日本政府は中東地域でどれほどのコネクションがあるのか

記者:フリーのジャーナリストで、田中龍作と申します。今回の事件で、日本政府側から中田さんに何らかの接触はありましたでしょうか。つまり、要請はありましたでしょうか。イスラム国側とのパイプはまだ健在でしょうか。

ハサン中田孝氏(以下、中田):日本政府から直接の要請は私にはございません。しかし、コンタクトはないわけではございません。また、イスラム国とのパイプにつきましても最初に申し上げましたとおり、私はこれまでできる限りコンタクトをしないようにしておりましたけれども、コンタクトが取れることは確認しております。

記者:それに関連する質問でございますが、日本政府は中東地域全体におきましてはどのくらいのコネクション、コミュニケーション、手段をお持ちでしょうか。かなりいろいろ話が通じる、コネクションとなる人はいらっしゃるのでしょうか。それとも、正直言ってゼロから始めなきゃいけないという状態なのでしょうか。

中田:もちろん、私自身がそれについて答えられる立場ではございませんけれども、一般論としましては、私自身も2年間サウジアラビアで専門調査員という立場で大使館で働いた経験もございますので。

日本にはアラビストというシステムがございまして、100人以上のアラブの専門家が働いております。その意味では、アラブに関する知識がないということはもちろん申せません。

しかし彼ら自身、アラビストが外務省の中で主流派かというとそういうことはございませんし、特にイスラム関係ですね。イスラム主義、あるいはイスラム学の専門家に対するコネクションが非常に弱いということは、残念ながら申し上げていいと思います。

イスラム国を構成する人員の質について

記者:私はフランスのテレビ特派員です。先生はたくさんイスラムについての本をお書きになってらっしゃると思います。しかし今回の人質事件とイスラムは、本当は直接関係はないと私は思います。ムスリム、イスラム教徒である私の友人がこのようなことを言っておりました。

「今回イスラム国がやっていることというのは、組織を見ると傭兵ばかりだし、それぞれの社会の敗者でもある。遠隔操縦をされているような人たちばかりで、人間的な価値がまったくない組織だと思う」

そう彼は強く非難しましたが、この私の友人のコメントについてはどう思われますでしょうか。

中田:最初におっしゃったように、私はカリフ制というものを支持しております。これまでも、平和裏にカリフ制というものが樹立されることを世界に訴えてまいりました。

そして当然その意味は、カリフ制というものが本来イスラムが目指すべき体制、イスラムの合法体制ということですので、それが不在の現在においては、私自身も含めましてイスラム教徒の行っていることはすべて、ある意味では間違っているということになります。当然、イスラム国もそのひとつであるというふうに私自身は考えております。

記者:私の友人の言っていたことは、イスラム国は傭兵(の集まり)であって、元の社会の敗者が集まった、まったく人間の価値のないような組織であるということなんですが、そのコメントについては何か。

中田:その友人の方がどういう方か存じませんし、内容についてどういう根拠で言っているのか存じませんので、それについてはコメントはできません。

先ほども言いましたとおり、私のイスラム国への訪問というのは、もともと私の友人たちを訪ねていったものです。その友人たちはそういう方ではありません。これは長年の経験から言えることであって、イスラム国に加入する前の彼らの本国での暮らしぶりも、普通の人というよりもずっと正直で、教養が高くて、信頼できる人たちであったというのが私の個人的な感想です。

知らない人間については、私は何も言う理由はございません。

イスラム国への人道支援はテロ防止に効果があるのか

記者:北海道新聞のニシムラと申します。先ほどのお話の中で、日本の人道支援をやるのであれば赤新月社とトルコを通じて行うべきだということがありました。これが、実際に難民の方にどのような形で届くようになるか、もう少し詳しく……方法というか、どう届くかご説明いただきたいのと、それはイスラム国によるテロを防止する役割を担うのかどうか。これについていかがでしょうか。

中田:「難民」といった場合、国外難民と国内難民がございます。今回の提言というのはトルコおよび赤新月社を通じた、あくまでもイスラム国の支配地域についてのお話ですので、その意味では国内難民の話になります。

これはイスラム国からのレポートを読めばわかるとおり、イスラム国での生活は非常に苦しいものがございます。それは私自身も見てきたことですけれども、その場合の人道援助がどのようになるのか、それがテロを減らすことになるのかというのは……しかし、それは考えないというのが人道援助の基本ですので、直接の効果は必ずしも期待できないかもしれません。

