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ライトニングトーク「今の時代に働く女性に伝えたい、失敗から学んだこと」(全6記事)

働く女性を阻む「自分を認められない病」克服のカギとなったのは3つの経験だった

まだまだロールモデルが少ない女性のキャリア、第一線を走り続ける先輩たちはどんな失敗をしてきたのでしょうか。さまざまな業界で活躍する女性が登壇し「今の時代に働く女性に伝えたい、失敗から学んだこと」をテーマに、「FCon 2017」が開催されました。本イベントはインクルージョン・ジャパン株式会社と一般社団法人Lean In Tokyoによる共催。トークの3人目は、Waris代表の田中美和氏。「やりたいことをやっているのに、いつも不安だった」と話す田中氏が悩んでいたのは、自己肯定欲の低さでした。克服のカギとなった3つの経験について語りました。
※登壇者の肩書きや所属はイベント開催時の2017月7月8日のものとなります。

20〜30代、自己肯定感の低さと格闘していた

司会者:それでは3人目のスピーカーの方をご紹介いたします。株式会社Waris代表取締役共同創業者、田中美和さんです。田中さん、よろしくお願いいたします。

田中美和氏:はい。ご紹介いただきましてありがとうございます。みなさんこんにちはー!

会場:こんにちは。

改めまして、Warisという会社を経営しております、田中と申します。今日はFConということで、私は今39歳なんですけれども、20代30代を通じて私自身が一番葛藤してきたことをみなさんとシェアできたらいいなと思っております。

それはなんなのかっていうことなんですけれども、自己肯定感の低さなんですね。自分のことを肯定する力、自分を認めてあげる力が、私自身決定的に低いんです。

なぜなのかというと、やはり自分が子どもの頃に育ってきた環境に理由があるのかなと思うんです。いずれにしても、その自己肯定感の低さと20代30代はずっと格闘してきました。

少し具体的な例を挙げてご説明させていただければと思います。私は2001年に大学を卒業して、出版社に入社しました。編集記者という職種で入社をしました。私自身、子どもの頃から文章を書くのが大好きだったので、記者になる、編集者になるというのは夢の1つでもあって、それが叶って本当にうれしかったのをよく覚えています。

働き始めて、『日経ウーマン』という雑誌に配属になったんですね。『日経ウーマン』は、働く女性を応援する雑誌です。働く女性のみなさんにとって役立つような仕事とか、暮らしの情報を届ける雑誌でした。

ですから私は毎日のように、さまざまな女性の方を取材させていただくようになりました。経営者ですとかマネジメントクラスの方、あるいはいちプレーヤーとして現場でがんばってらっしゃる多くの女性たちを取材させていただきました。

また、いろいろなジャンルの専門家の方を取材させていただいて、そこで得た情報を働く女性のみなさんに届ける、という仕事をしていました。とてもやりがいがあったんです。ずっとやりたかった仕事でもありました。

でも、私はずっと不安だったんですね。「自分はこの仕事に向いてないんじゃないか」とずっと思っていました。それはやっぱり自己肯定感が低いから、自分で自分を認めてあげられないんですね。それでずっと不安だったんです。

やりたいことをやっているのに、自分を肯定できない

2012年に会社を辞めまして、2013年に仲間とWarisという会社を作りました。この会社は私が記者をしていた時に、「もっと女性たちがいきいき働き続けることを、具体的に課題解決をするカタチで実現したい」という思いから共同創業者たちと作った会社です。

なにをやっているかと言うと、プロフェッショナルスキルを持っている女性たちに時間や場所にとらわれない働き方を提供する、という仕事をしています。

フリーランスとして働くという選択肢を総合職の女性たちに、広報とかマーケティングとか人事とか、そういった知識を持っている方たちにご提供するということをやっています。それを通じて女性たちの自由な生き方、働き方を支援したいという気持ちから始めた事業です。

私は今その会社のファウンダーであり共同代表で、十数人のメンバーと一緒に日々活動しています。しかし、やりたいことをやっているはずなのにも関わらず、やっぱり自分のことを肯定できないんですね。

「自分はこの仕事に向いてないんじゃないか」と、やっぱり思ってしまうんです。いつも不安ですし、他の共同創業者と比べて私はできてないんじゃないかとか、周囲が私を認めてないんじゃないかと思ってしまうんですね。

これはプライベートに関してもそうなんです。今、39歳で結婚してませんし、子どももおりません。そういう自分をなかなか認められない、そんな30代。

とくに30代に入ってからですね。ずっと認められない状態が続いてきました。結婚している方のほうが自分より優れているんではないか、やっぱり女性は子どもを産んで初めて1人前なんじゃないか、そういう考え方がずっとずっと自分の心の奥底にあるんですよね。

だから自分自身を認めてあげられない、そんな状態がずっと続いてきました。

やっとここ1年くらい、40歳を目前にして本当にちょっとずつなんですけれども、自分を認めてあげてもいいのかなと思うようになったんです。それはなぜなのかというところを、ぜひ今日はシェアさせていただきたいなと思います。

自分のキャリアを客観視し、さまざまな価値観に触れたら……?

