キャリアカウンセラーとニートの座談会
川畑翔太郎氏(以下、川畑):みなさん、こんにちは。
一同:こんにちは。
川畑:本日は、株式会社UZUZとNEET株式会社で「働くとは?」「ニートとは?」というテーマで、座談会形式で一緒に話していきたいなと思います。今日は株式会社UZUZの代表の今村と、NEET株式会社会長の若新さんに来ていただきました。
ニートについて、働く(こと)について、赤裸々に語り合っていきたいと思いますので、今日はよろしくお願いします。
(一同拍手)
テレビっぽいですね。まず最初にどれからいきましょうか。UZUZのほうは、若者に仕事を紹介する側のキャリアカウンセラー3人に来てもらいました。あとはNEET株式会社から……これはどう紹介すればいいですかね。(みなさん)今、ニートをしているということになるんですか?
アウターキー氏(以下、アウターキー):えっと……。(自分が)“がちニート”で、(なかさんが)ニート代表……。
炎上男氏(以下、炎上男):プラス、炎上マンですね。
川畑:なるほど。じゃあ簡単に、自己紹介みたいなことやってもらったほうが(笑)。
森川剛氏(以下、森川):あんまり炎上しそうになかった。わりとおだやか。
(一同笑)
川畑:どっちからいこうかな。じゃあ……。
土田沙来氏(以下、土田):UZUZから。
川畑:UZUZからいきましょうか。じゃあ、今村くんからいきましょう。
今村邦之氏(以下、今村):僕から。そうですね……UZUZの代表取締役をやらせてもらってます、今村と申します。僕は1社目を9ヶ月で退職して、そのあとニート期間が約2年間ありました。
そのときはずっと働いていなくて、昼間に起きてサッカーをして、みたいな生活をしていました。そういった方たちの仕事を支援する会社をつくりたいなと思って、今に至るという感じでございます。
ニートであることを詐称?
若新雄純氏(以下、若新):なんかでも、あれですよね。こういう、「俺もニートをやってました」という人のなかで成功してる人は、ニートであることを詐称してる人がいるじゃないですか。
(一同笑)
若新:本当はぜんぜんニートじゃなくて(笑)。
川畑:ニートを詐称してるんですか?(笑)。
若新:本当は収入があったとか余裕だったみたいな(人なんだけど)、共感してもらうために(ニートだったと言う)。
土田:なるほど。
川畑:エセニートかもしれないですね。
若新:(今村さんは)どれくらい“がちニート”だったんですか?
今村:まあでも、前職の貯金とかはなかったので。そういう意味だと、鹿児島の親から。
若新:仕送りをもらって?
今村:仕送りをいただいて(笑)。それで生き延びていましたね。
若新:ああ、じゃあ本当にもうグダグダしてた。
今村:そうですね。だいたい1時ぐらいに起きて、『バガボンド』という漫画を読んで、サッカーしたあとでスーパーで30%引き(の総菜を買ったり)とか。
若新:これは、けっこうニートって呼べますかね。
森川:1人でサッカーをするんですか?
今村:いや、近くの小学生と。
土田:小学生(笑)。
川畑:小学生とサッカーしてたんですね。
今村:別に(家に)こもってたわけじゃないですね。サッカーは行ってました。
若新:じゃあ、「ニートであった」と認定しましょう(笑)。
土田:よかったですね(笑)。
川畑:認定してもらった。
土田:じゃあ、次。森川君お願いします。
森川剛氏(以下、森川):はい。初めまして、UZUZの森川といいます。現場でキャリアカウンセリングと、20代の既卒と呼ばれる人や短期離職とか第二新卒とか、20代のキャリア支援を主にやっております。
僕はちょっとニートだった期間はなくて、まわりにもいなくて。正直ニートのことはあまり知らないので、ぜひいろいろ教えてください。お願いします。
「NEET株式会社に最後の望みをたくそう」
脇本桃子氏(以下、脇本):はい。UZUZの脇本です。よろしくお願いします。私も森川と一緒で、今はカウンセラーをやっています。私もけっこう、ストレートで大学に入って新卒で就職して、離職期間がなく、今UZUZに転職しています。フリーターもニートも、どっちかというとやっていない側ではあるんですけど。
若新:なるほどね。いいね。
脇本:はい。きれいに生きてきました(笑)。
若新:ストレートできれいな人が、ニートを上から目線でカウンセリングするっていうね。
(一同笑)
若新:最高です。最高ですよ(笑)。
土田:お願いします。若新さんからのほうがいいですか?
