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第2回ミートアップ「働きがいのある会社トップ企業が語る。『働きがいのある会社の作り方』」(全3記事)

人事は“経営を支えるコンサルタント” 日本一働きがいのある会社に学ぶ、バックオフィスの役割

2018年5月16日、Back Office Heroes 第2回ミートアップ「働きがいのある会社トップ企業が語る。『働きがいのある会社の作り方』」が開催されました。今回は、世界約50カ国で展開している世界最大級の意識調査機関Great Place to Work®の2018年版「働きがいのある会社」ランキングで、企業規模別の1位に輝いた3社が登壇。働きがいのある会社を支えてきた秘密と工夫を語ります。本パートでは、働き方改革を経営戦略の一つと捉えつつ、どのような制度を運用しているのかを紹介しました。

部署の疑似体験ができる、シャドウイング・プログラム

藤本あゆみ氏(以下、藤本):では、ほかにご質問をされたい方はいらっしゃいますか? ありがとうございます。では後ろの方。事前にすごく質問をいただいたので、みなさんからたくさんのご質問があるかと思っていたのですが。はい、お願いします。

質問者2:いろいろと興味深いお話をありがとうございました。1つおうかがいしたいのですが、すでにあった文化として根づかれているような気もしますが、今お三方がやられているような取り組み自体の評価はどうされていますか。

「働きがいのある会社に近づいているのか、いないのか」といったものを、経営として、例えばどういった指標で判断をされているのかをおうかがいできればと思います。

藤本:はい。どなたからいきましょうか?

宮川愛氏(以下、宮川):じゃあ私から。

藤本:はい、お願いします(笑)。

宮川:弊社では、以前はグローバルで年1回、従業員の満足度調査をやっていましたが、それをグローバルでやめた背景があります。日本では、2年前からまた独自で開始をしました。その1年間の中で出てきた点数、あとはコメントを経営陣が見て、オフサイトで1日こもって徹底的に話し合い、「それではどういったアクションを取っていくか?」と。

例えば去年であれば、「社員がキャリアについて閉塞感がある」と。やはり弊社は外資系で、かなり自分のキャリアは自分で作っていくという文化が強いので、そういったときに「もう少しなにか足がかりがほしい」といった声がかなり上がったんですね。

あと、組織がいろいろとセグメンテーションがある関係で、組織間の分断といったところが非常に問題になっていました。そうしたことを経営陣としてなにができるのかということを徹底的に話し合いました。継続的にその話し合いをやった結果、いくつか、例えばシャドウイング・プログラムと言いまして、日本語でいうとたぶん「鞄持ち」という、あまり、あの……。

藤本:えっ、鞄持ち?(笑)。

宮川:私はあまりその呼び方は好きではありませんが、要するに、自分とぜんぜん関係のない部署の人に一定期間張り付いて。

藤本:付く感じですね。はい。

宮川:例えば、管理部門が営業部門に付いて、お客様に一緒に会って、商談を実際に目の当たりにしたり。逆に、営業側がふだん接することのない管理部門がどういう仕組みを持って意思決定をしているのかを見たりすることで、キャリアが広がるといったような取り組みをしてみたり。さまざまな施策を打ちました。

今年ちょうど2回目があったので、やった結果、かなり点数が上がっていると。ただ、働きがいのある会社に終わりは絶対になくて、やはりその中で常に課題はあり続けるので、それに継続的に取り組んでいる姿勢を経営陣としてきちんと見せていくこと。

今年さらに進めようとしているのは、経営陣が勝手にアクションを決めて、コメントがあるので、だいたいどんなアクションを取ればいいかはわかるのですが、そこにやはり社員を参画させようと。次のステップとして、どういったアクションを取っていくかというところも(社員を)参画させていき、よりよい会社づくりを一緒にやっていこうとしています。

藤本:シャドウイングというのは、ある意味、疑似体験のような感じですね。

宮川:そうですね。

藤本:いきなり「ここに変えよう」「新しいことにチャレンジしよう」という前に、お互いにもう少し実感値を持とうというか。

宮川:そうですね。まったく知らない組織のことを知る意味と、自分が「異動したい」と感じているときに、本当にいきなりいわゆる片道切符で異動してしまうのは、本人にとってもリスクが高いですし、まず業務ができないということもあるので、疑似体験というかたちで経験してみるということですね。

藤本:なるほど。あとは、先ほどのご質問である評価の部分に関しては、サーベイでそれをちゃんと定点的に観測しているとか。

宮川:そうですね。

最長1ヶ月の有給が取れる「エマージェンシー・タイムオフ」

藤本:もし差し障りない範囲で、グローバルで(従業員の満足度調査を)やめられた背景を(うかがえますか)。

宮川:グローバルでの当時の考え方は、やはり今はどんどんいろいろなスピードが早くなっている中で、年1回のサーベイでは遅すぎるのではないかということでやめました。

その代わりに、グローバルでは四半期ごとにサーベイをやっているのですが、四半期ごとにグローバルの4分の1の社員が抽出されてやっているので、日本だとなかなかデータがありません。というところで、四半期ごとに、グローバルではグローバルのアクションを取ってはいるのですが。

藤本:それは四半期でスピードは速めるけれども、1人当たりの負担を減らす(という理由もあって)。

宮川:そうですね。やはり、あまりにサーベイがいろんなところで多くなってしまいすぎるので。

藤本:そうですね。サーベイに疲れて、みんなが答えなくなっちゃったら意味ないですもんね。それでなにか改善したことはありますか?

