児童ポルノの取り締まりが難しいのはなぜか?
海外と日本の規制の違い

ヒューマンライツ・ナウ 児童ポルノ調査に関する記者会見 #2/3

子どもの人権を侵害する日本における児童ポルノに関する実情について調査を続ける、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウが調査報告書を公表。9月5日に開かれた記者会見の内容を書き起こしました。

現状のチェック体制の不備

雪田樹理氏(以下、雪田):そして、その次ですけれども、児童ポルノの取り締まりが徹底しない構造はどうなっているのかという私たちの分析です。

まず、メーカーなんですけれども。先ほど(資料の)30ページで示しましたが、IPPA(知的財産振興協会)に所属・加盟しているメーカー団体であるわけですけれども、そこで自主的な規制として審査というものがあります。ですが、着エロやイメージビデオメーカーというのは、そのような審査をするというようなシステムがなく、審査を受けていません。

ですから審査団体は、着エロ・イメージビデオメーカーについては審査をしていないということがありますし、知的財産振興協会に加盟しているメーカーについても、先ほども申しましたが、年齢の確認をしていない。また、まさかメーカーがそのような18歳未満のものを作成しているとは思わないということで、メーカーを信用している状態があるということです。

じゃあ、問屋はどうかということですけれども。こちらで調査をしました結果、それをチェックする体制等についてきちっと明記したものは見当たらなかったということですし、また問屋を通さない作品が多数販売されている状況にある。

じゃあ、販売店、ショップはどうかということですけれども。先ほど私たちの調査結果で見ていただいたように、審査団体の審査を通っていない作品でも販売をしているということですね。年齢の確認ももちろんしていないということです。

これも児童ポルノであれば処罰されるのであるから、メーカーは児童ポルノを作成することはないという信頼の下に成り立っていますし、過去に審査した作品で審査基準が緩いものを回収するルールもないということです。

警察は、堂々と販売されているので違法ではないだろうと。で、実年齢が不明であるということで、摘発が困難だということになっております。

つまり、被写体の年齢が明らかでないので、児童か否かのチェック体制がない。それから、3号ポルノについては、実質的なチェック体制が不備である、ということがわかってきました。

結局、その次になりますけれども、その結果、結果的に審査を通らない、児童ポルノと疑われる作品が公然と販売されている。また、審査団体が主張する2015年の審査基準改定の以前に審査をパスした作品も販売されている。審査をパスしているけれども、年齢確認をしていないので、児童ポルノと疑われる作品も公然と販売されている。こういうことが確認できます。

次にインターネットでについて。インターネットのほうを先ほど見ていただきましたけれども、結果、児童ポルノと疑われるサイトが多数アクセス可能になっています。

これもやはり背景には、年齢確認のチェック体制がない、あるいは、3号ポルノに関する認識が十分社会のなかでも徹底していないということもあるので、「『着エロ』であるとか『イメージビデオ』というようなジャンルであれば、それは児童ポルノではない」というような誤った認識が広まっているということがいえるかと思います。

警察の取り締まりや業界の動きについて

警察の取り締まりが徹底しない背景ですけれども、年齢の確認ができないということもそうですし、被害者からの申告が滅多にないので、被害児童が特定されないということもございます。それで、18歳未満かどうかということが証明されません。

また警察の対策としては、悪質なものへの取り締まりを最優先しているということで、3号ポルノに対する取り締まりが徹底していないということ。そして、人的な資源が十分に児童ポルノの取り締まりに向けられていないということですね。

警察においても、「まさか店舗だとかインターネットのサイトで公然と販売・配信されている作品には児童ポルノはないだろう」というような先入観、メーカーへの信頼があることがわかりました。

私たちが、この調査を昨年の5月以来進めてきているなかで、今年6月以降、この児童ポルノをめぐっていくつかの動きがありました。その動きについては、みなさんのお手元の報告書にあります。36ページ以降、詳しく述べられておりますけれども、着エロの児童ポルノについての逮捕の事案ですね。神奈川県警であるとか警視庁で立件があるということです。

それから警視庁から、着エロについて、無審査作品について慎重な対応を求める、という依頼がありました。これは今年の7月21日付で、審査についての、これが業界メーカー団体に対して、それから販売についてということで販売店に向けて、「適正なDVD販売について(依頼)」ということで通知が出されております。

その後、通知を受けてメーカーの業界団体であるIPPAが、無審査の作品の取り扱い停止を求める文書を発表しております。

また販売店のほうでも、セルメディアネットワーク協会が警察からの依頼、「(適正なDVD)販売について」という依頼を受けて、それを全面的に受け入れる方針であるということを表明をしております。

そのあたりのことは、36ページから39ページかけて詳しく経過を報告しておりますので、あとでまた見ていただけたらと思います。

このように、最近改正に向けた動きがありますので、今後大いに無審査の着エロ等が流通・配信・販売されないことを期待するものです。同時に、審査団体の審査を含む、チェック体制が問われることになろうかと考えています。

