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「わたし」のキャリアは、どう創る? ーライフイベントと仕事の両立ー(全2記事)

万能の成功法則はない "楽しんだもの勝ち"の時代に輝ける女性の共通点

2018年5月19日、SENQ(センク)青山にて『「わたし」のキャリアは、どう創る?-ライフイベントと仕事の両立-』が開催されました。ビジネスリーダーとの交流が深く、自身も第一線で活躍する谷本有香氏と、組織で多くの女性のマネジメントを経験してきた安藤知子氏をゲストに、育キャリカレッジ代表の池原真佐子氏がモデレーターを務め、育児をはじめとするライフイベントとキャリアの両立について語り合います。後編となる今回は、当事者=働くママである参加者からの質問に答えながら議論を深めていくパートをお送りします。

成功法則すらも個別化していく

池原:人生100年時代に自分の個性や強み、「好き」を活かしていくことが働き方として重要になるなかで、先ほどおっしゃったスキルやマインドセットが必要になってくると思います。

もしそれ以外で、この時代にいつになっても成長していく、あるいはこの時代だからこそ活躍していくための、魅力的な女性の共通点があればお教えください。

谷本:うーん、いつになっても成長していく共通点か。これからは、より成功法則とか成長法則が一般化していた時代とは違って、個別化、個人化していくのではないでしょうか。

その中で重要なのは、よく言われているけれど、自分の本当に好きな「これおもしろいよね。ワクワクするよね」っていう想いが核になっていくんじゃないかなと思います。好きこそものの上手なれ、なんです。

自分の好きなことが見つからないっていう声もよく聞くのだけれど、誰かの夢や誰かのワクワクに乗っかっていきながら、自身のそれを見つけていくのも一つの手だと思います。

楽しんだ者がどんどん成長していく、そんな素敵な時代が到来していると思っています。

一歩踏み出すためのお茶目な好奇心があなたにもある

池原:ありがとうございます。安ちゃんいかがでしょうか?

安藤:そうですね。やっぱりワクワクしている人って魅力的ですよね。そういう人はポジティブなエネルギーが溢れているので、私も同感ですね。おそらくワクワクしている人には必ず好奇心というものがあるのだろうなと思います。いくつになっても好奇心・冒険心みたいなものを失わない人はやっぱり魅力的ですね。

危険といっても別に命がけのジャングルクルーズをしましょうというわけではなく、自分の知らない世界に一歩踏み出してみようという、ちょっとお茶目な気概がある人は、すごくポジティブなエネルギーに満ちていて魅力的に思いますね。自分もそうあり続けたいなって思います。

池原:ありがとうございます。先ほど価値創造というお話もありましたけれども、一歩踏み出すお茶目な好奇心っていうのはどんな人でもきっと心の中にあるはずなんですよね。それが陥っている状況や時間に追われることでちょっと見えなくなっていたりするんだと思います。

例えば今この座っている瞬間でも、みなさん自問自答してみてください。お茶目な好奇心ってなんだろうって。今日聞いた話の中にときめいたキーワードって必ずあるはずですよね。そこになにかヒントがあるんだと思います。一歩踏み出すといっても、そんなに大きななにかを成し遂げようとかじゃなくて。

価値を生み出すも同じだと思うんです。自分がちょっとワクワクするものを見つめて、それを「私こんなの好きなんだけど」ってちょっと声に出してみたり、誰かに言ってみることが、もっともっとワクワクする人生に気づかない内になっているんだろうなと思いました。

小さな成功事例の積み上げが、会社をも変えていく

池原:育キャリカレッジは「女性の生き方を改革したい」といった大きな思いで始めたわけではありません。(スタッフを指して)共同創業者の加藤翼と出会って、「なにか一緒に楽しいことをしたい。2人でワクワクすることをしたい」と試行錯誤し、いろんな失敗もしながら現在のこういったかたちで落ち着いていきました。