しかし、先ほど申しましたとおり、こういうイスラム国の前身が出現したこと自体が、イラクおよびシリア……特にイラクですけれども、アメリカの空爆によって難民化した人たちに対する、保障がなかったことに対する恨みを間接的に減らすことになるともいえると思います。

具体的には食料・医薬品、およびシリアも冬は厳しい環境ですので暖房器具・毛布、そういった人道支援以外には関わりがない物資を配るというのが、具体的な方法としては一番思い浮かぶことです。

日本政府に対して思うこと

司会:11時に終わるということになっておりましたが、少し延長できますのでご安心いただければと思います。

記者:AFP通信社のハセガワと申します。これから中田さんは日本政府に対して提案すると声明でおっしゃっていましたけれども、これ以降政府に対してどういうアプローチを取るのか、ご予定を教えていただければと思います。

中田:私自身、いま必ずしも自由な身ではありませんので、とりあえずここで話したことを全世界に伝えてほしいと思います。それはもちろん日本政府にも届くはずですので。

記者:フリーのタケウチと申します。先ほどのAFPの方とも関連すると思いますが、今日までの報道を見る限り、日本政府はこの件に関しては交渉のパイプ役はいないと報じられております。

今回、先生がパイプ役になれるということをここで表明されたわけですので、もし先生のアピールに政府が反応しなかったとすれば、政府は人質を救出する気があるとお思いですか? (政府は)この間2ヶ月、後藤さんのことを放っておかれたわけですけれども、その件についてもいかがでしょうか。

中田:私が9月にイスラム国に訪問したとき、事前に外務省に間接的にですけどもお知らせしまして、協力することがあれば協力したいと申し上げましたけれども、そのときに外務省のほうからは、トルコの空港で「これは自己責任であって行かないことをおすすめする。行く場合もご自由に」ということで、協力はいらないということでした。

もちろん私自身が協力しなくても解放できるのであればそれで結構なことですので。そういうことでしたけども、現在までの展開を見ると極めて怪しいのではないかと、残念ながら私は思っております。

期限である72時間以内にとるべき行動

記者:読売新聞のタケダと申します。質問は2点あるんですが、1点目は中田先生がイスラム国のどのような立場の人と実際にコネクションをお持ちで、そこを通じて交渉した場合、どの程度2人が解放される確率があるのかという点です。もう1点が、72時間を過ぎてしまった場合、2人の生命にどの程度の危険があると今お考えか。その2点について教えてください。

中田:まず第1の点ですけれども、(コネクションのある)ウマル・グラバー師は最初に秋田さんからも説明がありましたけれども、イスラム国の中で唯一、表に出ている人です。というのは、フェイスブックとかツイッターで公式のアカウントを持っておりまして、最近つぶやきが減ってはいますけれども、今でも発言を続けております。

それで本人自身が特定できる。顔も(ネット上に)上がっておりますし、今まで日本でも常岡(浩介)さん、横田(徹)さんというジャーナリストがインタビューをしております。その2回とも私自身その場に立ち会っておりまして、実際にイスラム国の中でどこまで指導的地位にいるかというのは私もはっきりと申し上げられませんけれども、少なくともイスラム国の行政機関の中で働いている。

「司令官」という名前で呼ばれて……今は、彼は広報というか宣教担当の地位にいますけれども、そういう立場の人間です。先ほどから何度も申し上げていますとおり、顔も出しております。特定できる、表に出られる人。皆さんでも「ウマル・グラバー」で見て(検索して)いただければ見ることができる人です。そういう意味で、だまされるだとか偽者であるということはありえません。

しかし、彼自身が公式にイスラム国の代表、スポークスマンとして話せるわけではありません。あくまでも、私はそれを繋ぐことができるというだけの話です。

第2の点ですけども、72時間という非常に短い時間。このことが何を意味するのか、私もまだつかみかねております。しかし、実際に72時間でお金が払い込まれるというのは、どうやって払い込むかという交渉その他もありますので、72時間以内にお金が払い込まれなければという話ではないと思います。まず交渉の糸口がつかめるかどうか、それが72時間の対応にかかっているんだと思います。

そういう意味で、ともかく交渉の糸口をつかむということに全力をあげたいというふうに私は考えております。