上限金利の規制で中小企業は厳しい状況に

竹本直一氏(以下、竹本):おはようございます。衆議院議員の竹本直一でございます。今日は、堂下先生、この消費者金融にきわめて詳しいご専門の先生なんですけども、堂下先生と消費者金融の問題について、話し合ってみたいと思っております。

実は、10年ほど前に、利息制限法を改正いたしまして、上限金利を抑えました。金額によって違うんですけど、20パーセントぐらいまで抑えたわけです。そうしますと、それでうまくいってるのかというと、実は事業をやっておられる個人事業者が多いんですけれども、こういった方が急に今日100万200万が必要だと、こういう話がしょっちゅうあるわけであります。

ところが、自分とこの金庫にはないと。ちょっと借りたいといったときに、この利息制限法を改正したことが、大変な重荷になっていると。

こないだ、ちょっと相談があったんですけれども、100万円ほど、1日取り替えてほしいということで、事業会社、金融会社に申し込みに行ったら、断られたと。どうしてかというと、利息制限法で、金利を抑えられているもんですから、2日間業者が100万貸しても、800円しか利息がとれない。それじゃあ、採算が合わないから、お断りします。こういうことで、金を貸してくれない。

これが、かつてのように、金利がもうちょっと上であれば、事業会社もビジネスになるわけですけども、それができないんですね。

そういった問題が、現実に起こってきておりまして、かつて、いわゆる消費者金融の会社たくさんありましたけども、ほとんど潰れまして、みな銀行系に吸収されているというのが、実態であります。

この辺のところ、我々庶民の生活と比べてみて、詳しく研究しておられます堂下先生、「現状ちょっとどんな感じですか?」ということをお聞きしたいと思います。先生、いかがでしょうか?

堂下浩氏(以下、堂下):まず、今、竹本先生からお話ありましたけども、1点修正させていただきますと、2006年に引き下げられたのは、利息制限法ではなくて、出資法の上限金利ですね。こちらのほうが、2006年に法改正がありまして、これで当時金利というものが引き下げられて、審査が厳しくなって、そして2010年から利息制限法と同じ金利になったというこういう推移がございます。

竹本:利息制限法と貸金業法、ともに同じ20パーセントに抑えたわけですね。

堂下:そうですね。先にこちらのフリップで、ちょっとご説明したほうがよろしいかと思いますけども。

日本には上限金利を規制する法律というのが2つありまして、1つが民事法である利息制限法。これは、1954年昭和29年に改正されて以来、改正されていないんですけれども、元本10万円未満は、年利20パーセント。10万円以上100万円未満の借り入れは、18パーセント。そして、100万円以上は、15パーセントというふうに規定されています。

一方、刑事法である出資法。これが2006年に引き下げられたんですけども、こちらは、年利29.2パーセントから20パーセントに引き下げられたという、そういう経緯がございます。

したがいまして、この金利が29.2パーセントから20パーセントに引き下げられた結果、これがまた副作用が生じまして、中小企業、とくに個人事業主とか、零細企業の経営者は、お金が借りられなくなったということ。そして、逆に公務員ですとか、大企業に勤めている従業員ってのは、低い金利でたくさん借りられるようになったという、そういうような非常に中小企業にとっては、厳しい状況になってしまったわけです。

竹本:ですから、やっぱり貸す方と借りる方、需要と供給の関係ですよね。みんながうまくいってればいいんだけど、ちょっとところどころに、隙間があって、うまくマッチしてないところがあるんですね。

堂下:そうですね。

フィンテックの手法に着目

竹本:そういうことですね。この事業者金融というか、個人事業主なんか、まさに典型的なことで、「今日給料払うのに、ちょっと100万足らない」と。「なんとか、貸してくれよ」と。こういう話になること、しょっちゅうあるわけです。そのときに、対応してくれる金融機関がないと。

堂下:そういうことですね。

竹本:ということが、一番問題ですね。どうですれば、いいんですかね?

堂下:これは、2006年当時なんですけど、法改正以前なんですけれども、実は零細企業、これは個人事業主を含めた零細企業というのは、短期の借り入れというのを借りる事業者金融というのがありました。こういったところは、基本的に無担保で短期間のお金を借りて、すぐ返す。ただし、簡易的な審査のために、金利が高いという。リスクが高いので、金利が高いというそういう特徴がありましたけども、それがなくなりました。

その結果、どういうことが起きたかと言いますと、これは厚生労働省の労働市場分析レポートでも、2015年の1月に、掲載されておりましたけども、自営業者が資金繰り等によって、廃業が増えたことで、非正規の労働者が増えてしまったというふうに言われています。したがいまして、そこの資金繰りというものを改善する。

もっと短期間で、お金。小口のお金。無担保で、個人事業主が借りられる、零細企業がお金を借りられる。そういう制度というものを、再設計する必要があるんではないかと考えられます。

そういったなかで、1つ注目されるのが、今日「フィンテック」というふうに社会では言われて、アメリカではとくに注目されてますけども、フィンテックという手法に着目して、一定のルールの下で、規制下を行い、中小企業の資金繰りの選択肢を増やす。これが、今基金の課題ではないかと思います。

竹本:要するに、お金を借りるときは、担保をだいたい取るじゃないですか。ところが、担保のない中小企業、たくさんいるわけですよね。そういうときに、どうするかということなんですけども、今おっしゃったフィンテックを使うというのは、おそらくいろいろな中小企業がお金を借りて、返している。

