「マッキンゼーでマネージャーになるイメージを持てなかった」

司会者:それではご質問のある方、挙手いただけますでしょうか。もしこの方にお聞きしたいというものがあればそれも含めてお伝えください。

では一番前の方。

質問者1:お話、ありがとうございました。

篠田さんにおうかがいしたいんですけれども。マッキンゼーから転職されたときの理由というか、15年経った今の時点で感じられているものがなにかを差し支えない範囲で教えていただければと思います。

篠田真貴子氏(以下、篠田):(質問者が)ちょっと見えないんで席を立ちますね。

マッキンゼーという会社は、経営コンサルティングを行なっています。そのため、経営コンサルタントに必要なスキルなどが、わりとビシっと決まっているのです。だいたいこれくらいのケースでそれを獲得していくと、最終的に役員になれる人の経験値も見えてくるんですね。

その表層部でいえば、私はそのスピードが非常に遅かった。2〜3年目でここまでいくべきポイントが、まだここなんですよ。ということだったんです。私はそういう……なんて言うんでしょうか。「あまりガツガツしなくても、素の私でスーッといけちゃうんじゃないか」という大きな勘違いをしていたことが原因です。

かつ、マッキンゼーでマネージャーになること。それは私の実力不足の裏返しだったのですが、自分がそれをやるイメージを持てていなかった。その2つの組み合わせで、マネージャーにならなくても楽しくマッキンゼーで働く私、をうっすらと目指していたんですよ。

(会場笑)

しかし、会社的にはまったく成立しない。成立しないのだということも、都合よく無視をしていた。

(伊賀泰代氏に)「今ならわかるよね」って言われて「わかります」というものがあるとすると、それは会社都合の部分です。マッキンゼーのビジネスモデル上の仕組みでは、それはもう許されないんですよ。よっぽど特別な事情がない限りは。

それを陵駕する、ある種異常な専門性があるとかだったら別なんですけど。私にはない、ということです。

質問者1:ありがとうございました。

「自分が満足しているか」は顧客にとってはどうでもいい

司会者:では次にご質問ある方挙手いただけますか?

質問者2:篠田さんへの質問で、また立て続けになってしまって恐縮なんですけれども。後悔と失敗は違うというところで、マッキンゼーから退職されたところの経験が、後悔から失敗になった瞬間についてお話いただいたと感じています。

篠田さんの中で、その経験を後悔から失敗にできた要因としては、時間という要素が多かったのかなと思いました。その他にも、もしなにかご自分の中で、失敗を客観的にみることができたという経験があればご教授いただきたいと思います。

篠田:大きくは今ご理解くださった範疇に収まってしまうように思うんですけども。ただ、単なる時間の経過というよりも、このなかで重ねてきた経験で得たなにかと照らし合わせて、過去を見られるようになったということだと思います。

その獲得した経験でいくつか例を挙げると、1つは先ほどちらっとお話したことなんですけど。自分で目標をたてて、それが世の中に影響が出るという、仕事を初めて自ら経験をした。

その仕事は自己満足だけではなく、具体的な成果があったんです。そうすると、いかに自分が……なんて言うんですかね。過去の失敗したときの自分が、いかに自己中心的だったかを対比できる。

仕事は、今だから本当に申し上げられるんですけども。仕事なので、他者……社内や、今だったら上場して投資家からいわば顧客なんですが。顧客が価値を認めて初めて成立するものです。

私が嬉しいか、満足してるか、輝いてるかなんて、顧客にとってはどうでもいいわけなんですよ。ということに、本気で気が付ける経験ができた。

もう1つは、やっぱりマネジメントとしての経験を多少積んで、その会社全体の事業の方向性と人事制度の考え方と、個別の方のパフォーマンスをそれに照らして考える判断力ができた。

そことズレた場合、それを伝えてもなかなか理解を得られないという、当時の上司側に私が立つ機会が増えました。そして、うまくコミュニケーションがとれるケース、逆になかなかコミュニケーションが難しいケースもありました。

そういったところから少しずつ。まあタイミングで伊賀さんと会えた。本当にそれは幸運だったと思います。

質問者2:わかりました。

子どもが生まれると新しい挑戦はできなくなる?

