広報・PRの人に贈る、刺さるストーリーの作り方

大谷イビサ氏(以下、大谷):自分はライターの立場なのであまりわからなかったのですが、前回の下北沢のセミナーの後、実際にストーリーを作ることに対して、社内的に壁があるような話を結構聞きました。

そこで、もうちょっと具体的な話をした方がいいのかなと思って、「この企画をワークショップみたいにやりたいな」と言ったらすぐ大堀さんが反応してくれて、「やるならすぐやりましょう」ということで開催しました。よろしくお願いします。

今回のひとつのキーワードはエンターテインメントです。KADOKAWAは出版社としてはエンターテインメントをメインにしているので、ITの記事であろうが読者を楽しませるのがすごく重要だと思っていて、1つの難しい技術とか製品の話も、とにかくわかりやすく、楽しく書いていこうという感じで、日々製品や技術の魅力を追っております。

ストーリーとは何か?

ここからが本題です。「そもそもストーリーってなんでしょう?」というところからお話が必要かなと思っています。簡単な定義付けですけれど、登場人物があり、事実があり、テーマ付があり、構成が成り立つ、テキストや写真や動画、こういったものがあります。

客観的な事実を連ねたレポートとは異なる「物語」はいわゆるプレスリリースとは対極にあります。プレスリリースは事実を淡々と書いていくもので、それに価値があるのでそこを逆に曲げてはいけないのです。そこに製品に対する思い入れとか、技術者の声とかをいろいろ入れたい気持ちはわかりますが、それは必ずしもプレスにとっては必要じゃない。

どちらかというと、どれぐらい速いか、どれぐらいの料金であるとか、市場がこうであるとか、そういった話を淡々と連ねられているほうが面白いプレスリリース、レポートになるという概念です。物語って言うと、もうちょっと方向性が違うものだと考えていただければと思います。

物語ってなんだろうという話だと、起承転結があるのがデカいと思うんです。結局、物語は人の心を動かすのが目的なので、英語だとMovedみたいな言い方をしますが、起承転結があるからこそ人の心は動いて、例えば「この会社は好きだな」とか、「この製品を使ってみたいな」とかに導くのが、物語やストーリーだと思っています。

これは意識しないとできないので、これを意識するにはどうすればいいのかという話を、これからしようと思っています。

退職を「卒業」という視点で描く

ご存知だと思うんですけれど、物語であることはどういう効果を生むのか。やっぱりファンを増やすのに有効であると。ロイヤリティーを向上したり、仲間づくり、あるいは共感を呼ぶという話になるのかなと。

グローバルな人は、割とスペックで物を選ぶんですけど、日本人は割と情緒的な価値で物を選ぶ傾向が強いので、巨人ファンだから好きとか、あるいはAWS(アマゾンウェブサービス)はエンジニアがいっぱい使っていて、かっこいいとか、そういう情緒的な価値を日本人は重要視します。だから物語って、特定のところに刺さると日本人にとっては非常に有効なのだろうな、と思います。

実際ストーリーと言えるかどうかわからないですけど、例として私がやっているウェブメディアの「TECH.ASCII.jp」のこの記事にはFacebookの「いいね!」が2,600ついているので、いい記事かなと自分では思うのですが、AWSでエヴァンジェリストをずっとやっている玉川さんが3月に辞めますという辞める事実と、彼が歩んできた職種を書いて、スタートアップを彼は立ち上げるんですけど、そこに至るまでの経緯を話してもらう記事です。(玉川、AWSやめるってよ!走り続けた5年と卒業後を聞く

登場人物としてはAWSを卒業する玉川さん。彼は元々IBMで働いていて、今でいうアプローチみたいな製品の開発を実はしていたんです。そのプロジェクト自体は頓挫して、技術を売っているだけではだめだと。だからビジネスをしっかり勉強しようといって、いろんな経験を経てIBMからAWSに移って、AWSからスタートアップを立ち上げます。

要するに、もともと目指していた技術者としての夢をスタートアップでまた叶えるんだという感じで、前向きに捉えていこうって話を作ろうと思って、テーマを「卒業」としました。「卒業」ってなると、この写真を見てもらえればわかると思いますが、卒業写真なので筒がありますよね、卒業証書を入れるやつ。あれを東急ハンズで買ってきて渡して、記事を見てもらえればわかるんですけど、卒業式みたいなことをやって、そういうお膳立てをしたっていう感じの話になります。

クラウドソーシングの実態を浮かび上がらせる

もうひとつがこの間の5月にあげた、クラウドワークスというクラウドソーシングの会社がありまして、クラウドワークスに、クラウドソーシングで働いている人たちを集めてもらって座談会をしました。これは素朴な疑問として、クラウドソーシングって基本的には結構価格面で叩かれているだろうという認識があるので、「そもそもクラウドソーシングで食べていけるんですか?」という話をやったら面白いかなと。(人はクラウドソーシングで食べていけるのか?4人の先人に聞く

登場人物としてはデザイナーさんだったり、ウェブデザイナーさんだったり、イラストを描いている人だったり、ロゴを作っている人だったり、登場人物がいっぱいいるパターンです。そういった人たちが話して、働き方だったり、ギャラってどうなのとか、待遇のほうはどうなのか、みたいな話をする。

アウトソーシングという意味では、市場動向であったり、マーケットだったり、どちらかというと上からの話が多いんですけど、これはもうファクトとして「今の実態はどうなんですか?」というのを積み上げていって、物語にしていく方法です。いろいろな人から生の情報を得て、クラウドソーシングの実態を浮かび上がらせるような感じで事実を作りました、という感じです。

海外での武者修行のストーリー

スタートアップの人が多いので、スタートアップの記事をちょっと載せました。この方たちはCapy(キャピー)さんというセキュリティ系のメーカーなんですが、日本で起業して最初からアメリカに会社の法人登記があるグローバル企業です(イスラエル経由で世界に向かうセキュリティベンチャーのCapy)。

この2人が起業して、イスラエルでマイクロソフトのアクセラレータープログラムがあって、そこのプログラムを受けて武者修行に行ったんです。それで開発だったり、メンターによる教育だったりを受けてきましたという感じで、次は金融業界でスタートアップのものをどんどん使ってもらうようなストーリーです。

ここは逆に言うと、ストーリー自体は起業の経緯とか、彼らのキャラ自体が非常に立っているので、シンプルに取材しました。テーマは武者修行に行ってきましたよ、という感じで話を構成しています。