ザッカーバーグ氏「あえて競合サービスが使われている場所から攻めた」--Facebook初期の拡大戦略とは

Mark Zuckerberg #1/2

Startup School 2012
に開催

なぜFacebookは成功したのか? それは初期にあえてライバルSNSがいる大学に乗り込み、市場を奪ったことだと語る、マーク・ザッカーバーグ氏が世界一のサービスをつくりあげた理念について語っている。

現実に紐付けられた「文化」を作り上げる

ポール・グレアム氏(以下、ポール):これから私の疑問を聞いてみようと思います。会場のみなさんもきっと気になっていることでしょう。難しい質問かもしれませんが、2004年というタイミングでFacebookを世に出すことができた理由はなんだったのでしょう? 足りなかった最後のピースはなんだったのですか? 1995年なり2000年なりに、他の誰かが先に出していてもおかしくなかったわけですよね。

マーク・ザッカーバーグ氏(以下、マーク):興味深い質問ですね。いくつかの要素がありますが、当時多くの人が考えていなかったこととして、現実世界のアイデンティティに結びついた文化を作るということがあります。

それまでは、ある人が誰かを知るためには、その人の自称を頼りにするしかありませんでした。2004年以前、おそらく2000年あたりから、学校が生徒にメールアドレスを発行しはじめました。これを利用したことが、他のサービスにはない、私たちのサービスが新しかった点です。

ポール:メールアドレスが、その人が何者であるかを保証していたということですね。

マーク:そう、それがどの学校にいるかを保証してくれたのです。

ポール:これによって、匿名の複数アカウントを持つことができなくなりましたよね。新しい学校のメールアドレスを取得し続けることはできませんから。

マーク:その通りです。これは偽のアカウントの取得を防止する機能がありました。普通は学校のアカウントはひとつしかありません。初期にアカウントを学校に紐づけたことは成功の一因でした。

こうして匿名ではなく実名の文化を数百万人、一千万人が共有するようになれば、他のものに紐付けても文化は維持されるのです。現に今は、学校のような組織が発行したメールアドレスで身分を明らかにしていない人がほとんどでしょう。

ポール:今やFacebookそのものが、その人のアイデンティティを明らかにしていると思います(笑)。今度はあなたがその人が何者かを保証している。

マーク:そうかもしれません(笑)。なぜ2004年にFacebookが可能になったのかという質問に戻れば、ひとりの人がオンライン上に書き込む年間の情報量が増大していた、という背景はあります。

ポール:「ザッカーバーグの法則」というわけですね。

マーク:特にそう呼んでいるというわけではないのですが(笑)。

ポール:私が今作りました(笑)。

マーク:しかし確かにこれは「ムーアの法則」のSNSバージョンと言えます。もしこれが1年で2倍になるとしたら、10年後には2の10乗で1024倍になるだろう、と考えました。そういった意味では、Facebookは必ずしも2004年である必要はありませんでした。5年前にスタートしていれば、今はもっとSNSでいろいろな情報がシェアされていたでしょう。

こうしたトレンドが続くのであれば、これからインターネット世界には何が出てくるのか、あるいは何が残るのかということを考えなくてはなりません。

ポール:トイレにインスタグラムとかどうですか?(笑)

マーク:確かにインスタグラムは素晴らしいサービスですから、開発のしがいがありますね(笑)。

初期のFacebookは大学固有のコミュニティであった

ポール:最初にFacebookを立ち上げたときは、主な機能は名前とどんな人かが書かれたプロフィールでしたよね。さらにどんな家に住んでいるか(学校なら寮ですが)、どんな授業を取っているか、などの情報を加えられるようになっていました。しかしこうした追加情報はなくても上手くいったのではないでしょうか? ただのプロフィールで十分ではなかったでしょうか?

