マスマーケティング時代の常識が、現実とのズレを生んでいる
気鋭のマーケターたちが「マーケティングの死」を語る

「マーケティングは死んだ」のか? 井上大輔 ×奥谷孝司 ×岩井琢磨 ×逸見光次郎 トークイベント (モデレーター:徳力基彦) #3/3

2018年7月9日、青山ブックセンター本店の大教室にて「『マーケティングは死んだ』のか? 井上大輔 ×奥谷孝司 ×岩井琢磨 ×逸見光次郎 トークイベント (モデレーター:徳力基彦)」が開催されました。世界の広告主ランキングのトップ5「P&G」「サムソン」「ネスレ」「ユニリーバ」「ロレアル」が要するブランドは、Best Global Brand 2017において、サムソン以外はすべてトップ10圏外。これは「マーケティングの死」を意味しているのか。5名の現役マーケターがそれぞれの視点から議論を交わしました。本記事では後半の模様をお送りします。

お客さんのことを本当に分かっているのは誰?

徳力基彦氏(以下、徳力):個人的に最近すごく興味のあるテーマなんですが、元P&Gの西口さんという、今スマートニュースの仕事をされている方と議論したときにおもしろかった話がありまして。実は創業したばかりの企業は、オーナーがマーケティング視点をそもそも持っているから、企業のマーケティングとユーザー視点がズレることが少ないと。

その後も、日清みたいに創業者の理念が生きている会社は、社長への帝王教育がうまく行けばマーケティング視点もずっと残っているので、比較的、間違えにくいと。一方で、大企業化してサラリーマン社長的な人が経営者になるようになると、企業側の視点と顧客の視点が乖離しやすくなる。

P&Gがおもしろいなと思ったのは、現場のマーケターが上司と議論したときに、上司の方は最終的には部下を信じるとおっしゃっている点です。現場の人間のほうがお客さんのことをぜんぶわかっているから、最後はそいつを信じると。

日本は逆になりがちですよね。上司のほうが偉いし、成功して(いて)良くわかっているはずだから、上司の言うことを聞きましょうと言うと。でも、実は上司が現場から乖離しちゃっていると。東芝さんのチャレンジのように、目標だけが一人歩きしがちという話なのかなと。

マ―ケティングセンスがないと陥りがちな根性論

徳力:今日会場におられるのは大企業の方が多いと思うんです。そういう組織になっていって、「社長がCMOだから大丈夫です」と言えない会社においては、どうすればいいでしょうか。

奥谷孝司氏(以下、奥谷):そこでいうと、小売りに強い逸見さんがお手伝いすると。問題は、売れたらすぐに「勝てば官軍」になることなんです。マーケティングをがんばったかもしれないのに、大した評価もされず、一方でマーケティング部門は「なんだよ、お前ら。KPIもないし」というような。

(会場笑)

奥谷:「がんばろー!」と言って終わるじゃないですか。僕からするとどっちもどっちだと思っていて、営業も販売も数字しか見ていないんですよ。「本当に心温まる接客とは何か」「その一致団結は何なのか」といったものも、どこかふわーっとやってしまって、ゴールとして数字が上がらないから、いろんなことを言ってしまって、お互いにわからない。

さっき岩井さんが言った縦割りにもまずいところがあって。売れたら勝ちで、マーケティングの良いスパイクもあるのに、良いスパイクも悪いスパイクもあまり見ないまま、売れたらどっちの売り場も、「雨の中チラシ配ってた何々さん、偉いね!」というような(評価で終わってしまっています)。

徳力:目に浮かぶやつですね。根性論ですね。

奥谷:そういう人が偉くなったりするわけです。マーケティングセンスがないから、気合と根性ですよ。そういうパターンは一番まずいですね。負けても、そこは議論しなければいけないんです。