若新:もうぜんぜん、どうぞ。
炎上男:炎上マンを名乗っています。自己紹介を手短にやってください、って言われても、まず中学校を卒業して高専に入って、そこが合わなくて1年経たないでやめちゃって。そのあといろいろあって、そのときもニートっぽい生活をしながら大学に入って。「これで普通の人生に戻れるかな?」って思ったら、大学も合わなくてやめちゃいました。
それで「ああ、もう俺だめだ」となって。そのあとまた一念発起して起業塾に入って、でもここも合わねえ。海外に行く、でもここも合わねえ、ということで「ああ、もうだめだ」となって。
「NEET株式会社に最後の望みをたくそう、ここでがんばろう」ということで、今、炎上男を名乗って最後の望みをかけて、どうやったらうまくいくかな? なんて考えて動かしてます。
基本的にニートで、家にいるときは「ああ、もうだめだ」というときと「がんばるぞ」というときの差がめちゃくちゃ激しいです。
若新:まだね、まだ炎上力がそんなに(ないわけ)だから。
(一同笑)
森川:いい人!(笑)。
若新:炎上力がまだ(笑)。Cクラスぐらいですから、がんばってね。S級の炎上マンを目指そうと思ってるけど、やっぱりS級の炎上をするためには、大企業で働き続けられるぐらいの能力がいるんじゃないかな。
土田:ありがとうございます。じゃあ、なかさんお願いします。
在学中の就職活動はやりづらさがあった
なかさん氏(以下、なかさん):NEET株式会社のなかと申します。彼(炎上男)も本名じゃなくてニックネームみたいな話がありましたけど、NEET株式会社内部ではニックネームで呼び合っていて、あんまり本名でやり取りしないんですよ。
若新:そうだね。自分の過去は捨てる、ってことでね。
なかさん:僕はほぼ本名ですけど、(NEET株式会社の)内部ではなか様と名乗ってます。大学でそう呼ばれてたんですよ。
若新:へえ。王子様キャラだったの?
なかさん:いやあ……サークル仲間にそう呼ばれてたんですけど、できるキャラみたいな感じで見られていて(笑)。
若新:まじで? できるキャラからのニート。いいね。
(一同笑)
なかさん:僕は大学を2年留年して卒業したんですけど、留年して人より遅れて就活をはじめると、なんていうか、いろいろ冷めた目で見ちゃうというか。あとは、大学を卒業する前に、新卒一括採用の形式で、在学中に就職活動をしなきゃいけないというのが、どうもやりづらいなという気持ちがありました。
自分の中に「卒業してから就活をはじめるくらいでちょうどいいんじゃないかな」という思いがあったので。卒業した直後にタイミングよく、NEET株式会社の設立メンバー募集というニュースを見て、これは今の自分の状況にちょうどいいし、とてもおもしろそうな試みだなと思いました。
わりと長期的にニート経験をしたというよりは、いろいろある仕事(のなかからやりたいこと)を決める一つとして、積極的な理由でNEET株式会社に参加しました。参加してからは、1時間1,000円でいろんな遊びに付き合う「レンタルニート」というサービスだったり、あとはもともと好きだったプラモデルをつくる、プラモデルの制作代行業というサービスをやったりしてます。よろしくお願いします。
川畑:お願いします。じゃあ最後、アウターキーさん。
NEET株式会社に入社試験はない
アウターキー:はい。NEET株式会社2期入社の平取締役のアウターキーです。みんな経歴を言ってるんで……大学で、自分はゲーム専攻でした(笑)。ゲーム学科を卒業しまして、それで基本的に就活的なことをやらずに、1年間ほどバイトは挟んでるんですけど、そのままニー株(NEET株式会社)に入社した感じですね。
ニー株のことは最初から知ってたんですけれども。ニー株に注目して、下調べとかをしていたうちに1年ぐらい経って、2期の募集がはじまったところで入ってきた感じですかね。ほかになにを言えばいいのかな。
川畑:1期、2期とかあったんですけど、何期まであるんですか?
