エンゲージメントとは何か?

上林周平氏(以下、上林):二部に関しましてはパネルディスカッションということで、「エンゲージメントを支援している企業が考える、今大事だと思うポイント」というかたちで進めていきたいと思っております。

ここからはモデレーターとして、人事業界で長い合同会社YUGAKUDOの田口さんにお渡しして、進めさせていただきたいと思っております。では田口さん、よろしくお願いします。

田口光氏(以下、田口):みなさん、こんにちは。合同会社YUGAKUDOの田口と申します。よろしくお願いいたします。私の自己紹介はあとでさせていただくとして、まずは本日のパネラーのみなさんをご紹介したいと思います。

では株式会社アトラエ「wevox」キリコミ隊長の川本周様。

川本周氏(以下、川本):よろしくお願いしまーす! 

田口:これ、正式名称でいいんですよね?(笑)。

川本:一応、それでお願いします(笑)。

田口:Unipos株式会社代表取締役、斉藤知明様。よろしくお願いいたします。

斉藤知明氏(以下、斉藤):よろしくお願いします。

田口:Talknote株式会社取締役、和田郁未様。

和田郁未氏(以下、和田):よろしくお願いします。

田口:株式会社NEWONE代表取締役、上林周平様。

上林:改めまして、よろしくお願いします。

田口:第二部のパネルはこの4名の方からさまざまなお話をいただくんですけれども、その前にちょっとだけ私の自己紹介をさせてください。

合同会社YUGAKUDOと申します。組織開発やスタートアップの支援のお仕事をしております。ふだんはひっそりと、実は完全紹介制でしか運営しておりません。久方ぶりにこういう場に出てきました(笑)。だいたい四半期に1回くらいの登壇という、マイルールを持っているんですけれども。

NEWONEさんとアトラエさん、NEWONEさんとUniposさんをお引き合わせさせていただいたご縁があって、今日この場にお呼びさせていただきました。いずれも私が好きな会社さんばかりで、非常に楽しみにしております。

人と組織の幸せを集めるというミッションで、(スライドを指して)こんなことを中心に考えてやっております。YUGAKUDOというのは「ゆう」と「がく」と「どう」という漢字を組み合わせて作った、私の造語でございます。

私自身はもともとは事業側、事業戦略とか経営戦略の畑でございました。ただ「戦略で組織って進行しないな」と。この戦略ができる横浜支店、そしてできない新宿支店。そうすると、戦略が合っているのか間違っているのかよくわからないという。「結局、為すも為さぬも人と組織だな」と17年くらい前に思い立ってから、人事組織という畑のほうにキャリアをチェンジして、今に至ります。

(スライドを指して)下のほうにさまざまな所属学会があるんですけれども。経営学と実践の橋渡しということをモットーとして、やっております。言うなれば学術と実践、これのアラインメントを取っていくということと、戦略と組織と実践のアラインメントを取っていく。こんなことをテーマにやっております。

今日はなんと、700名の方にお申し込みいただいているとうかがっております。総勢714人のすばらしいみなさまの時間をいただいているので「有意義な時間だった!」と言っていただけるように、4社の方から「これでもか!」というくらいお話を引き出して、進めていこうと思います。どうぞよろしくお願いいたします!

さて、今日は第二部のエンゲージメントについて、最初にうかがいたいことがあります。「自組織のメンバーはエンゲージメントが高いかどうか?」。これは、聞いてくださっているみなさんにもお答えいただきたいと思っています。

唐突で「え、何!?」と思われるかもしれませんが、まずは直感でいいので、お答えいただけますでしょうか?  お、回答が出揃いましたかね? 今、紙で(集計を)やっていきます。機材が揃ってるんですけど。紙って最強のUIですよね(笑)。

(一同笑)

「とてもそう思う」が19、「ややそう思う」が91、「どちらとも言えない」が40、「ややそう思わない」が91、「そう思わない」が18。きれいな逆正規分布と言いましょうか。こうなりましたね。

斉藤:二つの山がありますね。「やや思う」と「やや思わない」で。

田口:「ややそう思う」と「ややそう思わない」というのが、日本人的な回答を表していますよね(笑)。みなさんありがとうございました! もう1問だけ聞かせていただけますか。「自組織ではエンゲージメントを高める取り組みを行っているか?」。これとのバラつきは興味深いですよね。

川本:今だと半々くらいでしたもんね。

田口:そうですね。だいたい半分くらい。なにかやっていてそう思うのか、なにもしないでそう思うのか。

斉藤:組み合わせが大事ですよね。でもエンゲージメントを高める取り組みって、何なんでしょう?