これからも私たち育キャリは失敗もワクワクもしながら、半歩踏み出してはコケて、ちょっとずつ進んでいくんだろうなとお話を聞いて思いました。

もっといろんなお話を聞きたいかと思うのですが、せっかくなので会場のみなさまから質問を受けたいなと思います。

質問者1:今日はありがとうございます。谷本さんにうかがいたいのですが、小さいプロジェクトが作られて、そこに人が集まってまた離れていくという話がありました。

そうすると企業のかたちもこれからどんどん変わっていくと見ていらっしゃるんでしょうか? 私も働くなかで今後どうなるんだろうってことにはすごく興味があるので、もう少し深く教えていただければと思います。

谷本:なるほど、企業も変わらざるを得ないような気がしていて、新規事業などに社長さんはもう躍起になってますよね。なにかうまくいってないけれども。

なんていうんでしょうね、自分たちで自製でなにかやるってことじゃなくて、コンサルティング的な働き方というんでしょうか。「これやってみようよ」と言い出しっぺがリーダーになって、それに必要なスキルセットが集まっていくみたいなかたちの働き方にはなっていきそうな気はします。

ただ、大企業にすぐそれができるかというと、なかなかできなかったりするじゃないですか。でもトップの人に話を聞くと、みなさんそれをやりたがっています。「どこからやっていったらいいんだろうね」って。「じゃあまず新規事業からやっていこうか」とになってきているので、少なくともそこで成功事例が出ないとなかなか横展開はできないだろうなと思います。

反対に、同じ部署の中で「こういうことができるんじゃないですか」「ちょっとやってみていいですか?」みたいなかたちで、2人ぐらい、むしろ1人でもいいかもしれないのでまずやってみて、成功事例を作っていくみたいなところから始めてもいいんじゃないでしょうか。

「意外にできるね。じゃあ次もやってみようか」みたいになる気がするので、まず手を挙げちゃうみたいな。もしくは声をあげちゃうみたいなことが私には必要だと思いますし、そういう企業じゃないと残っていけないんじゃないかなという危機感はすごくありますね。

待っていても自己効力感は高められない

池原:ほかに質問はいかがですか?

質問者2:〇〇と申します。どうもありがとうございました。自己効力感を高めるというのが一般的に大事だとよく言われますが、おふたりの話を聞いてまさにそれを感じました。困難に対して自分のモチベーションをどう作っていきそれを乗り越え繰り返していくなかで自己効力感も高まっていく、というプロセスを踏まれてきたかと思います。

ただ一方で、これは言い訳になってしまうのかもしれませんが、やっぱり経済的な制約であるとか、チャンスを見つけられるような環境があったのではないかと思うんですね。

世の中の多くの方は、経済的にまず苦しいであるとか、そもそもチャンスを手にできるような環境にないという方もいらっしゃいますので、そうするとなかなか自己効力を高めるためのきっかけが得られないと思うんですね。そこを突破するヒントというか、お考えがあればお聞かせいただけませんでしょうか?

谷本:人事のプロがあとでうまくコンクルージョンしてくれると思うので、私の私見を先に言っちゃいますね。

まず、大きなリスクを取る必要はぜんぜんないと思うんですよ。この間アメリカのコーチング界の偉い人に話を聞いていたんですが、子どもの事例で話してくれたんですよ。

「ひとつは良いところあるだろう。それが大きいものじゃなくてもいいんだ。小さいことでもとにかく『ここがすごい』ってずっと言ってろと。そしたらその子は本当に自己効力感とか自己肯定感みたいのを必ず確立していくから、そういう育て方をするべきだ」っておっしゃっていて、なるほどなと思ったんですね。

たしかに会社の部署とかでもそうで、上司に「君はここがいいね」って言われることがやっぱり必要だと思うんです。往々にして、日本の大きな企業っていちいちメンタリングしないじゃないですか。

