「サイレント・マイノリティ」とは

坂田一倫氏(以下、坂田):よろしくお願いします。坂田と申します。

僕は普段リクルートテクノロジーズという会社でUXデザイナーとして働いているんですが、一言で「リクルート」といっても結構な数のサービスがあります。ゼクシィ、タウンワーク、リクナビといったライフイベントや日常生活に関係した様々なサービスを展開しており、私はそうしたサービスのサービスデザインを担当しています。

リクルートは昔、紙を主体にビジネスを展開していましたが、徐々にそれがネットへと移行してきています。それに伴い、ネットだけでは競合優位性の担保が難しいということから、ネットとリアルも含めたトータルなサービスデザインが求められており、日々奮闘しています。

もう1つ、先ほど浅野先生(株式会社経験デザイン研究所代表取締役)からご紹介がありました「UX Tokyo」というコミュニティを主宰して運営しています。主にFacebookのグループなんですけれど、今2,000名ぐらいの方が参加していまして、ここは主に会話をする場として位置づけています。

やはりこういう職種や業務について話をする場がなかなかなかったということで、そのために場を設けてやってきました。ぜひ覗いてみていただければと思います。

本題に入りますが、テーマは「サイレント・マイノリティ」。ここで言う「サイレント」とは何か、「マイノリティ」とは何かというのを最初に紐解いて認識合わせをしていきたいと思います。

サイレントは、「声を発さない人」という意味ではないです。さっきあったように、ユーザーの声を聞くことは確かに大事なんですけど、「声にならない声」という位置づけでサイレントと置いています。

いかに声に出さない声を聞き取るかということが、今後、競合優位性を図る上でも大事ですので、そういう目的でお話しさせていただければと思ってます。

かつそれを、マイノリティ。つまり少数として認識をしてはいけないというメッセージを込めて、事例や僕が日々感じてることをお話しさせていただければと思います。

リクルートが持つ2つのユーザー

具体的な事例でお話ができないんですけど、リクルートテクノロジーズに所属しているメンバーが、それぞれの専門分野から記事を書いている「Recruit Technologies Member’s Blog」というものがありまして、私も第1号として「リクルートが結ぶ『2つのCX』」という記事を書かせていただきました。

リクルートには、2種類のユーザーがいます。1つは、カスタマー。これから皆さんにお話しするエンドユーザーのことですね。もう1つはクライアントです。例えばゼクシィだと、掲載していただいた式場やジュエリーショップを運営する企業様。リクナビであれば学生を採用したい企業様。この両者をマッチングするのがリクルートなんです。

なので、ユーザーといってもエンドユーザーだけを見ても駄目ですし、クライアントだけを見ても駄目です。と、いうことで相互の観点を見たトータルなサービスを展開するために、社内ではリボンモデルと呼んでいるものを軸にUXデザイン、ユーザーの体験の基盤として運用しています。

こちらも、ぜひ興味があれば覗いてみていただければと思います。

世界的デザイン会社のオンラインスクールに参加

もう1つ、IDEOっていう会社をご存知の方いらっしゃいますか? どれだけいるか知りたいので挙手いただけますか。

(会場挙手)

3分の1ぐらいですね。ありがとうございます。IDEOはアメリカに拠点を置くデザイン思考を提唱したコンサルティング会社です。有名なとこでは過去にMacのマウスとかを作っていました。

実はここが最近「IDEO U」というオンラインスクールを開始しまして、私はそこに今年の春から夏ぐらいにかけて参加をしました。

オンライン上にIDEOが教育プラットフォームを立ち上げ、そこにIDEOの社員の方々が参加し、僕は二期生でしたが、500名ぐらいの全世界の受講者が、課題を与えられ、それに取り組みながらアドバイスをもらったり教材で勉強したりっていうことをやっていました。

例えば左上にあるように、レポートを書いて提出したりとか、もちろん教材も貰えますし、最後に修了証書も貰いました。そこから得た学びについても、本日紹介できればと思っています。

ユーザーの声を聞くとは、どういうことなのか

次に、今回の議題であるユーザーの声を聞くということ。ユーザーの声を聞くということは、いくつかにパターン化されるのではないかと僕は考えています。

まず1つは、言葉の印象がよくないかもしれませんけれど、ユーザーの声を使わせてもらう。根拠となる要素を抽出し、後付けとして活用する。そのためにユーザーと触れ合うことも1つのパターンとしてあると思います。

イメージとしては例えば、「自社サービスとしてAという機能が必要だと考えます。なぜならばユーザーがこう言ってるからです」というような、「ユーザーがこう言ってるからです」という根拠をユーザーに保障してもらう。

結構これはミスリーディングになりがちなんです。「こういう機能があったらいいと思いますか?」「はい」「あ、『はい』って言いました。ユーザーは『はい』って言ってます。これ作りましょう」こういうことです。これが一番ミスリードを招きやすいということです。

ユーザーも何が欲しいかについては、この世にないものは答えにくい。未来を作るのであれば「聞いてはいけないこと」があると思っていて、結構これがよくありがちなパターンかなと思ってます。

次にもう1つが、ユーザーの声を参考にするパターン。代表的な例でいうと、サポートセンターのような位置づけで、随時お客さんからの声を取り入れて、どんどんそれをストックしていって、課題としたり個数を参考に優先度を高くしたり低くしたりして、以降の施策検討の参考にする。こういったパターンも多いかなと思います。

もう1つが、ユーザーの声を取り入れるパターン。これの代表的な例が、ユーザーインタビューとかです。ユーザーとの接触機会を図り、そこからの意見を可能な限り聞いて反映するということになります。

ユーザーの声は常に正解ではない

これは、どれがいい、どれが悪いということではないと思っています。

もちろん最後の、ユーザーの声を取り入れる、可能な限り反映するということは、確かにそれが目指している世界ではあるものの、すべてを聞いてサービスを運営し続けていくと「結局、私たちは何がしたいんだろう」というような、ユーザーの声に振り回されてしまう環境に陥りやすくなってしまうことがあります。

我々が描くべきものは何なのか、ということを見失う傾向があるので、結構バランスが難しいと思っています。

さまざまなユーザーの声を聞いて、そのユーザーを取り巻いている、環境だったり思惑、目的を考えていくと、「こういうニーズがあるだろう」ということに繋がっていく。

「じゃあ、こういう機能を作ればいい」「こういうコンテンツを作ればいい」「こういうサービスを作ればいい」と実際に反映したりするものの、それが利用に至らないという結果を経験した方も少なくはないと思います。

「あれ? 数字を見るとここが下がっているから、それを上げるためにはこの機能あったらいいと思ったんだけど上がってないぞ。何でだ?」、「ユーザーが言ったことを反映してるのに、使われていない。何でだろう?」、こんな壁に直面してしまうことって結構あると思うんですね。

なので、そのユーザーが何でそういうことを言ったのか、という声の裏にある背景や、その感情とかコンテクストを理解してないと、声だけに左右されてしまって利用に至らないということが多く起こってしまうかと思います。

結果として表面的な施策に陥りやすい。つまり、「ユーザーの声に応えるとユーザーが満足しますよ」という前提がそもそも間違っていると僕は考えます。

かつ、ユーザーの声に応えるだけでそれが利用に至ったら誰も苦労しないわけです。なので、ユーザーの声を聞くことだけでは、これから競合優位性を築きにくい、ユーザーの満足度向上には繋がらないということが前提になるとご理解いただければと思います。