アウターキー:今のところ2期までしかいっていなくて。
若新:意外と、2回しかメンバー募集をしてないんですよ。
川畑:ああ、そうなんですか!
若新:はい。
川畑:常に募集じゃなくて、1回目と2回目しか。
若新:メンバーを増やすのは、手続き的に超大変なんで(笑)。
川畑:ああ、そっか。
土田:なるほど(笑)。
アウターキー:次の(募集は)いいんですか?
若新:まあでも、また次も募集します。(注: 2018年8月27日から第3回取締役募集を開始)
川畑:3期があるということですね。
若新:本当は、もうこれからは1年に1回は募集したいなと。
川畑:なるほど。
脇本:入社試験ってないんですか?
若新:ないです。ニートになるのに試験もくそもない。
(一同笑)
川畑:じゃあ、「(NEET株式会社に)入りたい」と言えば入れる。
若新:入れます。
なかさん:書類審査や面接はいっさいありません。
アウターキー:入社の際に……そうですね。なぜ就職したかったのかとか。それはまたあとのほうがいいのかな?
土田:そうですね。またあとで。
アウターキー:はい。じゃあそんな感じで、お願いします。
土田:じゃあ、最後に。
若新:若新です。よろしくお願いします。NEET株式会社は、もう想像をはるかに超えて盛り上がってます。ノーベル平和賞をとりたいと思っています。
(一同笑)
よろしくお願いします。
プラモデルの制作代行業
土田:さっそくテーマをお願いします。
川畑:ただ、あれですよね。ニートになった経緯はなんとなく話してもらっちゃったので、これは飛ばします。
土田:「1日なにをやってるか?」とか、聞きたいですね。
今村:個人的には、プラモデルで生計を立てるって、どういうふうにやっているのかなって。
なかさん:はい。プラモデルの制作代行業というのはつまり、よくガンプラだとか戦車とか戦闘機とかありますけど。僕はガンダムのプラモデルが好きで、学生時代からサークル活動でエアブラシ塗装をしたり、けっこう本格的な機材を使ってつくっていたんですよ。
大学に通ってるうちに、かなりそのサークル活動にのめり込んで、授業がおろそかになって留年したり、ということがちょっとあるんですよ。
川畑:留年理由にもなっていると。
なかさん:まあでも……そうですね。自分はどちらかというと、留年が決まってからやる気がわかなくなっちゃって。留年が決まった頃にあんまり(大学に)行かなくなった時期があったんですけど。
その頃も、ちょっと悩みもあったので、学生相談室とかに行くんですよ。そのときに大学のサークルの部室によく通って、授業が空いた時間にはプラモデル制作なんかもしていました。
「サークル活動は今後も続けたほうがいいよ」というアドバイスをもらったので、そのままやり続けてみようかなと思って。もともと、完成したものを売りに出したいという気持ちがけっこうあったんですよね。(プラモデルの)完成品がヤフオクとかで取引されることは昔から知っていたので。
ちょっとこれに挑戦してみようかなと思って。学生相談室の職員さんからは、「でも、卒業を目指すんだったら、今はそんなことをしてる場合じゃない」って言われたんですけど、どうしてもやってみたくて。相談室に通うのはやめて、授業に通いつつも、完成したプラモデルをヤフオクに出品しはじめたんですよ。
プラモデルを買ってもつくる時間がない
なかさん:やってみたら、わりと売れるようになってきて。だいぶいった頃は、元値が1,500円ぐらいものが6,000円とか7,000円とか、そのぐらい(で売れるよう)になりました。それを小遣いに使いながら、大学の5年目、6年目を過ごして。このプラモデル制作代行業をはじめたのは、レンタルニートをやりだしたあとなんです。
大学の頃にやっていたのを、一時期から、NEET株式会社でも趣味を活かしてやってみたいなと思って。要は受注生産みたいな感じで、注文を受け付けたら、そのものを送ってもらうか、キットを自分で仕入れるかして、完成品をお客さんに届けるようなかたちです。自宅の作業環境を使いながら作業をしています。
森川:それはどんな人が発注されるんですか?
