iPhoneがあらゆる家電製品のリモコンに

林信行氏(以下、林):という感じで、かなり駆け足でいろいろ紹介してきているんですけれども、もう1個大事な機能があって。これ、HomeKit(ホームキット)という機能です。

日本が非常に強かった分野、ホームオートメーションというのがあるんですけれども、これからは家の鍵を開けるのもiPhone。それから玄関に誰か来たときの映像を見るのもiPhone。それから家の電球の色を変えたり、明るさを変えたりというのもiPhone。あるいは温度を調節するのもiPhoneという形で、いろんな機器がこれまで発明されてきました。

ただ何が問題だったかと言うと、やっぱりさっきのHealthと同じで、玄関のためのアプリはこれとか、照明のためのアプリはこれという形で、全部アプリはバラバラでした。これを変えようというのがHomeKitです。

どういうふうに変えようかというと、まず今自分がいるのはどの建物か、自宅なのか、実家なのか、それともオフィスなのかというのを選んでもらって、その先で、どの部屋にいるか、玄関なのか、リビングなのかとやって選んだ上で、玄関だったら今操作したいのは鍵なのか、それともピンポンのチャイムのところなのか、照明なのか。こういった形のインターフェースがiOS8で提供されて、これによって今後こういった、ありとあらゆる家電製品がiPhoneからコントロールできるようになってくるんじゃないかなというふうに思います。

家の中を飛び回る夢のドローンが2万円以下

今iPhoneは非常に幅広いものと連携が可能になり始めています。僕、去年はbeyond screen(ビヨンドスクリーン)という形で、もはやiPhone、おととしぐらいまでのiPhoneというのは画面の中でどんなアプリが出てきたかというのが非常に大きいニュースだったんですけれども、これからは車とも連携する、義手、義足、補聴器とも連携、家の電話とも連携すれば、テレビとも連携する、ロボット、デジカメもっていう形で連携してくるんですけれども、今日はちょっと1個変わった例を紹介できればと思います。

これ実は来月発売なんですけれども、ニュースとかでごらんになった方もいらっしゃるかもしれません。AR.Drone(エイアールドローン)ってしばらく、ちょっと前にありましたよね。あれのちっちゃい版で非常に値段もお手軽になっているもので、Rolling Spider(ローリングスパイダー)という製品です。宙返りもできれば、タイヤを使って天井を歩いたりということもできたりします。

もう一つ、Jumping Sumo(ジャンピングスモウ)。こちらBluetoothで動くんですけれども、これが、ちょっとさっき控え室でやってもWi-Fiが余りにも多すぎて、多分皆さんのおうちの中で、家の中に数百人Wi-Fi使っている人がいるっていうケースはなかなかないと思うのですが……やっぱり厳しいですね。控え室の段階でできなかったんです。ここは余りにもWi-Fiを使っている人が多すぎて連携できないんですが、ちょっと……そうですね……。

これ実はこちらのカメラに、しまった、すみません。カメラで映像が見えて、例えばこのボタン押すとですね、ロージャンプになっちゃいました。ごめんなさい、ちょっと今うまくいきませんでしたけど。

これは非常に楽しく、天井の上を歩く夢のようなことができればこっちのジャンピング機能というほうはカメラがついているので、家の中を縦横無尽に歩き回って、ちょっとしたテーブルぐらいの上ぐらいだったら簡単に飛び乗っちゃいます。

こんなすごい、iPhoneとかで操作するようなものが、実は来月から発売になるんですけれども、ローリングスパイダーというヘリのほうが1万2,800円とかですね、ジャンピングスモーという縦横無尽に行ってジャンプするほうが1万9,800円で発売になったりとかします。多分、結構男性の方は心ひかれている人が多いんじゃないかと思いますけれども。

こんな形で、これからどんどんiPhoneと、それこそ昨日の孫さんの講演にロボットという話がありましたけれども、ロボットなんかも家電の一つとして連携してくるような時代がやってくる。そんなことを感じさせるホームキットも出てくるんです。

屋内での精度が一気に向上した位置センサー

けれども、これだけいろいろ紹介してもですね、実はまだこれってiOS8の機能のほんの氷山の一角に過ぎません。ここから先は、僕がこれまであんまり僕も、ほかの人も書いてなかった話題をしようと思うんですけれども、ビジネスチャンスを探ってこちらにいらっしゃっている方もいると思うので話をすると、1個非常に注目すべきかなと思っているのが、位置情報の新たな可能性というところです。

