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顧客志向から生まれるスマートホーム戦略(全4記事)

『スター・トレック』のような世界を目指して――Alexaに実装された4つのキーテクノロジー

2018年11月21日、テクノロジーによる「暮らし」の変革を志す、第一線の経営者・クリエイターが集う「LivingTechカンファレンス2018」が開催されました。2020年から5年後の社会のあり方を考える「POST2020」をテーマに、10以上のセッションを実施。その中のセッション「顧客志向から生まれるスマートホーム戦略」では、アマゾンジャパンの前田宏氏と柳田晃嗣氏、リノベる山下智弘氏、米DUFL共同創業者・塚本信二氏が登壇し、スマートホーム戦略の在り方などについてディスカッションしました。

Amazon Dash Buttonの可能性

塚本:続いて、前田さんにお聞きしたいです。先ほど(Amazonは)2000年からずっと日本でも展開されていたというお話がありましたが、さまざまなサービスを顧客視点に立って、ニーズを吸い上げて作っていらっしゃるもの、立ち上げられたサービスは多いと思います。消費者の動向自体が、買い方、探し方において、どういったかたちで変わっていっているのかということを少し紐解いていただきたいなと思っています。

前田:そうですね。消費者の購買行動の変化には技術やデジタルが深く関わっています。例えば、Amazonは1995年からアメリカでスタートしていますが、その前は、週末にスーパーマーケットなりホームセンター、日本であればコンビニに行って、必要なものを買うというのがショッピング、買い物と言われていました。

ショッピングは大きく2つに分けることができます。例えば、女性の方に限らないのかもしれませんが、趣味がショッピング、買い物という方がいらっしゃると思います。自分のために、洋服やアクセサリーといった自分の好きなものを、お店に行って、実際に商品を比較してみながら買い物をする。男性の方であれば、例えば自分の趣味のものなどを週末に専門店に行って買い物をする。

これはもちろん1つのショッピングなんですけども、もう1つは、例えば、家のお水がなくなったからお水を買わなくてはいけないとか、洗剤がなくなったから洗剤を買わなくてはいけないとか、お子さんがいる方が、おむつがなくなったからおむつを買わなければいけないとか。こちらは「買わなくてはいけない」ということですね。

ショッピングの中でも、いわゆる「労働」に分類されるショッピングなんですね。だから、できるのであれば、なるべく時間を使わずに必要なものを買いたい。ショッピングは、大きくこの2つになります。私は消費材を担当しているんですけども、実は消費材が動くということの多くは、労働に分類される。(私は)そういった商品をたくさん売っているんですね。

2000年にAmazonが日本でスタートして、わざわざお店に行かなくても、自宅でコンピューターを使って注文をして自宅まで届けてもらうというネットショッピングがスタートしました。そして、2010年の少し前ぐらいから、家のコンピューターを開けなくても、みなさんのほとんどの方が持っているスマートフォンを使って、通勤中でも、会社のお昼休みでも、必要なものを買うことができるようになった。

スマートフォンを使って買うと、画面が小さいですから、大型のテレビや洋服といったものは、なかなか買わないですよね。どちらかというと、先ほど言ったように、洗剤や水など、繰り返し買うものがある。だから、よく使われている機能としては、購入履歴から買うとか、前に買ったものから選ぶといった機能で、そういったボタンから入っていって買うことが多いわけです。

私どもは2年前に、Dash Buttonを、IoTのデバイスの1つとして発売しました。お客さまに1回ボタンを押していただいて、例えば、洗剤のアタックを買っていただくと、その500円をお客さまにお戻しするので、このボタンは正味タダなんです。自分が使っているブランドの洗剤のボタンを洗濯機の近くに貼っていただく。

メーカーさんからちゃんとボタンとして提供されていれば、そのボタンを買って、冷蔵庫のところに貼って、そのボタンを押していただければ、今度はスマホを見なくても、洗剤が切れそうになった時にすぐに洗剤が家に届くというものを発売しました。

塚本:Amazon Dash Buttonというのは、いま何種類ぐらいあるんですか?

