「ミクシィ時代の反省があった」メルカリ小泉氏が過去の悔いから辿り着いた組織作りメソッド

ビアトーク ~”バリュー”が誰にも真似できない会社をつくる〜 #2/5

「メルカリ」を運営するメルカリと、「よなよなエール」などのクラフトビールを次々と生み出すヤッホーブルーイングによるイベント「メルカリ×ヤッホーブルーイング ビアトーク ~“バリュー”が誰にも真似できない会社をつくる〜」を開催。バリューにこだわる理由、紆余曲折を経て辿り着いた「強い組織を作る方法」などをビール片手に語り合いました。本パートでは、両社が今のバリューに至った経緯を紹介。そこには、「仲間と同じ方向へ向かい」「事業を成功させる」といった思いがありました。

2008年に決めたビジョンを6年後に再定義

麻野耕司氏(以下、麻野):みなさまから事前に質問をいただいておりますので、そちらを順番におうかがいしていきたいと思います。今、前に両社のバリューが出ていますが、いつ、どんな方法でこのバリューを決めたのか、作ったのかという質問をまずおうかがいします。

ヤッホーブルーイングの井手さんからお願いします。

井手直行氏(以下、井手):メルカリさんは、シンプルにバリューと出ていますが、うちは、最初にピラミッドの図を出したんです。ミッション、ビジョン、文化、価値観、ヤッホーバリュー。そのヤッホーバリューがこれなんです。

ちょっと意味合いが違っていて、最も上位概念のミッションは、会社を創業してから、ずっとなかったんです(笑)。97年から創業しましたけど、なかった。「こういうものがないとダメだ」と、お二方と違って私が2008年に社長になったその前の年くらいから、ずっと勉強をしたことがなかった。気ままに生きてきた人間なんです(笑)。

なので、経営にはなにが必要かもわからず、いろいろ勉強していったら、やっぱり経営理念がいる、と。それがないとスタッフが同じ方向を見ないんです。そこで、1個1個作っていきました。ミッションは2008年くらいに作りました。

スライドは動かせるかな? 年代表があるものを見せてくれる? ずっと後ろのほうかな。じゃあいいや。

(会場笑)

後ろのほうだ。1回ちょっと止めて。1年1年、ずっと順次作っていったんです。ミッションが、たしか2008年くらい。あ、これこれ。

2008年といえば、ようやく少し黒字になったくらいで、2020年のビジョンを立てたんです。「2020年に、大手5社が占める市場のシェアの1パーセントを取ろう!」。

そのあと、文化、価値観、バリューの定義付けをして、14年にもう1回ビジョンを変えたんです。なぜかというと、達成しちゃったんです(笑)。

ほぼ半分くらい達成して、「これはリニューアルしないといけない」と言って、もう少し壮大なものにして、2020年にこうなろうと。

本当に優秀な会社は、起業するときに最初に作るでしょうけど、我々は本当、私も含めて素人が集まった企業なので必要に応じて、一つひとつ作っていった。

みんなが同じ方向を向かなかった。だから、ぜんぜんまとまりがない。人によって、富士山を登ろうという人もいれば、そのへんの低い山を登ろうという人もいれば、俺はこっちに行きたいという人もいる。これは1回整理しないとダメだと本当に思って、整理して、意志を込めてこれを作っていきました。

「ファンはなぜ、我々のことを好きなのか」からバリューを作った

麻野:ちなみに、バリューを「革新的行動、顔が見える、個性的な味」の3つに絞られています。けれど、大事にしたいことって、いろいろ出てきますよね? それを絞るのは難しいと思うんですけど、両社とも3つに絞られています。絞るときに、どんなことを考えましたか?

井手:我々は、こういう意味のバリューなんです。メルカリさんは、どちらかというと行動指針がありますけど、僕らは、行動指針を文化のほうに入れています。

それには経緯があります。会社がどんどん大きくなってきて、「我々はなぜ支持されているんだろう?」という疑問が、スタッフの中でもいっぱい出てきたんです。

その不安を解消するために、ファンがなぜ我々のことを好きなのかを、いっぱい顧客の声がある中で私1人で何百、何千という声をバーっと洗い出したんです。それを仕分けしていきました。

あとは、アメリカのクラフトビールの先進事例です。すごく大きくなって全米に勢力があり、支持されているクラフトビールと、ぜんぜん支持されていないクラフトビールがあるんです。

売上はいいけど、あまりイメージがない。そこの差はなにかを、現地のメンバーにいろいろ調べてもらって、絞りに絞って、残ったものがこの3つ。この3つは、たしかに私も大事にしている。それで、決めました。