なかさん:そうですね……。年齢とかは聞いてないんで、あんまり詳しいことはわからないんですけど。よく制作代行業をやっているという話をすると、「プラモデルって自分でつくるのが楽しいんじゃないんですか?」って聞かれるんですけど(笑)。
僕の大学のサークルは模型部のような漫画部のようなサークルで、仲間たちと一緒にプラモデルをつくっていたんですけど、卒業して就職して時間がなくなってくると、ものはけっこう買うんだけど、つくる時間がなくなったという人がけっこう多くて。
つくる時間がなかったり、つくるスキルがなかったり、環境がなかったり。あとは、子どもができてから自分ではなかなかつくらなくなりました、という人がけっこういるらしいんです。なので、キットの値段よりももうちょっとお高い製作費を出してでも、精工な完成品が欲しいという人にはけっこう需要があります。
川畑:ちょっと質問してもいいですか?
なかさん:はい。
川畑:「ニート」という言葉に対して、どういうイメージを持っているのか。このあいだ話をしたときに、NEET株式会社さんのなかでも違ったなと思っていて。とくに、こっちも(ニートに対する)一般的なイメージって思っているじゃないですか。
そもそも「ニート」という言葉自体の意味ってなんなんですかね。例えばこっち(UZUZ側)だと、どういうイメージを持っていますか?
小学5年生で「将来の夢はニート」
今村:UZUZ単体でいうと、そもそも大学を卒業して働いてないとか、働いていたけど辞めた方とか、今離職中の方のサポートしかしてないんです。なので、どちらかというと、一般のみんなが知っていることよりは、(ニートの)体制というか(笑)。そういうことを知りすぎているということはあるし。
川畑:よくお会いしているし。
今村:非常によくお会いしているので。しかも、自分もそう(ニートだった)というか、悪いイメージはあんまり持ってないかもしれない。
川畑:悪いイメージを持っている人はいますか?
炎上男:僕は過去形なんですけど、小学校5年生のときに、将来の夢のところに「ニート」って書いて、親と先生にめちゃくちゃ怒られたことがあって。
川畑:小学校5年生のときに「ニート」って書いたんですか?
森川:それが一番炎上したんじゃない?
(一同笑)
炎上男:その頃もう、家のことなんですけど、うちの父親が少子高齢化のことを延々としゃべっていて。
川畑:家で?
炎上男:家で。それでもう腹が立って、「どうせ貢献できないくせに」と思って、将来の夢は「ニート」って書いて。
川畑:(笑)。
炎上男:それでもう「なんだ!」ってめちゃくちゃ怒られて。
川畑:なにを書いてるんだ、と。
炎上男:なにを書いてるんだってめちゃくちゃ怒られて、結果的に今、実現しちゃってて。
(一同笑)
土田:夢が叶ってる(笑)。
今村:そんなことあるんですね。
炎上男:そうなんです。それで思ったのが、ニートという言葉の殺傷能力が、いまいちなくなってきちゃったなって。
若新:殺傷能力?
炎上男:僕が小学生の高学年ぐらいの頃だったら、「ニートです」と言った時点で「わあ! 大事件だ、この世の終わりだ!」って、わーってなっちゃったけど。
(一同笑)
アルマゲドンだ、みたいな。
なかさん:ニートというと、バカにされるということ。
炎上男:バカにされるみたいな。(ニートという)言葉が出てきて大爆発して、どうすんだ、みたいな。
アウターキー:その件でいうと、この前の打ち合わせと同じことを言ってもいいですか?
