私たちは物ではなくて「関係性」を買っている
若者たちが3,000円のゲストハウスに片道数万円かけて泊まりに行くワケ

地方創生 × メディア #3/4

第1回 地方創生会議
に開催

2017年6月10日から11日にかけて、世界遺産である和歌山県高野山にて、47都道府県がつながる地方創生イベント「地方創生会議」が開催されました。初開催となる今回は、地方創生に関わるさまざまな分野のキーパーソンを招いて、トークセッションやワークショップを行いました。トークセション「地方創生 × メディア」では、地方にフォーカスした雑誌・Webメディアを手がける編集長たちが登場。地方の魅力を見つけ出すプロである彼らが、取材や編集を通じて気付いたこととは? その知見を語りつくします。

Webメディアは成功まで遠い媒体

指出一正氏(以下、指出):今度、長野市さんのWebメディアの編集長を仰せつかったので、大先輩の柿次郎さんにいろいろ教えてもらいたいです。Webメディアと紙メディアは違うから。

徳谷柿次郎氏(以下、徳谷):そうですね。

平野隆則氏(以下、平野):どんなことを教えるんですか? 柿次郎さん。

徳谷:教える、そんなおこがましいことは言えないんですけど、Webメディア、なんですかね。Webメディアって、やることが多いんですよ。やることが多いっていうのは、単純に予算の問題とかもあったりはするんですけど、ハードルが低そうなんですけど、実は成功まで遠い媒体じゃないかなと思っていて。

ジモコロはいろんなお力といいますか、けっこう体力があるメディアです。それは予算っていう言い方もできますし、僕のリソースをどんだけ使えるかってところなんですけど。けど、やっぱりさっきおっしゃっていたように、地域でやると、そもそもお金がないところからスタートして。みなさん本業があって、隙間でどれだけやれるのかっていう話になってくるので。

ジモコロの場合は、本当に僕が1年中ジモコロのことに時間を使うみたいなものを、最初の1年2年やっているんですね。逆に、お金とか時間がないという状態で、近くに行けるものばかりを取り上げていくと、それこそさっきの、ちょっと既視感があるネタになっちゃうというか。深く入り込むと、本当に時間とか手間暇とか、365日その土地のことを考えて、常になんでも情報待ってますよみたいな、ウェルカムな状態を作り続けないといけないですね。

そこに至らずに、なんとなくポツポツ記事をためていっても、やっぱりなかなかWebだと結果って出ないんですよ。それが、例えば100万PVとか500万PVみたいな数字でもなく、地域の人が本当に喜んでくれるっていうことの、どこにターゲットを向けるかっていうのが、最初に設計をミスりがちといいますか。

平野:それ、いい話ですね。

徳谷:そこがたぶん、ご経験がもしかしたら。

指出:お二人のね、共通項のところ。

徳谷:そうですね。

平野:そうですね。私たちはゼロからなにを立ち上げたっていうよりは、全国でやっているみんなの経済新聞っていう取り組みに、自分たちも参加したっていうかたちだったんで。誰に対して届けるのかっていう話は、とても大事だなと思うんですね。

ソトコトは指出氏にとっての回覧板

個人のブログってそこまで意識しなくても、要は書きたいことを書いてもいいってことなんですよね。自分が正しいと思ったことを自由に書いていってもいいと思うんですけど、一方でWebメディアとしてやるんであれば、やっぱりインターネットって広大なので、どんな人が読むのっていうところまで見ないと、漠然と数字だけ見ていてもアクセス数が伸びないって話になってしまいますよね。

徳谷:そうなんですよね。また、その数字が見えちゃうんですね。

平野:そうですね、はっきり見えますね。

徳谷:そこでちょっと消耗しちゃうといいますか。それはたぶん、Webと紙で特性が違っていて、僕は逆に紙メディアに今憧れを持っていて、なにか作りたいなっていう気持ちが出てきてます。

指出:紙メディアをやっててよかったなと思う瞬間が、時々あるんですけど。最近だと移住の特集を作って、その移住の特集を持ってその町に行ってくれて、そのまま移住をして起業をしてくれた若いご夫婦が。

徳谷:いいですね。

指出:それはすごいうれしかったのと、あと、「なにか地域に関わりたいな」と思ってゲストハウスの特集号を買ってくれた女の子が、島にゲストハウスを作ってくれたりしたっていうのはうれしくて。

これは僕の中では、最近よく「僕は編集者を辞めた」って言ってるんです。なぜかっていうと、従来のクラシックメディアの編集の手法は、常に新しいコンテンツを出さなければいけないと。でないと売れなくなるということで、取材しに行った場所、例えばおしゃれなカフェとか、素敵な町とかに行ったときに、その人たちに「また来ますね」って言っても、だいたい行かないじゃないですか。

