人を動かす動機で「性欲」が占めている割合が大きい

本田哲也氏(以下、本田):そろそろ質問タイム。結局本の話どっかいっちゃったんですけど。人を動かすということでどうですか。お1人ずつ。

本の中では、読まれた方はわかると思うんですけど1000人を動かすから始まって10億人までいってるけど、1人も動かせないでどうするのみたいになってるし、結局たくさんの人を動かすって言うけど、それって「1人×1000」とか「1人×10万」とかって話だよね……ってとこできれいに収めようとしてるんですけど、田端さんその辺はどうですか。

田端信太郎氏(以下、田端):じゃあ、僕から前座風に。確かに1000人の場合も1人を動かすってすごい大変なんですよ。家で本を書いてても、奥さんから「ちょっとさ、オムツ替えてくんない」とか言われるわけですよ。

「あ、替えます」とか。子どもも言うこと聞かないし2歳と5歳だから。0と1の違いは0と10億の違いよりすごく大きいということがあって、1人を動かすってことがいかに大変かってことを生身で感じるのが、普通の人の場合はたぶん恋愛なんじゃないかなって。

あと、今日はマーケターの人もいて、もう少し真面目な話を聞きに来てると思うんですけど、だいたい今のマーケティングのあらゆる文法の中に、隠喩としてセクシャルなイメージって盛り込まれてますよね。

ハーゲンダッツのCMなんかも典型ですけど、だいたいそこのボタンを突いてるんですよ。あとは車のCMなんかも典型ですよね。この車買えばモテますって。ファッション系もそうですよね、コスメとか。

そこのポジショニングというか、文法というのは絶対知っておくと損はなくて。僕なんかはすぐに下品になっちゃうんですけど、そういう感性みたいなのがわかんないと、なかなかマーケティングをやってても本当の意味で人がどう動くかみたいなのがわかんないんじゃないかと。

人を動かす動機の中で、平たく言うと性欲が占めている動機って結構大きいんですよね。だからこそ、そこを自分自身を含めて向き合うみたいなのはすごい大事なんじゃないかなぁと常に思っています。

ソーシャルで重要なのは「切り捨てる勇気」

はあちゅう氏(以下、はあちゅう):私は「切り捨てる勇気」というのがソーシャルだからこそ必要なんじゃないかと思っていて。私のTwitterとかって、20代の女性にウケようと思ってマーケティングしてつぶやいているわけではなくって、私は私が面白いと思うものに対して共感してもらえる人に対して発信しているんですよ。

それを続けていた結果がどんどん増えてきたってことなんですけど。なんかこう、やらしくターゲットを最初から大きくするよりは、もう私の面白さがわかんない人はわかんなくていいってしてしまうことで逆にファンが増えるというか。

逆にさっきの1人の話でいうと、音楽プロデューサーの四隅大輔さんという絢香さんとかSuperflyさんとかをプロデュースして7回くらいミリオンを出している方がいらっしゃるんですね。プロデューサーで。

彼が、全てのミリオンセラーというのは大衆に書いたものではなくって、だれか特定の1人に宛てて書いたものだって言っていて、必ず歌に書かれた対象者がいるってことを聞いたときに、私もそうだなって思ったんですよ。

私は誰か近況報告をしたい友達に対して、ブログもSNSも全部発信をしているつもりで、それがたまたま面白いと思う人たちにじわじわ広がっていったっていうのがあると思うので。

例えば企業がキャンペーンをするときも、さっきの批判に屈するなじゃないけどわかんない人にはわかんないでいいし、全ての人にお伺いを立てる必要な無いと。それはオンラインゾーンでも一緒だなと思います。

本田:なめこのスタンプもそういうことですよね。

はあちゅう:そうですね。なめこのスタンプをかわいいと思ってくれる人とだけ付き合えばいいと。

本田:鈴木おさむさんはもういいわと!(笑)

はあちゅう:鈴木おさむさんとは、仲良くさせて頂いていますけど(笑)。

本田:本でも入れ子構造の話をしていて。マトリョーシカみたいな。1万人が動かない話で10万人は動かないだろうみたいな話って実際にやっていても感じるから、マトリョーシカを剥いでくと見ようとしてなかったり、分析してないだけで、案外「最初にこの人がこう動いたから、その影響でこう動いて」っていう過程があるんですよね。

