実はすでに身近にあるIoT

別の質問者:ストック、フローの話からずれちゃうんですけど。

加賀谷:ずれましょう!

質問者:IoTの話を。

加賀谷:IoTいきましょう!

金城:メインテーマ! 来た来た!

質問者:IoTの分野ってエンターテイメントとかヘルスケア的なものが多いかなと思うんですけど、一番最初に日常に溶け込みそうなもの、もしくはすでに、溶け込んでるものってありますか?

加賀谷:来ましたね〜。ちょっと酔っぱらってるけど、いいでしょうか?

金城:いいですよ。だからあんまり真剣に捉えないで(笑)。

加賀谷:真剣無しでいいですか?

質問者:はい!

加賀谷:結構聞かれるんですけど、我々が日常的に使っているIoTの最たるものだと思っているサービスがありまして。それはアメッシュなんですね。アメッシュ使ってる人、どれくらいいます?

質問者:初めて見た。

加賀谷:えっ!?

梅田:遅れてる。

(会場笑)

加賀谷:アメッシュ知らないですか? ほんとに知らない? ちょっとちょっと。今見ましょうよ!

金城:今のアメッシュを(笑)。

加賀谷:東京都下水道局がやってる東京アメッシュっていうんですけど。国交省がやってるXRAINもあります。これ何かって言うと、「神奈川のこの辺りで、めっちゃ雨降ってるぞ!」というリアルタイムの情報なんですね。

この雨のデータを取ってるのが雨量計やレーダーなんです。このサービスでは過去2時間くらいの動きをアニメーションしてくれてるんですね。

すると今東京都は雨が降ってないからピンとこないかも知れないですけど、外が今、豪雨だとしますよね。そうすると「何分後にこの雨が通り過ぎるかな」というのが把握できるんですよ。過去の雨の動きから「もうすぐ抜けるな」ってのがわかるんですね。

梅田:アプリもあるからね。すぐダウンロードするように。

(会場笑)

加賀谷氏が考える、IoT普及の起爆剤

加賀谷:日常化してるんで、あんまりピンと来ないと思いますけど、これぞIoTの事例だと思っていて。昔だったら山の上の雲の様子とかで「この空気の感触はあと5分後に雨降るぞ」とか祈祷師が予測していたと思うんですけど、それと同じことが、誰でも出来るようになっているんですよ。

これと類似したことが、日常空間にも起こり始めるのではないかと思っています。感が良い人というのは様々な情報を無意識化でビッグデータ的に処理しているのではないかと考えてます。

IoTが普及するきっかけというか、起爆剤は、日本で何になるかなって考えてみたのですが、その鍵は大規模な施設におけるトイレじゃないかなと思っていて。

トイレが空いてるかどうかって、その場所に行かないとわからないですよね? だけど、空いてるかどうかなんて、扉にセンサー1つ付ければ一発じゃないですか。全部わかるはず。わざわざ行く必要ないですよね。

アメッシュと似てないですか? 似てますよね。それをビジネスにどう変えるのかは、まだ閃かないですけど、型はアメッシュに似てますよね。

加賀谷:日常生活の中で絶対に便利になる。で、このあいだ飲んだ時に、梅田さんともうひと方ね。

梅田:石黒(邦宏)さん。

加賀谷:石黒さん。アプリックスのCTOの方。石黒さんもBイノベーションの取締役でこのテーマでいろいろな話をしてたのですが、おそらくIoTを使ったサービスが一般化してくるときのイメージとしては、Suicaって今全員使ってますよね。だけど、使い始めたのは何年前ですか? 10年くらい前ですよね?

その前って何を使っていたのかもう思い出せないですよね。オレンジカードとか切符を買ってたんですけど、今やもう誰も使ってない。

金城:オレンジカードって(笑)。

加賀谷:テレホンカードみたいなの使ってたでしょ?(笑)。でも、今は全員Suicaですよね。あれくらいスムーズにシフトすると思うんですよ、絶対。そんな感じで、日常生活が何か劇的に変化するわけじゃないですよ。我々の生活はそのままなんだけど、我々が今、「面倒だなぁ」とか「あれ? 何でトイレ空いてないんだ、おい!」と思う、あれが消える。

消えてはいないんだけど、わかるっていう状態かな。空いてる時に行く。だから最適化が進む。

IoTは利用者からはよくわからない?