司会者:それではこちらで、挙手いただいてる方。

質問者3:今日はおもしろい話をありがとうございました。女性であっても新しいことを自分でやりたいと思うことに、失敗を恐れずに一歩踏み出していくということで、すごく勇気をいただきました。

ただ私、子どもがまだ小さいんですけれども。子どもが生まれてから、自分が以前と比べて一歩踏み出せていないというか。挑戦ができていないと思うところが、実は正直なところありまして。

子どもが生まれるとやっぱり物理的にも経済的にも時間的にも難しくなる。例えば、出かけるのであれば子どもを預けないといけないし、あとは経済的にも今より収入が下がるのは避けたいという気持ちも強くなってきました。

そういう意味で、なにか新しい挑戦をするっていうことが、以前に比べてすごく難しくなった、腰が重くなったなというのが正直なところなんですね。

なので、ぜひ今日ご登壇いただいたみなさまから、なにか教えだとか、そういうところで一歩を踏み出すために、どういう心構えをもっていればいいのか? そこをぜひお聞きしたいなと思いました。よろしくお願いいたします。

使える時間が減る=「なにをしたいか」を厳選する

草野百合子氏(以下、草野):私は今子どもが3歳と0歳です。

今聞いたお話なんですけど、確かに子どもが生まれると物理的にも時間が減る面はあると思っています。一方で、私がすごくいいなと思っているのは、使える時間が減る、それゆえに自分が本当になにをしたいのかをよく考えて行動できるようになる、ということです。

前だったら、平日の帰りが遅かったりしてもいいし、土日は時間ありますという状況だったりすると、なんでもかんでも誘われれば行く感じになっていました。今だと、「これを本当に自分がやりたいのかどうか」を自分の中で1回ちゃんと聞く。そして、それから行くものを選ぶようになりました。

キャリア上では、例えばなにか新しい挑戦をするための手を挙げづらいというのは、ちょっとあるような気はします。

一方で、会社の状況にもよると思うんですけども、「フルタイムで5時半まで働きます」「でも残業はできません」だったら、それができるようなチャンスもあったりする。「ここまでだったら主張できそう」みたいなものを上手く主張するといいんじゃないかな、と思いました。

子どもがいるからこそ新たに発揮できるバリュー

唐澤圭氏(以下、唐澤):ご質問、ありがとうございます。私も今、10ヶ月の子どもがいるんですけれども。確かに、出産前に比べるといろんな社会の勉強会やイベントへ行きたいけれど、諦めることが増えてるのは事実です。

でも逆に、出産をしてからも、思ったよりもいろんなことができてるなとも思っていて。

私の場合、出産後も、もともと受けていた経営大学の大学院の授業はオンラインで受けて、最後まで卒業することもできました。けっこう、子連れで参加できるイベントなんかもあります。

育児休職中も、子連れで参加する「育休プチMBA」に参加してみたり。同じママ同士がが集まって、バランスボールやシェアリングをして高め合うような、NPO法人の活動に行ったりもしました。その団体は「マドレボニータ」といって、すごくいい活動なので、ぜひ今後みなさんに参加してほしいんですけれども。

そういうものに参加したりして、世界を広げられていると思いました。

ぜひ意識してほしいのは、「子どもができたからできなくなったこと」じゃなくて、「子どもがいるからこそ新たに発揮できるバリュー」です。

この間、実は4商社合同でディスカッションする機会があり、参加したんですけれども。そこで子どもがいるからこそ発揮できるバリューを話し合ったときに、「時間が制限されているからこそ効率をすごい考えて、効率がよくなる」みたいな話とかはあるんですけれども。

そのほかにも、「ちょっとできない男の後輩にもイライラしなくなった」ですとか(笑)。

(会場笑)

はい(笑)。そんなお話があったりしました。

今、草野さんがおっしゃった話にもつながるんですけれども、子どもを預けてまで働いてるんだからこそ、すごく仕事の本質を考えて、「本当にこれは社会に貢献できている仕事なのか」「本当に必要なのか」を考える。そして、できているみたいな話もあがったりする。

そういうふうに自分で考えてみると、出産後だからこそ、子どもがいるからこそ発揮できるバリューもいっぱいあるんじゃないかなと思っています。

質問者3:ありがとうございました。

成功も失敗も主観である

司会者:それでは、次で最後のご質問とさせていただきます。

ではそちらの方に。お願いします。

質問者4:貴重なお話、ありがとうございました。すみません、篠田さんに、またご質問なんですけれども。お話のなかで、「失敗からは学べない」「成功するときに初めて学ぶことができる」というところがすごく、そうだなと思って印象に残りました。

とはいえそんなに、成功ってそんなにたくさんするものないです。そんな中、日々学びを積み重ねていくことは、どうやったらできるんだろうかをおうかがいしたく思いました。

思ったこととしては、小さい成功を大事にするとか、あとは失敗からでてきた仮説を常に持っておくとか。周りからのフィードバックを大事にする、などがあるかなと思うですけれども。

日々のなかで、どうやってその学びを重ねていくか。コツとかポイントを教えていただければなと思います。よろしくお願いします。

篠田:たびたびすいません、篠田でございます(笑)。

(会場笑)

成功も失敗も、あくまで主観だと思うんです。犯罪とかね、反社会的なものはちょっと、除いて。ここにいらっしゃる良識的なみなさんの通常の生活においては、あくまで私の、あるいはご自身の主観なわけですよ。そこがすごく大事と思っています。