土田:もちろん。
川畑:(映像を見ている)みんな、聞いてないですもん(笑)。
ニートの多数派は「働きたいけど働けない事情がある人」
アウターキー:たぶん、わりと一般的なニートのイメージは、働く気がなくてなんのやる気もなくて、ただぐーたらしてるだけの人間、というのが一番多いと思うんです。実は、NEET株式会社の有志が集まって、過去にちょっとした調べ物をしたことがありまして、それを本としても出しています。
そこで、ニートについてちょっと調べたことがあるんですね。ニートっていったい、どんな人たちで成り立っているんだろうということを、実際にアンケートを取って、「あなたはなぜニートになったんですか?」と聞いてみたことがあるんです。
もっとも多い割合を上から順番に言っていくと、最初は普通に働いていたんだけれども、なんらかの理由で働けなくなった、もしくは、その会社で失敗してトラウマになってニートになってしまった、というパターンが一番多いです。
2番目に多いのが、実はなんらかの精神、もしくは身体的な障害を持っているせいで、働きたくても働けない、という人たち。それ以降に、わりと少数派で、例えばぐーたらしていて働く気がないとか、そもそも働きたくないとか、そういう人たちが出てくるんですね。
そういう側面を考えてみると、実はニートってそんなにぐーたらしているんじゃなくて、働きたいんだけど働けない人たちが意外と多いというのが(わかりました)。
森川:(ニートに)なりたくてなってるわけじゃない。
アウターキー:はい。
川畑:世の中だと、(ニートに対して)その3番目の印象をけっこう持っているじゃないですか。それはなんでですかね。
若新:それは、自分たちよりもだめな人間がいる設定にしておくと(いうことです)。
川畑:ああ。
若新:サラリーマンをやっていて、正社員をやっているけどイケてない人たちが、「俺のほうがマシ」と思えるので。
川畑:「俺よりもっと下がいるから」ってことですか。
若新:そう。だから重要な役割なんですよ。俺たちよりだめな人間がいて、「こいつらのようにはなっちゃいけないよ」という層を設定しておくと、給料が上がらないとか、満員電車がつらいなとか、残業がつらいなというサラリーマンが、まだ(自分のほうが)マシだと思える。
それは、めちゃめちゃ感じますよね。だって、「この人たちはかわいそうな人だ」という認定だけだったら、自分たちのほうがマシとは思えないじゃないですか。
川畑:そうですね。「不幸だな、かわいそうだな」と思っちゃうだけですもんね。
発展途上国にニートという概念はない
若新:そう。ニートという言葉は、東大の玄田(有史)先生がイギリスから輸入してきたわけだけど、この言葉が登場したときに、(ニートが)何者なのかがすごくわかりづらいというか、簡単にこういう原因だと言い切れない存在だって、本当に紹介してるんですよ。
僕は彼らと付き合っていて、本当にそうだと思うんだけど。でも、世の中にとっての理想のストーリーは、「俺らよりももっとゴミなやつがいて、俺らはちゃんとやってるぜ」と思わせる役割を果たしている気がするよね。みんなニートにそこを期待している。
だから、さっき言っていた殺傷能力というのは、「ニートなの!? マジやば!」と言っておくことによって、「俺らはニートじゃないぜ」という安心感があったんでしょうけど。それがだんだん、「ニートってそんなやばい問題(というより)、身近だね」みたいな感じになってきて。
「誰がいつニートになるかわからないよね」となってくる。ニートをゴミ扱いしていると、今度は自分がニートになったときにやばいですからね(笑)。
川畑:確かに。ニートっていつ頃出てきたんですか? 気付いたらあったんですけど、最近ですよね。
若新:確か15年ぐらい前じゃないですかね。玄田先生が輸入してきたのがそれぐらいだと思うけど、イギリスで生まれた言葉ですから。
アウターキー:イギリスで生まれて、日本とか韓国……あと台湾あたりに広まった言葉ですね。
今村:へえ~。
川畑:使われている国がけっこう限定されているんですね。その前は「フリーター」という言葉がありましたよね。当時のフリーターが今でいうニートの役割みたいな感じで。
今村:そうだね、確かに。
川畑:「お前フリーターなの?」みたいなイメージ。
若新:でも、たぶん、(その言葉が)使われている国を前提に考えると、発展途上国ではあんまりニートという概念は存在しない。働いてなくても、みんな生活はできているので。一応、目先の暮らすことには困らない程度になってきた世の中で生まれつつある問題ですよね。
イギリスも今、だんだん給料が上がっていくような時代じゃない。税金も高いし。ざっくり言うと、「働きすぎてもなんの意味があるんだろう」って、なんとなく若者がこれ以上成長しない未来に希望が持てないような中で、ニート的なものが生まれてきてると思うので。それはなんか感じますけどね。
これでよかった? 台本通りだよね。
アウターキー:あ、そうなんですか?
