地域通貨×電子通貨 メリットの乗算

川田修平氏:我々がやっている電子地域通貨というのは、その名のとおり、地域通貨とデジタル通貨・電子通貨の、両方のいいところがかけ合わさってるのが、非常におもしろいポイントかと思っています。

地域通貨については、いろんな人と話すと、「このコインがいろんなところで使えるといいよね」といった話を受けるんですが、地域通貨の概念でいくと、この地域内でグルグル回したいので、そういう話だと矛盾しちゃうんです。そういったことで、地域限定の通貨であるっていうのが、1つのメリットと。

あとはさっき言ったような、コインを送金して、違う概念でいくと転々流通とか二次流通、三次流通というかたちで、コインがグルグル域内で回っていくっていうのが、地域通貨のおもしろみ、醍醐味だと思っています。

あとは紙じゃないこと。過去、10年前や20年前にも、いろんな地域通貨が発行されたんですが、うまくいかなかった背景に、やっぱり紙の運用が大変だったというのがあります。

そういうったところをスマートフォンベースでやれているので、「運用や事務効率が非常に高いね」という話があります。あと、それがデータで取れるので、データの利活用の流れにもつながる。そういったメリットをかけ算したものを、我々としては追求してやっています。

地域ではないんですが、ハウステンボスさんで、去年の12月20日から実証実験というかたちで従業員を中心に運用をしていたり。

あと、明日2月15日から、四国・愛媛県の地銀、伊予銀行さんのところでも、実証実験を開始する流れになっています。

QRコード読み取り決済でオペレーションも変えられる

ちょっと駆け足になりますが、技術的なポイントを3点、お話します。QRコードを使った決済と、我々のもともとの祖業であるO2Oのマーケティングと融合することの意味。あとはブロックチェーンについても、ちょっと言及したいと思ってます。

QRコードについては、電子決済の例を国も増やそうとして、2020年に今の20パーセントから30パーセントにがんばって増やそう、2027年に40パーセントにしようというペースなんですが。中国だとぜんぜんレベルの違う、角度の違うスピードで非常に広まってます。

わかりやすいところでいくと、コンビニでの電子決済のケースが、23パーセントだそうです。私はSuicaユーザーなのでSuicaで払うんですけども。ローソンさんの株主総会でもおっしゃっていましたけれど、75パーセントが現金なので、この割合を下げないとレジの効率が悪くなる。どこも最近人手不足なので。

そういったところでいくと、こういうところも改善していかないといけない企業もたくさんある中で、中国だともう3分の2が電子決済になっています。

というところで、華僑のいる東南アジア中心に、QRコードが広まっていっている背景があります。

また、決済ができるだけじゃなくて、注文みたいな機能も、どんどん発展しています。テーブルにあるQRコードを読み取ると、ここの店のメニューが出てきて。これはECサイトみたいなものですが、そこで注文するとテーブル番号と注文の情報が流れて、そのまま配膳されていき、決済も済んでいる。

セルフ型でいろんなオペレーションができるので、飲食店などいろんなところでお話がありますが、これまでホールに3人必要だったのが、「2人で回せるね」「1人で回せるね」といった感じになっていくと、世の中には人手不足で困ってる企業がたくさんあるので、そういったところの改善にもつながっていくかなという感じです。

あと、(スライドを見せる)おもしろいので写真を載せてますけども、マッサージ機にもQRコードが付いてて。これを読み取って決済すると動き出すんです。日本だと、温泉などに行くと、100円入れて動くというものがあると思うんですが、こういうのもQRコードでやっていますね。決済だけじゃなくて、いろんなプロセスを組み合わせることで、今後の発展がいろいろありそうだと、学びとして考えています。

O2O活用の強みとブロックチェーンの今後の発展

2つ目のトピックスが、さっきも言ったように、決済がQRコードやスマートフォンになったからおもしろいわけじゃなくて、ユーザーが変わるわけじゃなくて、そこにいろんなプロセスが組み合わさることで、金融の新しいかたち、決済のかたちがどんどん変わっていくのかなと思ってます。