田口:そうなんですよね。

上林:今日のテーマですからね(笑)。

田口:みなさんが知りたいのは、そこじゃないかなと思うんです。

上林:(話し合いの前に)先に聞いちゃうという(笑)。

田口:エンゲージメントって何なの? という。今日、切り込んでいきたいのもそこでして。第一部では島津先生からワークエンゲージメントを詳しくご解説いただいて、理解が深まったと思うんです。だけど巷では、従業員エンゲージメントというのもよく使われるじゃないですか。昨今、産業界ではこちらのほうがよく使われます。

ところが学術、アカデミックでは定義がないんですよ。学者によっては「古いワインを新しいボトルに詰め替えただけ」という言い方をする人もいてですね。

結果が出ました、ありがとうございます。「とてもそう思う」が42、「ややそう思う」が94、「どちらとも言えない」が40、「ややそう思わない」が55、「そう思わない」が55。

「そう思わない」と「ややそう思わない」が同じくらいになったんでしょうかね。なるほど、なるほど。さっき「とてもそう思う」が19だったのに比べて、いまの質問だと42。ちょっと増えてるんですよね。

取り組みをやってる人は多いんだが、高いかと言われると「とてもそう思う」までには行かないと。なにかしらやられていらっしゃるんだが、効果を得る、体感を得るまでには至っていない。そんなところなんでしょうかね。ありがとうございました。

話の途中でございましたけれども「エンゲージメントって何なんだ?」という話なわけです。これ、よくわからないですよね。わからないものって、マネジメントしようがないわけです。マネジメントしようがないものは、再現性がないわけですよ。すると、再現性がないことは取り組みようがないという、悪い循環になるわけですね。

第二部では「エンゲージメントって何なんだ?」という解像度を、みなさまと一緒に上げていきたいなと考えています。ただ「エンゲージメントとは?」というところから入っていっても、これも雲を掴むような話になってしまうので。具体的に、各社様でどのような取り組みやサービスをされているのか。ここから「エンゲージメントとは?」という、キーワードになるようなものを導き出していきたいなと考えております。

アトラエが考える「エンゲージメント向上サイクル」

田口:さっそく第1社目、スタートしていきたいと思うんですが。どなたからいくかというのは、もう決まっております! なにせ名刺に“キリコミ隊長”と付いているくらいですから(笑)。ぜひ川本さんから、どのようなことをされているのかご紹介いただきたいと思います。

川本:ありがとうございます。改めまして、株式会社アトラエの川本と申します。よろしくお願いします。

まず会社の紹介をさせていただければと思います。改めましてアトラエという会社になりまして、今、全体としては50名ちょっとの会社になります。「世界中の人々を魅了する会社を創る」ということをビジョンに掲げ、事業としてはPeople Techと呼んでおりまして、人と人との可能性をテクノロジーで広げていく。そういった事業を展開しています。

具体的には私が所属しています「wevox」という事業と、あとは「Green」という採用系のサービス。ビジネス向けのマッチングアプリ「yenta」という、3つの事業を展開しています。

我々、とにかくアトラエ社自体が自社の組織づくりにかなりこだわっている会社になります。その1つの現れとして、ありがたいことに昨年度、(スライドを指して)右上にあります「Great Place to Work」という働きがいのある会社ランキングで、国内で1位とアジア全体で5位をいただきまして。まず我々自身が、自社の組織づくりに非常にこだわっている会社になります。

