んだ方がいいんだろうなと思って、10代後半ぐらいからずっと、戦略コンサルティングファームの先生方と仲良くしたりとか、論理性が高い文学者の方々のコミュニティに入っていったりとか、そんなことをやってました。

コミュニケーションっていうのは相手方がいるんだな、ってことがなかなかわからなくて。私、お茶の免許を持ってるんですけど、茶道を始めて、ワビサビとか一期一会であったりだとか、そういった背景のところから勉強をしていくってことをやってましたね。

そうやって4年間、大学生をやったけど、自分の太鼓持ちしかついてこなくてそれがすごいイヤでした。学生起業家でしたが、あえてそのまま起業家にならずにサラリーマンになった理由の1つは、さまざまな立場の方と組織でコミュニケーションをとるスキルを学ぼうと思った、というのもあります。自分はこんな感じです。

努力して、いいサイコパスに変わる

真田:やっぱり、なにを言ってるかわかんないですね(笑)。ちょっと、なにを言ってるかわかる佐藤さんに。

(一同笑)

佐藤光紀氏(以下、佐藤):そうですね……。まずコミュニケーションについて、なんで自分がコミュニケーションが苦手だったかというと、よくよく考えてみたら、究極的に言ってしまうと、人に興味が持てなかったんですよね。

15歳から音楽をしてきて、作る曲とか演奏をするバンドのパフォーマンスのイメージとか、こういうものは明確にあるんです。でも、人間に対して興味が持てなくて、それで人のことがわからない。

相手が今どういう感情なのか、なにを考えているのかぜんぜんわからなくて。「これが自分に欠けていることなんだ」と思って。でも、やっぱりわかるようになりたいなと思ったんですよ。だから営業をして、対人関係構築とか、コミュニケーションみたいなことをまずひと通り学ぼうと。

僕は家入・本田派とは逆かもしれないですけど、ちょっと自分を変えてみたいと思ったんですね。できれば人の気持ちがわかる人になりたいなと思って。得意にはなれないかもしれないけど、人に興味のないサイコパスであっても、努力して変わることで、いいサイコパスになるんじゃないかって思ったんですよね。

そういう方が、世の中に大きなインパクトを与えられるんじゃないかっていうのが、自分なりの仮説としてあり、それで変えようって動機が生まれたんです。

真田:具体的にやってきたこととしては、まず営業職に就いて営業に行って、初めて会うお客さんとどんどん話をする。他になんかありますか?

佐藤:いろんなタイプの社員と仕事をしていました。さっき本田さんがおっしゃってましたけど、自分とぜんぜん違うタイプの個性とか価値観を持った人たちが増えていくので、相手の言ってることがさっぱりわかんないんですよね。

「えっ、なんでそう考えるの?」って摩擦が生まれることが、すごくたくさんあった。20代の頃は、その摩擦を回避する手段があまりなくて、摩擦が摩擦のままぶつかるみたいな。それで揉めごとがめちゃくちゃ起きるんです。

最終的に自分が責任をとるんで、痛い思いをする分、「なんでこんなに揉めちゃったのかな?」というのを、いろんな場面で考えさせられる機会がありました。それで人のことに興味をもって、相手のことをちゃんと考えようってやっと感じられるようになったと。

真田:なるほど。

世の中に与えるインパクトを求めて、自分を変容させる

佐藤:深めの話で言うと、人に感謝しなきゃいけないなっていうことを、わりと後になってから学べたっていう。

真田:深いですね。

佐藤:途中からやっとわかったっていう。

それは最初からわかっていたわけではなくて、むちゃくちゃ壁に当たりまくってものすごい失敗して、一回一回くよくよして、夜寝る前にすごい悩んで。そんなことを経て、なんでかな? ってことをずっと考えるんですよね。

「なんで俺、こんなにうまくいかないんだろう」みたいなことを、マネージメントでいうといろんなケースを経験して、それで一つひとつ洞察して学習していったっていう。

だからサイコパスも、人の役に立てるように学習することができるんじゃないか? と思うんです。最近、サイコパス関連の本をたくさん読んで、明らかに自分に当てはまるなと思う部分もある一方で、うまく世の中と折り合いをつけていくことが、努力によってできるんじゃないかなって。

あくまで一般論としてに、僕から見た姿ですけど、(マーク・)ザッカーバーグとかも起業したての頃とぜんぜん変わってきてるという気がするんですよね。

先日彼が母校のハーバード大学でスピーチしたのを聞いたんですけど。僕、実はそのだいぶ前にGoogleのキャンパスで創業したてのザッカーバーグに会ったことがあったんです。たぶん彼が大学生の時に会ったんですけど、めちゃくちゃ尖ってたんですよ。

そのときの印象があって、その状態とあのスピーチを比べて見ると、あくまで見た感じですけど、明らかに世の中の役に立つサイコパスになっていた。

自分もそういう折り合いをつけて、スケールを求めていくというか、世の中に与えるインパクトを求めて、自分を変容させていった方がいいんじゃないかな。それが僕の考えです。

営業経験の話からキャッチコピーの話へ

真田:なるほど。丈くんは営業をずっとやっていたわけじゃないですか。コミュニケーションが苦手と言いながら、営業成績がとてもよかったわけですよね。

平尾:僕は売れますね。

真田:それは、どこでなにを身につけて営業ができるようになったんですか?

平尾:僕は特殊ケースですよね。スーパー営業マンの方をリクルートでも見たんですけど、傾聴力がすごい。ソリューション営業がすごい。すごくマメ。

僕はまったく逆で、自分がマシンガントークでまくし立ててしまうから、時間が足りない。すごい喋って、いろいろ話しているうちに夢が広がっていって受注みたいな。こんな感じでした。

真田:リクルートは、わりとそっち型の営業マンも多い。

平尾:多いんですけど、トップは傾聴型で所作の素晴らしい方が大半だったと思います。あと、先ほどの佐藤さんの経験を経て学習していったというお話を聞いていて、僕もあるなーと思いました。学生の時は、「尖ったナイフ、平尾丈です」というキャッチコピーを、ずーっと言っていて、だいぶ尖っていたと思います(笑)。

真田:学生の時はキャッチコピーが違ったんですね。

平尾:違ったんです。大学に入って、「尖ったナイフ、平尾丈です」。高校で、「君の瞳に丈マジック」っていうのが、あったんですけど。

真田:(笑)。

平尾:たぶん4~5回、出世魚みたいに変わっていって。社会との接点の中で、やっぱり愛情と友情は切れないなと感じまして現在に至ります。

真田:それは『少年ジャンプ』ですよね? あれなんだっけ、『少年ジャンプ』は。

平尾:愛と勇気ですかね?(笑) 

真田:友情・努力・勝利ですね。

平尾:そうですね。自分が年を重ねて社会との接点が拡がる中で角がとれてきたのかもしれません。「尖ってはいなくなったね」と、最近言われます。当時の方に会うと「丸いスプーン」だと言われたり。

真田:なるほど。だらだらにグダグダになってきたので、次にいきます。はい。