皆さん、iPhone5Sから新しいモーションプロセッサというのが入ったのが、ご存じの方いらっしゃいますかね。去年のモデルから、iPhoneとiPad全機種にこのモーションプロセッサというのが入っているんですけれども、これを使ってどういうことができるか、ちょっと一例をお見せしようと思います。

ルームスキャンというアプリなんですけれども、まず、壁にiPhoneをぴたってこう張りつけます。次は横の壁に。これを繰り返して部屋の隅の壁全部にiPhoneをぴたっとくっつけると、もう見取り図を作ってくれるというアプリです。

これ結構、これを見てもらえば多分わかると思うんですけれども、モーションプロセッサもすごいんですけど、それにこれまでの6軸のジャイロセンサーとかいろんなものが入っていますよね、加速度センサーとか。これを組み合わせると、実は50cmとか1mぐらいの正確さでどこにいるかということがわかってきます。

これまでiPhoneで位置情報というと、iPhone 5S、iPad miniの最新版、それからiPad iにこれが入っているんですけれども。これまでというのは、まず携帯のネットワークを使って今あなたが日本にいるのか、アメリカにいるのかということがわかっていました。

その次にGPSを使って大体どこら辺にいるか。Wi-Fiを使ってさらに細かい位置情報を検出していたんですけれども、これは何が問題かというと、屋外はいいけど、屋内にいるとなかなかどこにいるかということがわからなかった。さらに高度はわかったんですけれども、何階にいるか、2階なのか3階なのか地下1階なのかってわからなかったんですよね。

こういったものを補ってくれるのが、新しいiOS8のコアロケーションという機能で、これはどういった機能かというと、建物に入ると屋内に行ってGPSの電波が弱くなると同時に、GPSの精度が、オフにはしないんだけれどもちょっとあんまり信頼しないモードに入って、こっちのモードではWi-Fiの位置測定とモーションプロセッサの位置測定、ある場合はi-Beacom(アイビーコン)というのBluetoothのデバイスを家の中に位置を特定するために置いておくんですけれども、これを使って位置情報をかなり正確に取ってくるということが可能になってきます。

これを使って、例えば美術館であなたの前にある作品は何々ですとか、あるいはショッピングモールでここのGAPの店からアップルストアに行くまではこのルートを取りましょう、ということをナビゲーションしたりということも可能になってきます。実際に今アップルは、サンノゼ空港とアップル本社のすぐ近くにあるウエストフィールドというショッピングモールと一緒に、ここら辺の開発をやっていて、間もなくこのiOS8が出るころには、そういったものが実際にアメリカに行けば見学できるようになるんじゃないかなと思います。

あと人探しということもできますね。自分の友達を登録しといて、余りにもここのソフトバンクワールドの会場が混んでいて、せっかく久しぶりに同じ会場にいるので会いたいけれどもどこにいるかわからないというときも、もしかして来年はどなたかが作ってくれたアプリで簡単に見つけられるかもしれません。

もう1個、ここでおまけ的に言うと、これまでカメラで写真を撮影をしたときにどこで撮影した写真かっていうGPS位置情報を写真の中に記録しておくことができたと思うんですけれども、今度からビデオで移動しながらビデオを撮っていると、GPSの情報がタイムフレームごとに記録されるという機能がついたので。

もしかしたらこれを使ってどこか四国かなんかをめぐっっているときに、前にそこを旅した人の全く同じ情報が動画で再生されるとか、いろんなそういった可能性も出てくるんじゃないでしょうか。

Wi-FiとWi-Fiがダイレクトに繋がる

最後に近接ネットワークという機能を紹介しようと思うんですけれども、これはどういったものかというと、iTranslate Voice(アイトランスレートボイス)というアプリがあるんですね、これは何かというと通訳のアプリです。

これにAir Translate機能というのがあって、これは一切Wi-Fiの設定とかをしないでも、勝手にiPhone同士、同じアプリをインストールしたiPhoneが近くにあると相互に認識して、連携ができるアプリです。

2人で同じアプリに入っていて起動しますよね。そうすると一切何の設定をしないでも、これが連携して自分が英語で話した内容が向こうに日本語に出たりとか。AirDrop(エアードロップ)という機能をご存じの方は、あれと同じ原理だというふうに考えてもらうといいと思います。

アドホックのWi-Fiのネットワークを使ってやり取りするという機能で、これが標準のAPIで用意されます。同じようなもので、これはiOS8じゃなくて、独自のインプリメンテーション(実装)しているんですけど、これと同じようなことを実現する機能がiOS8で標準で搭載されるということです。

