私の反抗的な面とロマンチックな面をアルバムで表現した
――今回のアルバムを制作するにあたって、どのような作品を作りたいと考えましたか? 最終的なゴールはどこに定めましたか?
マドンナ氏(以下、マドンナ):私にとっての最終ゴールは、どんな状況でもパフォームできるような曲を書くこと。たとえば停電してしまっても、キャンドルを灯して、ギターをつまびいて音楽を奏でることができる、そういうアルバム。曲がよければどういう状況でも楽しめると思うから。
――驚くほど多くのアーティスト、プロデューサーたちが関わったと聞きますが、このような形で制作しようと考えた理由・目的を教えてください。そのためには苦労もあったかと思います。これまでのアルバム制作と比べてどう違っていましたか?
マドンナ:たくさんの人たちが関わるようになってしまったのは、最初、ソングライティングだけを頼もうと思っていたのが、中にはプロデュースもやっている人がいたり……。それに仕事を依頼しても時間がなくなってしまったり、その分を他の人に頼んだり、まるで回転ドアみたいに新しい人が入ってきては、出ていく。
そしてまた違う人が入ってきて……、という感じでどんどんその輪が広がってしまったの。たとえば曲の一部をやってもらって、そのあと気が変わって違うミックスにしたり、また同じ人に戻ってきてもらったり。それがいい場合もあったし、あまりよくない場合もあったけど。
――13作目となるこの新作、ズバリどういうアルバムですか?
マドンナ:タイトルは『レベル・ハート』、それは私のふたつの強い性格を表しているから。反抗的で挑戦的な面と、内心では弱いところがあったり、ロマンチックな面。
アルバムジャケットでコードを顔に巻きつけている理由
――ジャケット写真ではコードを顔に巻き付けていますが、あのコードは何を表わしているのでしょうか。
マドンナ:私にとって、それはアーティストに押し付けられることへの反抗を表現しているの。自由に発言することができない、口をふさがれているということを表現しているの。反抗精神のあらわれよ。自由のために闘うとか、世界を変えるための闘い、そのためには何かをしなくてはいけない、そういう意味を込めているの。
――いつもあなたは自己表現をしてきたのかと思いましたが。
マドンナ:そうだけど、その分、理不尽なことにも耐えてきたし。言いたいことを言おうとすると口封じされたり、いろいろたたかれたりしてきているから。
――シングル『リヴィング・フォー・ラヴ』はどんな曲なのか、またこの曲をファースト・シングルに選んだ理由を教えてください。
マドンナ:この曲は、別れや失恋の痛み、裏切りといったものから回復して立ち直るという気持ちを表現しているの。辛いけど、希望を捨てない、私は立ち直れる、負けないわよ、という曲なの。シングルに選んだのは、この曲を私の主張として最初にもってきたかったから。
――この曲のビデオはどのような内容になりますか? 撮影秘話や苦労話を教えてください。
マドンナ:ビデオ制作の真最中で、今編集中よ。内容に関しては一切秘密。「血の赤」がヒント。
マイク・タイソンとコラボ秘話
――参加プロデューサーのひとりにアヴィーチーの名も挙がっていますが、彼と仕事をしようと思ったきっかけと、一緒に仕事をしてみた感想を教えてください。
マドンナ:彼はとてもおおらかで静かでシャイな人よ。自分で優秀なライター・チームを組んでくれて。すごくクール、いい人よ。
――ヒップホップ系アーティストも多数参加していますが、彼らに求めたのはどういうところでしょうか。またニッキー・ミナージュと2作連続でコラボしたのには何か理由がありますか?
マドンナ:求めたのはいいライム。ニッキー・ミナージュも素晴らしいし、NASも素晴らしいし、チャンス・ザ・ラッパーも素晴らしいし。私は自分がいいと思った人としかやらないの。ニッキーとは前にも一緒にやってるし、彼女とはすごく息もぴったりなの。
――またマイク・タイソンという意外な人選にも驚きました。
マドンナ:「アイコニック」という曲。転んでも必ず立ち上がるし、私たち有名人のプレッシャーとの闘いや、どんなことがあっても負けないという勇気づける内容の曲。だから、強くてたくましい、スーパー・ヒーローをフィーチャーしたかったの。その点、何度もチャレンジして叩き上げられてきた彼はその役にふさわしいから参加してもらったの。彼とはいい友達よ。
――ディプロやアヴィーチーらの起用によってEDM界のど真ん中に踊り出たという見方もできそうですが、あなたにとってのEDMの魅力とはどういう点でしょう? 同時にありきたりのEDMには終わらせないぞという意気込みも伝わってきます。どういうところにこだわりましたか?