何をやっているかと言いますと、とにかく高い意欲を持ったメンバーが無駄なストレスなく生き生きと働き続けられるような、そんな組織づくりをみんなでやっていこうよ、と。こういったものを大事にしながら、いろんなトライアンドエラーも含めながらチャレンジしていまして。

例えば弊社内では、役職というものがありません。「お前、ふざけた役職名でなにを(イベントに)出てきとんや」と思った方もいらっしゃると思うんですけど(笑)。あれはギャグだと思ってください。役職はなにもなくて、完全にフラットな組織形態をひいております。

あとは評価とかに関しましても、自分が指名した5人によって自分の評価が決まるというような、そういった制度を取り入れていたりですね。

文字通りマネージャー職がないので、マネジメントというもの自体も存在しないんですけれども。当然、情報に格差がありますと正しい意思決定ができませんので、全従業員がインサイダー情報も含めて、ありとあらゆる会社の情報にタッチすることができます。

あとは、今でこそリモートワークが普通になりましたが、コロナが来る前から我々はこういった光景が執務室に広がっていまして。犬を連れてくる社員もいますし、お子さんを連れてくる社員もいますし。オフィスには犬とお子さんと、僕のようなゴリラみたいな奴が走り回ってるような。理想なのか厳しいところなのかわからないですけど、そういった不思議な会社をみんなで作っています。

そういった中で、我々は「wevox」というサービスを運営しています。これがまさにエンゲージメントを可視化するツールになります。わずか2、3分程度でできる簡単なアンケートをもとに、このツールを通じて組織全体はもちろんですし、組織上のさまざまな切り口で部署単位、チーム単位、場合によっては個人単位で、エンゲージメントが簡単に可視化できるかたちになっています。

そこから獲得したデータをもとに、さまざまな分析機能も搭載させていただいていまして。イメージとしては「常にエンゲージメントが測れる体重計」と考えていただければと思います。価格帯も含めて、非常にライトにエンゲージメントを可視化できるかたちになっています。

そういった観点から今日は自社、あとはツールベンダーというところで……エンゲージメントを高めるためにはどうするのか? についてお話できればと思っております。

我々の考え方としては「エンゲージメント向上サイクル」と便宜上呼んでおりますが、やっぱり可視化するだけではダメで。可視化したもの、これは別に成績表ではなくてあくまで状態の現れになりますので、そこを信頼関係を大前提としたうえで「これはなんでこうなってるんやっけ?」という話をしていくのが、まずファーストステップだと思っております。

そのうえで、出てきたことに取り組んでいく。この、ある種永続的な取り組みが重要だというところで、我々はこのエンゲージメント向上サイクルがエンゲージメントを高める手段だと思って、まず最初に解を出させていただいてます。

ポイントとしては「自分たちで」と付けているのも非常に重要なところで。エンゲージメントって非常に熱意、活力、没頭状態をもって自ら主体的に取り組む。これが大事なことになってきますので。

「俺のエンゲージメント上げてくださいよ」。こんなものは一切おかしいという話で。「なんでお前のを上げなあかんねん」って話なので。とりあえず自分たちで取り組んでいくことが重要だと思っていますので、自分たちでエンゲージメント向上サイクルを実践する。これが重要だというかたちで結ばせていただきます。

田口:ありがとうございます。

「エンゲージメントが高いとは?」に関するUniposの調査

田口:じゃあ斉藤さんお願いいたします。

斉藤:Uniposの斉藤です。よろしくお願いします。プロダクトの詳細は、後ろのほうで少しだけ触れさせてもらえればなと思うんですけれども。

我々が掲げているビジョンというのは「『はたらく』と『人』を大切にできる世界に」です。そのために「すべてのはたらく人にスポットライトを」というミッションを持って「Unipos」というサービスを提供させていただいております。

この「大切にしあえる」というのが、エンゲージメントの1つのキーワードなんじゃないかな? と思っているんですけれども。エンゲージメントを上げるというよりも、もうちょっと身近な言葉で「互いにこういうことしてくれてる人ってありがたいよね。こういうことしてくれている行動ってありがたいよね」そう思い合えるような。