それなら自分から「私のいいところってどこでしょうか?」ってどう思っているかを聞きに行って自分が褒められるみたいなかたちにしていって、自分の自己効力感を培っていくのも重要だと思います。

プロデューサー的感覚のない管理者は、もういらない

谷本: そもそもこれからの時代、部下や同僚の良いところを見つけられない人たちは本当にダメだと思います。

上司の役割ってプロデューサーですよ。ダイバーシティの世の中で、さっきの新規事業の話じゃないですけど「これとこれとこれをこう組み合わせたら、こんなおもしろいことができるんだ」って発想ができない管理者なんて、もういらないわけじゃないですか。

なので、プロデューサー能力がある人間にならなくちゃいけないし、ないのであれば、「私はこんなことができるかもしれません」と言える立場にならなきゃいけない。

自己効力感の話ですが、もし本当に自信がないんだったら「私のいいところどこでしょうか?」を周りに聞いて回るとか、「私に1時間あったらできることなんでしょうか?」「私にお願いしたいことってなんでしょうか?」って言ってみたらどうでしょうか。他人評価による自分の貢献ポイントが見つかるいろんなやり方があると思うんです。

いつまでも他人に評価されるのを待っているような時代でもないのかなって、そんな気はしています。最後はプロがきっとまとめてくださいます。

池原:(笑)。

安藤:もう完璧にまとめていただいたと思っております。ありがとうございます。

自分がワクワクすることからスモールウィンを見つけていく

安藤:本当に谷本さんの言われているとおりです。おそらく自分と誰かを比べていることって多いと思うんですね。人と比べるのはけっして悪いことではないのですが、常に「あの人と比べて私はぜんぜんできていない」「あの人はラッキーなのに私はアンラッキー」と自分のマイナスなところを探してしまうのは、人間誰でも持っている癖だと思います。

でも、どんな人でも良いところは絶対あるんですよね。そんなにすごいことでなくてもいいんです。よく「スモールウィン」と言いますが、小さな成功を積み重ねていくことがが大きな成功に継ながっていくものです。

大事なのは自分を知ることだと思います。人と比べるのではなくて、「自分はなにをやりたいと思っているんだろう?」「なにが自分をワクワクさせるんだろう?」って。それは人と比べる必要はまったくないことだと思います。自分がワクワクするものの中からスモールウィン(小さな成功)を見つけていくということが大切だと思います。

もう一点、ユーモアのセンスがとても大切だと思っています。やはり世の中、楽しいことばっかりではない。仕事でも、びっくりするようなことがあったり、失敗すれば誰でも落ち込みますよね。

失敗したら落ち込んでもいいと思うんです。「自分って本当にダメだな」って。マイナスのエネルギーってどうしても生まれるものなので、それを我慢する必要はないと思います。

ユーモアとジョークの違い

安藤:それをポジティブなエネルギーに変える魔法を、ユーモアが持っていると思うんですね。

私の大学の恩師が言った「ユーモアとジョークは違います」という言葉が、気がついたら、なんと私の30年の社会人生活を支えてくれた言葉となりました。

ユーモアとジョークの違いって、みなさんわかりますか? 辞書を引いたら色々な答えが出てくるかもしれませんが、恩師は「ジョークは、駄洒落であっても、おもしろおかしくすればジョークなんです。苦しいときに笑うのがユーモアなんです」と話してくれました。

自分の置かれている苦しい状況を笑い飛ばし、笑顔に変えてしまう。その瞬間、負のエネルギーがポジティブなエネルギーに切り替わるんですね。ブラックユーモアになるとちょっと違うかもしれませんけど(笑)。

そのときに声を出して笑うのが大事です。微笑むだけではなくて、声を出して笑う。

私は人事部長時代には「1日1回は声を出して笑う」ということを本当に実践していました。チームメンバーが誰にも言えないつらい状況にある、そのような時、部屋のドアを閉めて「そうか、そんなことが起こったんだ。でもそれって、まぁ3年に1回ぐらいしか起きないことだから、あと3年は大丈夫だね(笑)」なんて言ってワッて2人で笑っちゃう。

そんなちょっとしたことでいいんです。そういうユーモアの力というのは、自分をポジティブに変える一つのスイッチになると思います。少なくとも私はそれですごく支えられています(笑)。

職場復帰後の不安をどう乗り越えるか

池原:ありがとうございます。ほかに質問は? 

