南国の人々はよそ者に冷たい?
地域で変わる「人への依存度」を脳科学者・中野信子が解説

寛容と不寛容の間ー仏教の智慧を科学する #3/6

寛容と不寛容の間にこそ、人の本質が詰まっているのでは――。そんなやりとりから始まったトークイベント「寛容と不寛容の間ー仏教の智慧を科学する」では、脳科学者・中野信子氏と向源代表・友光雅臣氏が登壇。人間の寛容・不寛容についてお互いの考え、脳科学と仏教から見た考えを語りました。本パートでは、国や地域、稲作か麦作かによって変わる“人への依存度”を解説。厳しい環境下だからこそ、厳しい宗教が生まれやすい理由などが語られています。

欧米での幸福=社会的成功、自分がどれだけ勝ち得たか

中野信子氏(以下、中野):幸福も寛容と似ていて、一般的にいいイメージを持たれているために、それ自身のネガティブな側面というのを理解してもらいにくい概念ですね。

こうした講演会で、運の良し悪しという話をさせていただくことがあります。「運がいいってなんでしょう?」ということですね。これも幸福と、ちょっと似ていますね。

そのとき、聞きに来られたお客さんに「どんなことを『運がいい』と思いますか」と聞くのです。

そうすると、だいたい3通りぐらいに分かれます。まず最初に、運というテーマに惹かれてくる人たちですから、もちろんお金は欲しい。くじ運がいいとか、儲かること。生き延びていくために大事なリソースを効率よく得られるかどうかという問題です。

2番目は、健康で満足して暮らせるということです。たしかに身体の状態の良し悪しで幸福の度合いは変わりますよね。あまり心身の状態が良くないと、力いっぱい幸福ですとはなかなか言いにくい。

3番目、これがおもしろいところかもしれませんが、人に恵まれることと答える方がいらっしゃいます。頷かれる方がやっぱり多いですが、私も納得します。日本人だから、かもしれません。

これらをちょっと頭に置かれた上で、欧米と日本の幸福度の違いを考えたいと思います。

だいたい幸福度調査というのは、欧米の基準なんです。心理学の実験がされた欧米の研究結果を基になされたものですから。これはどういう基準なのか。彼らはなにを幸福だとしているかというと、自分のアチーブメントです。社会的成功や、金銭的にどれだけの収入があるのか、自分がどれだけのものを勝ち得たか。

友光雅臣氏(以下、友光):“自分が”ですよね。

中野:そうです。もしかしたら、自分と神との契約というのが、彼らの心のベースにあるのでしょうか。個人主義的だと感じます。たしかに幸福度ランキング上位常連の北欧諸国などは、すごく社会保障も行き届いていますし、ある意味、世界の「成功している」地域ですよね。

日本人の幸福度は「他者からの承認」に依存する

一方、幸福度が低いことに疑問を感じた日本の心理学者が、本当にそうした欧米の基準で、日本人が幸福と感じているのかどうか調査をした。すると、やっぱり違うのです。むしろ、欧米の基準で幸福な状態になると、日本人は足を引っ張られるのではないかと不安になったりするようです。

友光:「俺が仕事して儲けたんだ」という満足感。

中野:なにか後ろめたい感覚ですよね。「儲けたはいいけど、自分が死んだときに心から泣いてくれる人は誰もいないのではないか」「葬式に友人は誰も来てくれないのではないか」とか。

友光:自分ばかり儲けて、自分ばかりいい思いして、と。

中野:そういう心の動きが起こるのですね。では一番大事なのはなんなのか。それは、「周りの人にどれだけ必要とされているか」です。他者にどれだけ必要とされているか、という感覚がその人の幸福度を左右する大きな要因だったということがわかりました。

家族に必要とされているとか、友だちが多いとか、周りにいい人がたくさんいますといった基準です。

友光:あまり自己肯定感じゃないですよね。他者からの承認というか。

中野:そうですね。より向社会的なのですね。ということは、欧米の基準での幸福度調査で低く出ても無理はないのです。

友光:そうですね。別にそれを暗く思う必要もないし。

中野:社会のあり方がかなり違いますね、という話であって。日本人でももしかしたら向こうの生活にだいぶ慣れて、周りの人から必要とされるということがそんなに重要ではないのだとマインドセットが変わっていくと、欧米基準でいう幸福をためらいなく追求するようになるかもしれませんが。

友光:僕らが急にノルウエーに行っても幸福になるわけではないみたいな。

中野:(笑)。日本人のマインドセットはかなり堅いかもしれません(笑)。

友光:1位の国に行っても幸せになれないんじゃないですか?

中野:北欧でなくフランスですが、日仏を行ったり来たりするとき、社会に合わせて自分の基準もスイッチさせられるような感じがあったのは、しんどかったです。

フランスでは、主張して最初にとったもの勝ちです。最終的には自分を守るのは自分ですし、非常に個人主義的なところがあり、日本とは対照的でしたね。慣れればそちらのほうが気楽なんですけれど。

自分の意見を殺しても丸く収めることが良しとされる社会

友光:そういう意味では、自分が成功する・しないは他者との関係性とか、人に恵まれることが大事となる。これは先ほどのオキシトシンじゃありませんが、幸福と感じるための範囲が広いのかもしれませんね。

「欧米の人は自分と家族ぐらいまでしかオキシトシンが出ません」といったように、近しい周囲の承認や自己肯定感が大事です。日本人の場合は、それよりももっと広い範囲に対しての承認を必要としたりで、オキシトシンが発生するリーチが長いということですね。

中野:日本と北欧を比べると、一般的信頼という尺度が北欧のほうが高いのです。一般的な信頼というのは、自分とぜんぜん違う他人に対して寛容であるか否か。

友光:一般的信頼が、高い?

中野:高い。日本は低い。つまり日本は、仲間にはあたたかいのだけれど、よそ者には冷たいという社会ですね。おもしろいことに、南の国に行くほど一般的信頼は低いのです。

友光:ということは、よそ者に冷たい?

中野:あまりそういうイメージはお持ちではないかもしれませんが、データ上はそうです。沖縄の人はすごく寛容だというイメージがあるかもしれませんが、彼らと腹を割って話をしようとすると、「あれ?」と感じるはずです。とくに内地の人間はそういう扱いを受けるでしょう。

友光:逆に、同じ1つのコミュニティーに対しての信頼が深いわけですよね。同じ沖縄県民であったり。

中野:そうですね。同じ沖縄県民なのか、島の人間なのかはわかりませんが。本島の人間と、宮古島ではまた違うかもしれません。

友光:島生まれ、島育ちなどもありますよね。

稲作地域の人々は人間関係に依存しやすい

中野:そうです。もう1つ面白い研究があって。耕作食物の違いによって、関係性に対する依存度合いが違うようなのです。

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