金城:大川さんの会社で、1回トイレやりましたよね?

大川:ええ、やりました。

加賀谷:お! きましたね〜(笑)。

金城:トイレが使われてるか、使われてないか。

大川:そうですね。男子トイレにセンサーつけて。

金城:空いてるか空いてないかをやったんだけど、建物のビルの管理会社との兼ね合いで止めたんですよね。

加賀谷:怒られたんですか?

大川:ちょっと言われちゃいました。

加賀谷:あ〜、やっぱりね。でもここ、僕は結構キーかなと思ってて、日常生活の中に入ってくるところ。たしか質問、その話ですよね? IoTはどういうところでという話。

質問者:一番最初に溶け込むのはどこの辺なのかなと。

加賀谷:そう。僕はこの辺からだと思いますね。トイレとかアメッシュとかですね。アメッシュはほんと参考にしてもらったらいいと思いますね。

これに類したものが日常生活の中にいっぱいあるはずなんですよ。ある種の予言的なもの。見えなかったんだけどわかる。わかんない筈のものがわかる。

梅田:だけど、利用者からはIoTかどうかよくわからない。

質問者:そのレベルのものが溶け込むようになる。

加賀谷:絶対そうなっていくよ!

金城:これ(アメッシュ)がIoTだって思ってない人が大半だから。

加賀谷:でも実際にこれ、そうなんですよ。

梅田:だからIoTって最近始まった話では全然ないですよね。インターネットの村井先生は昔、タクシー会社の全ての車のワイパーにセンサーをつけるっていうプロジェクトを15年以上前にやってたと思います。

それは例えば京都とかね、どこかの町を走るタクシーの全てのワイパーにセンサーをつければ、そのタクシー会社はどこで雨が降るのか全部わかるっていうことを、彼は昔から言ってました。

加賀谷:そうです!

梅田:これは、そういうことのスケールの大きくなった話なんですけどね。IoTって基本的にそういうような話なので、利用者からはIoTかどうかは全くわからない。

加賀谷:わからないですね。

梅田:だから例えば。ホンダの渋滞感知も同じでしょ? あれも10年以上前からやってますよね。

加賀谷:日常生活でいろんな人が実際に使ってるのはこれ(アメッシュ)かなぁと思ってます。アメッシュ、ものすごくいいですよね。

金城:いいですよね。「雨くるよ!」みたいな感じ。

加賀谷:あと、東京都内だとバスもそうなんですよ。都バスにセンサーが入ってて、どの停留所にいるか全部トラックされてるんですよ。

だからあと何分で来るか、全部見える。リアルタイムで。

IoTと呼んでないだけで、体験的には近いですよね。何がいつ来るかが事前にわかる。

この辺りに非常に大きなチャンスがあるんじゃないかなぁと個人的には思っています。

ビジネスモデルが確立されていない今がチャンス

質問者:これ見ると全然バナーも入ってないし、マネタイズというか、運営はどうしてるんですかね。申し訳ないんですけど、生活が良くなるかも知れないんですけど、これを続けていくにはどういうふうに……。

加賀谷:だからチャンスなんです。まだ誰もビジネスモデルをつくれてないから、チャンスですよ。

僕が出した事例は、現段階での事例に過ぎないです。誰か特定の人に絞ったほうがマネタイズはしやすいですよね。ニーズが高まるから。

ここを見つければ絶対ビジネスになると思います。いっぱいチャンスありますよ。きっと。

質問者:トイレなんか、10時以降は有料化とかしてもいいですかよね。

(会場笑)

加賀谷:来ますよ、来ますよ。これは死活問題。来ますよ(笑)。

梅田:有料トイレ事業はアリかもね(笑)。

加賀谷:ありますよ! どこにどれだけ快適なのがあるかということですよね。それに対しての対価は払います。

梅田:それは誰か起業したらいいですよ。

質問者:ストック型の人。

梅田:起業はストックなんですよね。「これおもしろいですよ!」って皆に言ってまわるくらいがいいなってのがフローで。

加賀谷:それが我々ですね。

(会場笑)

