プロのシナリオライターはどこを見ているか

新井一樹氏(以下、新井):(シナリオ制作において重要なことの)もう1つは、みなさんとプロのシナリオライターで違うところがあります。決定的に違うところはなにかっていうとですね、それはこの「お客さまの立場とか相手の立場で考える」のところにつながってくるんですが、プロのシナリオライターは……。

「このシーンにいるミヤタさんって、どんなキャラクターなのかな?」と考えます。キャラクターっていうのはその人の性格です。

本間さんのやつだと、「デザイナーやってるよ」ってちょっとカッコつけちゃうみたいなセリフがあるんですね。「あ、俺、デザイナー」みたいな。そうすると、キャラクターとしては嘘つきとか、見栄っ張りとかっていうのを考えて、そのシーンのセリフを言わせているわけですね。

もう1つは背景。背景っていうのは、このシーンから見て過去ですね。「過去3年間、ミヤタはどんな思いだったのかな?」「ユウコはどんな思いだったのかな?」っていうことを考えるんですね。

最後に事情。このシーンから見て、これを事情といいます。これからどうしたいのか。例えば、ユウコとちょっと元鞘に戻りたいなと思って、「これから飲みに行かない?」って言うみたいな。

これ、お互いに違うシナリオになってたのは、シナリオを書く時に何気なくキャラクター、背景・事情を設定してるんですよね。プロのシナリオライターはここが違っていて。

意図的にどういうキャラクターなんだろうか、この人はこのシーンまでどんな背景があるんだろうか、事情として、これからどうしたいと思ってるんだろうかっていうことを考えて、そのシーンのト書、セリフを書いていくっていう作業をするんですね。

シナリオで考えると答えが出てくる

新井:じゃあ、これがなんで大切なのかということなんですけど、私たちのセリフって全部、キャラクターと背景と事情からできてるんですよ。

ドラマの場合、キャラクター、背景、事情を設定してシナリオを作っていく。日常は相手のキャラクター、背景・事情を勝手に作れないので相手のセリフとか動作や表情とかから、「この人、こういう人なんじゃないの」とか、「こういう背景があるんじゃないの」「こういう事情があるんじゃないの」ってことを考えていくということなんですね。

頭で考えなきゃいけないことは、シナリオライターと一緒です。ただ、シナリオライターと順番が逆になる。さっき秋元さんから出た「相手の立場で考える」っていうと、それってスタンスじゃないですか。

「考えなきゃダメだよ。お客さんの立場で考えなさい」って、ビジネス書を読めば出てきますよね。「考えないとこんなふうになりますよ」とか、いっぱい書いてあるけど、じゃあどうやったら考えられるのって、実は答えが書いてないんですよね。

でも、シナリオで考えると答えが出ちゃうよと。キャラクターを考えようぜ、背景を考えようぜ、事情を考えようぜ。お客さんのことを考えるって、まずここだよね、ということになります。

「ちょっと可能性がありそうなセリフ」を書き出す

新井:ちょっとですね、ここからみなさんに聞きながらいきたいと思うんですが。このセリフに焦点を当てて考えていきたいなと思うんですけど。ログミーのお客さんにこんなことを言われたら、営業として「あ、これはけっこう心をつかんでんじゃないかな」「いい傾向にあるぞ」みたいなセリフってあると思うんですよ。お客さんからこういうセリフが引き出せたり、こういうことを言ってくれたらいいよね、みたいな。

例えば、今日うちのスタッフに「ログミーさん向けにセミナーをやるんだよ」みたいな話してて、「どういう会社なんですか?」って言うから、「イベントとかの全文書き起こしをするっていうコンセプトの会社なんだよ」みたいなことをサクッと説明したら、「書き起こしってすごくいいですね」って言ったんですよ。こういうセリフが出てきたら、「うちのお客さんになってくれるかも」ってちょっと思うセリフじゃないですか。

例えば「こんなことを言われたらいいな」みたいなセリフを、ちょっとこのシナリオ・センター特製A4シートにですね(笑)。

(会場笑)

「こんなことを言われたら、けっこうお客さんとして食いついてる時に言ってくれるセリフだよね」っていうのを、書いていってもらっていいですか。いくつでも、バーッと思いつくことを。

(参加者、シートに書いていく)

まあそんなもんで、とりあえずいきますか。じゃあ、こんなことお客さんに言われたら「ちょっと可能性あるかな」みたいな、どうですか? 河井さん。

河井鉄平氏(以下、河井):「動画やってたけど、やめたんだよね」。

新井:あ、「動画やってたけど、やめたんだよね」、なるほど。

河井:きっかけに近いですけど。

新井:でも、いいと思います。「動画やめたんだよね」。いいですね。本間さんは? その中のいずれかでも。

本間崇史氏(以下、本間):「今まで、イベントの内容をちゃんと残せてない」。

新井:「今まで、イベントの内容を残せてない」と。

河井:ちょっと、僕のと毛色が違うな。

(一同笑)

ログミー営業部が書き出したセリフとは?