若新:いやいや(笑)。
(一同笑)
いつの時代も一定数のニートは存在していた?
炎上男:でも、名前を付ける以前にも、ニート的な人はけっこう存在していたんじゃないかなって、僕は思っています。
川畑翔太郎氏(以下、川畑):そうですよね。
炎上男:歴史上の人物でも、ヒトラーなんかは政治家をやる前は完全にニートだし。日本でも『海国兵談』って本を書いた林子平という人をイメージすると、やっぱりニートって、いつの時代にも一定数いるんじゃないかなって。
川畑:名前が付いただけ。
若新:だから、やっぱりそういう問題をつくることが大事なんですよ。世の中には問題で食っている人がいっぱいいるから。「こういう問題があるよ」と認定すると、問題をなくさなきゃいけないとか、仕事が発生するじゃないですか。俺はそう思っていて。
社会をよくしようとビジネスをしてる人って多いから、そのためには問題がないといけないわけですよ。君たちが問題と認定されることによって、「こういう若者を減らさなければ!」という仕事が生まれて、そこに金が流れる。税金が流れて食える人がいると。だから、(ニートの)みんなは社会を食わしてあげてるんだよ。
(一同笑)
脇本:私たち(UZUZ)のことですよね(笑)。
今村:まさに。
若新:ああ、すみません。気付きませんでした(笑)。そんなつもりじゃないです(笑)。
川畑:問題だって言わないと、僕らも確かに飯が食えてないですもんね。
今村:そうですね。
川畑:確かにそうですね。問題だっていわれないと、「いやいや、普通でしょ」って言われたら、なんのキャリアカウンセリングをするんだろうとなってしまうので。問題ありですね。
森川:20歳を超えられた方に対しては、税金とかどうしてるんですか?
若新:税金は、年間百何万円以上の収入がなければ、ゼロ申告ができます。役所でゼロ申告というのをすれば、年金を全部払わなくても未納にならず免除になって、将来年金をもらうのに必要な月数にカウントされるんですよ。
それから、健康保険料も最低限の金額でしか払わなくていいか、あるいは親の扶養家族に入ったり。
森川:扶養で入っている。住民税とかも同じような(感じですか?)。
若新:住民税は、ゼロ申告すればタダです。だから、月8万円ぐらいまでしか収入がなかったら、永遠にゼロですね。でも、一応年金は、確か超最低限はもらえます。
携帯代ぐらい誰かに払ってもらえばいい
森川:じゃあみなさんは、月8万円の上限のなかで生活をされているということですか?
若新:もう8万円まで稼いだらやばいよね。
川畑:そんなにやばいんですか(笑)。
森川:ケータイとかどうしてるんですか? その、(炎上男の)ネックレスとか……。ずっと気になってた(笑)。
(一同笑)
炎上男:これは引っ越しのお手伝いに行ったときにぽろっと出てきて、「欲しいならやるよ」って言われて。
森川:ああ、俺が言われたのかと(笑)。ケータイとかって、どうされてるんですか?
炎上男:ケータイは……ちょっとぽろっと落としやすいんで、SIMフリーの頑丈なスマホを買って、ケータイ代は……。
森川:ちょっと安くなる。
炎上男:そう。実家のお金でなんとか。
森川:へえ……。
若新:ケータイ代って、月5,000円とかでしょ? それくらいは親とか、一生誰かに払ってもらえばいいよね。今だってすごいじゃん。親の世代で平均寿命が90歳ぐらいだから。親が90歳のとき何歳?
アウターキー:親が90歳のときですか? たぶん、まだ50ですかね。
川畑:そんな年上なんですか?
若新:40も上なの?
アウターキー:そのぐらい年上です。
若新:ちょっと特殊だね。
(一同笑)
なかさん:僕は60になる。
若新:でしょ? ということは、60歳までケータイ代は大丈夫ってことだよ。
川畑:(笑)。そうなると、親御さんがもし亡くなっちゃったらとか、たまに考えたりもするんですか?
若新:ぜんぜん大丈夫です。だって、生活保護がありますから。生活保護って、十何万円とかもらえるんですよ。
川畑:完璧な国じゃないですか。
なかさん:大丈夫ですか? ドン引きしてないですか?
