つんくはなにを残したか

山田:これがゼロ年代構想みたいな。で、おもしろい。この構想が、のちにどういう状態になっていくかっていうと、最終的にはAKBの独り立ちの方向に向かって行く。そして2011年のAKBスタイル。もしくは、これはあとですけど、「ドール」になっていくっていう流れ、説明します。先に、ざっくり、つんく♂の革命をひと言で言うならばっていうのを、52分で言います。

乙君:あ、はい。

山田:つんく♂がなにをしたかって話。

乙君:なにをしたんですか。

山田:見つけてんだよ、つんく♂って!

乙君:見つかりました。

山田:なにを見つけたかって言うと。

乙君:一生懸命探しまして、見つけましたか。

山田:見つけましたよ。

乙君:はい。

山田:アイドルってなにかって。

乙君:はい。

山田:日本人で、なにか。

乙君:何ですか。

山田:紫の上シンドローム。

乙君:ん?

山田:光源氏という、平安時代の物語がありますね。

乙君:あー。なるほどね。

山田:光源氏が、紫の上っていう人を見初めるんですけど、当時まだ幼女です。

乙君:そう、そう。

山田:たまたま見つけた幼女を、「あれ、俺の好みにしてえな」と思って、さらってしまう。そして受け入れて、自分好みになっていくっていう、これ、男の理想なんです。

乙君:そうですね。

山田:この夢が、日本中の遺伝子の中に、ものすごく入ってる。これがある。プラス、父性。それから、応援したいっていう。

乙君:はい。

山田:「もし娘がいたならば」みたいな。そういう、いろいろな男たち。

乙君:なるほどね。

山田:そう。これはあしながエロおじさんって言ってるんですけど。

乙君:エロが付く(笑)。

山田:下心はあるんだが、応援する体を取りたいという。日本人の男子の、この複雑な心境みたいなものを、ひと言で言うと、この紫の上シンドローム。これをシステム化したのがモー娘。で、みんなで応援しようで、さらにそれをAKBシステムで完成させるのに、宝塚スタイルを取り入れることによって、この形になっていくっていう流れができるわけですね、これ。

乙君:なるほど。

山田:つまり、もて余す父性。男。応援したい。みたいなもの。そしてそこには闇がある。闇の話はあとでします。それが、その形になって、これが完璧にはまったせいで、大ブレイクする。

乙君:バーンとね。

山田:だけどね。

乙君:だけども。

山田:じゃ、女の子たちは、なぜそのノリに、あれほど大量に乗っかったかって話なの。 乙君:それはプリンセスになりたいんじゃないの?

山田:だいぶ前ですけど。

乙君:だいぶ前。

山田:乙葉さんっていたじゃない。

乙君:乙葉。

しみちゃん:はい。

乙君:藤井隆と結婚した。

山田:そう。藤井隆さんの奥さんであり、グラビアアイドル。

乙君:しみちゃん大好きだよね。

しみちゃん:そうですね。僕の。

山田:あの人が昔、中村うさぎさんとかとバラエティー番組やってた時期があって、トーク番組みたいなことがあって、そのときに高校時代の話してたの。

乙君・しみちゃん:はい。

山田:長野だったっけ、あの人って。

しみちゃん:長野だと思います。

山田:だよね。それで、長野で彼氏もなく、モテることもなく、そしてとても地味だった。でも巨乳だったと言ったときに、中村うさぎさんが、「あんたの巨乳もったいなかったね」っていう発言をするの。

そのときに乙葉さんが、「もったいなかったですね。意味のない巨乳でした」って言ったの。その返しで。

乙君:へー。

女性は愛情飢餓なのか

山田:で、世界には意味のない巨乳があるわけよ。要するに、どれだけ素敵な外見で生まれようが、それを持っていようが、それを愛でてくれる男がいなかったら、意味ないじゃんっていう意識があるわけ。

乙君:どんだけ傑作作っても、漫画もそうですよ。

山田:そう。頑張って綺麗になっても、ダイエットしても、一生懸命おしゃれにしても、讃えてくれる男たちがいなかったら。

乙君:なるほど。

山田:それまでは、晴れ舞台は結婚式でよかったんだよ。

乙君:はい。

山田:だから、一生の晴れ舞台に向かって、みんなが大騒ぎするんだけど、「えー、それだけじゃな」っていうのと、「そんなに晴れ舞台にふさわしい男、見つかんない。」みたいな意識があって、それはさっき説明した、上がりきった女たちの自我みたいなものを、結婚式では解消できなくなっている素地があった。

下地があって、ここで登場するのが、ジャパンガールのフォーエバー晴れ舞台エキスを願うJガールたちっていう。フォーエバー晴れ舞台派登場です。

乙君:は?