モルモット精神で望む組織変革

徳力:組織の縦割りを何とかしましょうというのは、どちらかと言うとトップが動かないと変わらない問題だと思います。今日のこのテーマで、ここに来て(いる方は)、たぶん相当アンテナの高い方か、超悩んでいる方かのどちらかだと僕は勝手に思っています。

組織は縦割りです。マーケティング意識は低いです。あまり分かっている人はいません。でも、こうやって勉強をして何とかがんばろうと思っています。そういう方が組織のなかで、ちょっとずつ変えていこうというときに、何からやっていけばいいんですか。

井上大輔氏(以下、井上):僕は、マーティング部をなくそうという提案をしてしまったので、責任をとるわけではないですけれど……。

デジタルマーケティングをずっとやってきて、デジタルマーケティングを企業に根付かせようと思ったときに、いつも有効だと思ってやっていたことは、モルモットになるということ。デジタルマーケティングの良いところは、少予算でなんでもすぐに始められることですね。例えば営業の人に話を聞きに行くとか。

最初はすごく警戒しているわけなんですけれど、例えば「〇〇さん、今までマーケティングを見て、どうですか。満足いっていますか」と聞いてみる。「全然だめですよ」と言われたら、「うーん、ではどんなことをやったらいいと思いますか?」と。「俺はこう思うんだよ」というのを聞き出して、それをちょっとリスティング広告とかでクイックに試してみたりするんですね。それで、「この前○○さんにアイデアもらったやつ、すごくワークしましたよ」というふうにやる。

メインの目的は、営業を味方につけることです。でも同時にそういうアイデアの吸い上げをやっていくことによって、結果として彼らにもマーケティング視点を持ってもらえるようになる。それはけっこう、明日明後日の皆さんの機能の改善にもつながってくると思います。

関係部署への働きかけが功を奏する

徳力:モルモット精神というだけではなくて、実はほかの部署に聞きに行っているというのが、すごくポイントだなと思います。

逸見光次郎氏(以下、逸見):大企業にありがちだと思うんですが、やっぱり(人を)動かそうと思ってもなかなか動かないんですよね。事業部ごとに、部署ごとに予算があって、関係者がいる。今のモルモットの話をしたいんですけれど、たとえばネットスーパーを作るときに、1つの決裁にサインが20個以上必要なんですね。スタンプラリー状態ですよ。

徳力:僕も前職で相当スタンプラリーはやりましたが、20個はすごいですね。

逸見:なにが大事かと言うと、みんなのコンセンサスを作っているんですね。ハンコを押すのは上の人なんですけれど、だいたい言われるのが、その部署のキーマンと呼ばれる人がいて、「あいつは知っているのか」という話になっていて。

だから、大事なのは、面倒なんだけれど、関係する部署の人たちが常に働きかけをして、コミュニケーションをとっておくという話なんですよ。そのときにも、なんとなくの飲みの話ではなくて、「こういうことをやろうと思っているんだけれど、そっちはこういう資料をもっているよね。これを一緒にやったらこう変わるよね」と。

徳力:つらいスタンプ集めと考えずに、本当に楽しいスタンプラリーで、逆に社内にしゃべれる人が増えると思ってしまえば、それすら楽しくなると。

逸見:そうそう。それがやっぱりマーケティングだと思っていて。一個人だからできないのではなく、一個人だから、だんだん、ビジネス上のネットワークができていく。「EC事業部長なのに、いつもお店の話しかしないよね」というような。

徳力:「俺の部署はこれが目標だから、これをやってくれ」とぶつけるんじゃなくて、「あなたの部署のために私たちが何ができますか?」ということで、社内マーケティングと一緒にやるんですね。

逸見:社内マーケティングや社内広報が、すごく大事になってくると思いますね。

外部の力を積極的に使う

徳力:なるほどね。岩井さんはどうですか。

岩井琢磨氏(以下、岩井):事業会社にいたことがないので難しいですね(笑)。

徳力:逆に外から見てどう思いますか?

