虐待の可能性を放置することはいじめの問題と同じ

三原じゅん子氏(以下、三原):「どうしたら児童虐待がなくなるかと思いますか?」というこのご質問に対してもそうなんですけれども、お父さんお母さんが子育てをしながら、何に苦しんでいるのか? そこがやはり問題だと思うんですけど……。

貧困という問題ももちろんあると思いますし、そうした育児のストレス、あるいはいわゆる地域、社会からの孤立。

今、先生がおっしゃったようないろんな要素が重なって、やりたいと思ってやるお母さんもお父さんもいないと思うけれども、ついつい虐待に走ってしまうっていう方がいらっしゃるのかも知れない。そこに行く前にやはり未然に何とか手を差し伸べっるってこと。

これをどうできるかということで、国としてはやはり法改正ということしか、私たちの道はないので、いろんな改正を前回も馳浩先生とお話しさせていただきましたけれども、改正をしてまいりました。けれども法改正だけじゃなくてね、やはり今ご覧になっている皆さま方にもできるんだということ。

それがこの189。「手を差し伸べることができるんだ」っていうのが189なんだと思うんですね。

それは「あれ? もしかしたら虐待かもしれない」って思っているのに、何となく気付いているのにそのまま放置をするということ。これは、いじめの問題も同じですけれども、放置をするっていうのはやはり違うだろうということで。いち早く通報していただいて、子供のSOSを聞き逃さないようにしてもらいたいということだと思うんですよね。

大沼みずほ氏(以下、大沼):今、「この通報したの内緒にしてくれるの?」っていうのが出ていたんですけれども、この匿名性というのは非常に重要でありまして、やっぱり世の中いろんな方がいる中で「逆恨みされたらどうしよう」って不安に思う方は多いと思うんですね。   ですので、この匿名性というのはしっかり守って、子供の立場に立って、子供の命を救うために一人ひとりが勇気をもって行動していただきたいと思いますし、我々もその為の土台作りをしっかりしていかないといけないと思います。

三原:そうですね。やはり189に連絡をすれば、児童相談所に繋がっている専門家が、いろんな相談に乗ってくださいます。ぜひ皆さん、本当に怪しいなと思ったり、それから、「もう私このままだと虐待してしまいそう」という、本当に苦しんでる子育て中のお父さんお母さんでも良いんです、構わないんです。

どうぞ私はご連絡をしていただきたいな、ご相談いただきたいなというふうに思います。

そして虐待、もしされているお子さんがいらっしゃいましたら、きちっとした手続き取って児童相談所のほうでお預かりをしたりとか……。

そしてその後はですね、ちょっと日本はまだそこは遅れているのかなと思いますけれども、最終的にはまた親御さんと良い関係で戻れること、それが一番大事だと思います。そうした親御さんへのカウンセリング、こういったことをもっともっとしていかなければならないなというようなことも女性局としては学んできたところでありますよね。

人手不足が深刻化する児童相談所

大沼:私も山形で視察に行ったときに親御さんが来て、そこで例えば料理をして1泊できるような施設も充実していて、お部屋も充実していて、先生と親御さんもちゃんとカウンセリングできるような状況というのは整ってきていると思うんですね。   ただ一方で、児童相談所に勤める方は本当に激務であって、しかも人数も足りないという所もあってですね。これはしっかりと自民党女性局のほうでも声を上げて、充実を図っていかないといけないところなんでしょうね。

三原:そうですね、そういう意味での予算という意味もそうですし、人員ということもありますし、人も専門性を持っていくとこと、児相の方たちがですね。あとは自治体の方と役割分担をするっていうことが大切だと思うんです。

何でもかんでも児童相談所ってなったらそりゃもう手一杯です。下手すると1人の児童相談所のケースワーカーの方が、それこそ100人以上のお子さんを担当しなければならない、というような状態も起きているということも伺っております。

ですから、ある程度緊急性がないなということがわかるようなお宅の場合でしたら、そちらは自治体が担当する、本当に緊急性が伴うということであれば、児童相談所とかそういったことも役割分担していくとかゆうことも、これからはしていかなければならないとも思います。

もちろん専門家を頼っていくということ、そういったことも大切なことだと思いますので、そういう方たちをどんどん増やしていくこと、資格をどんどん作っていくとかそういうことも大切なことだと思いますので、ぜひそういうところにも女性局としてやっていかなければならないと思っています。

時代に合わせた変化が求められる「里親制度」

大沼:今、「里親制度って大事だよね」って出ていて、やっぱり日本はアメリカに比べて里親制度がまだまだ機能していないところもあってですね。やはり大規模、中規模の施設、そして里親制度。このしっかりとした柱を作っていくこと。

私は個人的には里親制度がもう少し、アメリカぐらいしっかりしていく必要がこれからあるのかなというふうに感じています。

三原:そうですね、今日もニュースで出ておりましたけれども、児童相談所がやはりこの虐待のことに手一杯で、なかなか里親制度ということに対する取り組みが十分できていないというようなニュースもございました。

そういうところにもやはり人を割いていくということも必要だと思いますし、里親制度自体もですね、やはりずいぶん昔から変わってなかったりしますよね。

その辺もしっかりと時代に合わせたふうに変えていくっていうことも必要だと思っております。ここは私たちも頑張っていかなきゃならないところだと思います。 さて、じゃあもう1ついけますね。