(一同笑)
今村:確かに、と思いました。
努力しても全員が勝ち組にはなれない社会
若新:生活保護はもらうべきです。これはすごく大事なんですけど、みんな勘違いしてるんですよ。がんばって働いてる人やまじめに生きている人が「なんで保護しなきゃいけないんだ」と言うけど、生活保護がなくなったら、世の中の治安ってめちゃめちゃ悪くなるんですよ。
あれはいろんな条件があります。勉強ができなかったり仕事ができない人は、一定数いるじゃないですか。全員が努力しても、全員は勝ち組にならないので。自分が負け組から勝ち組になることはできても、全員が勝つことは、人間社会の構造上、まず不可能ですよね。
全員が超勉強しても、全員は東大に入れないので。全員死ぬほど勉強しても、誰かはFラン(偏差値の低い大学)になるわけですよ。自分個人で見ると負け組から勝ち組はあるけど、社会全体で勝ち負けがあるなかで、「負けたやつは死ね」となると、これは絶対に徒党を組んで暴徒化して、必ず世の中の治安ってすごく下がるんですよ。
川畑:確かに。
若新:だから、幸運なことに頭がよく生まれたり、勉強ができたり仕事ができたり稼げるような運に恵まれた人が、基本的には自分たちが安全な暮らしをするために、貧しい人や恵まれなかった人を税金などで養う必要がある。これをなくしたら、世の中は危険になります。
今だって生活保護とかが超充実してるから、そのへんに財布とかを置いても盗まれないわけじゃないですか。生活保護とかもらえないとなったら、マックでレジに行く間にカバンとか置いておけないから。そういう制度が整ってない国は、みんな生きるのに必死なので、盗んでいくわけですよ。
本当の理想は、食うに困る人が誰もいない状態がいいんですけど、それは理想論の話なんです。だって、これだけ世の中が高度化して、いつもなかさんが言っているけど、仕事というのは、レベルがどんどん上がっていってるじゃん。
(一同笑)
今村:なかさん……プラモデルの(笑)。
若新:運動会とかで全員は選抜リレーに出られないのと同じで、仕事にも得意、不得意はあると思うんだけど。仕事が苦手だとか、仕事がうまくできないという偶然に見舞われる人間は絶対いるので、別にその人たちは生活保護をもらったらいいんだよ。
ただ言いたいのは、生活保護をもらっても、その人の人生が幸せになるという保証はぜんぜんないことです。生活保護は、食えるという経済的な側面の話ですよ。
税金を払える側になれたことに感謝する
森川:みなさんは生活保護をもらってるんですか?
若新:まだもらってないよね。
炎上男:もらい方の勉強は、一応してます。
川畑:もらい方の勉強(笑)。
若新:親のお金があるうちは、生活保護はもらえないんですよ。親や身内が亡くなってピンチになって、50歳とか60歳でもう身寄りもなくて働けなくなったら、ちゃんと毎月十何万円をもらって、家にエアコンを付けてケータイを契約して生活ができます。
川畑:すげえ。
若新:ただ、それは生きていけるという話ですよ。
アウターキー:若新さん、ちょっといいですか?
若新:うん。
アウターキー:前提として言いたいんですけど。別に自分で金が稼げるんだったら、自分は生活保護とか使わずに普通に暮らしていくつもりはあるんですね。
若新:うん。偉い偉い。
アウターキー:結果的というか、現状の自分が稼げる状況にないので。
森川:じゃあ、さっき言っていたアンケート結果の1位、2位、3位のうち、ご自身は3位ではないニートということですか?
アウターキー:いえ、がちニートです。3位以降のニートです。
若新:わかるよ。もし自分が、自分の力で収入を得られる方に行けるなら行きたい、ということでしょ?