岩井:そうですね。すごくシンプルに、もっと外の力も使っていいんじゃないかと思っています。今回、奥谷さんとの本のあとがきに「我々はいつでもFacebook経由で連絡してもらってOKです」と書いたら、本当にすごく(連絡が)来て。

岩井:そういう連絡してこられる方は、「変えようとしている個人」なんですよね。そういう人たちは、もちろん組織の中でも一生懸命がんばっているんですけれど、それだけではなかなか変わらないということもわかっている。意識だけの問題ではなく、組織の縦割りごとにKPIがあるので、そのKPIの中でそれぞれが考えているだけでは、どうしようもないと。

そこに外の人間が入ってきて「本を書いている人を呼んでいるから、今度みんなで集まって話を聞かない?」などと言うと、みんな来てくれる。そこでいろいろとディスカッションが起こる。中の視点だけでは解決しないから、なにかしら異分子のようなものを持ち込んで変えていこうというのは、すごくシンプルなことですが、なかなか実行できることではない。でも、そういうことをやっている個人が、変えていこうとしている、もしくは変える力を持っているというのは、今回すごく思いました。

徳力:同じことを社員がずーっとやっていても誰も聞いてくれないけれど、それこそ、著者やお客さんといった違う人が同じ事を言ってくれると、俄然、社内の通りが早くなりますよね。

岩井:社内だと、周囲の第一声が「お前が言うな!」だったりする訳ですよね。

徳力:反抗している時点で、もう何を言っても耳に入らない、というような状況ですよね。奥谷さん、どうですか。

奥谷:(しみじみと)そうだねえ。

(会場笑)

制御できないと腹をくくった上で投資すること

徳力:実は時間がないので、そろそろ会場からの質問タイムに移りたいのですが。

奥谷:いいんじゃないかな。

徳力:では会場から質問を取りたいと思います。

質問者1:ありがとうございました。井上さんにお聞きします。95パーセントに対してもお金を投資していくというのは、コントロールできないままにお金を投資するというよりは、コントロールできる5パーセントを10パーセント、15パーセントに増やしていく。そして、その10パーセント、15パーセントにお金を使っていくという捉え方で合っていますか?

井上:例えば、3年前くらいに横浜ベイスターズが小学生に帽子を配りまくったんですよね。あれがまさに、95パーセントにお金を使うという典型例かなと思います。

子どもに帽子を配ると、子どもが行きたくなりますよね。「お母さん、連れて行って」と言うので、お母さんが連れてきて、集客、来場が増えるというのベイスターズの目的だったと思うんです。ただ、私の目から見るとそれ以上の効果がある。小学生が帽子をかぶって街を出歩くので、タッチポイントがものすごく増えますよね。

あるいは、その人のロイヤリティも上がり、熱心なファンにもなるので、LTVも上がったりして、そういったものを全部含めた波及効果は凄まじいですよね。ただ、まったくコントロールではない。小学生が街を歩いて、帽子でベイスターズを見る機会が増えるというのは、まったく制御ができないですよね。そこは飲み込んだまま、制御できないと腹をくくった上で投資する、ということだと思います。

質問者1:ありがとうございます。

逸見:うちも最終的には、やっぱり好きになりましたね。子どももDeNAの話をするし、野球も自然に観る。素晴らしい効果。

徳力:制御の可能不可能で言うと、ちょっと強すぎるかもしれないですよね。井上さんのおっしゃっている制御可能は、あくまでもマーケティングの予算として、テレビコマーシャルなどの自分たちのクリエイティブをコントロールできて、露出できる手段の話ですよね。

店舗の外装や車のデザイン自体は、当然コントロールが可能で、店も時計の仕組みもコントロール可能なんだけれど、ちゃんとお客さんに見せたいときに見せられるかどうかとなると、制御不可能という話ですよね。

