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小室哲哉氏 講義(全6記事)

小室哲哉が大学生に説いたキャリアの選び方「自分のプライドが保てるかどうかが大事」

法政大学キャリアデザイン学部の講義に、特別講師として音楽家の小室哲哉氏が登壇。90年代の音楽シーンを席巻し、今なお第一線で活躍する小室氏の知られざる学生時代のエピソードや、自身の創作活動、キャリアや働き方についての考え方に至るまで、幅広いテーマで学生たちに向けて講義を行いました。

レコード会社のアルバイトで学んだこと

田中研之輔氏(以下、田中):(会場に向かって)せっかくなんで、「これ聞いときます!」みたいな方、挙手をどうぞ。

(挙手がなかなか出ないのを見て)いきなりは緊張しちゃうよね(笑)。

(会場挙手)

あ、どうぞ。みんなの授業でもあるので、我々がしゃべるよりも、ぜひ。

参加者2:キャリアデザイン学部の○○と申します。自分も音楽制作の活動を3月ぐらいから始めて、今すごく気になっていることがあります。レコード会社でアルバイトをしたというのを聞いたんですが、そこから音楽業界へ入っていくとき、それでなにかつながりみたいなものはあったんですか?

小室哲哉氏(以下、小室):結果的にはつながっていないんですけど、情報は入ったので。「こんな音楽雑誌の編集長のところにデモテープを持っていったらいいんじゃないの」とか。

あと、僕はジャンルをあんまり選ばずいろんなものを聞いているのは、レコード会社の人がそういうレコードをくれたからでした。あと、「(この曲を)なんでこんなに押すんだろう?」みたいなこともありました。『ホテル・カリフォルニア』って曲わかりますか?

参加者2:わかります。

小室:あれは僕のバイト時代、そのレコード会社が「一番売れる」と言っていて、とにかく死ぬほどハガキとか電話をさせられたんです。それで、僕1人じゃもう手が負えなかったんで、クラスメイトに「1枚ずつ書いてくれ」って頼んだりして。

要は社会がどんなものを売りたいのか。音楽に関してのターゲットとマーケットみたいなことですよね。(教えてくれた方は)20代の方だったと思うんだけど。そこからですかね。「このオーディション、こんなのがウケるよ」「これに出たらウケるよ」とか。そういうものを教えてもらいました。

田中:その生きた情報をその場で得て、それを貯めてく感じで。

近くにあるものを利用することが大切

小室:あとは自慢話じゃないけど、どうやって受かったのかみたいなことは、エンタメのその人たちが、「こう言ったから、俺(会社に)入れたんだよね」みたいな感じの話を、僕には直接関係ないですけど、聞けたんです。だから、関わらないよりは関わったほうがいいと思います。

でも、もう1個注釈を入れると、エンタメといっても今はレコード会社が一番じゃない時代なんで。もしかしたら通信事業とか物流のほうが力を持ってるかもしれないので。とにかく、近所にあるものを使うっていうのがいいと思いますね。

田中:(会場に向かって)使ってますか? 近所にあるもの。我々の近所は、(スマホを触る仕草をしながら)ここが近所で、ここから情報が入ってくるので。

小室:法政って上智(大学)とかは近いでしょ?

田中:近いです。

小室:近いですよね。僕の場合はそういうことだったりしますね。

田中:(大学同士で)連携をしながらってことですね。 

小室:そうそう。

田中:じゃあ、もう一方くらい。

参加者2:ありがとうございます。

田中:どう? 誰か質問あれば。今は「大学時代の小室さん」というテーマで進めているんで、なにか聞いてみたいことはありますか?

ちなみに、事前に集めてもらった質問で言うと、「これ、おもしろいな」と思ったんですけど、「大学時代に、今の小室さんの姿をご自身が少しでも想像できていたのか、まったくなかったのか?」っていうのは、どうでしょうか?

小室:音楽で食べていきたいというのはありましたね。今の話ともつながるんですけど、最悪でもないけど、音楽関係の仕事に就ければいいなっていうぐらいに、ミニマムにまで落とし込む。マキシマムとミニマムを考えていました。

マキシマムは、(音楽で)デビューできるということ。しかも、ブランドがあるところ。「ここに入ったんだよね。ここで契約したんだよ」「わ、すごいじゃん!」って言われるようなところに契約できるのがマックス。ミニマムは、音楽関係というか、ジャーナリストみたいなのになれたらいいな、というぐらいに思っていました。

田中:そういう意味では、ある程度は専門性に対してのマーケタイズとか、ターゲット化ということを、実は早いうちからやられていた。

小室:そうですね。いろんな人と対峙することによって、魅力を感じてもらえているのか、感じてもらえていないのか、みたいなことが重要で。

だから実は、今お話している何百人の方が耳を傾けてくれるのかどうなのか。もしかしたら、1列目の2人、3人だけしか届かないんじゃないのか、とか。武道館ぐらいなのか。はたまた東京ドームなのか。そういうことを考えています。

まずは自分自身にプライドを持つ

田中:ちょっとお聞きしたいんですけど、どういうふうに考えているのでしょうか? 例えば、自分がつくり込んだ曲がどんなふうに届いていくのか。素人目に見ますと、結果は、売上で届いたのかはわかると思うんですが、売る前から届かせるための、どういう頭の思考回路といいますか、なにか算段があるんでしょうか?