1つの例が、我々はもともとO2Oのマーケティングのところが得意なので、そういうったところでかけ算していくと。コインというのがデジタルなものなので、プレミアムを付けたり、有効期限を付けたり。

もともとの地域通貨の発想でいくと、例えば3ヶ月ごとに2パーセントずつ価値が減っていくような仕組みというのも、デジタルなのでかなりやりやすい。なので、早く使わないといけないと思わせるなんらかの仕掛けというのもいろいろあると。

2つ目が、我々は位置情報を使うのも得意なので、来店するとポイントを付けるとか、スタンプラリーでコンプリートするとコインがもらえる、みたいな発想もできたりします。

あとは、加盟店にプッシュ配信であるとか、クーポンの配信機能も一部開放することで、販促ツールとして使っていただくといったかたちで、決済プラスアルファのところをしっかり磨いてき、より地域を活性化させることに貢献できるんじゃないかと考えています。

あと、テーマとしてブロックチェーンということで。今回は実証実験の時に、ブロックチェーンの接続みたいなものをテストしたんですが、スピードの問題など、いろんな観点から、最初に申し上げたように「今回は使わない」という決断をしました。

今後の発展について言うなら、ブロックチェーンと親和性の高そうなサービスというのも、我々はいくつかアイデアを持ってるので、そういったところでは差し込めるチャンスがあるんじゃないかなと思っています。引き続き、いろんなブロックチェーンの会社さんも含めて、つながりを持って進めているという状況です。詳しいことは後ほど聞いてください。

電子地域通貨の3つの特徴

今後の発展イメージをサラッと流していきたいんですが。我々の今やっている電子地域通貨の特徴を、要約してまとめていくと、3つあるなと考えています。

1つ目が、機械がいらないということ。ユーザーのスマートフォンを使うというのと、加盟店に今、QRコードがあればいいという話なので、機械を制御するというシステムのプロセスがほとんどいらなくて、システム的にかなり軽くできるのが、非常に大きなメリットの1点目。

2つ目が、スマートフォンのアプリなので、決済プラスアルファの機能をプログラムに組み込めること。そういったところを発展させるっていうのが、おもしろいポイントの2つ目です。

3つ目が、限定された地域通貨という特徴をメリットとしていろんなところでアイデアを広げていくと、おもしろいことができるんじゃないかなって思います。地域にかぎらない枠組みもあると思っています。

例えば、野菜を販売してるところだとしましょう。野菜1個100円なんですが、1日売れてもたぶん1,000円売れるか売れないか。

料金箱があって、この中に現金を入れるしくみのところにSuica導入するとたぶんコストが成り立たない(笑)。とはいえ「現金を回収する手間もけっこうあるね」ってなった時に、非常に軽いシステムが相性がいいんじゃないかっていう話であったり。

弊社の中で、さっきの野菜の販売と同じように、信用商売で自分でお金を入れるスタイルでお菓子を自分でピックアップしているので、こういうところで「なんか使えないかな?」という話で去年の7月に実験してみました。「オフィスコイン」というかたちで、弊社の中にオフィスファミマっていう置き菓子のサービスを試してみたんです。

このカップヌードルが180円なんですけど、180円きっちり持ってることって奇跡で、たぶん1ヶ月に1回あるか2回あるかぐらいの話で(笑)。たいがいの場合は、500円とか1,000円を入れて、まだ貸しが自分にあると思って、「貸しね」って思ったり。悪い輩だと「次払うから」っていうので、ツケみたいにしたりするんですけども。こういうスマートフォンであれば、例えば183円でもそのまま払えると。

電子地域通貨の考え方を企業へも応用できる?

