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顧客志向から生まれるスマートホーム戦略(全4記事)

テクノロジーで暮らしの変革はできるのか? Amazon × リノベるが考えるスマートホーム戦略

2018年11月21日、テクノロジーによる「暮らし」の変革を志す、第一線の経営者・クリエイターが集う「LivingTechカンファレンス2018」が開催されました。2020年から5年後の社会のあり方を考える「POST2020」をテーマに、10以上のセッションを実施。その中のセッション「顧客志向から生まれるスマートホーム戦略」では、アマゾンジャパンの前田宏氏と柳田晃嗣氏、リノベる山下智弘氏、米DUFL共同創業者・塚本信二氏が登壇し、スマートホーム戦略の在り方などについてディスカッションしました。

技術が時間を生んで、豊かな生活に繋げていく

塚本信二氏(以下、塚本):時間を返す、余裕を与えるということで、リノベるさんもいろいろと取り組みをされているということで、こちらもうかがいたいです。

山下智弘氏(以下、山下):僕たちの考え方もすごく似ているなと思って聞いていました。お金の使い方をもっと変えられるんじゃないかと考えています。「家は一生で一番高い買い物だ」とよく言われていますけど、一生で一番高い買い物でも、そこの使い方は、もう少し賢くできると考えているんです。

僕らがおすすめしている買い方は、築20~30年の古いマンションを買って、自分好みに変えましょうという買い方です。残念ながら日本では、20~30年経つと建物の価値はある程度下がり切っていて、土地値だけになっているんですね。そこに、リノベーションで自分好みに変えたコストを加えたとしても、そのエリアで買う新築と比べたら3分の2ぐらいのコストで買うことができます。

「3分の1がバッファ」とスライドに書いていますが、余裕ができるじゃないですか。私は新築の会社、マンションデベロッパーにいて、その時にどうなのかなとよく思ったのが、家を買うために好きな車を手放すとか、家を買うために子どもの教育をこうするとか、旅行をやめるということでした。

それぐらい家が本当に好きな方だったらいいかもしれないですが、目的を考えると少しどうなのかなというシーンがあると思っています。バッファをつくって、その分で生活に、自分の時間に、教育にもっとコストをかけましょうということをお話しています。そのかたちがすごく近いかなと思って聞いていました。

塚本:顧客起点で時間を返す、余裕を与えるということで言うと、共通項が多いかなという感じがしますよね。こちらは非常に概念が似ているということで簡単に紹介しますが、先ほど申し上げたドキュメントのクラウドサービスの洋服を私どもDUFLという会社がやっています。

クラウドのクローゼットはアメリカだけですが、自分の洋服やゴルフクラブ、トレーニングシューズなど、何でもけっこうなんですが、そういったものを預けて、アプリ経由で宿泊先に送って置いて帰る。帰りはDUFLがそれを回収して、洗濯して、クリーニングして、それから次の旅を待つというようなかたちになっています。

簡単に言うと、1回の出張で4~5時間ぐらい、出張者に時間を返すというような考え方です。米国では福利厚生ですよね。荷物をまとめたり、クリーニングに行ったり、荷造りをしている暇があったら、家族と過ごしてください、家族と楽しむ時間に充ててくださいということです。

技術が時間を生んで、豊かな生活に繋げていくという事例の1つだと思って、今日はスライドに入れています。結果的に、時間を返すというのがキーワードになってくるのかなという感じが話の中でしています。

実際には、テクノロジーと言っても、倉庫のスタッフが一生懸命服を詰めているので、すべてが技術というわけではないですが、消費者側から言えば、かなりの時間が改善されるということで、このようなビジネスを展開しています。

日本の住宅業界ならではの事情

塚本:残り時間が少なくなってきているんですけども、とくに山下さんにお聞きしたかったのが、住宅業界というのはかなり古い歴史があるなかで、技術や新しいサービスが入っていくというデジタルトランスフォーメーションが業界にとってどういう意味を持つのかということです。このことについてフィードバックいただければいいかなと思っています。

山下:まさにそこに取り組んでいるわけなんですが、とくに日本の住宅業界というのは、世界的に見るとすごく特殊です。「新築神話」という言葉があるように、新築のマーケットなんですが、そこに合わせてどうしていくかは僕はあまり考えていないです。新築ですと、どうしても初めに全部をセットアップして「はい、どうぞ」というかたちなんですけど、そう考えないほうがいいんじゃないかと思っているんですね。

