さまざまな人種のさまざまな目の色

ステファン・チン氏:青、緑、茶色、ヘーゼル(くすんだ赤みの黄色)など、世界中にはさまざまな色の目をした人がいます。

眼球の色は、化学的・構造的の違いにより決まります。目の色の違いにより見えるものが異なると考えるのは理にかなっているように思えます。しかし、科学者たちはそれを証明する証拠をつかめていません。健康上の理由で目の色が異なる場合を除いては、眼球は全て同じなのです。

目の色は目の「虹彩」にどれくらいの色素があるかによってほとんど決まります。虹彩とは光を取り入れてくれる、眼球の真ん中にある黒い穴、瞳孔を取り囲んでいる、色のついている部分を言います。

茶色の目の人たちは濃い色の虹彩をしています。なぜなら彼らの遺伝子のDNAコードがメラニンを多く作り出すよう働きかけるからです。茶色がかった黒の色素は光を吸収します。

それに対して明るい目の色の人たちはメラニンの量が少なく、多くの光が目に入ってきてしまいます。それゆえ、目の色が明るい人たちは蛍光灯の光や太陽の光に比較的敏感なのです。

しかし全てがメラニンにかかっているというわけでもありません。青色や灰色は、コラーゲンなどの構造繊維の量と構造により決まります。構造繊維は光を微妙に異なる方向へ散らします。そうとはいえ、目の色が異なれば、取り入れられる光の量も異なるはずです。

もしそうなら、目の色が違えばさまざまな目の色を比べ物の見え方も違うのではないかと思われるかもしれません。例えば一方は他方よりものがよく見えるのではないかと考えられるかもしれません。しかし簡潔に結論をお答えしてしまえば、その答えはノーです。

研究結果は、目の色の違いにより物の見え方が大きく異なるという証拠をつかめていません。とはいえ、明るい目の人たちは、光がより多く入ってくるために晴れの日は眩しくて不快に感じるかもしれません。生物学者の中には、明るい目の人たちはその状態ゆえに、曇りの日や夜など、薄暗いところではそうでない人に比べてよく見えているかもしれないという人もいます。

しかし今のところはそれも証明されていません。興味深いことに、研究によれば濃い色の目を持つ人の方が色を識別する能力に欠ける傾向があることがわかっています。しかしそれは瞳孔のサイズなど、被験者の目の違いによるだけかもしれません。

目の色で運動能力が異なるのは本当か

よく言われている奇妙な現象に、目の色の違いにより運動能力が異なることがあります。70~80年代に行われたいくつかの研究結果によれば、濃い色の目のほうが、10~30ミリ秒ほど反応する速度が早いことがわかっています。濃い色の目をしている人のほうが、向かってくるボールを打ったり、ボクシングをしたりといった素早い反応をするのに長けているという人もいます。

一方、薄い色の目をしている人は反応が求められない、ボーリングやゴルフに長けているというのです。もしかしたらそれはメラニンが吸収する光の量や質と関係があるのかもしれません。

しかしこの仮説は実際、視力とはあまり関係がないかもしれません。虹彩にあるメラニンが、中枢神経系の神経メラニンのレベルと相関していて、それと関係のある色素が神経信号のスピードを早めているのかもしれません。

しかし一般的には、さまざまな目の色を比べた研究は、規模が小さかったり、統計が怪しかったりするのです。最近行われた研究では、同じ結果が出ていません。ですから、虹彩が視覚に影響を与えるかどうか、はっきりとしたことは言えません。

もしそうであったとしても、ほとんどの専門家はそれによる影響は極めて少ないと述べています。虹彩の色が与える影響は目の健康に関するもので、色の薄い目のほうが黄斑変性症などの病気になる確率が高いです。黄斑変性症とは、視覚の一部が欠ける病気です。

ということは、青色の目の人はサングラスをかけるように気をつけたり、緑色の野菜を多く食べることにより黄斑を健康的に保ったりする必要があるのかもしれません。とはいえ、そのようなことは目の色に関わらず私たちが気にかける必要があるかもしれません。