山田:ずっと晴れ舞台にいたいんですよ。

乙君:ずっとチヤホヤされたいってこと?

山田:その通りです。それぐらい愛情飢餓なんです。この話は実を言うと、教育の問題に繋がってきます。要するに、生まれたまんま、そのまんまで認められなくって。

なにか結果を出さないと、私を愛してもらえませんよっていうのが、ずーっと続いた結果、愛情飢餓。で、誰かに認めてもらいたいっていうメンヘラ状態。これ全部、僕の作品に繋がってきますね。

乙君:確かに。

山田:「NG」で書いてました。

乙君:女はみんな神田うのってコメントが(笑)。

山田:そういうこともあります。でも言えません。

乙君:少なからず女性の中には、そういう部分がある。

山田:そういうことも全部、私書いてました。

乙君:私書いてましたか。

山田:書いてました、2000年に。

乙君:この問題が顕在化する10年も前に。

山田:全部やってましたよ、本当に。

乙君:はい。

山田:そんなこんなで、ややこしいことになってくる。晴れ舞台問題がずっとあって。この話どうするかって言うと、57分、ちょっとだけ延長します。

本物の、ハイスーパーハイスペ男を捕まえるっていう、戦いっていうのが、本来女の遺伝子の中にあるわけだよ。いい男を捕まえたいっていうのはさ。

乙君:まあ、そうでしょうね。

山田:だけど、はしたないでしょ、そんなの。

乙君:それをガツガツとね。

山田:そう。結局、「お前、男なんか愛してないよな」。

乙君:なるほど。

山田:「お前を幸せにしてくれる、犠牲者を探してるだけじゃねえの?」っていうような。

乙君:ATMだね。

山田:そう。だから料理ができて、家事ができて、収入がよくて、ルックスがよくて、なんてことを、平気で言うんだよ。これ、もともと恥ずかしいことだったの。こんなこと言うの。

乙君:なるほど。

山田:なぜならば、献身っていう美学があったから、日本に。尽くしますっていう。陰の女みたいな。それも格好いいと。美しいみたいなのがあったんだけど、この辺になると、いけしゃあしゃあと可視化されるわけ、それが。それが最近になると、もうあれですよ。暇な女子大生に繋がっていく流れですね、これね。

乙君:何だっけ。

山田:暇な女子大生に繋がっていく流れです。いいですけど(笑)。この時期に流行ったのが、読モ、女子アナブーム、アイドル。エビちゃん。

その中にアイドルがあって、その中でわかりやすく、そのランキングの上位に行くと。イコール幸せみたいなものに乗っかったみたいなものもあるな。

問題は、闇の話です。持て余した父性。娘を育てたい。応援したい。あと母性。ちょっと男のアイドルについて話してないですけど、これまた別の機会にやります。それも母性っていうのがあって、みたいな。

あしながエロ兄さんの話します。それは、下手をすると、どんな人を応援するかってときに、自分の理想の相手しか応援しませんっていうことになるわけだよね。この愛情っていうのは、エゴイズムに繋がっていく流れ。

乙君:あー。

山田:トップブリーダーっていう人たちいるじゃん。ペットの評論家やる人。

乙君:はい、はい。

山田:血統書付き、毛並みがよくて、何とか何とか、「うちの何とかちゃんは」、「うちの子はね」って言うんだけど、「その子、雑種だったら愛せないんですか?」っていう。「え? 雑種を愛せない犬好きって、愛犬家なんですか?」みたいな問題と繋がってくる。

「みんな応援するんだよ」って言っても、俺にとって正しい。俺にとっての理想の奴だけ応援する。だから、「坊主になれよ。俺を裏切ったんだったらよ」っていう流れが、そこに潜在的にあるわけ。「裏切るような子は、うちの子じゃありません!」みたいな感じですよ。

しみちゃん:はい。

「ドール化」していく女性

山田:そして、「じゃあ、アイドルなんか追っかけないで、リアル恋愛しろよ」と。しかし、上がりきった女たちの自意識に、対応できるだけのタフさを、男たちは持ってない。

だから、「ちょっと待てよ」と。やっぱりノイズだらけだし。さび抜きしたいし。ちょっと無理っすよ。

で、さび抜きしていく。女っていうもの、邪魔なものをどんどん取って行くと、最終的に、ただの人形になっていくわけだね。

ドール化していくっていう。このドール化っていうのが、2000年代、ゼロ年代の真ん中ぐらいから、例のごとくPerfume辺りから始まる。

乙君:はい。

山田:初音ミクっていうのも、ドールの究極系。ボカロなんでね。裏切らないですよ。絶対に浮気しませんから。いきなり結婚しませんから。そして、あなたの大好きなBABYMETALもね。ご存知ドール化。

