社会課題に取り組む3人の起業家

司会者:今回はテーマが社会課題ということなので、最初にそれぞれがどういう社会課題に取り組んでいらっしゃるかということについて、キーワードをあげていただいて、それにもとづいて簡単に会社紹介、自己紹介をしていただきたいと思います。

まず経沢さんからということで、あげていただいたのがこちらの3つ。「少子化対策」「女性活躍推進」「一億総活躍」ということです。

経沢香保子氏(以下、経沢):みなさん、こんばんは。今日はよろしくお願いします。こういうイベントには珍しく女性の方がたくさんいらっしゃって、うれしいなと思います。私は「キッズライン」というスマホでUberのようにベビーシッターさんが呼べるサービスを2年半ぐらいやっています。

今回テーマとしていることは、私、実は起業が2回目なので、1回目よりも難易度が高いテーマ。かつ、社会を変えるようなものを考えていました。26歳で起業をした時からの夢は、社会を変えるインフラになるようなサービスをつくりたいということでしたので。

ずっと20代の時から「女性がより子どもを産み育てやすい社会になれば、日本はもっと元気になるのに」という強い思いがありました。「育児支援」が日本が一番不足していると考えていましたので、今のサービスをやっています。

子どもが産みやすい環境になれば、少子化も多少改善されると思いますし、仕事と育児の両立がしやすくなれば、みんな嬉しいはずです。「女性活躍推進」とうたう霞が関の政治家のみなさまの願いも叶うのではないかと。

そしてキッズラインのベビーシッターの仕事とい「働き方」は、今までの保育士さんや育児の担い手の方の概念を変えて、自分で時間や時給を決めて好きなように働き、毎回評価を受けるという非常にやりがいのある仕組みになっているので、どなたでも活躍できる「一億総活躍」なんです。というわけで。今日はよろしくお願いします。

(会場拍手)

司会者:ありがとうございます。今、気がついたんですけど、みなさん3人ともシリアルアントレプレナーですね。

経沢:そうですね。

司会者:偶然ですけど。じゃあ、次は吉田さん。いいですか? 吉田さんがあげていただいたのは「働き方」。

吉田浩一郎氏(以下、吉田):こんばんは。「働き方」ということで、クラウドワークスという会社を創業し、2014年に上場して、今はもう4年目ですかね。

20世紀は、企業に勤めて給料をもらい、アフターファイブにお金を消費するというような区分が明確だったんですけども、そういう働き方を変えて、企業の中に勤めていなくても働く手段を生み出していくというのが、2011年段階でのインプレッションです。

今は本当に働き方が多様化してきて、政府のほうでも副業とか、複数の業の「複業」という概念が出てきたりしています。そういう意味では本当に時代が変わり始めてきているかなと思います。

我々自身は、売上や利益という、どれだけの報酬を個人にもたらしたかという市場において一番になる、世界で最もたくさんの人に報酬を届ける会社になるということを成果指標、ビジョンとして掲げて、働き方革命というものを解釈してやっています。今日はよろしくお願いします。

(会場拍手)

自分にとっての「居場所」を探して

司会者:続いて、CAMPFIREの家入さん、お願いします。

家入一真氏(以下、家入):こんばんは。

(会場笑)

家入:CAMPFIREの家入と申します。よろしくお願いします。

僕は「居場所」というキーワードをあげさせていただいたんですけれども、この数年間はこのテーマにそっていろいろな活動をしてきました。都知事選も、このキーワードのもとに出馬しました。

今はCAMPFIREという会社を経営していて、それとは別に「リバ邸」というシェアハウスをやっていたりもします。リバ邸という場所は日本各地や海外にもいくつか増えつつあります。

どういったシェアハウスかというと、例えば学校を辞めてしまって居場所を失ったときとか、会社に就職したけどちょっと心を病んでしまって辞めちゃったときとか。そこに住まなくても、例えばそれこそシングルマザーのお母さんが遊びに来られたりする場所にもなっていたりします。もちろんみんながそういう方ではないですけど、基本的なコンセプトとしては、世の中からこぼれ落ちてしまった人たちが集まれる場所になったらいいなって考えています。