これでは全部書ききれてないんだけど。最初からたくさん動かすっていう目的意識より、こういう内容とかこういうコンセプトで動かしたいっていうのがあって。10人でもいいからって。結局それで共感してもらえるのが100、1000人って増えていくのが本当の姿なんでしょうね。ということでよろしいでしょうか。

はあちゅう:はい。まとめてくださってありがとうございます。

質疑応答−「動画マーケティングの今後」について

本田:ということで、会場から質問でもコメントでも何でもいいです。

質問者:この本の中でもちょっと触れられてたと思うんですけど、YouTuberのこととか気になっていて、ざっくり言うと動画マーケティングについて。uuum(ウーム)さんと提携という発表をされてたんで。これから具体的にどういうことをしていくのかとか少しお話をしていただければと思って。

本田:はい、ありがとうございます。なんかすごい業界チックな話になってしまって。この本でもYouTube、YouTuberについても書きましたけど。あれも皆さんご存知かと思うんですけど、HIKAKINさんとか小学生とかもすごくて、クラスでも知らない子がいないってくらい。

特に僕の世代は知らないっていうか、直接影響を受けてないですけど。動かす規模の話も大事なんだけど、誰が誰を動かすって話も時代と共に変わっていきますよね。楽しみっていう意味もあるんですけど。

だからこれからの若年層というか、若い子と僕らとは全然環境が違うんで。自ずとYouTuberの皆さんとかは影響を与えていくんじゃないかと。彼らも今のところ企業と組むってなると、これを試してみたいとか。

アメリカなんかだともっとちゃんと企業と組んでいたり、単に商品紹介じゃない組み方、一緒に商品化とかも進んでいて。PR的にこれから組んでいけるんじゃないかと楽しみにしてるんですよ。

質問者:やっぱり早いなぁと思いますね。

ブログと動画におけるユーザーからの反応の違い

はあちゅう:私もYouTuberなんですよ、ほのかに。

本田:ほのかに(笑)。ほのかにYouTuberって表現は初めて聞いたんですけど。どのくらいほのかなんですか?

はあちゅう:一応YouTuberの再生回数1位から100位までのソーシャルグレードの100位に入ってます。やってることは「ゲスアワー」っていう名前の、ゲスな話をトレンダーズの同僚とやってるってやつなんですけど。

もともとYouTubeのアカウントを持っていて、事業をやる時にYouTubeを見る人の気持ちをわかりたいなとか、動画はどうやったら編集できるんだろうってところから始めたんですけど、その時にソーシャル力というのをすごく感じて。

本当に再生回数でいったら5000とか6000くらいしかないんですけど、一緒にやっているただの会社員の同僚たちが電車で顔バレするようになったんですよ。「ゲスアワー」見てますって言われるようになって。

本田:それがやっぱり映像のすごさで、かつてのカリスマブロガーって顔が割れてないとさすがにそういうことってないですよね。今はもう芸能人ばりになっちゃってますもんね。それってブログを中心にやっていて、動画の反応の違いって、表現の仕方や伝え方の違いってありますか。これはやっぱブログと違うなーみたいな。

はあちゅう:全然違います。テンションが。だって私がブログ書くとき笑ってないですもん。でも、YouTuberは「こんにちはぁ~(笑)」ってやらなきゃダメなんですよ。

本田:だいたい「www」って書いてるときは誰も笑ってないっていうね。

動画マーケティングが「狭く深く」刺さるワケ

田端:でもわかる。そうだった。僕は動画ってそんなにやったことないんですけど、間口が狭いけど奥が深い感じで。決定的に違うのはブログとか、Twitterとかのテキスト系は再拡散とか、検索エンジンからの発見があり得るけど、YouTubeでいうと見るぞって思って見ないと見られないというところで、狭く深く刺さるって感じですよね。

そこがまず決定的に違っていて、そもそも全く見ず知らずの人のYouTubeって絶対いきなり見ようと思わないけど、Twitterでリツイートしてきたり検索エンジンでひっかかったら見るかもしれないという部分が決定的に違うから、逆にさっきのサロンじゃないですけど限られた数百人とか数千人に深く刺していくんならテキストだけよりも動画があった方が共感が増すと思うんです。

ただブログもTwitterも何にもやらずに最初からYouTubeからいく人って本当にテレビ的な意味での芸人的な筋力が強くないと難しいんだろうなっていうか。逆に文章書かせたら全然だめなんだけど、江頭2:50的な瞬発力でYouTube上で人気が出る人っているのかなっていう。

本田:今後出てくるかもしれないですね。今のトップYouTuberの人たちって映像でなんかができる人達じゃないですか。編者としても。だから一旦はそこなんでしょうね。

ソーシャルは、本文より見出しが大事

本田:他に質問ありますか?