マーク:これは非常に面白い質問ですね。サービスをもっと一般化する際に、大学というジャンルに固有の情報をなくしていったということは事実です。

しかし、共同設立者のダスティン・モスコヴィッツとは、かなり早い段階でどのような文化をこれから作り上げようとしているのかを議論しました。そこで授業概要などの大学に特有の情報を集めて、そこにあるデータを信頼できるものにしておくということは重要だという話をしました。今では大学生以外にも広くサービスは使われています。

誰でもプロジェクトを起こそうと思う人なら、同じ問題に行き当たるはずです。「80:20の法則」という有名な法則があります。これは利益の80%は、実際に仕事に費やした時間の20%が生み出している、ということを述べているものです。しかしなんでもそうすることはできません。自分が作っているサービスの質を、競合の中で最も高いものにしなくてはならないからです。そのためにできることは、全てやらなくてはならないのです。

ポール:いつ頃になって、授業の内容のような大学生に特有の情報をなくしたのですか?

マーク:大学生以外も参加できるようにしたのと同時ですね。

ポール:すごいですね。それまでは何百ものありとあらゆる大学の授業概要を網羅していたということですよね。

マーク:データを集めるため実際に大学に行く代わりにクラウドソーシングなども活用しましたが、冷静になって考えてみるとちょっと続けすぎましたね(笑)。

最初の2週間でハーバード生の約7割がFacebookを使い始めた

ポール:最初のサーバーの費用はどれくらいだったか覚えていますか?

マーク:85ドルです。私たちの会社は、まだ会社とは呼べなかった初期から一貫した理念を持っていました。ただお金を使ったり儲けたりする以上のことをしようと思っていました。最初のサーバー代は85ドルで、広告は……。

ポール:最初の広告はなんだったか覚えていますか?

マーク:うーん……。覚えていませんね。

ポール:どうやって広告を取ってきたのですか?

マーク:Googleアドワーズの担当者が役に立ってくれましたね。彼は初期に、資金に困ることがないように気を遣ってくれました。

ダスティンと私はさまざまな大学にネットワークを広げるためにサーバーを増設しました。そしてアドワーズ担当がお金を稼いできてくれると、85ドル貯まった時点で次のサーバーを作りました。そうして大きくしていったのです。これはスケールしていく上で興味深い事例なのではないかと思います。

ポール:最初はお金をほとんど使わなかったというわけですね。

マーク:初期はそうですね。

ポール:あれだけの成長率だったら、果たして85ドルのサーバーいくつ分になったんでしょうね。

マーク:プロダクトを良くすることに集中できて、スケールしていかなければならないという課題からある程度解放されているというのはいいことでした。覚えている人がいるかわかりませんが、初期の「Friendster」はスケールしていかないという問題を抱えていました。

対象の大学を増やしながら、最適化し、もっと効果的になるよう機能を追加し、それがきちんと機能することを確かめて、というプロセスが鍵だったのだと思います。私たちはそれまで会社を作ったことはありませんでしたし、そんなに大きな規模のものを扱ったことはありませんでした。そのため段階を踏んで成長していけたことは重要だったのです。

どうやってそんなに会社を急成長させたのか、と良く聞かれます。しかし、100万人のユーザーを得るまでに1年ほどかかっています。それは確かに速いと言えば速いのですが、昨今のさまざまなスタートアップの成長に比べれば、サービスをよくしていくことに注力できるだけの時間があったのは幸いだったと言えるでしょう。

ポール:確かハーバード大学で獲得したのは2000ユーザー程度でしたか? だとすれば1年で500倍ですから、かなり速い成長ですよね。

マーク:ハーバードでは学部生が4000から5000人だったと思いますね。最初の2週間でその3分の2から4分の3を獲得したと思います。リリースしてみたら、思ってもみないほどたくさんの学生がサービスを利用するようになりました。

あえて競合のSNSがある大学に乗り込んでいった

ポール:サービスが定着しなかった、人気が出なかった大学などはありましたか?