ペイドメディアだと、ある程度狙ったところでお客さんをつかまえる。これは、5パーセントのマスマーケティングというのが今までのメイン手法だったので分かりやすい。95パーセントの部分はたぶん、オウンドメディアでたまたまバズッたり、アーンドメディアでお客さんが話題にしてくれたというような、企業側で制御しにくいエリアという話なのかなと。

逸見:接点や時間をぜんぶひっくるめてだと思うんですけれど、その中で、意図的にという部分ができるかできないかだと思います。

徳力:さっきのマクドナルドの事例のように95パーセント側をある程度仕掛けることによって、制御はできていないですけれど、思った以上にバズってしまう。裏メニューなどは象徴的ですよね。

井上:もちろんです。なので、イメージ的には100パーセント制御可能と、100パーセントは制御不可能ということですね。

「テレビCMだけに頼っていないか」という問題提起

徳力: 従来のマスマーケティングの要因は、どうしてもこの5パーセントのところしか考えていない人が多いというのが、井上さんの問題提起ですよね。宣伝部の人やマーケティング部の人は、じつは他にやれることがものすごくあるのに組織の壁を超えられないから、「テレビコマーシャルだけに頼っていませんか?」という問題提起かなと思いますね。

奥谷:学術的にも、ブランドをタッチポイントを4つで考えましょうという先生がいます。1つは、ブランドウォール。要するに企業がコントロールできるタッチポイントです。あとは、ディーラーさんみたいな役割なのか、Amazonさんでどうやって売るか。その下に、カスタマーオウンドと、ソーシャルオウンドが出てくるんですね。カスタマーオウンドとソーシャルでは、井上さんの(例)だと制御不可能です。

だけど、そこに対する種火みたいなものを蒔くのが、マーケターの仕事でもあるので。もちろん当たり前のようにやるんですけれど、ソーシャルとカスタマーオウンドにどう気を付けて、タイムテーブルで言うと、プレパーチェス(検討の時間)の中でぜんぶやっていくというのが、マーケティング業務じゃないかと思っています。

徳力:そこも狙ったところにやれるかどうかが問題で、日清さんなどはそこをバズらせるのが、ものすごく上手いですけれど。あれをやる前に、「どれぐらいツイートされますか?」と聞かれても、きっと誰もわからないですよね。そういうエリアのほうが、マーケティング的には、実はおもしろいのではないかという話かなと思います。

結局、「これ、リーチはどれくらい行くの?」と事前に聞かれると、「じゃあこの広告買っておきます」という選択をする方が楽ですよね。そうすると、5パーセントのほうにばかり予算をかけて、あーでもない、こーでもないとやることになりかねないという話かなと思います。

広告として使ってるときに分からないこと

徳力:他にご質問がある方はおられますか? 

質問者2:井上さんのお話を聞いて、実行前にどうやるかというところまでを必ず考えているところでこれって、。さっき逸見さんもおっしゃったように、予算がつかないと実行されない、決裁が通らないという話だと思うんですよ。事前にこれを実行する決まったとして、決裁回り、決算等はどうやって乗り越えていくかおうかがいしたいです。

井上:すごくいい質問です。その答えもべイスターズの帽子の話に戻ってしまうんですけれど、ベイスターズの帽子を配ると、子どもが親を連れてくるということがそこそこ確実に読めるじゃないですか。その上で、子どもが帽子をかぶって街中を歩けばベイスターズの認知にもつながるし、子どもも絶対にファンになる。ロイヤリティは上がるし、LTVも上がるしという感じで、もう勝ち筋しか見えない。

この95パーセントのところは、未着手なんで肥沃なんです。すごく可能性があるので、100とか200もある可能性の中で、1個くらいは「これ、絶対にどう考えてもいいだろう」というのがあると思うんですね。ベイスターズの帽子がまさに典型だと思っていて、まずはそれから始めてみるというのが、いいのかなと。