新井:じゃあ、秋元さんいってみます?

秋元洋平氏(以下、秋元):「いつまでにお返事すればいいですか?」。

(一同笑)

河井:完璧ですね、もう(笑)。

新井:テスクロ(注:テスト・クロージングの略、商談の最終局面のこと)済みたいな(笑)。

叶内怜氏(以下、叶内):「請求書もらえますか?」とか。

(一同笑)

河井:それ、けっこうきますね(笑)。

叶内:それはうれしくてたまんないね。

秋元:すごいこっちばっかり考えてた(笑)。

(一同笑)

新井:じゃあ、叶内さん。

叶内:僕は、「そのイベントの認知が高まるのはいいっすね」。

新井:「イベントの認知高まるのいいな」と。

叶内:真面目に考えちゃった、秋元さんと違って。

秋元:(笑)。

新井:けっこう芯喰ったやつですよね(笑)。

叶内:そうそう(笑)。根は真面目なもんで。

(一同笑)

新井:いやいや。そうですね、これ、いいですよね。じゃあ、例えば「動画やめたんだよね」って河井さんが言われたとしますね。

河井:はい。

新井:「最近、動画やめたんだよね」って言ったら、ふだんどんなふうにリアクションしてます?

河井:「なんでですか?」って。

新井:ほう。じゃあ、本間さん、「今までイベントの内容残せてないんだよね」って言ったら、どんなこと言ってます?

本間:「それはもったいないですね」。

新井:「もったいない」と。「もったいない」って言った後は、なんか言うんですか? 「ログミーだったら……」みたいな。

本間:そうですね。「全文書き起こしなんで、イベントの内容をしっかり残せて拡散できますよ」って。

新井:なるほど。「書き起こしだからね、拡散できるよ」。

叶内:もうオチじゃんか、それ。オチみたいになってるよ。

新井:オチみたい?

叶内:秋元さんのやつ。

(一同笑)

新井:「いつまでにお返事すればいいですか?」って言われたら、どうします?(笑)。

秋元:「ご検討……どのぐらい必要ですか?」(笑)。

叶内:「今いただけますか?」じゃないの?(笑)。

秋元:逆に、「ご検討とお返事いただくにあたって、今の時点でネックとかございます?」とか。

新井:なるほど。「今の時点でネックあります?」と。

叶内:「イベントの認知度が上がるからいいですね」。(取引相手に向かって)「ですよね」と言います。

(一同笑)

セリフを言った背景・事情を考える

新井:「ですよね」、その後どんな話します?

叶内:その後……。

新井:「ですよね」って言って。

叶内:いろんなパターンがありますよね。いいところとかネックとか、聞くこともあるでしょうし。

新井:ネックを聞くこともあれば、「こうやって認知が高められるんですよ」みたいな説明もするみたいな。

叶内:そうですね。

新井:なるほど。

叶内:具体的な話をしていくかもしれないですね。

新井:うんうん。「なぜかっていうとね」みたいな。

叶内:そうですね。

新井:いいですね。もちろん会話の流れの中で、どのタイミングで出てくるかによって対応は変わるとは思うんですけれども。

じゃあ今出てきました、この「動画やめたんだよね」「今までイベントの内容を残せてない」とか、「いつまでにお返事すればいい?」「イベントの認知が高まるの?」っていうセリフを言った担当者の背景・事情を考えてみましょうか。

「今までこういうことがあったから、動画やめたんだよね」「これからこういうふうになりたいから、動画やめたんだよね」って言ったんじゃないか、っていうような背景・事情を、ちょっと考えられるだけ書き出してもらっていいですか。できれば今みなさんに言っていただいた4つを。

叶内:自分のっていう意味じゃなくて、全部考えたほうがいいっていう意味ですかね?

新井:そうですね。

叶内:オッケーです。