こんな空々しい関係性で雑誌を作ってるのもアホだなと僕は思って、「編集者を辞めた」って言って。じゃあ僕は代わりになにを作ってるのかっていったら、ソトコトっていうのは回覧板ですね。

平野:回覧板。

指出:自分が会いに行きたい人とかが載っていて、嘘偽りなく、リアルにローカルに暮らしてる人がいるから、それを持って会いに行ける。つまり、1ページの中に情報をたくさん詰め込むんじゃなくて、1ページの中に、どのくらい関係性を詰め込めるかっていうのが、僕の中では大事な1つですね。すみません、僕ばかり話してますね。

徳谷:いやいや。

指出:もう1個話して、終わりにしますから。

徳谷:はい。

今の時代はお金で関係を買っている

指出:これけっこう、今の時代の空気、社会気分だと僕は思うんですけども。例えば僕が若い頃っていうのは、80年代や90年代は車を買うとか、家を買うとか、おしゃれなアクセサリーを買うとか、ブランド物を買うっていうのが、限りなく東京に認めてもらう最高の装飾だったわけですね。東京的なものに褒めてもらう。だから、お金を使って物を買ってたんです。

でも2000年代になったら、みんなちょっと風向きが変わって。何を買いだしたかっていうと、自分を磨くための資格を買ったり、経験や体験にお金を出したんですね。MBAを取るとか、海外に行くとか、カルチャースクールに行く、野菜ソムリエになる。

じゃあ、今は何をみんなが買ってるのかなと思ったら、たぶん関係を買ってるんですよね。その関係っていうのは、例えば服を買うときにも、友達が作っているブランドだとか。それから、このブローチの作家さんを応援したいから買うとか。最たる例は、クラウドファンディングだと思うんです。クラウドファンディングは、あれは関係を買うための、ものすごくよくできたツールなんじゃないかと。

僕は地域を応援するっていうのは、関係を買うのにとても近い価値観だと思うんですよね。だから地域を発信するときに、今は経済的なかたちとして社会の気分はどこに向かってるかっていったら、2,800円ぐらいで泊まれるゲストハウスに、安いからみんな泊まりに行くわけじゃなくて、鳥取までわざわざ往復の飛行機を出して、5万円とか6万円出して、その2,800円のところに泊まりに行く理由をちゃんと考えなきゃいけないと。

それはたぶんみんな、健全な意味での関係を買うっていう行為が、わりと日本だけじゃなく、とくに日本ですけどね。そういう気持ちに、今はなってるんじゃないかなと思いますね。

今日来てくださったみなさんも、たぶんクラウドファンディングで。小幡さんのが大成功されて、こういう場所ができたらいいな、こういう場所に行ってみたいなっていうことにお金を払ってくれて、16時間かけて来てくれた方もいるし。

徳谷:そうですね。

指出:時間をお金で買ってくれた方もいるだろうし、そういう意味では関係を買っているっていう広義の中に入るんじゃないですかね。

クラウドファンディングは人の輪に入るための1つの方法

平野:なるほど。関係を買うって、ちょっと一瞬ドキッとするフレーズが出ましたね。

徳谷:そうですね。文春砲が来ちゃいそうなね。

平野:(笑)。文春砲来ちゃいそうですね。なるほど。コミュニティっていう言葉がちょっと前から使われていますけども、そういうものにみなさん飢えているっていう表現をよくしますよね。

まさに地方で、そういう人が集まる場所であったり、輪に入るといいますか、そういうものに加わるためにも、クラウドファンディングっていうのを使う1つの方法になっているってことなんですかね。

クラウドファンディングといえば、柿次郎さんは「BAMP」っていうのを最近立ち上げてますね。

徳谷:はい。

平野:CAMPFIREさんとBASEさん。

徳谷:そうですね。

平野:またそちらのほうで編集長もされてるっていうことで、だんだん地方の小さな声を拾っていく、そういうメディアになってるんですかね。

徳谷:そうですね。クラウドファンディングは、これからどんどん伸びていくでしょうし、なにかをやりたいっていったときに、お金が足りないっていうのを言いわけにしてほしくないっていうのが、今回も来ている家入さんの思いがあったりするので。BASEも自分たちで作ったもの、アクセサリーとかを気軽に売れる場所になっているので、これまでなかなか生産者がなにかを売るっていう流通は、けっこう分断していたりするので。

一方で、クラウドファンディングとECっていうものも、メディアという力でつながないといけないんじゃないかなと思って、新しいメディアをまたお手伝いすることになったっていう経緯ですね。

平野:つなぎメディアですね。

徳谷:そうですね。その人が何をやってるかっていう、そのストーリー的なものを知った上でクラウドファンディングがあって、ここでできたものは今度BASEで買えるんだ、みたいな。そういう、ちょっとミックス的なかたちで、ローカルの小さな声っていうものを編集していきたいなと思ってます。

全国には個性的なおじさんがたくさんいる!?