岩井:近畿大学さんのマグロは、すごいですよね。食卓の食材なんて、普通は大学のメディアにならないと思うんです。あれをやってどんな効果があったかと言うと、今まで「どこの大学に入ったの?」と田舎のおばあちゃんに聞かれたときに、「近畿大学を知らないなら近大マグロは知っているか」という話ができる。

あれはものすごく効果があったけれども、メディアを作ろうとしてやったかと言うと、そうではない。企業や大学の活動の中に、そういうシンボリックなものがある。それをどうやって今まで届いていない方に届けるか。あれもたぶん、広告として使っている間は、何も起こらなかったと思うんですが、実際にレストランを作って価値を生み出したり、事業として作っていったというのは、ものすごく大きいなと思います。

では、あれが出来るかと言ったら、難しいところなんですけれど、今までのメディアの概念からしたら、まったく圏外ですよね。ああいう発想を持てたらおもしろいですよね。

表の目的と裏の目的をはっきりさせる

逸見:どうやるかと言ったときに、(カメラの)キタムラでは、いろんなタイミングでネットのサービスの名前の変更などがありました。例えば、楽天に出店していて、今までは、子会社の名前でメーカーに遠慮しながら、事業会社としての利益を生み出すことを第一にやっていましたが、変えなければいけないと。じゃあキタムラと統合しようというときにまず考えたのは、そもそも「キタムラ」という会社が知られていない。

カメラの市場シェア、金額ベースで言うと、当時ですら20パーセントを超えていて、今はもう30パーセントを超えていると思うんですけれど。価格決定権があるのに、知られていない。だとしたら、要はネットの利便性は楽天やAmazonのように価格比較がしやすいということですよね。

楽天の中でしっかりとキタムラを打ち出して、キタムラが楽天店として認知を広げていく。もちろん売り上げも取りつつ、ここで知ってもらって、「キタムラってなんだっけ? そう言えば、うちの近くに店がいっぱいあったよね」と。今でさえ、800店くらいありますからね。そこに来てもらうという。

表の目的は、会社や名称を統合して、きれいにしていきましょうということ。でも、裏側の目的の中に、認知を高められるようなことを(盛り込む)。つまり、なにかをやるときに、いろんな対処、市場というか目的のようなものをしっかりと汲み上げていく。

そうすると、メインの目的は説明しやすいんだけれど、後ろにいくつか仕込んでおくことによって、結果的に効果が出てくると、あとで、「実はこういうことも」という話になったときに、「じゃあ、そういうことをもっとやってみたら?」という話になるので。さっき重層的にという話があったと思うんですが、なにかをやるときに、いろんな効果を見込んでおくというのは、大きな企業の中で成功例を作りやすい話なのかなと思います。

徳力:この辺の話は、実はいろいろ見てみると、すごくいろんな事例があるんですよね。今までは、広告はマーケティングの仕事で、広告がマーケティングだからと思っているから、それこそ商品開発のことをマーケターは考えていないし、パッケージのことも考えていないとなると、バラバラになってしまうんですけれど。

会社全体を考えると、インスタに広告を出すよりも、インスタ映えするように商品のデザインを変えてしまったほうが、早いのではないかと。実はそのほうが安かったりする。

逸見:前はこんなに受賞情報を載せなかったんです。Yahoo!でも、子会社の頃からずっと賞をとっているんです。会社の中でもぜんぜん注目していなくて、それも一緒にして、そこから集客が増えて認知度が上がったら、自社サイトも普通に受賞告知を出すようになった。

打ち込んでこういうのが実践されてくると、経営陣の頭の中も変わってくるわけですよね。

数字で見える化し、みんなで話せる環境をつくる

徳力:それではそろそろまとめに入りたいと思います。

「マーケティング」という言葉で日本人が議論すると上滑りしてしまうのかなと思っています。僕はマーケティングがすごく大好きなので、マーケターが普及してほしいと思うし、それこそ、日本企業に本当のマーケティングが浸透すれば、日本ももっと元気になると思っていますが。