重箱の角をつつき合うんじゃなくて信頼しあえる、背中を任せあえるような組織を作っていきたい。そういう世界にしていきたいなぁと思って、こういうビジョンを掲げてプロダクトを運営しております。

私の観点からは「エンゲージメントが高いって、すなわちどういうことなのか?」というのを、いろんな調査から紐解いて、少しお話しさせてもらえればと思って持ってまいりました。

(スライドを指して)こちらは5月末ごろにUnipos社が独自に調査させていただいた、東証マザーズ一部上場企業の経営者、役員のみなさまを対象にさせていただいた調査でございます。

「コロナ危機以前に比べて、経営において重視するようになったことって何でしょう?」という問いを投げさせてもらいました。1番「変化に対応できる体制、文化づくり」である。けっこう意外だなと思いました、正直。

4番に「サプライチェーンの見直し」ってあるんですけれども。けっこう、ここ喫緊で上がるんちゃうかなと思いながらですね(笑)。選択肢に入れて調査をさせていただいたんですけれども。圧倒的に変化に対応できる組織、文化づくり(のほうが重視すること)であると。

これが、なんでなのかな? と思ったんですけれども。世の中がコロナをきっかけに変わりました。うまくいっている事業、うまくいかなかった事業。相対的に言うと、後ろのほうが多いのかもしれないです。

そういうふうに変化してしまったときに、経営陣はすごく危機的になるわけです。でも現場のみなさんも含めて、なにから手をつけていいかわからないし、どうしていけばいいかわからない。

でも、初めに動いてくれるのって誰なの? それは従業員のみなさんだよ、と。じゃあその従業員のみなさんが世の中の変化を適応的に捉え、それに対して自分から能動的に変われる。そんな組織づくりをしていかないと、これからの時代は生き残れないんじゃないかと。そういうことを、大きく知覚されたのではないかな? と考えております。

コロナはとても大きな変化ですけれども、あくまで「1つの変化」でしかなくて。今後さまざまな環境における変化。環境というのは疫病だけじゃないですね。働く環境もそうですし、競合環境とかもそうかもしれない。市場の環境もそうです。変わっていく中で、変化に対応できる組織づくりをしていかないとワタワタしちゃう、というのを如実に実感してしまったときだったんじゃないかなと思います。

そんな中で、変化に対して挑戦したい従業員はどれだけいるのか? という調査を、去年くらいに取らせていただきました。

「新たな挑戦をしたいです」と思っているみなさまは、61.3パーセント。これも上場企業の一般従業員のみなさんに取らせていただいたんですけれども。半分以上のみなさんは、変化があったとき新たな挑戦をしたいと思っている。

一方で、84パーセントのみなさんはハードルを感じてらっしゃる。なぜか? ハードルを感じている理由は何でしょう? 問わせていただきました。1番「失敗して信頼を失い評価が落ちるのが怖いから」。2番「今やっている評価、今やっている仕事で認められている実感がないから」。

これは改めてなんですけれども、変化に適応するために個々人が変化したい、しようと思える組織づくりをしていかないといけないのに、本当にちっちゃい関係性ですよね。となりの仲間だったりとか上司だったりとか、組織全体とのつながりが希薄化されていたりだとか。

信頼関係が取れていないからこそ、それがハードルになって挑戦できていないというのが、今の日本という社会の……すごく抽象化しちゃっていますけれども、実態なのかなと捉えております。

(スライドを指して)「3つの溝」とまとめさせていただきましたが、組織変革を阻む溝が3つあると考えております。上司と部下の溝。例えば、自分の仕事は上司に認められているのか。オンラインワークになって「サボってんちゃうか?」とか「もっと監視を強化したほうがいいんじゃないか?」みたいな話も出てきていると思います。それも本当は、信頼しあえるような自律的な組織であるべきだと。

また、部門間の溝ですね。SaaSの事業とかでもよくあるんですけれども「めちゃめちゃ簡単です!」って売ってしまうと、実際に使ってもらうときに「思ったよりいろいろやらないといけないじゃないか」となってしまう。