マドンナ:どう答えたらいいのかしら。私はずっと自分の音楽をやってきているし。どれも自分のサウンドよ。そのためにどうこうする、ということはないし。誰とコラボレーションしても私の特徴が必ず出ているはずよ。
ディプロにしてもアヴィーチーにしても、音楽的にも個性がとても強いから選んだの。私が一緒に仕事をする相手を選ぶ場合、私のオープンなアイディアを受け入れてくれることが前提なの。私自信の独特なカラーを発揮できることが重要なの。
モチにメープルシロップをかけて食べるのが好き
――アルバムの中で最も気に入っている曲、もしくは思い入れのある曲と、その理由を教えてください。
マドンナ:難しいわね。『ビッチ・アイム・マドンナ』がフェイヴァリット・ソングかしら。あと、『ゴーストタウン』と『ジャンヌ・ダルク』も好き。『アンアポロジェティック・ビッチ』も好きだし。その時の気分によってもちがうし。自分の子供のどっちのほうが可愛いか、っていうのと同じ。選べないわ。
――『ビッチ・アイム・マドンナ』が好きな理由を教えてください。
マドンナ:サウンドが好き。音楽がいいのと、面白いし、ふてぶてしい感じがいいでしょ。皮肉っぽくもあるし、ニッキー・ミナージュがすごくいいの。私と彼女のコンビ、最高だと思うわ。
――最近、再びヨガに目覚めたとも聞きました。最近ハマっている健康法はありますか?
マドンナ:体はいつも鍛えているわ。ヨガ以外でも、カーディオ・ダンス、空手、インターバル・トレーニング、サイクリング、スキー、それから家の中で階段の昇り降り、しょっちゅうやっているのよ。
――マクロビは今でも続けていますか?
マドンナ:今はやっていないわ。でも、マクロビの食べ物は好き。もう日本人のシェフがいないの。マユミさん、やめちゃったのよ。でもモチは食べてるけど。正月だけでなく、いつも食べてるわ。メープル・シロップをかけるとすごくおいしいのよ。
――ハード・キャンディ・フィットネスというご自身が運営するフィットネス・ジムが世界に展開されていますが、あなたの日常の典型的なワークアウトのメニューはどういう内容ですか?
マドンナ:私のうちにもジムがあるんだけど、ハード・キャンディでもさっき言ったインターバル・トレーニングや、ヨガとダンスを取り入れたボディ・アート、これは呼吸法にコツがあるの。
――日本女性から見ても、あなたは常に憧れの存在です。自立している女性として、怖れを知らない女性として、決して立ち止まらずに進化し続けてゆく、その生き方の一番の秘訣、原動力は何ですか?
マドンナ:常に自分への挑戦だと思うの。もっと世界のいろいろなことを知りたいし、人間としてもっと成長したいし、よりよい親になるためにいろいろ学びたいし、とにかくよい親になるだけでもすごく大変。とにかくがんばること、かしら。
近いうちに日本でツアーがしたい
――最後にもう一度、このアルバムの聴きどころを教えてください。
マドンナ:サウンドからミックス、歌詞、ストーリーの内容まですべて。最初から最後まで聴いてほしいわね。これは私の「人生」だから。
――『コンフェッションズ・オン・ア・ダンスフロア』のツアー以来、日本には来られておらず、悲しんでいるファンも多いです。今回こそ来日を実現させてほしいところですが、それも踏まえて、日本のファンにメッセージをお願いします。
マドンナ:私、日本が大好きだし、すごく行きたいの。必ず来日するわ。
――日本のファンにメッセージをお願いします。
マドンナ:日本のファンへのメッセージね。近いうちに来日したいと思っているの。ツアーもしたいし。応援してくれてありがとう。
――以前から日本人のクリエイターやダンサーなどを自ら発掘し、自身のプロジェクトに取り入れてきましたが、最近注目されている日本人のクリエイターはいますか?
マドンナ:実はいるのよ。ユーチューブで見たんだけど、2人組の女の子、名前覚えていないんだけど、ぜひ一緒に仕事したいと思ったの。あとで思い出したら教えるわね。
――あなたはファッション面においても常に独自のスタイルを貫き、自ら流行の発信源となっていますが、最近特にこだわっている、注目されているファッション・スタイルを教えて頂けますか?
マドンナ:いつも着ているのはパジャマよ(笑)。好きなスタイルは、デザイナーでいえば、リカルド・ティッシのジバンシィが大好きなの。その日の気分によってもドレスアップしたい時もあるし、40年代、50年代、60年代、ジャズの時代とか、スタイルはまちまちね。ひとりのデザイナーばかり着るというのでもないし。
――手袋のコレクションをされているそうですが。
マドンナ:そうね。ほら、その証拠に今日も手袋してるわ。
――今日はありがとうございました。
マドンナ:(日本語で)アリガトウ。
『レベル・ハート』というアルバム・タイトルは、マドンナの反抗的で挑戦的な面とロマンティックな面という2つの強い性格を表しているという。マドンナは、愛をもってすべてに立ち向かう!
『レベル・ハート』 (スーパー・デラックス) ・Universal Music Store ・iTunes
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