質問者:ソーシャルを使って出版イベントで人を集めようと思ったら、キャッチコピーやテーマなどが重要になってくると思っています。ユーザーに引っかかるようなポイントなどはありますか? 

田端:Facebookのイベント機能というのはイマイチな気がしています。よほど内輪ならば良いのですが、本の著者としてのパブリックな場面などでは難しいんじゃないかと思いますね。今日、ここに来ている人たちも知り合いではないじゃないですか? 

誕生日のような30人のイベントならば良いのですが大型のイベントには向いていない。あれは参加しますと言ってドタキャンしても心は咎めないですよね? 

あの機能自体がそもそもいけてないと私は思っているので、あそこに依存して集めるというのはどうかな? という気がしています。

あとは、ネットやソーシャルなどの場合、見出しの方が本文より大事なくらいですね。見出しでバズるかどうか。トライ&エラーでたくさん試みてみるしかないと思うんですよね。

Twitterやブログでも良いと思います。それをたくさん行っていくと何がバズるかが自ずと分かってくる。ソーシャル上の拡散力をつけるとしたらトライ&エラーでたくさん試す。

その上で行き過ぎて炎上したり、全然引っかからなかったり、あとは喜怒哀楽を込めるとか。喜怒哀楽の中で1番強いのは怒りだったりとか。僕が意識しているので言うと漢字とカタカナとひらがなをバランスよく使う。

例えば、「わいせつ」と書くときでも、ひらがなで「わいせつ」と書いてもダメで、漢字で「猥褻」と書いてもあの漢字が難しすぎて、カタカナで「ワイセツ」とかくのが1番バズる書き方なんですね。

どうでも良いのですが、そういう部分を含めて細かいとこを見るのも大事。イベントの見出しとしてソーシャルに流したときに目に留まるかどうかなどそういう部分が結構多いと思います。

イベント告知で重要な2つのこと

本田:何かはあちゅうさんもそのイベント告知にタイトルをつけているときの工夫とか何かありますか?

はあちゅう:イベントのタイトル自体をすごくわかりやすく魅力的なものにするのはもちろんなのですが、イベント告知で重要なのは2つあって1つは「魅力を伝えきれているかどうか」が1つ目。例えば、オンラインサロンに関しても、今迷っている人達に対してあと一押しで入ってくれるとか、そのボタンを押すのは何かなのかわからない。主催側として言えることは、「こんな魅力もありますよ」と繰り返し切り口を変えて言うことなんです。

本田:確度を上げるということですね。

はあちゅう:そうなんです。私たちから言ってもダメだったら、メンバーの人たちからこういった部分が良かったですよ、と言ってもらったり。

もう1つは「ソーシャルで自分がどれだけ発信したと思っても、大体届いていない」ということですかね。Twitterで1回つぶやいたら、俺つぶやいたと思ってしまうのですが、そんなの皆すごいたくさんフォローしているので、サーっと流れていってしまうんですね。

私とか1回イベントをやるとして集まらなかったら、3回でも4回でも過去記事をつぶやきます。で、それの反応をリツイートして。

1回告知しただけで集まるなんて村上春樹ぐらいで(笑)。私レベルでは100回、1000回でもやりますよーっと言いまくらないと届かないんですね。

本田:それは結構ウルトラ必殺技ではないんだけれども、とても良いポイントだと思います。多分感覚的に従来の告知で考えると1回だけするものみたいな。

田端:かっこ悪いんですよね、あまりしつこくいうと。

はあちゅう:だってKREVAさんでも武道館を埋められないんですよ。そんな時代に私がイベントやるよって、たくさん言わないとダメですよね。

どれだけ自分をを客観視できるか

本田:そうですよね。確かにこの本でも言ってた「リーチ」と「フリークエンシー」みたいな話にも繋がりますけれども。

田端:どれくらい自分自身のことを突き放して見られるか? というのが大事で、今の話も自分が誰かをフォローしているからといって、その人が1回つぶやいたからといって、それを必ずキャッチできるかなんて、そんなのは絶対ないですよね?