先ほどお話した成功も失敗も、それがよかったと思っていることと照らした上での失敗だってだけであって。

私は、マッキンゼーを辞めた経験についてさっきお話したように、非常にこう、深く傷つき長い葛藤の時期がありました。しかし、同じように、退職勧告受けた同僚が「辞めろって言われちったー! くそくらえだい!」みたいな感じだったんです。本当に(笑)。明るく辞めていった。もうスカッとしている人だっているわけです。

というぐらい、主観なんですね、成功と失敗って。今おっしゃった質問はそういうことなんでしょうけど。それでなにを獲得しようとしているかと言ったら、「自分なりのOKってなんだろう?」を探していくことに向かうべきだと思うんですよね。

人の物差し……「これは世の中的にOKなのか」「大学の友達にイケてると言われるのか」ということに向かって自問自答とか考えを深めるのはちょっと、遠回りになるのかなと思います。

質問者4:ありがとうございました。

失敗の衝撃をどう和らげている?

司会者:あと少しだけお時間ありますので最後に、もう1人、お願いします。

質問者5:ありがとうございます。貴重なお話たくさんいただいたんですけども、こちらのグループで最後に出てたので。

とはいえ、失敗した瞬間というと「ああこれ失敗、やっちゃったな」と、みなさん多かれ少なかれ落ち込まれると思うんです。そのときの対処療法として、まずみなさんはどう対応されますか? それを全員におうかがいできればなと思います。よろしくお願いします。

野中瑛里子氏(以下、野中):私も……落ち込みましたね(笑)。

(会場笑)

会社で「ああ、これもう無理、きつい」となったときに、人にあたるのも自分では許せなかった。だから運動して発散したり、泣いたり。あとはもう恋人に思い切り甘えて愚痴を言って、スカッとする。そして翌日はもうケロっと会社に行く、っていうのをやっていました。

やっぱり引きずっててもしょうがないかなとは思うので。自分を肯定的に受け止められるぐらいまで、いっぺんダーッと吐き出すっていうのが早いかなと思います。

心と体はリンクしている

唐澤:私の場合は、まず主人に話します。

いろんなストレス発散方法はあるんですけれども、私が自分で信念として思っているのは……。やっぱり自分自身を絶対的に理解してくれて、応援してくれてる人というのは、必ず何人かいるはずです。親でも親友でもいいんですけれども。

そこで今一番身近にいる、そういったサポーターが私にとっては主人なのです。その主人に話して、自分としてどう思っていたかとか、やっぱり肯定してもらう。認めてもらうような経験を通じて、自分を励まして奮い立たせているようなところです。

田中美和氏(以下、田中):はい、ありがとうございます。そうですね、私が、最近非常に感じているのは、自分の心の状態と体の状態がリンクしてることなんですね。

だから自分が失敗して、すごく焦っちゃったと思うとき、あるいはなにかストレスがかかってすごい嫌だなと思う瞬間は、体の状態を観察するようにしてるんです。そうすると、思っているほど体は大丈夫だったり、逆に、すごく負荷がかかってたりすることがある。

なので、体自体をちょっと楽にしてあげる。例えば、マッサージに行くとかでもいいと思うし、運動するとかもあります。あとはただ寝ちゃうとかもあると思うんです。体と自分のストレスとのつながりを、本当にここ最近ですけど、ちょっと観察をするようになりました。

話せない失敗はひたすら書き出す

草野:私は、あまり失敗したときの対処法ってそんなにないんですけど……。失敗したってそんなに思ってないからかもしれませんが。

日頃なにかあったときは、夫に喋るときが多いですかね。それはなぜかというと、私の夫の場合はわかってはくれるというよりは、けっこう楽天的なタイプの人で。「そんなのどうでもいいじゃん」「また言ってる」みたいな感じで言われることが多いんです。そうすると、「たいした失敗じゃないかな」と思うことができる。

篠田:うちの主人は話をあまり聞いてくれないので。

(会場笑)

私はわりとこう、書く。わーって。自分の失敗なら人のせいにしてしまいたくなることが心理的にはあります。それをもう包み隠さず「誰々が言ってくれないからこんなことなって」みたいなのを、ブワーって書くんです。書いてくうちに、だんだん客観性と冷静さを取り戻し「とはいえ私もあのとき確認しとけばよかった」となる。

(会場笑)

まるで仏様のように自我を忘れて俯瞰するような域にちょっとでも向かおうとして。自分とかあの人とか、この状況っていうのからさらにちょっと飛んだところまで、自分の考えを持っていく。これには数日かかるんですけど。私の場合はけっこう書いてることが多いです。もう起きた瞬間にけっこう、その怒りが(笑)。

(会場笑)

そのままだと1日が台無しになるので、20分ぐらいワーと書いて、冷静さを取り戻す。そして翌朝「おはよう」とか言って(笑)。

(会場笑)

はい(笑)。ということでございます。

司会者:ではみなさま、ご質問、ならびに素晴らしいメッセージ、どうもありがとうございました。5名のスピーカーのみなさまに大きな拍手をお願いいたします。

(会場拍手)