私たちヒューマンライツ・ナウとしては、さまざまな関係機関に勧告を出しております。勧告の前に調査について、どのようにして児童が児童ポルノの性的搾取に組み込まれていくのかという経緯については調査ができていないんですけれども。

それぞれ、18歳未満の児童を所属させるプロダクションについて、さまざまな法律が適用されるということで、みなさんのところにも提示してありますけれども、その立法をきちっと守って、児童を性的に搾取させていないかどうかということのモニタリング・取締りがなされていると思えないということです。子どもの権利を保護するための効果的な監視システム、そして法整備。現行法の運用改善が必要だと考えています。

ヒューマンライツ・ナウが出した勧告

それで、私たちから勧告を、政府に対するもの、それから警察に対するもの、それから政府機関・国会議員に対しての立法の検討、それから関連する機関に対するもの、そして最後にインターネットの関係業者に対するものということで出させていただいております。

パワーポイントではその要約というかたちで出しています。政府に対して、児童ポルノの製造・販売・流通・配信に関する実情や児童が巻き込まれる経緯、関連する産業の被害実態に関する調査を実施し、製造・流通及び被害の防止のための必要な施策を講じること。

また、18歳未満の児童が所属するプロダクションなどの事務所が、児童保護・労働者保護を徹底するよう効果的な勧告、法規制を検討する。

また、3号ポルノが児童ポルノに該当するということ。その根絶を重点課題として明確に位置づけて、すべての省庁や自治体、公共機関や一般社会で関連する産業に周知徹底することを呼びかけていきます。

それから警察についてです。警察においても児童ポルノの根絶を最優先の課題として位置づける。そして、必要な財政的、人的資源を投入する。で、着エロやイメージビデオといった種類のいかんを問わず、一切これを許さないというゼロ・トレランスの姿勢で対応すること。

それから、出演者が18歳以上であることが明確でないポルノについてはサプライチェーンをさかのぼって年齢確認の書類の照会を行って、18歳以上であることが確認できない事案を積極的に立件していくこと。

3号ポルノに該当する児童ポルノについても、「児童ポルノに該当する」ということをきちんとすべての警察署で周知・徹底し、重点課題として位置づけて積極的な捜査・取締りを進めていくこと。捜査の能力強化、人員の育成・教育、各警察署での人員の確保によって取締りを強化することなどなどです。

国会議員等に対しての立法の検討についてですけれども。これはすべての演技者や出演者の年齢確認資料の保管を、ポルノ作品の製作・編集・流通・審査・販売・配信等に関わるすべての配信者に義務付けて、違反者に罰則を課す。プロバイダに対して、児童ポルノを発見した場合に、政府機関への通報を義務付ける。そういった立法の検討を勧告しております。

それから、関連する機関に対してですけれども。これも着エロ屋イメージビデオといった、そのいかんを問わず、児童ポルノを一切許さないゼロ・トレランスの姿勢で対応すること。18歳未満のポルノは、3号ポルノに該当するものも含めて、一切これを製作・流通・販売・配信・レンタルしないことを徹底するということですね。

それらの過程のなかで、公文書のよって出演者の氏名や身元、年齢確認を厳格に行って、各段階で公文書のコピーを保管する。それから審査基準の統一化、明確化、厳格化をして公表し、すべての作品を審査に通すということです。

また、自主的な規制として、児童ポルノと宣伝する、児童に見えるポルノということを禁止するということもあるかと考えております。

最後にインターネットの関係業者に対してということですけれども。インターネットの関係業者についても、着エロやイメージビデオのいかんを問わず、18歳未満に関するポルノは、3号ポルノに該当するものも含めて、厳格かつ積極的にその該当性を判断し、該当する違法なものについてはユーザーへのアクセスのブロッキングをする、それからWebサイトの削除等をするということで、ユーザーが児童ポルノに触れることができないよう対策を行うこと、ということを勧告しております。

このインターネットの関係業者についても報告書でいくつかありまして。検索エンジン等が取り組んでいる部分もあるのですが、とはいっても、結局いろんなワードで検索しましたら、このようなものがたくさん出てくるという実情がありますので、ユーザーが触れることができない、そういう対策を取っていただくことが必要だと考えております。以上です。

調査の結果、児童ポルノと疑われる作品数は16作品

伊藤和子氏(以下、伊藤):ありがとうございました。以上で私たちからの報告は終わりにしたいと思いますが、ご質問のある方は挙手をいただければと思います。よろしくお願いします。

記者1:朝日新聞のイノウエと申します。調査のことをもう少し詳しくおうかがいできればと思うんですけれども。おそらく去年5月から今年の5月にかけて、都内の実店舗で何店舗で調査されて、その結果児童ポルノと疑われる作品は何作品ぐらい確認されたのか、ということについて、もう少し教えていただけないでしょうか?