マーク:いくつかの大学は時間がかかるところもありました。

最初にハーバードでリリースしたのは、自分のために作ったサービスだったからです。私自身があったらいいなと思うものを作りましたから。大学で使うためにFacebookを作ったのに、すぐに大学を後にしてしまったのは皮肉ですが……(笑)。

ポール:だから大学の外の人にも広げたんですね(笑)。

マーク:まあ、そんな感じです(笑)。

それからハーバード以外のたくさんの大学から、自分たちの学校でもサービスを使いたいという声をもらいました。私たちは、最初から会社を作ろうと思っていたわけではありません。ただ途中で、こういったサービスがもっと大きいスケールで存在してもいいと考えるようになったのです。

ハーバードにいたころ、一緒にコンピュータサイエンスの問題に取り組んでいて、毎晩ピザを一緒に食べている友達がいました。私が自分のために作ったFacebookを楽しんでいたときに、彼とこう話したのを覚えています。

確かにこのサービスを世界中に向けたものがいつか作られるだろう。でもそれは自分でやる必要はない。Microsoftのような何百万人もの人を相手にソフトウェアを作っている企業がやることだ。自分たちは大学生なんだ。そんな大きいプロジェクトをやる資格なんてない。

でも、やっぱり自分たちのサービスを大切にしたくなったのです。他の企業ではなく、自分たちの手で育てたくなったのです。

ハーバード以外の学校にサービスを広げるとき、敢えてSNSが既にある学校を選びました。スタンフォード大学や、コロンビア大学、それからイェール大学もそうだったと思います。

ポール:どうしてですか? 普通に考えれば競合してしまうのでは。

マーク:むしろ、うまくいきそうにない大学からスタートしました。自分たちの作っているものが、他のところで他の人が作っているどんなサービスより素晴らしく、時間とお金を投資する価値があると信じていました。その3つの大学に導入してからは、非常に速く成長しましたね。

ポール:ランダムに大学を選んでも、おそらく成功したでしょう。でもわざと競合するサービスがある大学に行ったのですね。

マーク:そうですね。そうした大学の人たちを見ていて、おそらく自分たちのサービスを使ってくれるだろうと思いました。だから自分たちが作っているものが、他のサービスより圧倒的に良くて、時間をかけるに値するものだということを確かめたかったのです。

ユーザーの声と振る舞いの両方に耳を傾ける

ポール:これはハーバード大学が出しているニュース記事で読んだのですが、最初は何百人もの人たちが登録したと書いてありました。ハーバードの人たちはコンピュータに強く、それゆえFacebookが受け入れられたとの記述もありましたが、もしあなたが数年若くて、大学に入ったとき既にFacebookがあったとしたら、使い始めたと思いますか?

マーク:難しいですね。Facebookはリリースしてから年を重ねるごとに、流行となって拡大していきました。そうしたサービスの拡大速度を計算すれば、どの時点から市場として成立する規模になるのかが概ねわかります。

例えばPDAがFacebookよりずっと前に成立していたのは、もっと少ないユーザーでも十分ビジネスとして成り立つモデルだったからです。一旦その規模に達してしまえば、あとはどんどん成長していくのですが、Facebookはそこに至るまでが長いサービスでした。

しかし競合にとってはそうではありません。最初からSNSに慣れたユーザーがたくさんいるところへ、後発ならではのもっと改善されたサービスを導入することができます。だから我々の継続的なミッションとしては、新しいもの、自分たちが興奮できるものをどんどん作っていくということです。

ポール:仮に既に似たサービスがあったとしても、さらに進化したものを作れただろう、ということですよね。

マーク:もちろん「もしも」の話を正確にするのは難しいのですが、Facebookは、単にプロフィール以上のものをシェアできる機能を早い段階で追加したことで成功しましたから。

スタートアップをはじめようとする人全てに伝えたいのですが、ユーザーが何を欲しているのかに耳を傾けるべきです。質的には彼らの話をよく聞くべきですし、量的にはどのような振る舞いをしているのかデータから分析することが重要です。

私たちは、たくさんの人がプロフィール写真をアップしているというデータを見ていました。それを見て、写真をシェアするという強い欲求があることに気づきました。実際には写真共有サーバーがエンジニアリングチームによって立ち上げられるまでは実装できませんでしたが、今では1日に300万から400万の画像がシェアされていることを考えれば、これがFacebookにとって鍵となる機能であったことは間違いないでしょう。こうした機能を持っていたSNSは当時ひとつもありませんでした。

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