まさにこのiPhoneのように、自分や、その時のシーン、その時の自分との関係に合わせてどんどんアップデートできるものがあるのと同じようなかたちかなと思っています。家もリノベーションするタイミングで、自分に合わせてつくりかえるわけなんですが、冒頭で話したように、そのあとも、もう少しこうしたいということはどんどん変えていけると思っていて、それがテクノロジーだと思っています。

なので、前面にテクノロジーが出るということは、まったくなくて、それこそ何もないただの壁や床、キッチン、ダイニングテーブルです。そこにはテクノロジーがすでにベースとして埋め込まれていて、それがその時のシーンに合わせて活用されていくということを、いかに導入していくかということがポイントかなと思っています。なので、「スマートハウスはどうですか?」というふうに勧めることを僕はあまりしないです。

Amazonカスタマーレビューの効果

塚本:一方で、リノベるに来ているお客さんの90パーセントは、スマートハウスの話を聞きたいというような流れになっているわけですよね。

山下:スマートハウスの話をされるんですが「スマートハウスどうですか?」と言うわけではなくて、話し方としては、先ほどのお話のように、「スイッチプレートって、ないほうがいいと思いませんか?」というような話し方ですね。

塚本:技術に特化した話ではなくて、生活に寄り添った質問を答えるなかで、結果的にスマートハウスになるという。

山下:スマートハウスの話になって、スイッチプレートを付けるコストも下げられるわけですね。「確かにスイッチプレートがなくても(いいかもしれない)......、そんなこともできるんですか?」とお客さんが言って、「実はこんなテクノロジーを使えば、できるんです」というお答えをするというかたちで、自然と推し進めていくのがけっこうポイントなのかなと感じます。

塚本:まず消費者が何を求めているのかということに、耳を傾けないことには始まらないということは、一貫して、今日の話の中にあると思います。言い方はちょっとアレですけど、Amazonってありとあらゆるサービスを出していくじゃないですか。それは本当に消費者が必要としているのか、欲しがっているのか、どこでこういうものはポイントを測っているんですか?

前田:そうですね。Eコマースをamazon.co.jpというサイトでやっているんですけど、一例を挙げると、カスタマーレビューという、商品の下に、その商品を買って実際に使っているお客さまのレビューを書いていただいて、星5個でレイティングを付けていただきます。これは、お客さまの声を我々が非常に有効にちょうだいする手段になっています。

我々だけではなくて、商品を実際に作っているメーカーさんにとっても、非常に重要な声となっています。例えば、実店舗で同じ商品を売っていても、そういう声はメーカーさんにはなかなか戻らないんですね。

実際に、カスタマーレビューから新しく開発された商品もあります。カゴメさんというメーカーのトマトジュースがあるんですが、リコピンが10倍入ったものがあります。これは、普通のトマトジュースのユーザーからの「もっと濃いトマトジュースがあってもいいんじゃないの?」という声を、メーカーさんが拾われてつくったものですね。

例えばデパートで商品を買ったり、次に買う商品を探していたりする時に、まずインターネットでAmazonに行って、Amazonのカスタマーレビューをチェックして、それを参考に買い物をされるというお客さんが非常に増えているというデータがあるぐらい、いまや、サイトで商品を見ているお客さまだけではないレビューの使い道が非常に増えてきていますね。

塚本:なるほど。あっという間に時間が過ぎてしまって、もうそろそろ終了です。今日、たぶんいくつかがキーワードとして出るだろうと思って、スライドに挙げてあります。

最後に、それぞれ短くですが、今後、テクノロジーと住宅リノベーション業界に新しい価値を提供していく時に......それはサービスだったり、Bに対してもCに対してもそうだと思いますけども、アドバイスなりガイダンスがあれば、一言ずついただいて、セッションをクロージングにしたいと思います。

タイムカプセル化からスマートホーム化へ

山下:今日はどうもありがとうございました。お話していたなかでいくつかキーワードが出てきていましたが、僕が一番したいのは豊かな生活を提供することです。そんななかで、テクノロジーがどうかはあまり関係ないかなと思っているんですが、すごく上手く使えるなと思っています。