伊藤:こちらは基本的には、店舗としては3店舗におきまして何回か行ったということですね。

記者1:何回ぐらい行かれましたか?

伊藤:5回ぐらい行きましたね。

記者1:去年の5月から今年の5月にかけて5回ぐらい?

伊藤:5回ぐらいですね。はい。それ以外にも2~3箇所周辺のところにも行っています。

記者1:確認された児童ポルノと疑われる作品数については?

伊藤:児童ポルノと疑われる作品数は、一応この報告書に書いたものは児童ポルノと疑われると私たちは考えております。その作品数は番号が振ってありますので、ここで出してるものでは23ページまでのところの14作品と、それからそのあと26~27ページのところにあります2作品ですので、16作品ということになるかと思います。

ただ、これについてはきちんと、「疑われる」ということなんですけれども、最終的には有罪判決を受けているわけではないですから、「児童ポルノだ」と断定することはできないというところがあるかと思うんですね。

それで、一応医師の確認を受けたというのがございまして。医師の確認を受けたというのが、28ページにございます。

よく実務としては小児科の医師に「これは児童ポルノかどうか」ということを判定してもらって、被害者が明らかでない案件でも起訴している案件もあると聞くんですけれども。

そういった警察との協力も比較的あるという小児科医の方にお聞きしたところ、「これが100パーセント、これでこうだ」と断定することはできないと思うんですけれども、作品的には8作品について、医師に照会を求めたところ、5作品について「児童ではないか」ということが言われております。

そのなかに出ている合計7人が「児童ではないか」「小学生ぐらいではないか」「中学生ぐらいではないか」というような意見をいただいたという状況です。

「児童に見えるポルノ」の存在が取り締まりを難しくしている

記者1:もう1点だけ、すいません。これらについて、警察への通報というんでしょうかね。つまり、これらが疑わしいと思われるケースについて、児童買春禁止法ですか、にもとづいた通報というのはなさったんでしょうか?

伊藤:こちらについては、12月の段階で警察庁・警視庁のほうにうかがっております。それで、警視庁で万世橋警察署の管轄ということなんですけれども、警視庁のほうで対応されるということで、警視庁がご対応をされました。私たちのほうで一応これのベースとなる、2015年5月・8月の調査の中身についてはお示しをしているということ、情報提供をしております。

ただ回答としては、まだ年齢確認が自分たちもできないという、年齢の認証というのは非常に難しいというところが壁になっているという話で終わっております。

記者2:確認なんですけれども。児童ポルノだと断定できるものはない、ということなんでしょうか?

伊藤:私たちの基準としては、児童ポルノが販売されていたら、それは有罪ですよね。刑事事件として有罪ということになってしまいますので、そこまでの合理的疑いを得られる立証というのが、刑事事件で有罪立証ができないものについては、私たちが疑っておりますものも「疑いが強い」という書き方に留めております。

記者2:わかりました。あともう1点なんですが、この報告書は基本的には、実在児童に対するものなんですけれども、先ほど1個だけおっしゃったのが「児ポに見えるポルノについても作らないように」ということ、そこはちょっと違うのかなと思うんですけれども、そこを入れた理由を教えていただきたいんですが。

伊藤:児童に見えるポルノというのが非常にたくさん作られておりまして、それが実在児童の児童ポルノに対する取り締まりを非常に難しく、曖昧化させ難しくしているというのが第1点と。

もう1点は、児童に見せるというかたちで、とくに強姦にあたるような、児童に対して性的虐待をしてるような、明らかに犯罪を誘発するような、そういった内容のビデオも多い。そういう意味で、非常に社会的影響も大きいのではないかと思っているということで、その2点から法整備について検討いたしました。

それでヨーロッパでは、「児童に見える」ものは児童ポルノとして扱って、刑事規制をしているという状況になっております。

ただ、日本ではさまざま議論があるということで、「そこまで刑事規制をするのか?」ということについては団体として議論をいたしましたが、それとはやや違うアメリカの規制がありまして。ここで勧告をしておりますが、年齢確認の書類をきちんと保管する。それを義務付けて、それをしない営業者に対しては罰則を課す、というようなことであればいいのではないかと。まずそこを1つ私たちとしての提言にしております。

とはいえ、「児童に見えるもの」についても、業界団体のほうでも問題があるということで自主規制に向けてさまざま動かれている、ということを私たちも認識しております。

法的な規制ですと、表現の自由との関係もさまざまあると思いますので、業界とさまざまなお話をして、自主規制を厳しくしていっていただくということを、今は要請をしているということで、それが勧告のなかに反映されております。

記者2:つまり、これは法的に規制しろという話ではなくて、そういうどっちかわからない現状というのが、本当の児童ポルノを助長しているので、その状況があるのを前提として、業界としては自主規制してほしいというか自粛してほしいと。そういう要請という考えですか?

伊藤:そういうことです。

記者2:ありがとうございました。

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