質問者3:長いスパンでのキャリアについてのお話が多かったように感じるんですが、私も今幼い幼児を2人抱えて育児しながら仕事をしています。

核家族で遠方にしか両親がいない中で、すべての方々が育児経験がまったくないという環境の外資系中小企業のバックオフィスで働いていて、なかなか理解が得られない状況でした。

そういった境遇のお母さんって、これからも人口の関係で増えていくんじゃないかと思います。育児休暇や産休は法律も作られて推進されているようには感じるんですけど、そのあとはすごく大変だなって実感しています。

特に小学生に入ってからが大変だというお話を聞くので、行事とか病気とかいろいろある中で、その期間にどうやりくりをして、乗り越えられたのかを聞きたいです。

池原:マイクで今の質問だけもう一度繰り返してもよろしいですか。今ご質問いただいたことなんですが、改めて会場の外におつなぎします。

長期的ではなくもう少し短期的なスパンでの、育休などのサポートは手厚くなっている。ただ、復帰したあとは大変だと。今後そういうお母さんの方が増えていくが、職場にいるのは理解のある人ばかりではない。そのなかでどのような工夫をされているか、どういう乗り越え方をしているかというご質問ですね。

谷本:そうですね、実は私も今「小1の壁」にぶち当たっているところです。ただ、私はフリーランスなのでちょっと参考にならないかもしれないですけど、そこはまた安藤さんに任せましょう。

安藤:(笑)。

バイアスを打ち破る「できます!」アピール

谷本:私自身、周りの方を見ていてうまくやっているなと思うとやっぱり罪悪感を感じるわけです。「私だけ早く帰っちゃった」とかね。なんですが、その罪悪感を自分の中で中和するようにしています。

どういうことかというと、あえて「これできます!」って先に言っちゃうみたいなことです。今まで2つしか提案しなかったことを5個も提案してみるとか、「なんかがんばってるね、あの子」ってところをきちんと見せていくというかですね。きちんと目に見えるかたちで出していくのが大事ですね。

私の周りの人たちも、みなさん大きい会社で気を使われているんですよ。「赤ちゃん小さいからできないよね」みたいに。そういったバイアスを打ち破るために「これできます!」って言ってしまうんですね。「私はこれができて、これができません」って先に文書で渡しちゃって、結果的に大企業の役員になった人が私の友人には何人もいます。

なので、「どうせみんなこう思ってるよね」と罪悪感に1人苛まれて雁字搦めになるのではなくて、できるところ・できないところをきちんと分け、やる気をきちんと成果で見せるとことで意外とうまくいくんじゃないかなっていう気はしてますね。はい、安藤さん、あとは上手くまとめてください。

(一同笑)

安藤:そう言いながら、谷本さんが既に素晴らしくまとめてくださっているので、2番目にしゃべるのはハードルが高くてオロオロしちゃうんですが(笑)。

断りには逆提案を添える

安藤:たしかに罪悪感ってありますね。罪悪感がどこから来るのかというと、同僚よりちょっとだけ制約があるとか、急に休まなきゃいけないことがあるとか、そういった状況からで、これは誰にでもある状況だと思います。

「たしかに迷惑をかけることもあるかもしれない。だって子どもは生きてるんだし」ということでしょうか。

谷本さんが言われたように成果を見える化するというのは大切だと思います。同時に、助けられ上手になるという手もあるかなと思います。ある一定の時期に子どもは熱を出すものなので、やっぱり同僚の世話になることは避けられません。