先ほどのトイレットペーパーの置場のような話や、スイッチプレートの話だとか、いくつかありましたが、ユーザーがたぶん思っていないけども、ピンポイントでけっこう悩んでいる、もっとこうだったらいいのにと思っていることが生活の中に溢れていると思うんですよ。

みなさん、それぞれ違うと思うんですよね。そんなことが解決できるテクノロジーを多く使えば、解決できるものがたくさんあるんじゃないかなと思っています。これは今回のようなことが起点で、吸い上げながら返していくことができればいいなと考えています。

塚本::ありがとうございます。柳田さん、お願いします。

柳田晃嗣氏:今日は「LivingTech」ということで、住宅というものを考えた時に、今までの住宅の場合、10年の新築が最新モデルだとすると、それをずっと使い続けながら、なかなか中身は変わっていかない。

インターフォンを変えようと思っても、10年前のカタログを持ってこられて「このタイプじゃないと変えられない。あと、門柱をちょっとイジらないとダメなんですよ」というかたちになってくることが多いので、けっこうタイムカプセル化するんですよね。そういった、いままで当たり前だったところが、例えばAmazon Echoや声でスマートホーム化することできる。

しかも、それがタイムカプセル化するのかというと、クラウドなのでそこに存在しておらず、耳と口だけがそこにある。例えば、スキルが10個しか入っていない時に、スマートホーム化したとしても、100個、1,000個、1万個というかたちでスキルが増えても、自動的にそれが使えるようになっていく。

そういった、一緒に進化していって、生活とともに使われ方が変わっていっても、そこに優しくアシストすることができるような声のサービスが求められていて、非常に使っていただける。

まだまだ日本はスマートホームが普及しているとは言い難いと思うのですが、おそらく来年から非常に広がっていくのではないかなと思います。そういうところにまつわる、さまざまな体験をしていただくには、今日ご説明いただいたような体験スペースや、Amazon Echoというものをアドホックで買ってみて、使ってみて、スクリーンを使うとこんなことができるんだということを体験してもらう。

例えば、先ほどチラッと出ましたけど、年末年始、友人やご家族や親戚の方が来られて、夕方までリビングルームで話していました。夕食をどうしようと思った時に、じゃあ、出前館のスキルで出前頼んじゃおう、と。そこでリビングルームで「ピザが食べたい!」と出前を頼みました。そこからも会話は継続してやっていけるわけですよね。そんなかたちで楽しめる時間を使えるというのが素敵な生活で、そういったものをアシストできるといいなと思っています。

塚本:ありがとうございます。では最後に、前田さん。

高齢化社会をテクノロジーで解決する

前田宏氏:みなさんがお話されたこととだいたい同じなのですけども、スライドに書いてあることですと、ペインポイントへのアプローチや、時間を生む、といったところをどうやって、私がやっているEコマースで解決していくか。

課題としてこれから考えなければいけないのは、日本が置かれている高齢化社会のなかで、お年寄りがお二人で住まわれているといった家庭に対して、カスターマーセグメントを見て、どうやってソリューションを提供していくか。こうしたことは、たぶんAlexa、Amazon Echoにおいても同じような課題、将来の考え方で、リノベーションやバリアフリーとかもまさにそこを考えるべき。

そういう点においては、僕らのやっているEコマースも、単純に重いものを家まで届けてもらうというだけではなくて、買い物難民だったり、キーボードを使えなかったりする高齢者の方をどうやって、よりストレスなくサポートしていくかというところを、ぜひ考えていきたいなと思っております。

塚本:ありがとうございます。時間になりましたけども、みなさまのフィードバックを聞いていますと、ずっと一貫して消費者が主役で、テクノロジーは消費者のニーズをかたちにしていくためのツールであるということでした。今後は、スマートホームもそうですけども、住宅業界におけるテクノロジーのトランスフォーメーションを、関わっているみなさんと一緒にデザインしていくんだなという気持ちが非常に強くなりました。

質問の時間がなくなってしまいましたが、何かございましたらセッションの後に直接お聞きいただければと思います。ご清聴どうもありがとうございました。

(会場拍手)

司会者:登壇者のみなさま、大変刺激的なお話、ありがとうございました。

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