大きく3つあるなと、振り返って思いました。

1つは、自分のキャリアを客観視して捉える経験です。こういう経験を、30代に入ってから持つようになりました。やはりそういうものに興味があるので、コーチングのセミナーですとか、セッションというものに行くようになったんです。

そうやって自分自身を客観的に振り返ってみると、「私は20代30代、ずっと自分のことを認めてこなかったんだな」という気付きがあったんです。どの仕事……前職もそうだったんですけど、今の仕事もそうです。自分がやりたかったにも関わらず、実際その仕事に就くと「自分は向いてないんじゃないか」と思ってしまう。

これは別に誰かに言われたわけではありません。他の誰でもない自分自身で思ってしまっているということに、客観視して初めて気付いたんですね。こんな思考回路はやめようって思うようになりました。

2つ目は、いろんな価値観に触れる経験です。年齢を重ねるにつれて、多様な友人たちとの輪が広がっていきました。

例えば、40代の女性の先輩の友人がいます。彼女は結婚していますが、子どもはいません。そういった彼女と私が抱えている葛藤、「結婚していない、子どももいない自分をなかなか認められない」という話をさせていただいたことがあったんですけれども。

その時、彼女に言われたのが……。彼女は子どもがいませんので、「結婚するとか子どもがいるっていうのは、イコールそれが幸せではなくて、やはりどんな環境であっても自分がどうあるかっていうことが大切なんじゃないの」と指摘してもらったんです。

それは本当にその通りで、ハッと気付かされた経験でした。

それから30代後半になってきて、性的マイノリティの友人たちとの出会いというのもありました。彼らと話すと、自分が持っている家族観や結婚観がいかに偏っているものであるか、という気付きを得ることができました。

恐れや葛藤を周囲とシェアするようになった

それから3つ目としては、こういった自分が感じている不安や恐れ、葛藤を周囲とシェアする経験です。

私自身、ずっとこういうことを人と共有するのは良くないことだと思っていましたし、避けてきました。なぜなら、そういうことを共有すると周囲が私を認めないんじゃないか、周囲から私が否定されるんじゃないかと怖かったからなんですね。だから、そういうことを共有してこなかったんですけれども。

ちょうど2年半前くらい、ストレスが最高潮まで達してしまって、ちょっと髪の毛が円形に抜けてしまったことがありました。そういう状態の自分を見た時に、「本当は、自分が一番の味方でなくてはいけないのに。自分が自分をものすごく否定しているんだな、認めてないんだな」と強く感じました。

その時から、周囲と感じている不安や恐れを少しずつ共有するようになったんです。そうすると、周囲の友人たちは非常に私に共感してくれました。

共感してもらえると、私自身が少しだけ自分のことを認めてあげてもいいのかなと思えるようになったんですね。今日もこういう場でみなさんと共有させていただいて、すごくうれしいなと思っています。

自分がすべきは「目の前のことに集中する」

私自身が今、とても大切にしていることがあるんです。それは、未だに自己肯定感の低さとどう向き合っていくかというのが、私の大きなテーマなんですね。やっぱり認められないって瞬間が、いろいろ現れます。

それがあることによって、なかなか周囲と適切なコミュニケーションがとれなかったり、周囲から言われたことが私を否定しているんじゃないかって思って、反発してしまったり素直なコミュニケーションがとれないことはいつもあります。

今心がけていることは、「目の前のことに集中する」です。

例えば、私自身がバッターボックスに立っているとしますよね。そうすると、「私がこのバッターボックスに立ってていいのかな」「周りの人は私のことをどう思っているんだろう」と考えること自体が馬鹿馬鹿しいですよね。そんなこと、意味がないじゃないですか、もうすでにバッターボックスに自分自身は立っているので。

自分がやるべきなのは、目の前に集中して、力一杯バットを振りにいくことだと今は思っているんですね。本当に目の前にあること、今目の前に置かれている環境。それ自体に集中して、大切にしていこうと思っております。

そんな経験を共有させていただくことで、なにかみなさんの参考になったり、明日からの一歩に繋がれたらいいなと思っております。また後ほどお話できればと思います。ありがとうございました!

(会場拍手)

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