例えば、何か頼まれたけれども断らないといけない…そんな時に罪悪感を感じたりするかもしれません。「すみません。それはできないです」って。でも、ただ断るのではなくて「それはちょっとできないんだけれども、こういうやり方ならできます」と逆提案を考える手もあります。

上司や仕事を頼む人は、だいたい理想形で依頼をすることが多いのです。でも実際は100パーセントできてなくても仕事はだいたい回るものが多くて、7割ぐらいできていればいいんじゃないでしょうか。であれば、その7割の方法を提案してみるという手もあります。

助けられ上手になるための「ありがとう」

安藤:また、お子さんの病気などで急に休まなければならなくなった時に、なにが今日の急ぎの案件なのかわからないという状態が、バックアップをするサイドにとって一番フラストレーションになるわけです。

ですから急に休むことになっても、周りの人にかかる負荷を最小限にしておく努力は効果的です。ファイリングなども、どこになにがあるかを誰にでもわかるようにしておくこともできると思います。

また、助けてくれた人には思いっきり感謝をするというのも、助けられ上手になる大切な点かと思いますね。「必ずいつか恩返しします」という、ペイバックまたはペイフォワードの考え方、そういう気持ちを持っていれば、人間同士伝わるものだとて思うんですね。私はいつも性善説を前提にしていますが。

ぜひ感謝をするときには「すみません」ではなく「ありがとう」と言いましょう。「すみません」と「ありがとう」は、言葉として全く違うものだと私は思っています。日本語ではほとんど同義語のように使われることが多いのですが。

もちろん謝らなければならないときは「すみません、申し訳ありませんでした」ですけれど、私たちはよく「ありがとう」と感謝するときに「すみません」って言いますよね。せっかく感謝を伝えるのなら、やっぱり「ありがとう」でしょう。

「ありがとう」という言葉が持っているエネルギーは、自分にも効くんですね。「すみません」と言うのと「ありがとうございます」ってエネルギーが違いますよね。ちょっとしたことですが、思いっきり「ありがとうございます!」と言える助けられ上手になるというのも素敵なことだと思います。

起こりうる事態をすべてフローチャート化する

池原:ありがとうございます。育キャリでは月に1回メンターの方に自分の得意分野でオンライン講座をしてもらっているんですけれども、4月は安ちゃんに「ワーママのための、上司と上手に付き合う方法」という講座をやりました。これが本当におもしろくてですね。アクティブ会員にご登録いただけますとアーカイブを見ることができます。

あと今の質問で、私自身が今ワンオペをしながら仕事と育キャリという新しいものを始めている中でのやりくりでなにか参考になるものがあるかなと考えたのですが、1つロジカルシンキングがあるなと思いました。

「熱を出したらどうしよう?」「こういうときにこうなったらどうしよう?」って、さまざまな想定外に私たちは不安になると思うんですね。私はこういう仕事をしている以上、絶対に穴を空けてはいけない。誰も代わりがいないということが多々あります。お客様に対して私が信頼を欠いてはいけないと思っているので、なにがあっても行くのを常に前提にしています。

だから私は、この時期の子どもになにが起きうるかすべてヒアリングしたんですね。それを全部まとめて、「こういうときにこういう事態が起きうる」ということをすべてまとめてフローチャートにして、「このときはこれが必要だ」と具体的なサポート・サービスにすべて優先順位をつけました。サポートでなにか登録が必要であれば、その事前登録もすべてしておきます。

わかりやすい話で言うと、子どもが熱を出したらどうしようって不安に苛まれたりしますよね。でも私たちって、クリアじゃないものには恐怖を覚えるんですけれども、1回クリアにしてしまえばなんてことないんですね。ただ、手続きが面倒というだけで。

