「男性よりも女性の方が買い物をする」の嘘

荒川和久氏(以下、荒川):女子大生、OL、アラサー、アラフォー。だいたいどの世代でも、脚光を浴びるのは女性です。そして、いつの時代も相手にされない独身男性たちという構図があるわけです。

なぜかというと、消費は女性が作ると言われていて。我々は広告会社でマーケティングとかやってるんですけど、「今回の商品、男性向けにやるんだ」という話、あんまり聞かないですよね。

杉山豊氏(以下、杉山):聞かないです。売らないですね、ほとんど。

荒川:いつも女子、OL、主婦。

杉山:主婦、OLと言いますね。だいたい「ターゲットは主婦です」、「OLです」みたいなことを言いますよね。

荒川:それは間違いではないんですけどね。でも、こと独身に限って言うと、女性の方が本当に消費力が高いと言えるんだろうか?」ということなんです。

いわゆる消費性向というのがあるんですけど、可処分所得の中に占める消費支出の割合。これが高ければ高いほど、もらっている金額の中で消費する金額が多いってことなんですけど、これは女性が高いんです、明らかに。(男性)6割と(女性)7割で、明らかに違うんです。

ただ実額で見ると、男性のほうが高いんですよ。1カ月1人あたりの消費支出額ですけど、1万円くらい高い。たまたまこの年だけだったんじゃないのと思われるけど、そうじゃなくて。

ずっと7年くらい平均していっても、(男性が)4000円くらい高いんです。だから、消費性向だけで見ちゃうと誤っちゃうところもあるんです。使ってる実額は、男性のほうが高いんです。

各年代別に見ても、なぜか40代の独身女性は使ってるんですけど、それ以外は男のほうが上回ってます、消費支出実額。

杉山:それは、男が女性にプレゼントしてるからじゃないですか? プレゼントにブランド物買うのは男性だというね。ブランド物はもらうもんだと思ってる女性は多いですけれども。

荒川:それはすごいバブリーな価値観ですね。

杉山:失礼しました(笑)。とにかく男性のほうが多いのだ、と。実額は。

荒川:1人あたりの金額が多いじゃないですか。これを覚えておいていただいて。男性のほうが人口も多いわけですよ。単価×人口の市場規模で見れば、圧倒的に男性のほうが高い。というか、お金使ってるんです。独身男性が年間14兆円消費してるのに対して、女性は8兆円ですから。倍くらい違うんですよ。(注:2010国勢調査による単身世帯年齢別人口分布に、2009全国消費実態調査による年齢別消費支出額を掛け合わせて合算した推計値。男女とも20~50代の単身世帯のみを抽出 ※ソロ男プロジェクト試算)。

杉山:14兆円も使ってるんですか、男が?

荒川:だから、これを見ると「独身女性をターゲットに」という意味がわからない。男を狙ったほうがいい。「お金使ってるの、男じゃん」という話なんですよね。

コンビニのお菓子を支えてるのはソロ男

杉山:なるほど。でも、使ってるものも違うんじゃないですか? どうなんだろう、一般的なものに使ってるのかな?

荒川:そうなんですよ、「何に使ってるのか?」という話ですよね。(男性は)圧倒的に消費力高いんですけど、エンゲル係数が高いんです。(エンゲル係数は)単身男性27パーセント。ほぼ3割。2人以上の世帯で22パーセントで、単身女性が20パーセント。女性と比べると10パーセントも違うわけです。要は飯ばっかり食ってる。

杉山:外食費にお金をかけてる?