なぜ僕がそういうことをやっているかというと、過去の経験にもとづいています。僕自身が家がとても貧しかったということもあるのと、中2から学校に行かなくなってしまって、その瞬間に居場所を失ってしまったんですよね。家か学校しかないなかで学校に行けなくなってしまうと、もう家の中しか居場所がなくなってしまって。

僕は結果的にインターネットに救われた人間なので、今でも、声をあげたくてもあげられない人が声をあげられる場所としてインターネットが存在すると信じていますし、そういう思想でサービスをいろいろ作っていきたいなと思っています。

もともと21歳で起業した時にはそんな意識はなかったんですけど、やはり何度か会社を作るなかで、「自分にとっての居場所って会社だったんだな。起業して集まってくる仲間と一緒になにかやることが僕にとっての居場所だったんだな」ということをすごく実感するんですけど。

……なにを言おうとしたんだっけな。そうですね……なんだっけ?(笑)。

(会場笑)

司会者:居場所について。

家入:あ、そうそう。今、この年齢になって思うのは、自分にとってのこういう居場所がほかの人にもたくさんあったらいいなということですね。

クラウドファンディングで解決できる課題

家入:長期で考えると、日本は課題先進国と呼ばれていて、少子高齢化とかいろいろな課題だらけのなかで、やはり日本の経済も小さくならざるをえなくなっていくであろうという仮説を、僕のなかで立てていて。

じゃあ、そのなかでどうなっていくかというと、きっとこぼれ落ちる人がもっとこれから出てくるということですね。いわゆる国として、行政として、セーフティネットとして存在したものがたぶん機能しなくなっていくなかで、こぼれ落ちる人たちの居場所を誰が作るのかというと、きっと民間から(出てくる)。ビジネスを通じてだったり、なかには行政と組んだ民間のビジネスもあるでしょうし、NPOもあるでしょうし、さまざまなかたちで。

でも1つ言えるのは、働き方もそうですし、女性の活躍もそうですし、居場所みたいなものはどんどん必要性が高まっていくであろうというところですね。

僕はそういうものをすべてひっくるめて「居場所」と呼んでるんですけれども、起業やビジネスを通じてそういった課題にどう向き合っていくかということが、僕らの解決すべき課題なんだろうなと思ってがんばっています。よろしくお願いします。

司会者:それと、CAMPFIREの話をもう少し。

家入:CAMPFIREもそういう感じです(笑)。

(一同笑)

家入:CAMPFIREはクラウドファンディングと呼ばれるサービスですね。なにかをやりたいと思ったときに、それに共感する人たちからお金を少しずついただく。

昔みたいに、例えば大きなパトロンがいて、ドカンとお金を出して「これでアートを作りなさい」とか「映画を作りなさい」という時代ではなくなった。そのなかで、じゃあマイクロなパトロンをクラウドでたくさん集めて、それによって活動費プラス応援してくれる人を集めて活動しましょう、というものがクラウドファンディングなんですけど。

やはりクラウドファンディングでどうしても話題になるのは、有名な方や大企業さんが行われたとき。もちろんそういうものもいい事例だと思うし、大事なことなんですけど、例えば本当に声もあげられないような地方に住む若い人が「5万円を集めて個展をやりたい」とか「10万円集めてフリーペーパー作りたい」「100万円集めてカフェをやりたい」とか、そういう小さな事例こそがインターネットの本質であり、クラウドファンディングの本質であると僕は思っています。

クラウドファンディングはフィンテックだと言われたりするんですけど、フィンテックって普通に放っておくと富む者が富むというサービスになるんじゃないかなと思っていて。

それはそういう意義もあるんでしょうけど、僕は本質としては、声をあげたくてもあげられず、機会によって格差が生じてしまっている人たちのためになにができるのかということを、クラウドファンディングを通じて解決していきたいと思っています。よろしくお願いします。