ちゃんと期待値コントロールしてやらないといけないし。そういう組織、部門間で利益構造が対立しかねない中で、互いの信頼なしに自分の利益だけを追い求めることで生じる溝というのは、正直あります。

また経営と現場の溝。これもすごく大事なんですけれども。経営で「どういうことが危機感である」ないし「こういうふうになっていかなければならない」と考えている目的を、現場が理解してない。これは現場が悪いというわけではないです。経営が伝えてないという側面もあるし。現場のみなさんが実感値を伴ってない。いろんな側面があると思いますけれども、目的と目の前の現実の溝ですね。

事件は現場で起きてるんだということで、やっぱり解像度が高い目の前のことと、解像度が低くて抽象的だけど未来のことって、大きな差があるので。溝が起こるというのは、構造的に起こり得るものであると。

上司部下の溝、部門間の溝、経営と現場の溝、この3つが少ない。ないし、橋が渡っている。相手のことを理解し、互助的で、我々の言葉で言うと「大切にし合っている」ような組織が、1つエンゲージメントの高い組織であると言えるのではないかと、我々Unipos社では考えております。

そんな中、互いに理解しわかり合うという側面から「貢献の見える化」という言葉を使っているんですけれども。「Unipos」では、従業員同士がスマホ上、ウェブ上で感謝賞賛の言葉とピアボーナス、簡単なポイントを送り合うことで組織における貢献が顕在化し、みんなが見える場所で顕在化し互いを知り、認め、称え合える組織づくりを支援させていただいておりまして。

これまで数百社を超えるみなさんとご一緒させていただいていて、今、ドイツでも子会社を展開しているんですけれども。グローバルではEmployee Recognitionといって、互いを理解し合うという領域自体は日本だとあまり競合っていないんですが、ドイツだと20社くらいいたりするんですよ。

一同:へ~!

斉藤:というくらい、ER市場というのがどんどん醸成されてきておりまして。相互理解というものが、世界的にも注目を集めているのかなと思っております。以上、私からの共有でございました。

Talknoteが大切にする「4つのコミュニケーション」とは?

田口:ありがとうございます。続きましてTalknote株式会社和田郁未様、お願いいたします。

和田:よろしくお願いします。Talknote株式会社の和田郁未と申します。

まず簡単に弊社のご紹介からさせていただくと、私たちTalknote株式会社は(スライドを指して)右側に映っている社内コミュニケーションツールの「Talknote」というサービスを提供しています。サービス名と会社名が同じなんですけれども、この1プロダクトを提供している会社で、だいたい50名くらいで運営しています。

「Talknote」とは? ということで、次のページに載せさせていただいているんですけれども。仕事におけるコミュニケーションをすべてこの中でできる、というようなサービスになります。私たちのサービスは、サービス業さんとか飲食店さんとか美容業界さんで使っていただいているケースが非常に多いんですけれども。

弊社の代表が、もともと飲食店の経営をしていたんです。そのときに店舗数が増えていった中で、自分と自分の周りにいる幹部の一部はすごくやる気満々なんだけれども、店舗のメンバーに自分の想いだったりとか目的だったりとか、いろんな施策をやっていく中でその背景だったりとかを伝えていくときに、すごく困難を感じたんですね。

やることだけ伝わっていくと、趣旨は伝わるんですけれども背景とか目的が伝わらなくて、結局「やらされ感」ができてしまって。これをどうしたらうまくいんだろう? といろいろ考えた結果「できるツールがなかなか見当たらないのであれば、自分で作ってしまおう」ということで。どんな人でも、店舗でパソコンとか触らない方でもスムーズに使えること。そしてみんなできちっとコミュニケーションを取れるということを、すごく大事にしています。

その中でのエンゲージメントというところで、軍隊みたいな図になっちゃってるので、ちょっと誤解を招きそうだなと思ったのですが(笑)。私たちの創業の想いとして、会社としてやっていく目的、目標が1人ひとりにまでキチッと浸透していることが、すごく重要だなと感じています。