平野:また、今回のBAMPとはまた違って、ジモコロは、さっきちょっとご自分でおっしゃってましたけど、掘り起こす。おもしろいところを掘り起こすって話をしてましたね。

徳谷:はい。

平野:まさにみなさん全国から来てて、自分の地元の魅力を掘り起こしたくてウズウズしてると思うんですけど。

徳谷:ウズウズしてます? 足がしびれて動けないんじゃないですか? 大丈夫ですか?

平野:(笑)。柿次郎さん流の掘り起こす編集術といいますか、編集長として掘り起こすときに意識していることってありますか?

徳谷:最近ハマっているのは、おじさんですね。

平野:おじさんにハマってる?

徳谷:地域に絶対、おもしろいおじさんっているはずで。それは例えば地域に住んでいて、おしゃれなカフェができたから取材しようっていうのは別にいいんですけど、隣の隣の家に、なんかやばいものをずっと作ってるおじさんとかいないですか? 庭に集めてるとか。

平野:いるんですね、きっと地域にね。

徳谷:たぶん地域にいるはずで、意外と、そういう意識がないとスルーしちゃうというか。なにか違和感があったら立ち止まって話を聞くっていう習慣の中で、そういうおもしろいおじさんが出てくるんですけど。

最近出会ったおじさんでよかったのが、4、5メートルのダビデ像が余ってるから買ったと。

(会場笑)

徳谷:よくわかんないんですけど。口で聞いただけなんで。それを立てておくと家から裸が見えちゃうから、今、横にしているって。

(会場笑)

平野:4、5メートルありますからね。

徳谷:そうなんですよ。その庭、見てみたいなとか。

平野:見たい。

徳谷:見たいですよね。これまた、これで追加取材とかしたいなと思っているんですけども。

平野:そのおじさんの家が、ダビデ像だけのはずないですもんね。

徳谷:そうなんですよ。

(会場笑)

平野:絶対、なにかありますよね。

徳谷:絶対、なにかあるんですよ。例えば福岡で、廃品回収とかでもらったものを自分で工作をして。廃校していってるから、学校の椅子って今、めちゃくちゃ余ってるじゃないですか。その2つの椅子を自分でつなぎ合わせて、ペンキを塗って、もともとの値段の10倍ぐらいの値段で売ってるおじさんとかいるんですよ。

平野:すごいおじさんですね。

暇な時間に打ち込めるものを見つけた瞬間、カオスが生まれる

徳谷:それって編集といいますか、すごい手を動かしてるんですけども、アイデア1つで、もともとある日本に余ってる資源って、いくらでも売れるんだなって。

おじさんって、僕の勝手な見方ですけど、ある程度積み上げていくと、ちょっと暇になるはずなんですよ。暇になると、好きなことに時間を使うんですけども、50、60の時間の使い方って、たぶんすごく避ける。奥さんからちょっと無視されてるとか、そういうときに打ち込めるものがあったときに、なんかすごいカオスなものが育っていくんですよ。

とくにバブルを経験しているおじさんたちは、その当時のめちゃくちゃ金があった状態で、例えば熱海の秘宝館みたいな、ああいう珍スポットみたいなものを作ったりするんですよ。

平野:最近、ああいうのできないですもんね。

徳谷:そうなんです。だから、これから珍スポットを継ぐ者が現れていくと思っていて、その継ぐものに僕は会ってきたいなと。それって絶対、やばいおじさんなんですよ。

平野:珍スポットの高齢化問題というのはあるんですか?

徳谷:ありますね。どんどん潰れていってるので。

平野:熱海の秘宝館は有名ですけど、全国には本当に、みんなが知らない珍スポットがまだまだある。

徳谷:そうですね。熱海の秘宝館って、今、東京ドームシティっていう会社が運営してるらしいですよ。

平野:それはすごい意外ですね。

徳谷:意外じゃないですか。だから地域にいるそういうおじさんではなく、わりと経済的なおじさんも、実はそういうのが好きで投資していたりとか。そういうものを見つけるのが、ジモコロの一番の個性かなとか考えてますね。

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地方創生会議は47都道府県すべてがつながる場所です。民間企業・自治体職員・フリーランス・クリエイター・学生 など全国に散らばる、地域が大好きな人が高野山に集まる。 地方創生のプラットフォームがここに。

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