これは何かというと、1個のメトロノームが、近くに同じアプリを起動しているiPhoneを置いておくと全部連携してくれるという、こういったアプリもあって、これと同じようなWi-Fiの基地局につないで同期するんじゃなくて、もう機器同士でお互い連携して同期するということも、これから標準で可能になってきます。

アップル自身もこういった機能を使ってAirDropという、これまではMac同士、iPhone同士で写真を送るのにAirDropという機能を使われていたんですけど、実はMacとiPhoneはできなかったんですけれどもiOS8からようやくこれもできるようになって、さらにはInstant Hotspotって最初に紹介しましたけれども、Macの側からiPhoneを操作してテザリング機能をオンにする。こんなことも同じような技術を使って可能になってきます。

あと、ホップネットワークといって、基地局につなぐんじゃなくてそれぞれの機器同士のWi-Fiでダイレクトにつなぐという方式ですね。この機能が標準でつくのもiOS8です。ここまで紹介しても、氷山の一角からさらに1m下に下がったぐらいのところなので、ぜひここからもっともっとiOS8でいろんなビジネスチャンスであるとか可能性がいっぱいあります。

ほかにも幾つかここに挙げてます。たとえば、コンテンツ用のメタ情報。iTunes Storeで売っているものって言語ごとに映画のタイトルが切り替わったりとか、そういった機能があったけども、そういったものもオープンになっていたりとか、Safariも大幅に機能強化されています。あとアフィリエイト機能が非常に進化して、日本はあまり入ってないんですけども、世界中に対して1本のリンクでアフィリエイトができるとか、そういった機能があったりします。

iOS8で広がるビジネスチャンス

そこらへんを使っていろんなビジネスチャンスがあると思うんで、ぜひ皆さんも、もし英語が大丈夫な方はWWDCセッションビデオということで検索していただくと、これまでWWDCって、開発者会議の内容ってクローズドで一切高い参加費を払った人しか見れないという状態になっていたんですね。

あるいはアップルの開発者登録している人しか見れなかったんですけども、今回、冒頭で「Googleがクローズドになってアップルがオープンになった」という話をしましたね。まさにその象徴だったと思うんですけれども、なんとセッションビデオもすべてオープンになっています。

きょう確認が取れたんですけども、ここら辺の情報をこうやって講演で話すこともOKだし、実は皆さんオープンにフリーにディスカッションしていいということも確認取れたんで、ぜひ英語がわからない方は英語がわかってWWDCのセッションを見ている方に話を聞いてもいいですし、どんどんディスカッションをして新しいビジネスのチャンスについて語っていただければと思います。

最後に、残り1分でちょっと個人的な宣伝をさせていただくと、僕もジャーナリスト兼コンサルタントということで紹介を受けましたけれども、最近はいろんなところで活動していまして、IFS未来研という伊東忠の子会社のほうで、クウジットさんという会社と組んで今度「産地AR」というものを発表しようとしてるので、ぜひ見ていただければいいなというふうに思います。

ということで、私の講演は終わるんですけど、まだ1分あったんで、ジャンピングスパイダーもう一回、でも、ちょっと無理? ジャンピングスモーですね。準備、無理ですね。じゃ、もし皆さんの中でこれ見たいという方がいらっしゃったら、僕、終わった後もうしばらくは……ここ出なきゃいけないんですね。どこか適当に見つけてくださればお見せしようと思うので、ぜひ捕まえてください。

ということで、スライドが、多分45分ぶんぐらいあったので絶対間に合わないと思って早口で言ったら、なんと30秒近く余ってしまいました、もし今日の講演の内容で、何か質問とかがあった場合は、私自身にメールをくださってもいいですし、ちょっとメールの返事が遅れることはあると思うんですけども、あるいはtwitterとかで見つけてもらってもいいと思います。

ということで講演は終わりますけれども、あとこちらのスライドも一部、全部のスライドじゃないですけども、こちらのSoftBank Worldのほうに登録していただくと、マイページというところでほかの講演者の方々のスライドも全部配布されるそうです、

ちょっと私のこのスライドは、ジャンピングスモーとローリングスパイダー受け渡しがわずか1時間前で、そこからスライドをいじったりしているところもあるので、これから用意するような形になるんですけども、来週には多分提供できると思うんでそちらを見ていただければと思います。ということで、ちょうどになったので講演を終わります。ありがとうございました。

制作協力:VoXT