なので「社長がAと言ったら、全員がAと言え」というわけではなくてですね。Aと言っていて、なんでなのかという背景もわかっていて、それでみんなが「だったら自分もAをやりたい」と思う人たちがいる組織というのが、一緒に働くメンバー同士もやる気が出るというか、楽しく自発的に仕事ができる状態にできるんじゃないかと考えています。

それが途中で伝言ゲームみたいにAがBに変わって、Bダッシュに変わって、みたいな状態になってしまうと、現場で不幸が起きていくなということをいろんなところで見ています。

それをどうやって解決していくのかということで、Talknoteは提供させていただいています。これがツールだけでうまくできるようになる会社は、もともといい会社なんだなということがわかってきまして(笑)。そこをうまく交通整理させていただいて、設計やルールというのも、提供させていただいています。

とくに大事なのが、この4つコミュニケーションがあるなと思っていまして。先ほど斉藤さんからもあったんですけれども「経営者の方々から、いろんな目的やビジョンをしっかり発信していくことを習慣化していく」ということですね。それに対しても、フィードバックができるような双方向性の高いコミュニケーションが大事だな、と思っています。

あとは、日々の仕事はやっぱりPDCAなので。チーム内での仕事に対するフィードバックというのを上司部下とか、メンバー同士でできるような状態だったりとか。逆に「現場でどんなことが起こってるんだよ」ということをしっかりと吸い上げられるというか、全社で共有できたり。

あと部署が違っている人たち同士でもどんな仕事をしていて、どんなことをそれぞれの部門でやっているのかということを、しっかり見える化できる。クローズドな状態ではなくて、オープンに見える化できる状態にしていくことがすごく大事なことだな、と私たちは考えています。ありがとうございました。

田口:ありがとうございます。ここまでだけでも、共通したことは少しありそうですね。可視化ということと、あと互いの貢献の見える化ということと、あとどこで何やってるか誰がやってるかよくわかるという。意図的にまとめようと思っているわけじゃないんですけど、共通する要項だなと思いました。

斉藤:いずれも、経営として成功するために互いを理解してコラボレーションしていきましょう、という文脈だと思うんですよね。エンゲージメントというのは目的格ではなくて、あくまで経営を成功する……僕、最初の田口さんのトークが一番印象に残っていて。新宿支店はうまくいくんだけど、この支店はうまくいかない。なんでなんだって。

結局、それが目的への理解の部分だと思いますし、自分が変化に対して能動的である、チャレンジができる。この状態が、組織がうまくいってるから経営がうまくいってる状態がエンゲージメントが高い、と捉えることもできるのかなぁと思いながらお話を聞いてました。

田口:この逆というのはあり得なさそうですもんね。経営がうまくいってるんだけど組織がうまくいってないっていう。瞬間瞬間の輪切りはあるかもしれないですけどね。

斉藤:めちゃめちゃキャッシュ・カウをビジネスに使って、そこだけうまくいってるとかはあるかもしれないですね(笑)。

田口:特許だけで稼いでいるとか(笑)。一部の企業ですもんね。あるとしてもね。

和田:そうですね。

NEWONEが提唱する、これからの時代の「管理職のあり方」

田口:では最後に上林さんお願いいたします。

上林:改めて私もご説明させていただきたいなと思います。今、3社HRテックのソリューションを聞かせていただきながら、我々はそれとはちょっと違って、人に直接触れるというか、意識とか関係性をテーマにやらせていただいておりまして。

エンゲージメントはさっきあったように、つながりという中で対組織・対仕事みたいなところがあるわけです。つながっていくときに可視化するとか、貢献の見える化とかもありましたけれども。

そういったことをなぜするのかといったときに、やっぱり「つながり」が大事。つながるためには納得感を高めることが大事なのかなと捉えていて、そういった可視化も含めて、効果があるのかなと思っています。

