航空法は第三者を守っている

高橋伸太郎氏(以下、高橋):ありがとうございます。今回のセッションですが、なぜ安全利活用が産業イノベーションより前に来るのか、というところなんです。イノベーションする過程では、いろんな反発が起きてきます。新しいテクノロジーに対して可能性を感じる一方で、恐怖だったり、本当にこれをやってしまっていいんだろうか、ということが、当然出てきます。

そうしたときに、無人航空機の場合は何かというと、飛行しているものって常に墜落する可能性があります。そこの部分をきちっと認識した上で、墜落させないためにはどうしたらいいか、しっかり安全に飛ばすためにはどうしたらいいのか、そして万が一、事件や事故があった場合、どう迅速に対応すればいいのか。

そういったものをまずきちっとやらなければ、産業界に受け入れられる、そして私たちの社会に受け入れられるっていうのは非常に困難になるんじゃないかと考えています。

そのために今回、JUIDAから千田副理事長、熊田事務局長をお迎えして、お話しをいただいています。ここからは、今ちょうどお話として出てきた安全ガイドラインの話を進めていきます。

今回、安全ガイドラインというキーワードが先ほどから何度か出てきましたけども、具体的にそれがどういった経緯があって、何を重視しているのかっていうところを、千田さんからお話しいただきますでしょうか。

千田泰弘氏(以下、千田):安全ガイドライン、要するに、日本の航空法は誰を保護しているのかっていうのが、1番大事でございまして、第三者でございます。第三者ということは、飛ばす人、それから飛ばす人に何か仕事を依頼した人、これは関係ありません。実は、これは法律の外なんです。

人の上を飛ばしてはいけないことになっていますが、あくまで、それは第三者の上でございます。建物の30メートル以内に入ってはいけない、これも第三者の建物でございまして、自分の建物、それから仕事を請け負った人の建物、これは無関係でございます。あくまでも、第三者っていうのを頭に入れて、いろんな法律は読んでいただきたいと思います。

日本の航空法は世界一自由

千田:日本の航空法は、許可なく自由に飛ばしていい部分をきちっと定義してございまして、場所と高度、それから飛ばし方が規定されています。その他にも、非常にリスクが少ない、安全性が非常に高い分野の利用です。それから、それ以外の部分については、すべて許可さえあればできるようになっています。ということは、許可さえあれば、いかなる使い方もできるというのが日本の法制度でございます。

私どもの知る限り、ヨーロッパやアメリカの法律(の制定)を今やっていますが、これほど自由度の広い法律はありません。ですから、先ほど事務局長が仰りましたが、外国人が来ます、そのときに日本の法律で決まったことを教えますと、日本は世界一自由にやれるなっていうことを、ちゃんと彼らはわかっている。そういうことでございます。

一番大事なのは、飛行ルール。飛行禁止区域というのがございます。当たり前の話ですが、空港周辺150メートル以上の領空、ここは民間航空機が飛びますので、全世界的に航空管制領域になっています。ですから、ここは入ってはいけない。

ただし、日本でも世界でもそうですけど、許可を得れば無人航空機は150メートル以上も飛べます。

人家の近辺、これは先ほど申し上げました30メートル以内。これは第三者の建物でございます。法律は第三者を保護します。

その次、飛行の方法ですが、日中の飛行。日中とは法律用語でございまして、日の出の瞬間から完璧に日が落ちた日没までを言います。

目視の範囲。目視は肉眼ということでございまして、望遠鏡を使って見るのはダメです。何かテレビカメラを付けて、ゴーグルを付けて見るというのもダメでございます。あくまで裸眼で見る。眼鏡をかけてもいいんですが、そういう範囲に限られております。

その他、いろいろな危険物を載せてはいけない。この危険物の定義は、有人飛行機、旅客機とまったく同じ定義が採用されております。

それから、物を落としてはいけない。これは皆さんご存知のように、日本では農薬散布のヘリがずっと20年間使われてきまして、この分野で世界一でございますが、農薬散布も物を落としていますので、実は許可が要ります。これは国土交通省の許可が要ります。

今までは航空法という法律がなかったものですから、昔の農林省、農林水産省が自分で決めて自分でガイドラインを作って、法律的に根拠はないんですけれども、きちんとやって参りました。これが国土交通省に移ったと見ていいですね。物を落としてはいけません。

日本は許可を得さえすれば、夜間でも飛べますし、目視外でも飛べるようになっています。その許可を取る方法が、インターネットで公開される予定になっておりまして、簡単な申請書を出せば国土交通省が審査して、OKを出してくれる。こういう世界が来たということでございます。