乙君:別に好きでも嫌いでもないけど。

山田:ドールをやりなさいっていう側で。まあ女の子向けできゃりー(ぱみゅぱみゅ)とか。

乙君:そうですね。

山田:それからでんぱっていうのが、ドールっていうか、ゲームキャラを演じてると。

乙君:そうなんですか。

山田:そう。っていうやつなのね。ただ、これって、なかなかこれえぐい話で、どういう時代かっつうと、俺はキューティーハニーの時代だと思ってる。

乙君:ん?

山田:ドール、女の子、ノーマインド。心持っちゃいけません。

乙君・しみちゃん:はい。

山田:この中に、男の宝物をインストールして、でき上がったアイドル。

乙君:へー。

山田:これ、アンドロイドですね、キューティーハニー。

乙君:え、キューティーハニーってアンドロイド?

山田:キューティーハニーは如月博士が作ったアンドロイドですよ。

乙君:マジで?(笑)

山田:マジですよ!

しみちゃん:知らなかった(笑)。

山田:何で9時1分またいで、この話?(笑)

乙君:知ってた? みんな! 今日いちビビった!

山田:あれは、どんな格好でも変化できるっていう。空中元素固定装置。あなた好みの女になりますよ、如月ハニーは。

乙君・しみちゃん:へー。

山田:ドールなんですよ、これは。そう。で、これ、なかなかキツイ問題で、男の中の宝物って、例えばBABYMETALの、あの中の人。ヘビーメタル大好きおじさんです。

乙君:そうですね。

山田:「ヘビメタなんでみんな聞かねえの? こんなに最高なのに」って言ったときに、おじさんが出て行ったら、誰も見てもらえません。

しみちゃん:確かに。

山田:だったら「かわいい女の子に歌ってもらおうよ。俺たちのヘビメタを」って言って、ここでメタルをインストールします。そうすると、この狐憑きの形でなるわけですね。狐この人ですね、だから。っていうような構造で、アイドルっていうのが生まれていくっていう話で。だから俺、「こんな構造に騙されっかよ」って思ってたんだけど、俺1回騙されたことある。

乙君:え?

山田:その話、限定でする(笑)。恥ずかしいんで(笑)。

乙君:何だ。自分もなんだかんだ言って。

しみちゃん:そう、そう。

山田:ですね。で、これ最後。この話になっちゃうと限定に行かなきゃいけないんで、最後に無料の人たちに言いたいのは。

しみちゃん:はい。

山田:結局のところ、女性アイドルに「女はいらない」って話になってしまいますっていう。

乙君・しみちゃん:ほー。

山田:女の中のオンナ性っていうのは、非常に凶暴で、本当は怖いアイドルの圧ですからね。加えてもらってますけどね。   乙君:はー。

山田玲司がアイドルの意義を問う

山田:これ野獣ですから。これは、いらないですって。これが、いわゆるそのオカダさんがよく言ってた、「女体は好きだけど、女は嫌いなんだよね」発言。

しみちゃん:なるほど。

山田:これが、アイドル文化の本質の中に1つ入っちゃってる。

乙君:なるほど。

山田:だからえぐいことが起こる。事故も起こるみたいな話で、でも「それじゃあね」って話なんで。「ちょっと待てよ」と。

「彼女たちは本当に無駄なことしてんのか?」「いや、そうじゃないじゃない」「やってるのなに?」「音楽じゃない」「え? それってどういうことなの?」みたいなこと。

現実ってなに? 人生ってなに? 愛ってなに?みたいなことを、徹底的につんく♂時代に、私が書いてるわけ。

乙君:1人で時代と戦った。

山田:戦った。ひたすら。

乙君:誰も戦いの準備すらしていなかったときに、一人で戦場に(笑)。

山田:1人で、もう前線に(笑)。1人ノルマンディーっていう時代を、「NG」っていう作品について、後半語ります(笑)。

乙君:なるほどね。

山田:流します。

乙君:ありがとうございます。

山田:ありがとうございます。

乙君:ということで、また今日も、少し延びたんですけれども。

山田:ありがとう。Amazonで買えない本。でも今、電子で買ってるでしょ、ないんだったらね。

乙君:そうですね。