過去の実績をずっと見ていってね。この方は、お金を借りても、きちっと返す人だなと。データ的に見て、そうだと。こうなると、「担保なしにも貸しますよ」と。そういう仕組みを、フィンテックで始めたいという話ですね。

堂下:そうですね。フィンテックっていうのは造語で、ファイナンスとテクノロジーというもの組み合わせた言葉で、そういった革新的な技術を使って、今までお金が融資を受けにくい人たちに対して、裾野を広げていこうというのが、サービスの精神なんですけども。

とはいっても、今の利息制限法というのが、あまりにも規制が厳しいので、短期の小口融資。とくに、短期の無担保の融資には、もうまったく機能してない。だから、フィンテックがなかなか、日本の国内で、市場として成立しない。そういう状況になっているかと思います。

竹本:とくに、10年ほど前の改正で、借りられる限度額を、3分の1にしましたよね。所得制限をつけた。これが、大変な支障になってまして、ちょっとやるとそれを越えてしまうんですね。だから、そういったこともあるので、なんか別の方法はないかと。1つは、私は所得制限を撤廃したらいいとは、思っているんですけどね。

すぐ法律改正しなきゃいけないから、そういう問題はあるから。さしあたり、じゃあどうするかというと、「フィンテックによるトランザクションを見て、信用力を判定して、お金を貸すということはどうか」というのは先生のご提案ですね。

堂下:そうですね。フィンテックといっても、いろんなサービスがあるんですけれども、そのなかでアメリカを見ますと、やはり貸金業のビジネスというのが、実はフィンテックの中心ですので、そこのなかでもとくに、先生が今ご指摘がありましたトランザクションレンディング。

取引の履歴を見て、規模は小さい、資産は持ってないけれども、取引がきちっと行っている中小企業には、お金を融資するっていう、そういうような仕組みってのは、これはやはり必要だと思います。しかも、そういった中小企業っていうのは、なにも何年もお金を借りるっていうんじゃなくて、ほんの数日。

もっと言いますと、アメリカの例を見ますと、数時間お金を借りるっていう、そういう世界ですので、そうすると年利換算ということ自体が、もう無意味になってくるというところがあります。彼らにとっては、数日。もっと言うならば、数時間お金が借りたい。そういうニーズに対して、今の制度が満たされていないというのが、1つ大きいと思います。

「立て替え」の需要に応えるために

竹本:前回の改正のときに、実は議論はしたんですけども、その通り、その精神が盛り込めなかったんですけど、お金を貸す借りるという場合、2種類あると思うんですよね。長期的な生活の支えするためのお金を借りたい。1年間借りたいと。こういう長期の資金供給と。「ちょっと今お金がないんだ、現金ないから2日だけ貸してくれよ」と。この2つあるわけですよね。

この立て替えっていうのかな。そういう感じに対して、そういう金の貸し借りに対して、応える需要が必ずあるわけですけど、それを一律に長期の消費者金融と同じ枠の中にはめてしまったのが、齟齬が起きた人のやっぱり一番の原因だと思うんですよ。

堂下:その通りですね。

竹本:お金を貸す借りるっていう観点では、2種類あると。1つは、生活の支えのために。もう1つは、単なる立て替えだ。これが、けっこう現実社会にものすごい多いんです。それで苦しんでおられる中小企業も多いですから。だから、それをなんとかしてあげたいなっていうのは、我々の気持ちなんですけどもね。

堂下:そうですね。その点、トランザクションレンディングというのは、非常にこれは理にかなってるサービスでして、一番わかりやすい事例が、アメリカの通販大手のAmazon.comの例なんですけれども、Amazon.comが商品を買う人にお金を貸すんではなくて、出品している中小企業。

要するに、問屋さんにお金を貸すという仕組みでして、そのときにどういう基準でAmazonがお金を貸すかって言いますと、その出品企業のものが、ちゃんと売れてるかどうか。お客さんとのトラブルもないか。そういう視点で、出品企業の財務データ、資産がどのぐらいあるかとか、そういうところは見ないで、取引の履歴を中心に融資をするということになってます。

したがいまして、Amazonとしても、今一番売れてる商品をその出品企業に出してもらいたい。だけど、その出品企業が、今手持ちのお金がないから、商品を揃えることができない。

そういうときに、Amazonが短期的な資金を供給して、それで出品するという。そうすると、その買いたいお客さんが、またそこでAmazonで買うことができる。非常にこれ、お金がぐるぐる回っていくいい仕組みができているというふうに言えます。

竹本:だから、その背景には、おそらく保険の数理が働いているんだと思うんですよ。そのようにしても、全員が100パーセント必ず、借りた金を返すというのかというと、そうではない。中には、やっぱり返さない人、返せない人も、出てくるわけですね。だけど、その数が、微々たるものだから、全体で保険数理で見れば、十分ビジネスとして成り立つ。だから、担保とらなくても、そのようにして貸すということなんでしょ?

堂下:そうですね。私も、トランザクションレンディングを行ってるある企業から聞きますと、貸し倒れ率は、5パーセント以下だというふうに言っていますから。

竹本:なるほどね。

堂下:それはそれで、それなりのリスクはありますけれども、逆に有料に使えてる企業が大半だというふうに考えるべきだと思います。

竹本:全員が、きちっと返さなければならないんだけど、返すというわけではないんですね。それは現実なんですね。現実を保険の数理で当てはめて考えたら、手数料をいくらとるかによって、十分ビジネスとして成り立つから、こういう新たなようなことが、やれるわけですね。

堂下:そうですね。