荒川:(食品別購入金額の棒グラフが映る)主食的調理食品って、おにぎりとか弁当のことです。それとか、お茶類、コーヒー、ココア、酒類、外食、これ青いのが単身男性で、緑色は家族です、2人以上の世帯。すごいのは、ソロ男は1家族分と同じくらい、この5つの品目を消費しています。外食に至っては、1家族分以上使ってるということです。

ソロ男は、毎日買い物します。だって、買い物してくれる奥さんいないし。ソロ男だからこそ、毎日買い物をする。コンビニを週5日、スーパーを週2日使います。

杉山:毎日ですね。

荒川:毎日です。

杉山:毎日ですね。

荒川:コンビニでは、こんなもの買ってます。ざくっと言うと、コーヒー、お茶、スナック菓子、チョコ、アイス、カップ麺、タバコを買います。一方スーパーでは、牛乳、カップ麺、スナック菓子、冷凍食品、トイレットペーパーを買います。何気に、コンビニで買うものとスーパーで買うものを分けてたりします。お酒を買うのはスーパーです。

杉山:安いから。

荒川:目線が「主婦じゃん」という話ですね。スナック菓子、お茶、カップ麺、チョコ菓子は、どっちでも買います。どっち行っても買います。とにかく、菓子好きなんです。お菓子大好きなんです。

杉山:ソロ男は。

荒川:だから、コンビニのお菓子を支えてるのはソロ男と言ってもいいんじゃないかと。

杉山:そうですね、お菓子を買ってる人多いわ。言われてみりゃ。

荒川:女性の方だと、お菓子によって、ケーキとかね。「お菓子のとりすぎは、ダイエットによくないわ」なんて言って、セーブしようとするじゃないですか。女性だけじゃなくて、男性も食い過ぎはよくないですよ。

ポテチを止めるという選択肢はない

荒川:でも男性の場合は、プラスオン消費という独特の行動があるんです。

杉山:プラスオン消費?

荒川:毎日ポテチ食べるんで、中和させるためにトクホ茶飲みます。要は、ポテチを止めるという選択肢はない。ポテチを食う代わりに、トクホとか飲んどいて、身体にいいことした気分になろうかな、と。要するに、消費を止めるんじゃなく、上乗せて買うんですね。

杉山:タバコ吸ってる人ほど健康食品買う、みたいな。そういうことですね。

荒川:そういうこと。そういう人たち、例えばお茶とか、毎日同じ銘柄を買い続けるんです。ルーチンがすごいんです、五郎丸(歩)じゃないですけど。

観客:それわかる。

杉山:わかる(笑)。

荒川:毎日買うお茶は、必ず買うんです。その横に新商品が出たとか、あるじゃないですか。普通の感覚だったら、いつもの買うのやめて新商品買うんですけど、ソロ男は毎日買うお茶は買っておいて、新商品も買うんですよ。毎日買うものを止めるという選択肢がないんです。

杉山:ない、なるほど。

荒川:そういう特徴があります。

杉山:ブランドスイッチがないんです。買ってるものは、ずっと買う。

荒川:優良顧客なんですよ、実は。

杉山:それはなかなか、視点としてはおもしろいですね。

荒川:こんなに消費してるわけじゃないですか。今、優良顧客と言っちゃいましたけど。優良顧客なのに今までマーケティングのターゲットにならなかった。それには理由があるわけですよ。つまり、頑固で、あまのじゃくで、へそ曲がりで、面倒くさい性格というのが、それに影響してるわけです。

結婚する気がないと言いながら、女性にモテたがる

杉山:これわかる。オリエンきた時に「ターゲットはこうです」と言われたら、キャンペーンできないですからね。「あまのじゃくに売ってください」と言われても、何もできないですよね。

荒川:まさにこれです。「キャンペーンとか景品とかに影響されますか? されませんか?」という質問に対して、(ソロ男の)4割近くは「そんなものに影響されない」、「そんなものに影響されてたまるか」と答えています。

だったら、もう広告とか効かないじゃんみたいな。「なるほど、おっしゃる通りです」と一旦納得した上で「じゃあ、ソロ男さんは、こういうキャンペーンがあったら参加しますか?」という質問を別にしたわけです。

杉山:すると?

荒川:なんと思いっきり参加しちゃうわけですよ(笑)。とくにこの値引きとか、限定商品とか言われると、ガンガン買うわけです。

「企業の販促に反応しないよ」と口では言うわけですけど、実際の行動は思いっきり影響を受けてるんです。これを、ソロ男に典型的な「自己矛盾行動」と名付けました。要は、言ってることとやってることが違うんです、この人たち。たとえば、結婚する気がないと言いながら、女性にモテたがる。

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