前田:130種類ぐらいありますかね。

買い物を自動化する革新的な機能

塚本:今日のトピックは、ハウスホールドに入っていくテクノロジーです。購買動向の併用が、けっこうエッジが立ってきていると思います。Dashボタンがあって、その次にEchoがあってという感じですね。

前田:そうですね。多くの方がスマートスピーカーを使っていらっしゃったということなので、今度はボタンを押さなくても、声で、例えば「Alexa、洗剤を注文して」と言うだけで、もちろん値段やお届け日の確認の画面はありますが、コンピューターのキーボードとかを使わずに買い物ができる。

そして、「Amazon Dash Replenishment Service」は、さらに進化したかたちです。例えば、洗濯機やコーヒーマシーンが、自分で必要な洗剤やコーヒーマシーンのカプセルを注文してくれる。

Dash Buttonだと自分で使っていたらボタンを押す必要があるんですが、「Dash Replenishment 」ですと、例えば、最近の洗濯機には、洗剤や柔軟剤をそのまま入れられるものがありますが、いまの洗濯機は洗剤がなくなると「洗剤がなくなりました」という表示が出るんですね。

「Dash Replenishment 」に対応した洗濯機やコーヒーマシーンであれば、それを自動的にアプライアンスが判別して、使っている人に「注文します」という確認をして、よければそのまま注文する。アメリカでは、量販店に売られているほとんどのプリンターには、実はその機能が入っておりまして、プリンターのインクが減ってきたら、自動的にそのメーカーのインクを注文してくれる。

塚本:どういうものか(動画を)流してみましょうか。

前田:そうですね。

(動画が流れる)

いかがですか? さきほど言った、労働に分類されるようなショッピングがなくなる技術が、もう本当にすぐそこまできているんですね。いまご覧いただいている写真は、実はペットフードのフィーダーとして、実際に商品が出ていますし、おそらく近い将来、日本にも入ってくると思います。

フィーダーを使ってペットのご飯を自動的にあげるんですが、ペットフードの重量を量っていて、なくなってくると、そのペットフードを「それではいま注文します」というのをフィーダーが教えてくれて、よければそのまま注文できる。

スマートホームの中の、スマートアプライアンスというものの、いくつかの事例は、本当にすぐそこまできているということなんですよね。

塚本:先ほどおっしゃった、買い物を自動化するというのは、とくに必要ないものだと思っていますので、確かに、日々やらなければいけない家事に追われるといったことを、こういったテクノロジーで解決していければ、提供するほうも提供されるほうも、よりよい時間を過ごせるだろうと思います。

テクノロジーは設計の仕方さえも変える

塚本:山下さんは、自分の家を2重扉にしたり、テクノロジー漬けにしたりしているとお聞きしましたけど、こういうのは実際に欲しいですか?

山下:そうなんですよ。僕は築50年の家に住んでいるんですね。築50年のマンションをリノベーションして住んでいるんですけど、いま塚本さんがおっしゃったように、中はかなりスマートホーム化されていて、家に近づくと勝手に鍵も開きますし、エアコンも付くし、お風呂も沸きます。

先ほど前田さんからもありましたが、面倒くさいのが労働に値する買い物は、けっこう夫婦喧嘩になりますよね。「なんで買ってないの」という話によくなるので、それが防げるだけでも、すごくいい商品だなと思って聞いていました(笑)。

塚本:そのためにできた商品ではないと思いますけど、そういうことも解決できるだろうということで(笑)。

山下:そうですね(笑)。例えば僕たちは、トイレを設計する時に、トイレットペーパーの補充をどこにどう置くかまで設計するわけですね。そういう時に、1袋置いておけば安心な方と「いや、2袋ないと心配だ」という方がもちろんいらっしゃるので、そのために大きなスケールをとらなくちゃいけません。これがあれば、そのスペースの無駄が省けるじゃないですか。だから、設計の仕方がすごく変わってくるような商品になるんだろうなと思って聞いていました。

柳田:お客さまがやりたいのは、コーヒーであれば、コーヒーが飲みたいんですよね。コーヒーを飲むという行為がお客さまの望みであって、コーヒー豆を買って置くことではないですよね。

塚本:そうですよね。以前、柳田さんがおっしゃっていた、「芝生を刈るために、庭を芝にしているんじゃないんだ」というキーワードが非常に印象深くて。確かにそういったことするためにというよりは、便利であればそれに越したことはないということですね。

『スター・トレック』のような世界がコンセプト

塚本:では引き続き、さきほどの動向やEcho周りの話を、マップでもありましたけど、柳田さんにぜひしていただきたいです。最近やっとスクリーンが付いたものが出てきて、私の家も4台ぐらいEchoを使わせていただいているんですけども、どうしても、中が見えなかったり、どう使い切ればいいのか分からなかったり、一消費者として疑問が残るようなフェーズだと思うんですよね。