金城:Bイノベーション的な(笑)。

世界を変えるのはストック型の人

梅田:いや、よく「世界を変えよう」って言うんですけど、世界を変えるまでいくのはね、ストックじゃないと駄目なんですよ。そのぐらい志が1つのテーマで高ければストックでいく。

加賀谷:そうですね。

梅田:最初ぱっと手挙げてもらって、僕も今日、大変学びましたけど、ああいう対比の話をした時に「俺はストックだ」って言う人って、きっと少ないのかも知れないね。

だけど専門性を身につけながら1つのことを10年20年やってきたら、ストック型になっちゃったっていう人とか、1つの会社に勤め続けるとかっていうのは、どっちかっていうと後天的なものなのかも知れないですね。わからないですけど。そんなことをちょっと思いましたね。

だけど今のような話で、本当に「私は東京の人たちのトイレ事情を変える」「世界を変える」とIoTのサービスをつくる起業家が出てくるっていうようなことがあるかもしれない。加賀谷さんのさっきの話がきっかけになったりして。そりゃすごいけど、もう絶対ストック型の人がやらないとできないんですよ。

加賀谷:ちょっと僕、トイレ行ってきていいですか?

金城:どうぞ(笑)。加賀谷さんがトイレに行くんで、梅田さんと話したい人、ぜひいろいろと話をしていただければ。

質問っていうと、皆の前でしなきゃいけないから大変と思うかも知れないけど、言っちゃえば勝ちなんで。ぜひなんかちょっとでも聞きたいことがあれば。

シリアルアントレプレナーはフロー型?

質問者:連続起業家とかいるじゃないですか。シリアルアントレプレナーとか。ああいう人たちって、上場まで持っていく手前か、持っていった後にすぐ売却したりして次のビジネスやりますよね。そういうのって、やっぱストックですか?

梅田:えっと、分類学をやりだせばいろいろになっちゃうんだけど、今日の議論で言えばストックですよ。連続起業家っていうのは1つ区切りをつけるまではやらないと連続起業家にはならないから、ストックです。

金城:さっきのピボットの話と一緒で、ピボットの先でコミットするかどうかの話。連続起業家は起業して、起業して、起業してなんですけど。その起業1個1個にコミットするから、生き方としてはストックでいってるってのが今日の議論ですよね。

梅田:例えば1つの会社に勤めながらフロー的な仕事をするのはどうなんですかとか、分類しだすとキリがないんですけど、それが僕の本心じゃないんですね。大きくわけて、何となく感覚的でもいいから、その2つに違いがあるってことだけ、なんですよ。

金城:ほんとこれ、飲み会の場なんで。

(会場笑)

『ウェブ進化論』のときには予想できていなかったこと

質問者:『ウェブ進化論』を書かれてから10年ってお話だったんですけど、10年前から考えて、今になっても信じられないな、みたいな進化とかありますか?

梅田:どうですかね。いや、そんなに信じられないっていうものはないかも。全部想定内だったって言うつもりはないですよ。だけど、びっくりするほどのサプライズっていうことでもないかなぁ。

質問者:例えば10年前の自分に会いに行って説明して、10年前の自分が全く信じてくれない、みたいな。

梅田:う〜ん。ないかなぁ。なんか、ありそうですか?

質問者:あんま無いですけど。

(会場笑)

梅田:自分が予測しきれなかったなと思うことは当然あるんですよ。ただ、AIはちょっと来てるかなと。枠を超えるところに。つまり、『ウェブ進化論』を書いてた時の世界っていうのは、インターネットっていうのは人間が繋がることによって全く違う可能性が広がるという、要するにそういう話で。

これから起ころうとしているAIは、ネットで人々がつながった価値とかそういうことと関係ないところで、人間を超える知性が生まれつつあるっていうことです。それは当時は全く考えられてなかったですね。

例えばホーキング博士とかイーロン・マスクとかが、最近「AIが人類を滅ぼすかも知れない」みたいな警鐘を鳴らし始めているっていうのは、そういうことをすごくセンシティブに感じている人だと思う。10年前には、そんな人は1人もいなかったですよ。

特定分野においては人間はAIに勝てない

加賀谷:この間、今日一緒にいるはずだった石黒さんと3人でも話したんですけど、AIって言ったときに、強いAIって言うのかな。本当の知性としてのAIっていうものと、今、いわゆるAIの文脈で言われてるディープランニングとは随分違うんですけど。