ネスレ日本の高岡社長も、日本ではどうしても営業部や製品開発の人などが、片方しか知らない状態で偉くなってしまう。マーケティングの知識がない状態でやるから苦労するんだとおっしゃっていて、それはなるほどなと思うんです。そうかと言って、「日本企業にもCMOを設置しましょう!」といってそういう人が解決してくれるかと言ったら、そうではないんだなということを今日改めて思いました。

最後に、せっかく会場に来られた方々に、同じ業界を良く知っている、日本を盛り上げていく者として、明日からこれをやってほしいなというヒントを1つずついただいて締めくくりたいと思います。

逸見:自分をマーケターとはぜんぜん思っていないんですけれど、結果的にマーケティング活動をいろいろな会社でやっています……。

徳力:マーケティングが嫌いな人が、マーケティングの本を書いてしまったという。

逸見:結局、どうやって組織をつなぐかというのは、マーケティング視点でないと(いけない)。いかに顧客の視点になっていくかという話ですよね。今まで見えなかった顧客とのつながりが、よく見えるようになってきて、いろんな話のときに、予定調和の範囲だとしても、お客さんから見たらどうなんですかねと。

それだけでは否定されてしまうので、「うちの会員はこれぐらいでリピートしていますよね」という話ぐらいまで数字を拾っておいて話をすると、みんなは、「おっ!」という感じになる。お客さまというネタを、単純に「お客さまは偉い!」ではなく、数字を明確化して見える化して、話をみんなでするというのは、いいきっかけになるかなと思います。

徳力:メーカーさんはとくにそういうところがありますよね。「うちのターゲットは1億人です」というような企業がすごく多いですが、「そもそも何人が買っているんですか」と言われると、何人が買っているかがわからない。「1億ケース出ているんです」と言っても、それは1億人ではなくて、1人が年間100本買っていたら、実は100万人ぐらいになりますからね。そこを顧客の人数の視点でするというのは大きいかもしれませんね。

顧客とのつながりをどう作るかにつきる

岩井:私からはもう、「(社内お互いに)仲良くしてください」と言うだけですね。

(会場笑)

岩井:部署ごとに年度で追いかけるKPIが違う。KPIが違うだけだったらいいけれど、事業を見ているスパン自体が違う。お客様との毎日の出会いを求められているところと、5年後や10年後の話をしなくてはならないところとでは、仕組みも場がなければ、仕事上で仲良くするのはとても難しい。

でも結局は、顧客とのつながりをどうやって作るかということにつきるんじゃないでしょうか。組織が縦割りなのは、当然機能があってそうなっているので、それ自体が悪いわけではないし、変えられる場合だけでもない。

縦割りが横割りになったからといって、変わらないものは絶対に変わらない。単純にマトリックス型組織になったら意識が劇的に変わるかと言うと、そうとも限らない。構造の問題ではなくて、一人ひとりが前の部署やすぐ隣の部署の人たちと話してエネルギーが生まれるというのはいいことですよね。

だから、言い方はすごく緩いですけれど、仲良くする……顧客基点でお互いの違う経験や視点などをお互いに話していくというのは、すごく小さなことに見えて、すごく大きな意味がある。、私がお手伝いしてきたプロジェクトは、は必ずそこから始めています。

徳力:KPIは長期ビジョンで合意できると、たぶんやり方が変わってくる可能性もありますよね。

岩井:そうですね、そう思いますね。

本当に優れた場はどこにあるのか

奥谷:私は、「優れた場」はどこにあるのかなと。企業ごとに、お客さんとの距離が一番近いところは、どこなんだろうなと考えてほしいんですよね。僕も井上さんのように、カタカナではうまく言えないんですが、自分でなにに時間を使っているのかなというのをけっこう考えています。なんでこのプログラムを覚えているんだろう、自分が何でこれに興味を持つんだろうというように、まずは自分の中で起きていることを調べてみて。

