Appleがウェアラブル健康機器を統合する

林信行氏(以下、林):どんどん飛ばして次、Health(ヘルス)の話題にいこうと思います。

これは本当に、最近医療系のジャーナルとかからも取材を受けるほどに注目されている機能なんですけれども、今iPhone 、iPad、それからアンドロイド用も非常にたくさんリストバンドの活動量計、いわゆるウェアラブルって出ていますよね。歩数を計ったりとか消費カロリーを計ったりというもの。

これらの問題が何だったかは、皆さんわかりますかね。こんなにたくさん出ているけれども、連携している機器が1個もなかったというのが、やっぱり最大の問題だと思います。

どういうことかというと、例えば全く同じ歩数と消費カロリーを計ってくれる製品として、実名を挙げちゃいますけれども、例えばNike FuelBand(フュールバンド)というものもあれば、Jawbone(ジョウボーン)のUP(アップ)というものもあれば、あるいはアプリ単体でランニングとかのデータをキープして取ってくれるRunKeeper(ランキーパー)というアプリもありますよね。

これ、それぞれ歩数を計ったりとか消費カロリーを計算したりというところの機能は全く同じなのに、NIKEの製品を使っているとNIKE専用のアプリを使わなければいけない。RunKeeperはRunKeeper専用のアプリ、JawboneはJawboneで専用のアプリを使って、これを蓄積しているクラウドもそれぞれ分断していて、NIKEのFuelBandからJawboneのアプリに後で買い換えたら、それまでのデータは全部失ってしまうというのがこれまでのモデルでした。

これは別に活動量計だけじゃありません。今iPhoneと連動する機器って、体重計であるとか心拍計、血圧計、糖尿病を持っている人の血糖値を測ってくれる機械とかいろいろ、グルコースメーターとかいろいろあるんですけれども、これらすべてがいちいち専用のアプリを起動して、専用のアプリの中だけでしかデータが見られないという状態がありました。

これって問題だよねということを提案したのが実はAppleで、その解決策として出してきたのがHealthKitというOS内の機能です。

どういうことかと言うと、このHealthKitのところに、歩数はここに入れましょうというデータベースがある。歩いた距離はここに入れましょう、消費カロリーはここに入れましょうという箱を用意しておいて、JawboneのUPを使おうと、NIKEのNike FuelBandを使おうと、ほかのadidasを使おうと何を使おうと、全部歩数はここに入れましょうという箱ができたというのが、やっぱり一番のすごいところです。

これらの1回入れた情報はどういうふうに活用されるかというと、Apple標準でもHealthというアプリがあって、そこで参照もできるんですけれども、それに加えて例えばMayo Clinic(メイヨークリニック)というアメリカの病院は、自社の病院の診断アプリの中にその情報を取り込んで表示する機能があったり、NIKEさんは相変わらずFuelBandで取った情報に関しては、FuelBandのアプリで見られるようにする、とこういった形になっています。

ちなみにHealthのアプリを見ると、こんな感じでダッシュボードというところにすべての記録が表示されます。それぞれの情報ごとに、これはMayo Clinicの病院に出していいけれども、ちょっと最近サボっているのがばれちゃうからこの情報は共有しないとかというように、一件一件の情報に対して共有する、しないということを設定できます。

共有というのは別にTwitterやFacebookにつぶやくことじゃなくて、ほかのアプリに対してこの情報を出していいかというところの設定ですね。

iPhone内に医療情報も統合する

実は医療業界が非常に注目しているのがこのMedical IDという機能で、これはiPhoneのロック画面からある方向にスワイプするとこれが出てきます。例えば僕が道を歩いていて突然倒れてしまった。輸血をしなければいけないというときに僕の血液型は何かとか、どういったアレルギー反応を持っているかという情報があったほうが、対処が早くできますよね。

そういったものがロックを解除しなくても見られるというのが、このMedical IDです。かかりつけの医者の情報とかを見ていれば、そこの病院にすぐに搬送されたりとか、そういったことも可能になってきます。