司会者:ありがとうございました。

(会場拍手)

大企業が怖くて飛び込めない領域を

司会者:みなさんがやっていらっしゃる事業はそれぞれ、クラウド的な人の集め方だったりお金の集め方であったり、実はけっこう共通しているところがあると思います。あげていらっしゃるテーマも実は裏側ではつながっているような気がしています。

できるだけ話を広げるようなかたちで進めたいと思っているんですが、スタートアップが取り組んでいくことのやりやすさが当然あると思っていて。

スタートアップだからパッと早くできるというようなことも含めて、どういったところが今までやってきたなかでやりやすかったと感じられているか、といったところをお話しいただきたいのと、逆にやりにくいということも少しお話しいただければ。どなたからいきますか?

経沢:はい。

司会者:経沢さん。

経沢:私、ベビーシッターのサービスをやるという時に、大手がやらないから思うままにできると言うのはありました。私はリクルートとクックパッドがやらない女性領域を自由にやりたいという気持ちです。

大企業だと命を預かる仕事はやりにくいと推測しました。 私は、自分が3回出産して毎回ベビーシッターさんに頼ってきていたので、事故が起こりやすいシーンもわかりましたし、それをヘッジする方法もわかっていたので、そういう意味では怖がってやらない企業が多いニッチなところを選べたのは、自由に新しい市場を作れる楽しさがあると思っています。

CtoCの成功ポイントはクオリティ・コントロール

司会者:ご自身の体験のなかで、危なかった時というのは実際にあったんですか?

経沢:昔、埼玉でベビーシッター殺人事件みたいのがあって。もしかしたら記憶に残っている人もいるかもしれません。あの出来事で「ベビーシッター」に恐怖を持っている人もいるのはとても悲しい出来事です。

私、実はあのサービスは匿名掲示板になっていました。「時給100円でやります」みたいなのもあり「なにこれ?」みたいな感じだったんですけど、多くの人にとってほかに方法がなかったので使っている人が多かったのかもしれません。

私は、社長経験も長く人を採用することも多かったので、ああいった掲示板でも求人内容をすごく丁寧に書いて、来る人全員に「履歴書と職務経歴書と保育士資格と自動車免許かなにかの身分証明を持ってきてください」と言って、30人面接して1人採れるか採れないかみたいなことができます。

でも、普通のお母さんはそんな経験もないし、いい人を採用するコツとか、わからないじゃないですか。CtoCとかこういうクラウドの仕事はインターネットを通じてマッチングするので、ほとんどの会社は個人情報の審査はするけど、クオリティ審査はあまりしない。だけど、私は「ベビーシッター」だからこそ、そこをしっかりやろうという覚悟ができていたのは大きかったと思います。

司会者:マッチングのしやすさというのはインターネットのメリットを使うけれども、実際のサービスとしてのクオリティはちゃんとリアルでやるという。

経沢:そうですね。必ずシッターさんの面接と研修をしています。そういうことがこのサービスを安心して使っていただける理由だと今でも思っています。

司会者:僕の投資先でも同じようなことを言っている人はいますね。そういうCtoCでマッチングをさせるときに、最初のうちにコンテンツとして変なものが集まってしまうとやはりそう見えてしまうと言っていました。

経沢:場が荒れたらサービスは広まりませんよね。だから、最初からブランド力やサービスクオリティを高めることがすごく大事と考えました。

キッズラインって、1回使うとほとんどの方が2回目を使ってくださいます。ベビーシッターに初体験の方ばかりですが、一度使ってくださったら、満足して使い続けてくださるということはすごく嬉しいです。

デメリットは、やはりベンチャーは大企業なので、「ベビーシッター?」と思うことがあるのかもしれません。例えばNTTだったら「NTTがベビーシッターって、なんか大丈夫そうだな」みたいな。そこですかね。ブランディング。

司会者:最初に作るのはやはりどうしても……。

経沢:そうですね。でも、多くの素晴らしいシッターさんのおかげで、ブランド力が付いてきて嬉しいです。