虐待防止にとどまらない、地域で子供を育てることのメリット

三原:「それなりに煩わしいことはあるけれど、お爺ちゃんお婆ちゃんと同居したりあるいは近くに住んでいた頃、長年の経験と医師でも知らない技術を持った産婆さんが各町に居たり、何かあれば助け合うことをした地域コミュニティが保たれていた元々の日本社会の方が正しかったような(気がする)」

そうですね、これはもう、先生の御地元の山形という所はいつも講演等でお話させていただくんですけど、非常に三世帯同居の確率が高い地域でありまして。

そうするとどういうことが起きるかというと、お父さんお母さんの共働き率というのが非常に増えるんだそうです。お爺ちゃんおばあちゃんがいますから、お父さんお母さんが共働き、いわゆるお母さんが働きに行くこともできる、確率が高くなる。

そうするとどういうことが起きるかというと、子供たち、いわゆる孫たちの学力も上がるし、犯罪率が下がるというか低い、こういうことも統計として出ている。なんかすべて良いことだらけだなと思いますけどね。

いわゆる昭和の時代のお爺ちゃんお婆ちゃんがいて、お父さんお母さんがいて、孫たちがいて、そして近所にはちょっとおせっかいなお婆ちゃんおばちゃんたちがいて、皆をいつも見守ってくれていたっていう昭和の時代がありましたけれども。

私なんかはそういう時代に育ったんですけどね。そういうことがやはりだんだんと少なくなって来てしまったということも、もしかしたら虐待が増えている要因の1つにあるのかなとも思うという話ですよね。

大沼:やはり昔は、私も隣の家に預けられたりして「お母さんちょっと買い物に行ってくるからお隣で遊んでて」って。

三原:当たり前でしたよね、なんかね。

大沼:それが今どうなんですかね? 私のちっちゃい頃はそうしていたんですが、今アパートとかマンション暮らしになると、なんかこうトントンって叩いて「お願いします」って言い難い雰囲気あると思うんですね。

なのでぜひ、自分のお孫さんたちが近くにいない、年末年始しか帰ってこないんだよという方は、地域の若いお母さんとか赤ちゃんとか、その子供たちを見守る、そういった活動にも参加していただいて。

やはり、地域で子供たちを育てていくことが、一番お母さんにとっても子供にとってもプラスになると思いますし、この虐待防止という意味でもいろんな人がかかわっていくことが一番の防止になると思うので。

三原:地方創生ですね。

大沼:ええ(笑)。

三原:本当にね……。その通りだと思います。やはり、子供たちを育てていくのにもちろんお父さんお母さんの愛情っていうのも大切ですけれども、お爺ちゃんお婆ちゃんの昔ながらの知恵とか暖かさとかそうゆった物を一杯に受けて育って行くっていうのもまた大事なことなのかも知れないし。

近所付き合いのわずらわしさよりも、孤独のほうがマイナスになる

三原:ただ今、実際若いお父さんお母さんたち、特に都会で暮らしている方、 今日も新聞に載っていましたけども、できれば近所との付き合い、かかわりをなるべく遮断したいって思っている方が非常に多いというデータもあったんですね。

ですから、そういったところが本当に難しくなって来たのかなと。この辺の社会的背景っていうのを先生どう思われます?

大沼:そうですね、ただそうするとやはり全部の負担が結構お母さんに来てしまって、例えば旦那さん、パパのほうはあんまりそういう近所付き合いとか「俺、苦手だし」って言っても、結局(家庭で)お母さんが孤立することが私は一番怖いと思うんですね。

なので、お母さんもお父さんもやはり地域の中にできるだけ、溶け込んだほうがプラスになるよっていうこと、子供のためにプラスなんだよっていうことを発信して、やっぱり子供にとってもいろんな大人からかわいがられることが、人格形成においても非常に良いことなのではないかなと思いますね。

三原:そうですね。子供たちにとっても世間を広げてあげるっていうこと、そのことがゆくゆくプラスになって行くし、お父さんお母さんにとってもプラスになるということなのかも知れませんね。

三世代同居っていう物を、本来でしたら私なんかは勧めていけたら良いなと思うんですけども、いろんなお考えもありますからね。なかなか税制ということも考えても難しいことなのかもしれませんけども。

そういったことも1つヒントとしてあるのかも知れない、そのためにもやっぱり地方創生ということをしっかりと皆さんと共にですね、その地域に合わせたあり方を考えていくってことが大事なのかも知れないですね。

ありがとうございます。大体、質問はこれくらいですか? はい、これくらいだということであります。

時間も丁度でありますけれども、今日は大沼みずほ先生に(お越しいただきました)。まさに本当に今、子育て真っ最中、もうすぐ3歳になられるお子さんを毎日毎日預けて、国会で走り回っている。

もう本当にいつも一緒に、委員会も一緒なのでいつも一緒にいて大変だなと思って見ておりますけれども、そうした中でも頑張ってるお母さん先生であります。

皆さまの悩みとかそういうことがありましたら、ぜひぜひ女性局のほうにお寄せいただきたいと思います。

明後日行います松居和先生、私の大好きな大好きな、松居和先生をゲストとしてお迎えいたしまして、20日木曜日6時からまた「189NO虐待」ということで行いたいと思います。ここにTwitterハッシュタグ……。

大沼:189NO虐待ですね。

三原:いろんなご意見、ご質問をお寄せいただきたいと思っておりますので、ぜひ皆さんよろしくお願いをいたします。それでは虐待かな? と思ったら189。「いち早く」ということ、このことをぜひ皆さまに覚えていただいて、今日の189、女性局カフェスタ189を終わらせていただきたいと思います。

本日は、大沼みずほ先生でした。ありがとうございました。

大沼:ありがとうございました。