これは非常に有望な機能で、Mayo Clinicの人もこれは本当に医療業界においての革命だということを言っているんですけれども、これによってどういう革命が出てくるか、幾つか重要なことがあると思うんです。

より多くの機器の情報を統合して、iOSのほうでHealthKitで統合して、より全体的な健康の判断ができるというのも一つだと思います。あと、これ将来はユニバーサルなカルテ、1個の病院のデータと普段の家の中での診断とかの結果を全部統合したカルテになってくる可能性もあるんじゃないかと思います。

真ん中にフィードバックで状況改善ということを書きましたけれども、一時期、記録式ダイエットってはやりましたよね。何を食べたかということを記録していると、ちゃんと自分でそのフィードバックがあるので、ちゃんとダイエットしていくというものなんですけれども。

ある意味これまでのウェアラブルもそういった側面があったと思うんですけれども、こういったウェアラブル機器と、使っている、毎日自分のヘルス情報を見た上で何かをやっていくと、どういうふうに自分の体をうまく使ったらいいかということが、だんだんわかってくる。

例えばこの真ん中のwith-me(ウィズミー)というウェアラブルは心拍数を取ってくれるんですけれども、このウェアラブルをした状態でヨガをやると、どうやったら怒りを静めたりできるかとか、そういったトレーニングもできたりします。

あるいはこの下のアン-サポというのは僕が非常に注目している日本製のアプリなんですけれども、うつ病って非常に大きな問題ですよね。これは毎日うつ病に関する20近い質問をして、今自分がうつ状態がどれぐらいかというのを、上下を見ることができます。できるだけ薬をあんまり飲まないようにして、うつ病を治していきましょう。こんなアプリも実は出てきたりしています。

iPhoneで操作する義手や補聴器も登場

こういったものが今後、センサーもふえ、どんどん医療情報が吸収できるようになってくるんですけど、これも一つ驚く例で、アメリカのproteusu(プロテウス)という会社が出しているDIGITAL MEDICNE(デジタルメディスン)、デジタルの薬。

どういったものかというと、飲み込むと唾液でスイッチが入って、体内の成分をiPhoneに情報を送り続けてきてくれる。これを使って手術後の経過を見たりとか、薬の効き目を診断できるという、そういったものも出始めてきているので、これから健康管理、非常にiOS上で重要なキーワードになってくると思います。

これに加えて、最近こんな活用も広がってきています。

touth bionic(タッチバイオニック)という会社なんですけれども、義手、iPhoneで操作できる近代義手ですね。これもiPhoneの中に、あらかじめ握るとか、開くとか、チョキとか設定を入れておいて簡単に切りかえできる。そういった義手も出てきています。

それから視覚障害を持っていらっしゃる方も、このTapTapSeeってまだ日本語に対応していないんですけど、こちらのアプリを入れてもらうと、例えば、よくある薬のパッケージとか商品のパッケージを写真で撮ると、そのパッケージが何かというのを読み上げて教えてくれる。こんなアプリも出てきて、今すごい勢いでiPhoneはいろんな障害をもっている方の支えになり始めています。

ちょっともう時間が危ないのでこの辺は簡単に紹介しちゃいますけれども、例えば咽頭がんで声が出なくなってしまった人、最近日本の偉大なミュージシャンも一人声が出なくなっちゃっていますけれども、非常に自然な声で、iPhoneのSiriよりかもよっぽど自然な声で話してくれる指電話というアプリもあったりして、だんだん一部の人にとっては、iPhoneは体の一部にもなりつつあります。

それからことし発表された、こんな製品もあります。これ、世界初のiPhone対応の補聴器です。これまで補聴器をしていると非常に電話の通話がしにくかったのが、Bluetoothでシンクロして簡単に、しかも目立たない形で使える補聴器も出てきて。

実はこの補聴器でSiriで命令すればツイートをすることもできれば、ニュースを読み上げてもらうこともできれば、あしたの予定は何時からだっけということを聞いて教えてもらう、こんなことも可能になってくるので、非常にこれも大きい可能性を持っているんじゃないかと思います。

制作協力:VoXT