麻野:顧客という視点と、他社、そのベンチマークの会社という視点の、この2つの視点から絞り込んだと。

井手:そうです。あとは、最後に、私もとても大事にしているからです。その3つを合計したら、この3つが残った。なので、我々は小さな軽井沢の会社ですが、「軽井沢で造らないといけない」と。

今は軽井沢以外でも造っていますが、「大きくなっちゃダメだ、コンビニに並んだらもうクラフトビールじゃない」など、そういう声もあるんです。けど、それは本当にそうなのかを、市場の声、お客さんの声など、私が吟味します。会社は大きくなってもいいよ、コンビニでも置かれていいよと。

革新的な行動と顔が見える。イベントでもこうやって私が出たり、スタッフが出たり、ホームページも我々の顔がいっぱい出てるんです。あとは、どう転んでも、大手メーカーみたいなビールは造らない(笑)。飲んだ人が、普通のビールとは明らかに違う味わいにハッとするくらいに。

これさえ貫けば、世界に打って出ても、みんなが支持してくれると考え、3つのバリューを作りました。

強いプロダクトは会社のカルチャーを作る、けれど?

麻野:ありがとうございます。非常によくわかりました。メルカリは、いつどうやってバリューを決めたのか、作ったのか?

小泉文明氏(以下、小泉):元資料に戻っていただいけますか。最後のほうのページ。

僕らの事業とバリューの関連性を書きました。私、実は、メルカリの創業メンバーではなくて、ちょっと遅れて入ってるんです。

まずメルカリに入って思ったことが、「インターネットで世界を変える」みたいなミッションだけで、バリューがなかったんです。いわゆる、ふわっとしていて、これは、中・長期的に、この会社はなんの会社なのか、わからなくなると感じました。

私はメルカリ以前はミクシィという会社の経営をしていました。

当時の失敗ですが、強いプロダクトがあると、放っておいても会社のカルチャーができる。ミクシィみたいな、なんとなくオレンジの優しい明るいイメージがあると、会社経営陣が手を抜いても、勝手にそのサービスが成長していく。それに求心力がついて、会社がまとまるんです。

これは、いいときはめちゃくちゃいいんです。けれど、プロダクトのライフサイクルがインターネット業界にはあるので、それが下がってくると、急に会社の求心力がなくなる。結局、さっきおっしゃったように、言いたいことをみんなが言いまくるんですよ。自分のミクシィ像を言いまくるんです。

僕は当時、経営としてすごく手抜きをしたなという反省があります。メルカリに入ったときに、これは間違いなく、もう1回同じ失敗をするだろうと思って、このミッションとバリューを作ることを、僕は最初の仕事にしたんです。

「どう行動すればいいか」をポストイットで貼りまくった

ミッションはみんなで、5年後、10年後、その先の夢を語りながら作りました。その結果、「世界へ」となったんです。

そのときに大事にしたことが、このミッションを達成するために僕らの会社は、メンバーがどう行動をすればいいのか? それをひたすら全員でポストイットで書きまくったんです。ベタベタ、ブワーって貼りまくってそれを最後、近しい考え方をグルーピングしていったんです。

グルーピングしていくと、まだまだ数が多いので、徹底的に議論して、減らして、減らして、減らして。僕は「人間は4つ以上は覚えられない」と勝手に思っているので、3つ以内にしようと選んでいくんです。

選び方の重要性として、結局、僕らのビジネスはCtoCのマーケットプレイスで、グローバルにやる。特徴としては、すごく競争が激しい。日本でいうと、たぶん当時、ネットの全社が参入していましたし、Winner takes allという言葉のとおり、1社しか勝たないんです。

すごく特徴がある会社なので、結局リスクを取らないと、絶対にWinnerにはならないと明確だった。よって、この「Go Bold、大胆にやろう」を一番大事に置いています。

All for One、みんなで成功するためにタッグを組もうと。僕らの会社って、こんなにデジタルな仕事をやっているんですが、リモートワークは禁止なんです。全員会社に来なさいと。会社に来て、みんなで顔を合わせて、同じ方向を向いてやりましょうと。バリューを作って、それを浸透するということを徹底的にやってきました。

僕らの会社でいうと、これを全部、「メルカン」というオウンドメディアを持っていて、そこでどんどん発信しています。

会社と事業を分ける重要性

麻野:ありがとうございます。私もいろんな成長企業を見てきて、事業が伸びているときは、理念がなくても、意外と社員が束になる部分があると思うんです。

でも、事業が伸びているからという理由で束なっていると、こう(右肩下がりに)なったときに、サッと人が離れていく、気持ちが離れていくのだと思います。そのときに、事業ではなく、理念で束なっていると踏ん張れますよね。

小泉:僕が思っているのは、会社と事業を分けたことです。そうしないと会社と事業が近くなっちゃう。とくに、強いプロダクトの会社は、ほとんど会社と事業の差がないので、事業の思いが会社の思いにオーバーラップしてくるんです。