こういう発想でやってみたんですが、「けっこうこれ、福利厚生みたいな概念でいろいろやっていくと、もっとおもしろい取り組みできるね」という話で、すごくアイデアが広がっていきました。

さすがにカップヌードルを毎日食べられると、健康に悪いのであれなんですが。例えば、健康によさそうな食材であれば、「会社が1,000円チャージした時に2,000円分にして、倍付けして補助するといったことができそうだね」っていう話だったり。

勤怠システムや従業員の管理システムだったり。健康につながるような、すごくシンプルな話でいくと、毎日1万歩歩くと50ポイントたまっていくような仕組みでやるのも、おもしろかったりするんですが。そういったかたちで、「そういうことに対するインセンティブを与えることはできるんじゃないか」という発想だったり。

オペレーションを中心としてるコールセンターみたいな会社さんだと、サンキューカードのようなかたちで、日頃のねぎらいを紙で送ったりするんですが、こういったところも、「メッセージもうれしいけど、ちょっとこっち(お金)もほしいね」という話になった時に、50ポイントセットでメッセージを送る。

例えばいつもの仕事と関係ないことをちょっと手伝ってもらって、「ありがとう」という気持ちを伝える時に、100円を渡すシーンってあんまりないと思うんですけども、100ポイントメッセージであれば成り立つんじゃないかとか。そういったかたちで、会社のコミュニケーションをより豊かにするであるとか、助け合いの気持ちをよりうながしていくような仕組みっていうのができるんじゃないかなと。

たまったコインを置き菓子で使ってもいいですし、食堂で使ってもいいですし。周辺のお店に協力してもらって、そのお店でも使えるようになる、そういう発想でいくと、けっこうおもしろい取り組みができるんじゃないかと考えて、いろんな会社さんとお話をしているところです。

地域経済だけでないインセンティブの促進

あと、自治体さんもけっこういろんなアイデアがあって。すごくシンプルにわかりやすいところでいくと、プレミアム付き商品券みたいなものを紙でやっているんですが、この運営がかなり大変ですと。一応、お金に近いものなので、偽造防止のためにナンバリングとか、がんばるところだとホログラム入れたりしますが、こういうのも大変だったり。

それで、いろんなお店から金融機関に集めて、それを勘定してそれぞれのお店に精算するという作業があるんですが、こちらも大変なんです。「これがデジタルであれば一発でできますね」であったり、「それぞれデータも取れるんで、今後の改善にもつながるインプットももらえます」という話になる。これは非常にわかりやすい話ですが。

それ以外にも、最近自治体さんでは、ボランティアポイントや健康マイレージといった、ポイントサービスに近いことをやってるところが多くてですね。こういったところで、相互扶助というか、「自分たちで協力して自治を回していこう」という発想で、「そういったところをうながしていくインセンティブとして、こういうものが使えるんじゃないか」という話になったりしています。

さっきのサンキューカードみたいな話であったり、ボランティアポイントのようなところは、どちらかというとブロックチェーンの非中央集権型のサービスに近い発想があるかもしれないので、こういったところではいろんなブロックチェーンも実験で使ってみたいと我々は考えています。

というのを目指して、今、千葉県木更津市で「アクアコイン」というのを、今年の秋、10月に向けて導入を進めています。あと、来年の2月に向けてさっき言ったボランティアポイントみたいなところも、この中により融合していけるようなかたちで、今、プロジェクトが動き出してます。そういったところで、またみなさんにもいいお話ができるかなと思います。

あと、地域じゃなくていろんな枠組みがあると思うんで。私は阪神タイガースファンなんで、「阪神コイン」っていうのがあったら確実に預けるので(笑)。

(会場笑)

川田:そういったかたちで、地域じゃないところ、とくにマイナーなスポーツではけっこうお金に困ってるところがあるので、先にキャッシュが入ってくると助かるところってたくさんあると思います。そういったところで活用するっていうのはあるかな、と考えています。

今日はこれで以上になります。どうもありがとうございます。

(会場拍手)