お熱にしても、前日に出した場合と当日急に出した場合があるじゃないですか。それでも当日熱を出した場合に絶対来てくれるシッターサービスもあります。少し高いですが、保険のつもりで登録しておく。そうすれば「何時までに電話すればここまで来るから、大事な仕事はこの時間以降にする」と決められます。予防線をいっぱい張れるんですね。

そんなことを全部表にして、フローチャートでなにをすべきか見える化しておけば、不安はかなり減ると思います。

そのサポートに、ぜひ近所のお友達も入れてあげてください。私は両家遠方で頼れないこともあるので、近所にいる友人に事前にお願いをしておいて、助けを求めています。お願い上手になることですね。

あと、「負担になったらどうしよう」って不安があると思うんですよね。でもその気持ちの裏には「断れないんじゃないか」っていう無意識の決めつけがあると思うんです。

なので「私のお願いはいつでも断ってくださいね。その代わり遠慮なくお願いさせてもらいます」といつも近所のお友達には言っています。すると「今日は行ける」「ごめん、今日は無理」って遠慮なく言えるので、こちらも罪悪感なくお願いできるかなと思います。

小さいお子様を抱えてだと本当に大変だと思うのですが、サポートを見える化して範囲を広げ、すべての手続き・根回しをしておくということが、今できる現実的なことなのかなと思いました。

育児経験はすべて血肉に変わる

池原:他に質問はありますか?

質問者4:仕事において、育児経験が活きたと思えるできごとがあればお聞かせください。

池原:有香さんからお願いします。

谷本:私はジャーナリストなのでありまくりですよ。すべての事象は全部血や肉になっています。もうすべてですね。

具体的にっていうとなんだろう? もちろん女性活用であるとか育児の記事を書くときもそうですし、そういった文脈で企業の社長とお話しするときもそう。もう役に立ちまくりですね。だから大変なことがたくさん起こったりすると、ちょっとワクっとするところもあったりしますね。「これでまたネタが増えた」みたいに。

(一同笑)

池原:ありがとうございます、安ちゃんお願いします。

安藤:そうですね。私も役に立ったことがあるかといったら、もう本当にすべて血や肉になっていますね。逆に役に立たないことはなにもないんじゃないかって思うぐらいで。

マーケティングや人事の仕事においても、役に立ったと思います。母親の行動がわかるからマーケティングにも活かせる。そして社内にいる女性社員とも深い話ができるというように。

また、そういった直接的なことだけではなくて、子どもを産んで育てるなかで人として成長するというか、いろんなものを突きつけられるじゃないですか。すごいことですよね、命を産み育てるって。

そして、それは一人でできるものではなく、多くの人のサポートを得て初めてできること。その経験は仕事での肥やしという以上に、私は人生の肥やしと言える部分もすごくあると思っています。

結局仕事って人と人が行っているものなので、信頼関係の中で進んでいくものだと思うんですね。そういった意味ではもう本当にすべてが役に立っていると思います。

圧倒的に身につくマルチタスクスキル

谷本:もう1個付け加えてもいいですか。

池原:もちろんです。

谷本:よく言われていることですけど、マルチタスクマネジメントがスキルとして身につくじゃないですか。私、実際今すごい忙しくて、早朝から深夜まで予定が入っていて「テトリスあがりですか?」みたいな感じのGoogle Calendarなんです。

(一同笑)

谷本:でも余裕なんですよ。

私はフローチャートとか書かないで土壇場で決めるタイプだったから余計にそうなんですけど、なにが選択肢として一番正しいのかをその場その場の直感力や選択力で決めてきました。

なにが重要でどういう配分でポートフォリオをマネジメントするかも含めて育児・介護の時期に学んだので、もう仕事で活きまくりですよね。なので、今はすごく楽にマネジメントさせていただいています。たぶんみなさんもそうだと思います。

池原:ありがとうございます。今お話を伺っていて2つ思うところがありました。1つめは、私が大好きな立教大学の中原淳先生の『育児は仕事の役に立つ』という本をぜひ読んでいただきたいですということです。