ただ、そうすると事業が落ちたときに、同じように落ちてしまう。だから、なるべく、今、メルカリという会社と、メルカリというサービスを分けることを、すごく意識的にやっています。

麻野:なるほど。

小泉:Googleについても「グーグラー」という言葉はうまいなと思う。Googleという検索エンジンのイメージと、グーグラーっていうイメージを、だいぶ分けていると思います。ああいうイメージで、会社とサービスを分けることを意識してやっています。

麻野:バリューを作る上では、ミッションからさかのぼること、事業環境を見た上で落とし込んだというところですね。ありがとうございます。

バリューがすごくうまく機能している会社さんは、ちゃんとビジネスを踏まえて、それを成功させるためにどういうバリューを作るべきなのか、リンクしている。その印象は私も受けます。

経営理念が浸透していない会社は「本気じゃない」

次の質問です。バリューを作りました。ただし、多くの会社は作っても、うまくいっていない。要は、策定したけど、浸透しない会社がすごく多いと思うんです。

どんな会社でも最近は理念を作っていると思いますが、ほとんど浸透してない。モチベーションクラウドで見ても、スコアがすごく低い。けれど、両社ともそこが高く、うまくいっている。

バリューを浸透する上で、大切なポイント、うまくいった施策があれば、教えていただいてもいいですか? 井手さんからお願いします。

井手:うまくいくかどうかは、もう1つしかないと思っています。「トップが諦めない」。それだけなんですよ。

僕もいろんな経営者の方と知り合いになって、お話を聞きます。僕らはビール屋ですけど、チームビルディングに、たくさん取り上げられている。「どうやったらヤッホーさんみたいになるんですか?」と、会社に来るんです。

みんな、うちの会社を見るとびっくりするわけです。いろんな上場会社の社長さんも来ますけど、「どうやって、こうやってるんですか?」と聞かれるので、話します。

「こういうことを設定して、諦めない。徹底してやる。事あるごとに、経営理念のミッション・ビジョン、いろんなのをしょっちゅう言う。ちゃんとそれになっていなければ、その場でちゃんと言う」などです。もうあの手この手、壁にミッション・ビジョンも張り出してるし、覚えていないチームは読んで、みんなで覚えて発表する。研修もやります。

徹底したら、経営理念が浸透しないはずがないんです。経営理念が浸透していない会社は、僕が言うのもおこがましいですけど「本気じゃない」、それだけだと思います。

社員が思わず口に出してしまう仕掛け

麻野:トップのコミットメントだ、と。非常にわかりやすいです。ありがとうございます。小泉さんはいかがですか?

小泉:まったく同じです。若干、テクニック論で言うと、全部の英語に日本語がついている。なぜかと言うと、短いセンテンスなので、英語のほうが覚えやすいんですよ。

ただし、イメージが一人ひとりブレちゃうので、日本語でサポートしている。あと僕らは、バリューをグローバルで一緒にしたかったので、英語があって、そこに日本語をあてる設計にしているんです。

これを僕らは、めちゃくちゃ「見える化」しています。僕らが一番成功してるのは、会議室を名前にしたことです。そうすると、放っておいても、「会議どこでやるの?」「Boldでやる」「Allでやる」と自然に口に出すので、考えなくても何回も毎日口に出す。(今、着ている)Tシャツにしたり。こういうことをやっています。

僕が一番大事にしているのは、社員がこういう言葉で遊び始めたら勝ちなんですよ。例えば、ビールを飲んでいて、「井手さん、もっとBoldで飲みなよ!」みたいな。「だったら、All for Oneでお前も飲めよ!」「飲み方プロっぽいね」みたいな(笑)。こう言いだしたら勝ちなんですよ。

言葉で遊び始めることは、本人たちの中で消化したということ。宗教っぽいかもしれないけど、目で見るとか唱和するとか、どんどん行動に変わっていくように進化していくことを、ずっと意識して、これまでやってきました。

麻野:社員が思わず口に出してしまう仕掛けを入れるということですね。

井手:1つ思ったのは、うちもそんな状態がありました。社員自らが問題意識するわけです。急成長しているので、人もいっぱい来ます。「新しい人たちに経営理念がちゃんと浸透してないよね」と言ったら、あるチームが日めくりカレンダーを作ったんです。

日めくりカレンダーで、「クラフトビールの革命的リーダーになる!」「自ら考え、行動する!」など、おもしろおかしくビジュアルで撮って、解説も入れて、毎日そういうものが出てきました。

すごいのは、僕がなにもタッチしていないのに、社員が自分で考えて、遊びも入れてやった。真面目にやるとみんな嫌がるから。そんなチームがあったなと、小泉さんが言ってパッと思い出しました。

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