アウターキー:そうです。
若新:俺もそう思う。だから、たまに「俺らは一生懸命(税金を)払ってるのに、なんで生活保護を受けるようなやつを食わせなきゃいけないんだ」と言っているやつがいるけど、勘違いで。
そうじゃなくて、生活保護の財源になる税金を払える側にいけたことを、もっと感謝したほうがいいと思う。俺はいつも思う。俺はたまたま、いろんな条件が幸運で金持ちゾーンに入れたから、めっちゃ感謝してるよ。
ニートが不幸なのではなく、うまくいっている人がラッキー
若新:俺、よかったなって。でしょ? それで、税金を取られて生活保護を払うことなんか、ぜんぜんいいし。NEET株式会社は、今まで累計200万~300万円ぐらい使いましたけど、それでも、僕も一歩間違えればニートだったかもしれないのに、いろんな幸運と偶然に恵まれて、今の世の中の仕組みの上では稼げる。
偶然の才能とか能力をたまたま持っていたおかげで。江戸時代とかだったら刀で切られてすぐ死んでたと思うし。今の時代でたまたまインテリぶってしゃべったり、インチキなことを企画してもヒットするみたいな。
そういういい時代に生まれたから、あたかも成功したみたいになったけど、超幸運なわけ。めちゃめちゃ幸運と思ってる。だから、僕らみたいな人が税金を払うのはしゃあないよね、って。
でも、それで(ほかの人を)生かして、(その人に)どこかでチャンスがあって、社会が変わっていくかもしれない。社会に認められる能力は変わる可能性もあるじゃないですか。
川畑:そうですね。
若新:だから、僕は別に、経済的にはそれでいいと思います。経済的には食っていけるし、そのほうが日本は絶対平和なので。だからみなさん、稼いでいる人はちゃんと、生活保護の財源となるお金を払ったほうがいいと思いますね。それがなかったら、世の中ぐちゃぐちゃになっちゃう。
脇本:やっぱり、ニートはかわいそうみたいな感じに……。
若新:ニートがかわいそうなんじゃないんですよ。今の時代に、自分が満足できる仕事ができて食える立場にいけたことが、超ラッキーだと思いますよね。
川畑:ニートが不幸なんじゃなくて、うまくいっている人がラッキーだったという。
若新:うん。だって……人間って完全にフラットで同じ条件から、「よーいドン」じゃないじゃないですか。
川畑:そうですね。生まれたタイミングからもう(違っている)。
オリンピックメダリストが必ず受ける研修
若新:タイミングや条件とか、いろんなものが違うじゃないですか。それはもちろん、努力の影響もありますけど、やっぱりいろんな要素が絡み合っていると思います。
だから、できることなら人から金をもらって生きたいなと思ってるわけじゃなくて、彼(アウターキーさん)も言うように、できることならもらう立場じゃなくて、自分で稼ぐ立場にいきたいと思うんだけど。
俺だって、本当は運動会のリレーに毎回出たかったけど、そんなに足が速くなかったから、出してもらえないわけですよ。そこはもう仕方がないから、応援席で応援する立場に甘んじていました。斎藤佑樹じゃないけど、リレーで最後ゴールしたやつは、やっぱり必ず表彰式で「みんなのおかげです」って言わなきゃいけないんですよ。
オリンピックメダリストは、必ず研修を受けるらしいの。メダルをとったときのインタビューでは、まず「みなさんに感謝してます」って。「みなさんのおかげです」。それは、自分の力だけでとれたとなったら「は?」ってなるから。それでいいと思いますよ。
炎上男:銀メダリストが金メダリストを指さして、「こいつさえいなければ」と言ってはいけないという。
川畑:ああ、だからみんな同じようなことを言うんですね。
今村:でも、若新さんがお話している間、アウターキーさんとなかさんの顔がどんどん……。
川畑:そうそう、確かに(笑)。
今村:なんかちょっと意見があるんじゃないかな、って思っちゃうよね(笑)。
川畑:なかさんがぜんぜんしゃべんなくなっちゃって。
今村:なかさん、今のお話を聞いてどう……。こっち(UZUZ側)半分は「へえー!」って言ってたけど、こっち(NEET側)はなんか「うーん……」って(笑)。
川畑:普通はあっちが「おお、いけいけ!」ってなる感じなのに(笑)。
今村:そうそう。
なかさん:飛躍しすぎかな、という感じは……。
アウターキー:自分はバーッとしゃべりまくって、いろいろ言いたいことを言いたいんですけど(笑)。
若新:すみません、すみません。
川畑:なかさんとアウターキーさんの意見が。
アウターキー:なんだか今、機会を逃してなにを言えばいいかわからなくなってる(笑)。
(一同笑)