高橋:ありがとうございます。

ドローンの飛行許可の申請は大変、でも……

熊田知之氏(以下、熊田):ちょっと私のほうのつぶやきですけれども。実は、これは全部私どもJUIDAで安全ガイドライン、安全指針という中に盛り込んだものなんですね。それが、ほぼ全部法律で規定されました。

よく新聞テレビの報道機関が、これが改正される頃に取材が殺到したんですね。どうでしょうかと。この法改正に関するコメントを求められる。いやぁ素晴らしい、今回は画期的な法律です、もうこれは世界に打って出られますよ、と。ルールが確立したことによって、日本は安心してこれからやっていけますよと言わざるを得ないですよね。だって私たちが作ったものと、ほぼ同じ内容ですから(笑)。

そういうこともあって、非常に親和性があるということでございます。

実は、申請方法ってすごく厄介です。お役所ですから、いろんなことを要求される。

150メートルより高く飛ばしたいとか、夜も飛ばしたいとか、それから目視外でもっと遠くまで飛ばしたい場合には申請をして許可、あるいは承認を取るんですけれども。ものすごく大変です。

大変なんですけれど、裏を返して、それを全部出すと、全部自己申告になっています。「10時間飛ばしましたか?」「はい、飛ばしました」「はい、こうしましたか?」「はい」。全部「適」に丸を付けると通ってしまうんじゃないかと我々は考えていまして。

そういう意味では、先ほどお話がありましたように、じゃあ何でもできてしまうね、というようなところもあるかなと思います。これは独り言です。

23区内では私有地でもドローンを飛ばせない

千田:もう1つ大事な話を忘れましたが、飛行禁止区域で、人口集中地帯は一切飛べないようになっています。人口集中地帯の定義は何かと言いますと、日本では昭和34年から国勢調査をやっています。今年も国勢調査をやりましたが、そのデータで人口密度が大体平米4,000人のところは、DIDというこれは国際標準の考え方なんですが、そこは飛ばしてはいけない。

そうすると東京23区は全部ダメです。日本全土でDIDに相当する面積はどれぐらいかというと、だいたい3.4パーセントと発表していますので、他の国土では全部使える。

ただ、DIDの中で飛ばす方法があるんです。それは、航空法でいうところの自由空間を作らずに、完全に密閉された空間を物理的に形成しますと、東京都のど真ん中で自由に飛ばせます。

それは何かというと、建物の中、それからトンネルでも入口と出口全部蓋します。これもいいですね。それから屋外で、綺麗に網で全部囲っちゃいます。四方八方。これは航空法の適用を受けません。ですから、そこは自由に飛ばせる。許可がなくても飛ばせる。

私どもは、都内でも私有地の上空、例えば学校とか広場、自分で持っているところは自由に飛ばしてもいいんじゃないかっていうのは、最後まで申し上げたんですが、やはり強い風が吹いてきたときに、コントロールを失ったらどこかに行ってしまう。

防衛省の事例もございますので(注:2015年7月23日、東京市ヶ谷の防衛省グラウンドで飛行中のドローンが風に流されて、民家に落下した事件)、それは認められないことになっておりますが、完全にネットで覆えば、航空法の飛行禁止にあたりません。

民間産業から政府へのルール提案を

高橋:ありがとうございます。ここまで安全ガイドラインを中心に話ししてきましたけれども、安全ガイドラインが産業イノベーションにどう関わってくるかっていうところをもう1回強調しておくと、シリコンバレー発のスタートアップで世界的な企業になったところには、必ず公共政策担当者がいて、各国政府に対して自分から「こういうふうにやっていったらいいじゃないか」というルール提案をやっています。

そういったときに重要なのが、日本的な感覚だと法律は政府が作るものっていうことがあるかもしれないですけど、法律って私たちの社会には基幹的なOSみたいなものでもあるということです。

そうなるとやっぱり、民間産業から「こういうふうにやったらもっとイノベーションが加速できるんじゃないか」とか「利用者としてはこういうふうな視点が欲しい」ということがすごく大事なことになってくると思うんです。

それはドローンに限ったことじゃなくて、今回のこのフォーラム全体的なテーマであるAIロボット産業全体に言えると考えています。

その上で安全に飛ばしていくっていうことが、そもそも何なのか。それが社会に溶け込むことって何なのか。今は2015年ですけれども、もう数年して無人航空機が当たり前のように私たちの空を飛ぶような社会が来たときに、どういう管制システムがあって、どういうルールが望ましいかということまで含めて考えていかなきゃいけないと認識をしています。

その上で、今までの安全ガイドラインのお話ですけど、ここから先は教育プログラムと認定スクールのことを中心にしていきたいと思います。