それでも、現状のディープランニングにしても「何故その答えを出したのか?」という部分って、実はブラックボックスになってるというか、我々でもわからないんですよね。再帰的なネットワークが「これが類似ですよ」とか「これがパターンですよ」って出してきてるけど、それが何故かってのは我々では計り知れないことになってて。

これが拡張し増幅されていくと、「どうなっちゃうんだろうな?」とは思いますね。特に金融の世界でそれの強力なものができた場合、一体何が起こるんだろうと思っちゃうんですよね。

これは多分、金城さんの専門分野にも近いと思うんですけど。

金城:意外に専門分野。

加賀谷:ある特定分野においてAIに人が勝てないということが起こっているのは。そうだ! 梅田さんの専門分野じゃないですか。将棋の。

梅田:いずれは人間が勝てなくなってしまう。2015年に羽生さんとポナンザがやったらどっちが勝つかわからない。だけどチェスの世界で同じことがすでに先に起きていますが、いずれはコンピュータが人間を凌駕するというのは宿命。それまでにどのくらいのあいだ拮抗する力関係が続いていくか、そのプロセスにおいて将棋というものがどんなふうに変質するか、進化するのか、というあたりが興味深いと思います。

Googleのディープドリームの先にあるもの

金城:もう9時10分なんで、とりあえずここで止めるんですけども、大体こんな感じです。今こうやってお話して、例えば皆さんから質問があって答えたみたいな感じで。結構ウチの会社的には日常的に行われてる飲み会なんですよ。

加賀谷:これが高度な飲み会ですよ(笑)。

金城:こういうのを今回お見せしたかったっていうのが趣旨で、質問があって答えがあったっていうのが、「結構ハードル低いじゃん!」みたいなの、多分思ったと思うんですよ。

例えば梅田さんとかメディアに出てて、「梅田さんと話すの、すごいハードル高いじゃん」と思ってたと思うんですけど、そうでもなくて、質問すればちゃんと答えてくれるっていう状況なので。

この後多分、交流会が50分くらいあると思うので、皆さん積極的に質問していただければ、いろいろあると思うんで。最後ちょっと、加賀谷さんのほうから。

加賀谷:えっ!? 油断した。

(会場笑)

金城:3分プレゼンテーションでシメを!

加賀谷:ないっすよ。

(会場拍手)

加賀谷:シメはないっすよ!? ないけど、トライしますよ。AIですよね。最後あれ、皆で見てみますか? ちょっと待って下さいよ。皆さん、Googleがディープドリームをつくったの、見ました?

写真を上げると、その写真の中に何を認識するかっていう。先ほどのディープランニングで一生懸命やってた。これだとこの、顔の一部の中に。

金城:鼻の穴に目があったり。

加賀谷:そうそう。そういうのを認識しちゃうってのが事例でやってて。で、これが2週間くらい前ですか? すごい話題になりましたよね。

梅田:オープンソースになったでしょ?

加賀谷:そうです! だから今、この場でもできる。これはまだ、「ちょっとキモいな」くらいでかわいいもんなんですけど、これがじゃあ、キモい話じゃなくて、ガチですごいものになったとして。

AIが発達した時代に、人は何をやっていくか

加賀谷:例えば「美しい」とかね。まだこれ、絵でやってるからいいですよ。テキストでやられた日には、どうなるんだろうって考えるわけですよね。多分ここにはテキストを日々書かれてる方も沢山いるんじゃないかなぁと。

金城:ライター系?

加賀谷:特にあの辺りにいらっしゃる……(笑)。でも、そんな感じで、実はその「無理だろそれ!」って思われてたことが、どんどん実は機械に置き換わるってことが起きるのではないでしょうか。

その中でじゃあ、今日のテーマでいうところの、キャリアとして「人は何をやってくか」は、結構深いところですよね。

深層の部分になってくるんだけど、そういったことを考えていくと、さっき梅田さんが言われてたような「自分はストックなのか、フローなのか」みたいな気質を考えて、自分の最もパフォーマンスの出るところに注力していくっていうのは、今後より重要になってくるんじゃないのかなぁと思っております。

(会場拍手)

加賀谷:ありがとうございます。

金城:こんな感じでいったん締めますので、お二人に拍手を。

(会場拍手)