小室:普通ですけど、消費者の時代だろうが、そうじゃない時代だろうが、隣にいる人、そこにいる人、それからすぐに聞いてもらえる人、すぐに話して、どう反応というか……レスがある人、というところかな。

みなさんの世代だと、やっぱりお付き合いしているガールフレンドだったりですよね。僕の場合だと、……結局フラれちゃったんですけど(笑)。

(会場笑)

田中:そうなんですか。

小室:武蔵美の人とは、アーティスティックなところで気が合ったので、応援してもらっていました。その人に一番レスポンスを求めていましたね。

田中:「つくったけど、ちょっと聞いてみて」。

小室:「どうかな?」とか。あと、ライブハウスに来てもらうこととか。

(会場笑)

田中:そうなんですか(笑)。データベースがあるんですね、そういう(笑)。裕さん、どうです?

佐藤裕氏(以下、佐藤):今、この世代はだいたい、自分の夢とかのマックスは設定しやすいんですが、ミニマムが設定しにくかったりするんです。それに関して、例のキャパシティとか、そのへんの角度からなにかアドバイスがあれば。

小室:そうですね、ミニマムですよね。僕がさっき言ったように。だから、なにかに関われればいいやっていう。円で例えれば、エンタメっていうエンターテインメントの円の端っこでもいいと思う。それがミニマムだと思うんですけど。それで自分のプライドが保てるか。

佐藤:プライド。

小室:自分に対するプライドですね。モチベーションではなくて、モチベーションの前にまず、それを自分が納得しているのかってことだと思うんです。なので、納得している範囲のインターセクションのようなところがあるなら、そこでいいと思うんですね。それがミニマムでいいと思うんですけど。

佐藤:なるほど、なるほど。

小室:要はプライドというものを自分が保てなかったら、それはミニマムでもないと思うんですね。もうミニマム以下というか、関係ないものになってしまうので。

例えば何だろうな。服飾業とかグラフィックでもなんでもいいんです。政治、経済、なんでも。マーケットでもいいんですけど、そこの円の中の一番外郭だとしてもプライドさえ持てれば、モチベーションにもつながると思いますし、クオリティにもつながると思うんです。

佐藤:まず、自分のプライドがある。

小室:うん、すごくありきたりな言葉ですけど、やっぱり自分のプライドって大きいと思います。なんにしろ。

会社、組織、人と「関わる」こと

田中:それは大学の頃から変わってないということですか?

小室:そうですね。たぶん、一番外だったら傷つくだろうと思うんですけど、でも、(プライドが)保てるかどうかが大きいと思うので。

あらゆるアルバイトを、今は学生だからこそできる。他の職業に少し触れることができると思います。そんな時に「あ、これはなんか、いじけてない感じでやれているな」「萎縮していないな」とか、そういう気持ちになれるものは「もうちょっと深掘りしてみようかな」ということだと思います。

佐藤:それがミニマムかもしれない。

小室:ミニマムかもしれないですね。

田中:(会場に向かって)どうです? みんないいですか? 質問。「あるよ」っていうタイミングで挙げてくださいね。

音楽家としての小室さんに対して、今のお話にもつながると思うんで、いくつか質問があるので聞いてみたいと思います。

これまで誰もが知る音楽の功績を残されているなかで、今もまだ生産されていますね。今のお話でもありましたが、どういう具体的な分岐点があり、どんな努力をしたのか。これは学生の言葉ですけど、「意識して取り組んだこと」。先ほどの「プライドを維持する」というのも1つの答えかもしれませんが、そのあたりを。

小室:そうですね。プライドがあるからつながると思うんです。時代があまりにも違うので、一概に同じとは言えないけど、自分の中でブランドというのに憧れていたんです。

みんなが知っていて、みんながうらやむこと……うらやむ企業、会社、組織、人、コミュニティ、ユニット。いろんな言葉がありますけど、それらと、先ほど言ったように、「関わる」ということが大きかったり。

僕は結果的には、ソニーというミュージックの中のエピックレコードっていうところを最終的に選んだけど、やっぱりソニーというものは、その時代ではブランド力が圧倒的に強かったですね。「It's a Sony」という感じですごかったんです。だから、「ソニーの中に関われたらいいや」というのがミニマムで。「ソニーというものに関わりたい」という一心で。

田中:同じなんですね。

小室:同じなんですよ。

田中:そのアプローチの仕方から、正社員でってなるわけなんですね。

小室:だから、1人でミニマムとマックス、両方経験できたということ(笑)。

田中:すばらしいです。

小室:結果、アーティストとして、ソニーで一番売上をあげたことも1回あるので。だから、一番上と一番ダメなやつを経験しました。

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