ただ、今後いろんなことを取り組まれていって、どういうふうに展開をしていくのかということも含めて、お話いただけると非常に参考になるかなと思います。

柳田:Alexaのテクノロジーを使って、Amazonのブランドでご提供しているデバイスの名前がEchoです。EchoはAlexaが使えるAmazonブランドのデバイス、Alexa自体が音声、ボイスファーストと呼んでいる音声ファーストのテクノロジーということで、クラウドベースのサービスを提供させていただいているんですね。

先ほど実は、ショッピングの購買活動のところでもEchoの写真が出ていました。もちろんAmazonのビジネスの大きなところは、ショッピングであるんですが、実は、EchoやAlexaは、ショッピングをしてもらうために作られたものではないんですね。

やはり、Amazonのお客さまでなくても構いません。日常生活の中で、声からスタートすることによって、今までなくそうとは考えておらず、当たり前だと思っていたタスクが1つか2つぐらいあるんだとしたら、それを外してあげればどんなに便利になるんだろうかところから始まりました。

コンセプト的には、1966年にアメリカでスタートして、いまでも映画化されている『スター・トレック』というテレビシリーズで、その中ではコンピュータが声なんですね。(コンピュータと)ほとんど声でやりとりをする。

そういったものを、実は創業者のジェフ・ベゾスも好んでよく話をする機会があります。そういうなかで、なんでいまどき、声でコンピューターを使えないのだろうかという疑問点が浮かび上がりました。シンプルな疑問ですよね。そういうところから、このサービスはスタートしているという背景があります。

Alexaに実装された4つのキーテクノロジー

柳田:声でできるようになれば、どんなに便利なんだろうかというところで、最初にアメリカで、一般家庭の方に使っていただくようなかたちでAlexaが紹介されました。

実際に使ってみると、驚くほど便利だということで普及してきました。そして、日本では、ようやく2017年の11月、招待制という非常に変わったかたちで、ご招待者のみ購入できるかたちでスタートして、2018年の3月にようやく、みなさんが買いたい時に買えるという状況になりました。

実はAlexa自体は、スタイル学習、自動音声認識、自然言語理解、音声合成といった4つのキーの技術を使って、提供しているサービスになるんですね。

AIスピーカーと呼ばれているんですけど、私どもはまだAIスピーカーという言い方はしていません。AIというテクノロジーのいくつかのテクノロジーを使って......AI、人工知能というと、そこに意志があって、ものを考えるように先行されるケースがあるんですけども、そうじゃなくて、AIのテクノロジーを使って、お客さまが話された声を認識して、その意図を汲み取る。

実はユーザーが声をかけるわけですよね。そこにはデバイスが必要なので、耳になってくれるものが、Echoのデバイスになります。そこで何が話されたのか、まず言葉を認識して、その言葉がどういう意味合いを持っているのか。言葉どおりだけではなく、意図があるんですよ。

「天気予報を聞かせて」と言ってくださる方は非常にストレートで、わかりやすいですけど「今日、傘は必要かな?」と言った時に、EchoもしくはAlexaが「Amazonでは次の傘が一番人気で売れております」という説明をしたら「違うよ。今日出かけようとしているんだよ。今日雨が降るかどうか知りたいんだよ」となってしまう。意図が違うんですよね。「傘を買いたいんだ」と言えば、そういう意図なんですけど。

いまの発話がどういう意図を持っているのだろうかということを理解して、その天気予報を提供しているのがYahoo天気さんだとしたら、Yahooさんにリクエストを渡して、そこからそこの場所や、今日の天気予報なのか、明日の天気予報なのか、週間天気なのかということを確認したうえで、戻してもらって、それを聞き取っている方がわかる言葉で発話をしてあげる。

もし必要であれば、予約などの場面で、予約のコンファメーションナンバーなどがある場合には、下の携帯もしくはパソコンのスクリーンに、そういうカードを送ってもらうことによって、すぐにメモをとる必要もない。それを持って出かけるだけという状況までやるという、この1つのサイクルがAlexaとの会話という感じになるんです。

塚本:なるほど。たぶん、実際に買った人の多くは、まだ活用しようとしている段階だと思います。こちらにいただいているような、さまざまな種類のデバイスも出てきています。

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