自分の会社のことで言うと、いったいどこで喜んでいるんだろうと。何度も言いますけれど、買い物の場所はなんにも楽しくないですからね。買ったあとが大事なんだということは、次に来たくなる場所になっているかどうか。

もちろんAmazonが楽しい人もいると思うんですけれど、金を払う行為は、なんにも楽しくないんですよ。そこに、どんなものを足すのか。もしくは、つながる体験がダッシュだったらダッシュでもいいし、アマゾンエコーを使うでもいいし、もしくは、車に乗っているほうが楽しいんだったらそれでいいし。売る場所ではない場で、何が楽しいのか、何がいいのかと考えると、けっこう、いいアイデアが出るのではないかと思います。

徳力:サイクルで考えると、必ず使ってもらおうと。今までは売り場のところに集中しすぎていたよという話かもしれませんね。

全員がマーケティング的なふるまいを始められるように

井上:今日の議論を聞いていて思ったのは、マーケティング企業になるには2つのルートがある。1つは全員がマーケターになる。営業も人事も受付も全員がマーケティングをするんだという意識を持って動く。もう1つはトップダウン。トップが一番厳しいお客さんになって独裁的にマーケティング視点をインストールする

明日からのToDoは、みなさんが経営者なのであれば、自分はマーケターだという視点を持つ。みなさんがCEOではないのであれば、全員がマーケティング視点を持つべきだということを自覚して、認識していただいて、なるべく1人でも多くの人を、1日、1日洗脳していくことだと思うんですね。

それでやっぱり、営業の人、経理の人、人事の人といった、いろんな方々の意見を聞いてあげる。営業の人のところに行って、「今度、こんなキャンペーン考えてるんですけれど、どう思います? 何かアイデアはありますか?」なんて聞いてみて、マーケティングについて語ってもらう。

そしてできれば、小さな予算でいいので、それを実際にやってあげる。やってみようと努力してあげる。そうすると、その人たちが、「マーケティングって、俺も考えていいんだ」となったりすると思うんですよね。それで、マインドセットが変わって、すごく時間はかかるかもしれないですけれど、マーケティング的なふるまいを始められると思うんですよ。

そこには時間がかかると思うんです。でも、それが明日、明後日に実現しなくても、営業の人にマーケティングの意見を聞くのは、絶対にみなさんの業務の内容を円滑にするし、良いことがあると思います。なので先を見据えつつも、明日していただきたいことは、営業の人のところに行って、今度の新しいマーケティングについてアドバイスを求めるということです。

マスマーケティング時代の常識が邪魔をしている

徳力:いいですね。具体的なToDoをありがとうございます。最後にちょっとまとめて補足させていただくと、「マーケティングは死んだのか?」という偉そうなタイトルのセッションを担当させていただいたんですが、僕自身、元々マーケティングや広告業界の人間ではないんですよね。この業界にブロガーである自分が入ってきた時に、最も違和感が大きかったのは、いわゆるクリック至上主義とかコンバージョン至上主義でした。

その違和感を、僕も全然わからないながらにソーシャルメディアにおける企業のコミュニケーションの理想像についてしゃべっていたら、影響力のあるマーケターの方から、「おまえの考え方、合っているぞ」と言われて実は意外だったんです。そもそもマーケティングはお客様目線で考えたほうがよくて、マスマーケティングの時代の常識で考えてしまうと、意外とずれてしまうという話なのかもなと思ったりします。

みなさんも、嫌な漫画の広告がでてきたら、「わっ」と思うのに、出稿主としてそういったところに広告を出しているというのはありがちだと思いますので、そこはシンプルに両方の視点を持っていただくといいのかなと思ったりします。

最後に、4名のパネリストの方に大きな拍手をいただければと思います。ありがとうございました。

(会場拍手)

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