その中で我々はなにが大事かな? と見たときに、今まで私も15年以上いろんな組織の管理職の方を中心にいろいろお会いしてきたのですが。6、7年前くらいに、自分の中で印象的なことがありました。それはある組織診断でして……6、7年前なので「wevox」じゃないんですけど、すみません。

川本:はい、(当時はまだ)なかったので(笑)。

上林:組織診断をやらせていただいたんですけれども、そのときに先ほどの支店の話じゃないですけれども、全国ランキング取ったら一番良かった支店が広島かどこかの支店で。最下位が神奈川県のどこかの支店だったということがありました。

そのあと、1年後に組織診断を取る予定だったんですが、その間にたまたまトップの支店長と最下位の支店長が逆になるということが起こりました。そうすると次の年の診断はどうだったかと言うと、トップはガンガン下がっていき、最下位がどんどん上がるという結果で。

支店長やチームを束ねる人というのはすごく影響力があるんじゃないかなと、そのとき思って。それからいろんな企業さんを見ていたときに、業種を問わず、いいマネージャーとかいいチームリーダーのいる組織というのは、元気があったりとかエンゲージメントが高い状態かなと感じる中で、いいリーダーであるか、いいマネージャーであるかってすごく大事なんじゃないかな? と思ってます。

とくにプロスポーツ界でも、監督が変わった瞬間に組織がぐっと良くなることってあるなと思う中で、ここに占める割合ってすごく大事なのかなと思っているんです。

改めてまたスライドを使わせていただきますが、つながりで見たときに組織方針みたいなものと、仕事みたいなものが従業員につながっていくわけですけれども。この間にあるのが、いわゆる管理職と呼ばれているマネージャーのところで、いわゆる組織の結節点であるかなと思っています。この方々をいい出会いをつなぐ方とか、悪く言うと邪魔をしないかというところも含めてですね(笑)。

今、日本企業はここがボトルネックになっているところもあるのかなとは思ってます。先ほどのアトラエさんじゃないですけども、やっぱり管理職がいないのが究極の理想なんじゃないかな? と。

でも、今の日本企業でいきなり管理職をなくすというのは、(さまざまな企業に)接する中でなかなか難しいと思う中で。じゃあこの管理職の方がこれからの時代に合ったかたちで意識も行動のやり方も変わっていくか? ということが大事であって。

今までの管理型と呼ばれている「ちゃんとやれ」というかたちでトップダウンで落とすんじゃなくて。1人ひとりをどう活かしていくか、支援型みたいなことが、やっぱり大事かなと最近思っています。

一方で、こういうところで話すと「うちの上司はぜんぜん変わらなくて!」みたいなことが多々あって、多くの企業は大変なんだなぁと常に思うんですが(笑)。人ってなかなか変わらない中で、我々は組織開発とかワークショップとかやると、(スライドを指して)ここに書いていますけども、いろんな気づきをもたらしてくれる。

「やる必要があるなぁ」だったり「そもそも自分がそのうえでできてないよね」という気づきだったり。または「あ、こうなったらいいかもな」という気づきであったりとか。こういったことをして、人は変わっていくのかと思っています。

「管理職も人間なんだな」と常に思うんです。管理職の方が変わっていくうえで、否定せずに肯定するということが結構大事だなと思っていまして。マネジメントスタイルといっても、昔はそのやり方が正しかったわけじゃないですか。昭和型のマネジメントは昭和にはふさわしかった。

あのころはそれが正しかったねという前提の中で「やっぱり変化していくべきだよね」と伝えることが、すごく大事で。今、我々としてはこういうビジネスをやってますし、いいチームリーダー・いい管理職にしていきたいなというのは、最近思っていることでもあります。

田口:ありがとうございます。「管理職も人間」というのは、僕も最近よく感じていることでして。私も組織開発の現場によく行くんですけれども、いざこざの原因は大概「互いに期待値高すぎ問題」なんですよね。「経営者だからこれをやってほしい・やって当たり前」みたいな。そこにはやはり先ほどの御三方が言っておられた、相互理解とでもいうようなものが欠けているのかな? と思いました。