浜屋祐子さんとの共著で、育児にどんなスキルがどのように役立つかを研究のデータとして出されています。ぜひそのデータを持って、上司に「私、これぐらい成長して帰ってきます」と言ってみるといいかもしれません。

2つめは、育児はもちろん、人のケアをする介護、あるいは新の育成、近所の子どもを預かって面倒を見るなど、すべての人のケアや育成、そして導きが自分自身のすべての仕事の役に立つと思っています。

一方で、逆説的ですが、自分自身や子どもの教育、あるいは誰かのケアだけを目標にしないほうがいいと思います。自分はどう生きるか、背中をどう見せるかどんな生き様を日々家の中で誰に見せるか、自分をどう部下に見せるかと考えることで、結果は大きく違ってくると思いました。

自分の好きを大切に、自分で決める覚悟を持つ

池原:本日はせっかく今日は会場にお集まりいただいたので、2〜3分でまず周りの方と感想をシェアしてみてください。

(3分後)

運営者:本日の講演をzoom配信でみている方からも感想をいただきました。ありがとうございます。

「自分がなににワクワクするかという観点で自分のこれからを作っていければよいというお話に背中を押されました。」

「育児をしながらの仕事で、思い通りにいかないこともあったり休まる時間がなかなかなかったりしますが、人生無駄なことはなにもないですね。勇気づけられる内容でした。」

「どんな状況であれ、自分の『好き』を大切に、自分の軸を持ち、自分で決めるという覚悟持つことが大切だと思いました。」

「自分を客観視する話に共感しました。メタ認知を無意識レベルで行っていたこと、行って超えられていた壁があったことも肯定できました。ユーモアも身につけたいなと思いました。」

池原:みなさま、感想ありがとうございます。では、会場のみなさんの中からもお願いします。

(一同笑)

参加者1:はじめまして。〇〇と申します。よろしくお願いします。すごくいいお話が聞けたということで今結論にいたってるんですけど、一つひとつの言葉が胸に響いて本当に来てよかったなと思っています。

4人の中の感想では、やっぱり自分で決めるということが大切なんだなという話になりまして、「自分で決める」とあとなんでしたっけ? ……はい、もう全部本当にすべてよかったです。

(会場拍手)

育児は女性だけの問題ではない

池原:次は静岡からお越しいただいた男性の〇〇さん、お願いします。

参加者2:はい。静岡からこのためだけに参りました。ええと……。

池原:ぜひ感想をひと言。

参加者2:今日はターゲットは女性なので、女性の方がほとんどのようで。

池原:そんなことないですよ。

参加者3:男性にもっと聞いてほしいなと思いました。ワクワクすることがこれから大事になってくるし、おふたりともネガティブな状況をポジティブなエネルギーに変えていらっしゃる。そこにユーモアというのがポイントになるということ。非常に学ばせていただきました。

安藤:ありがとうございます。

参加者2:ありがとうございます。

(会場拍手)

池原:ありがとうございました。そうなんです、育キャリにももっともっと男性に入ってきてほしいし、実は会員の男性が増えてきています。なので、みなさんの旦那様とか会社の上司とか「これいいよ」と言ってもらえると……。

育児は女性だけの問題じゃないんです。ライフイベントとして考えると、育児だけでなく介護や自身の健康など、壁にぶつかったときは男性も女性も一緒です。先ほど「男性のほうが大変な時代になるよね」みたいなお話もあったのですが、そのときに必ずこういった学びが役に立つかなと思っています。

正社員とフリーランスは使える社会資源がまったく違う

池原:他になにかありますか? 