そしたら、それを入れ替えて考えてみたら、自分が1回つぶやいたからといってその人のことを面白いと考えて、イベントがあったら行きたいなと思うかですよね。1回つぶやいたからといって、そのイベントに行けるかと言ったら、それはありえないじゃないですか? 

という当たり前のことから出発するというようなことが大事かと。究極的に難しいのですが、どれだけ自分のことを突き放して見ることができるかだと思うんですよ。それと、さっきのとドMのネガティブなコメントを求めているというのは、むしろそこなんですよね? 自分が書いた本意ってここまで伝わらないもんなんだ、みたいなことの方がむしろ発見がある。

発信側の思い込みは要注意

はあちゅう:すごく言いたいことを思い出したのですが、Instagramで「うしごろで肉を食べてます」と書いたとしても「どこで食べているんですか?」とか「何を食べているんですか?」と。

田端:バカじゃないんですか?

はあちゅう:絶対にくるんですよ。それくらいみんな見ていない。

本田:「何食べているか?」も来るんですか?

はあちゅう:肉の写真載せてるだろうって。

本田:逆に何を見てるんですか? それは。

はあちゅう:わからないです。

田端:それはまず、うしごろが店の名前だと認識されていないかもしれないですね。それは本人が焼肉のお店ってわかってるよね、と思っているかもしれないけれども。

本田:思い込みだね、発信側の。

はあちゅう:でも、基本的に伝わらないと思って発信しています。これはあまり良い例ではないかもしれませんが、電通の偉いCMプランナーさんがCMを作る時って、偏差値40の人にでもわかるように作るって言っているんです。そうじゃないと「俺らの面白さだよね」といった身内感だとわかられないと言っていて、それはSNSでも思います。

本田:それは思いますよね。

田端:だいたい広告業界で、何か都合が悪い時って「クライアントがバカだからさ~」とか、コンペで落ちた時に言っているの聞くと、あれダサイですよね。バカならバカにわかるなりに視聴者じゃなく、まずクライアントに伝わるようにしないとダメですよね。

本田:それは逃げですからね。

田端:それが1番ダメですよ。

はあちゅう:あえての言葉遊びとかしても、「その使い方、間違えてますよ」とか。いや、それは間違えているのは分かって、面白みとして使ってるんだよと思っても説明出来ないですよね。でも、そういった色んな人がいるというのがソーシャルだなと思います。

本田:でも本当に下手な表現で、「誰が買うの?」と東京で思っていても、実家に帰った時に同じCMがやっていて、めちゃめちゃ自分の母親に響いていたりするのを見ると、やっぱりそう思います。思い込んではダメだなと。

はあちゅう氏、告知

本田:それでは、何か言い残したことありますか? 田端さんは、さすがに言い残してないと思うので、ゲストでいらっしゃるはあちゅうさん。最後に一言。

はあちゅう:ちゅうつねカレッジが今メンバー募集をしておりまして。あと、ゲスアワーのイベントですね、YouTubeの。10月30日にありますので是非皆さんお越しください。

田端:それはリアルイベントということですか?

はあちゅう:リアルイベントです。

田端:どこでやるんですか?

はあちゅう:六本木のエッグセレントという六本木ヒルズの中のレストランでやります。ディナーショーみたいなもので。

本田:ディナーショーなんですか?

はあちゅう:ディナーショーみたいなものです。まだコンテンツは決めてないですけど。「それをやってみたらどうなるかな?」というのが1つの実験で私はめっちゃ楽しみなんですけども。まずは参加者がいないとできないので、参加者を今日1人でも。

本田:ぜひ1人でも。1人から10人、10人から100人と動くわけで。オンラインサロンは、すごく興味があるので、この本が売れて続編が出たらそれも「1000人が動く」のところはぜひオンラインサロンの事例を取り上げさせていただきたいなと思います!

こうやって話をしていても、人を動かすコミュニケーションっていうのは面白いトピックなんだなと思います。みなさんとも是非そういう話をこれからもしていけたらいいなと思います。今日はありがとうございました!

広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。

<続きは近日公開>