参加者3:今日はありがとうございました。2人で話をしてたんですけれども、出産をされたばかりで、今4ヶ月です。すごくおりこうな赤ちゃんだけれども、やっぱり自分はすごく大変で産後うつのような状況に精神的になってしまって。今はもう元気になったんですけれども。

そんななか、自分がそういう状況にとらわれてしまったときも、自分の姿を俯瞰的に見るとか、ポジティブな言葉・定義で捉え直すとか、そういったさまざまなヒントをいただけたという話が1つ。

あとは今日の話ですごく心に残るキーワードがたくさんありました。今日じゃなくても、どこかのタイミングで例えば失敗した話とか家事の時短テクとか、そういうもう少し小さい話や挫折話とかを聞きたいねっていう話をしていました。

私は今フリーランスで働いているんですけれども、もともと大きな企業にいて、NPOに転職した後でフリーランスになりました。今1人子どもがいるのですが、この秋にまた出産をする予定です。

社会資源という意味でいうと、さっき池原さんも生後3週間で職場復帰したって話がありましたけど、経営者やフリーランスと、いわゆる大企業雇用されている人たちが使える社会資源ってぜんぜん違います。育休があるか、育休手当があるかや、保育園の入りやすさも。

そういう話になって、フリーランスでやってこられた谷本さんと、大企業で勤めていらっしゃった安藤さんの、いわば両極端のキャリアを持つお2人の話で、そういった社会資源とのかけ合いみたいな話ももう少し聞きたいなといった話をしていました。ありがとうございます。

(会場拍手)

注目が集まりつつあるフリーランスという働き方

池原:先ほどの経営者とフリーランスの社会資源の話でいうと、ちょうど「経営者・フリーランスの女性の産前産後に支援を」というキャンペーンを立ち上げた渡部雪絵さんという方が会場にいらっしゃいます。

みなさん、積極的にご参加いただけてうれしいです。育キャリカレッジは、働くのが楽しいと思う育児世代の女性をこれからも増やしたいんです。育児も楽しいし働くのも楽しい、そして私というものを考えるのが楽しいという人を増やしたい。これからもいろんな失敗をしながら挑戦をしていくので、応援してください。

(会場拍手)

渡部雪絵氏(以下、渡部):すみません、先ほど「経営者・フリーランスの産前産後の支援」キャンペーンの話で紹介いただいたので、少し紹介させてください。

渡部と申します。私は自分でアパレルのブランドを立ち上げて、この2年ぐらい運営しております。会社員のころに妊娠して、妊娠中に「辞めてください」と言われ、結局自営業の間に出産しました。

先ほど、フリーランスになると雇用されている側とあまりにも妊娠・出産・育児に関しての社会資源や社会保障が違うという話がありました。それを改善したいということでフリーランス協会の方々と一緒に活動をともにしております。

その署名を今『Change.org』で集めておりまして、6月4日に厚労省に提出することが決まったんですね。先日はNHKさんなどにも取材いただきまして、それも放送される予定です。もっと弾みをつけて署名を増やし提出したいと思うのでぜひお願いします。

あと1点ありまして、出産の時期が今年の9月だったんですが、実はその社会保障の部分である国民年金が、会社員でいう産休期間にあたる部分は免除されることになったんですね。あんまり聞こえてこないなって感じだったんですが、厚労省も去年発表していて国もやっぱりフリーランスという働き方に目を向けてるのかなと私自身はすごく感じています。

なので、ぜひこの活動を応援していただけたらなと思います。最後にすみません、超宣伝になってしまって。交流会でもよろしくお願いします。(池原)真佐子さんありがとうございました。

池原:ありがとうございました。育キャリカレッジでは様々なメンターを紹介しています。渡部さんの紹介記事もありますので、ぜひ読んでください。あと雪絵さんが着ているワンピースは彼女の立ち上げたブランドなんです。ぜひ見てみてください。

最後に、みなさんにアンケートのリンクをお送りします。2日以内ぐらいにご記入いただけると、私たちもゲストの方々もうれしく思います。ぜひよろしくお願いします。

では、一旦こちらで終わりです。ありがとうございました。

(会場拍手)

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