宮川:グローバルですか?

藤本:はい。

宮川:そうですね、最近出てきた新しい福利厚生に、「エマージェンシー・タイムオフ」というものがあります。社員の身内になにかしら不幸があったり、自分の傷病は入りませんが、家族の傷病などで一時的に仕事ができない状態になったときに、だいたいMax1ヶ月ぐらいなのですが、その分をすべて有給で。

藤本:1ヶ月はけっこう長いですね。

宮川:そうですね。私の知り合いで、実際アメリカに住んでいる社員であったのは、家が例の山火事で全焼してしまいまして。その間、会社でまったく働けない状況になり、家も全焼してしまったので、なにもない状態になってしまったのですが、その間も会社が100パーセント給与を出すというようなことをやりました。そういった施策も、グローバルでは打っているようなかたちですね。

藤本:なるほど。ありがとうございます。

パルスチェックで悩みを抱える社員が浮かび上がる

藤本:金澤さんいかがですか?

金澤千亜紀氏(以下、金澤):弊社ではいろんな調査を多くやっておりまして、やっぱり調査疲れもあるので、「こういう体系で調査をやります」ということは、あらかじめ伝えています。四半期に1回、パルスチェックというのをやっているのですが、それは10問だけに抑えています。わりと答えやすいような質問だけなので、さささっとやれば、早ければ3分ぐらいで終わるような調査にしています。

あとは、年に1回コンストラクティブ・フィードバックといって、ちょっと多めのいろんな、上司の評価、会社の良い点・改善したい点を書き込むというような調査をやっているんですね。

藤本:はいはい。記名式なんですね。

金澤:パルスチェックは記名式でやっているので、わりと社員の動きがわかるんですよね。この間までは元気だったのに、今はちょっと悩みを抱えているようだ、ということが傾向として出てくるので、悩んでいる社員をそこで検知してアクションを取れる利点があります。それを始めて、施策というほどじゃなくても、個人レベルでのいろいろなSOSを聞き取るという活用をしています。

藤本:それは直属のマネジメントとも共有しながら。数値の変化があるような、異常値が出たところに関しては、全部フォローしていくような感じですか?

金澤:直属のマネージャーとは直接には共有はしていないんですね。どうしても直接言ってしまうと、その本人が記名式なので、言いにくくなってしまうのではないかと思っていて。

藤本: そう、そうなんです。そこをどうされるのかと思って。

金澤:ですから、ちょっとぼやかすかたちで伝えています。

藤本:なるほど。どうぼやかす……?

金澤:(笑)。

藤本:ごめんなさい、今「どうぼやかすんだろう?」とすごく気になると思いますが。

金澤:例えば、「ちょっと疲れているみたいですよ」といった、評点10段階評価で……。

藤本:ああ、何ポイント下がったなどではなくてということですね。

金澤:そうですね。そうした数字的なところではなくて、「ちょっと下がっているみたいです」「仕事の量が多くなってきているようです」といった感じのフィードバックをする。

藤本:けっこう大変ですね。それこそ配慮しているポイントということですよね。

金澤:はい。そうですね。でも、そういったところがあってこそ、言いにくくならないようにできるかとも思うので。

藤本:そのときのマネージャーも、どのように声かけてあげるかというところで、かなり大変だと思いますが、人事や管理部のほうでは、なにかそうしたアドバイスされたりしているんですか?

金澤:必要に応じて、人事側でフォローアップアクティビティというかたちで、悩み相談という形式で聞くようにしています。マネージャーがなんとなく想像がついて、対策を取っているけど、まだ問題があるなという場合は、第三者が入ったほうがいいのかもしれません。そうしたときは第三者が入ったり、その状況に応じて対応しています。

藤本:なるほど。ありがとうございます。

20時以降の残業を許さない「帰ろう8(かえろうや)」

藤本:では、鈴木さんいかがですか?

鈴木達夫氏(以下、鈴木):サーベイ的なものでうちを改善しようと思っていないこともあって、そうしたものはぜんぜんありません。

逆に、ときどきサーベイの会社さんから、「アクロさん、サンプルにしたいのでやってください」と言われることがあって、社員にやってもらうことはあるのですが。基本的には、やっぱりそういうところで数字が出てきたらもう遅いと思っているので、常日頃から社員が問題を抱え込まないように気を付けています。

だから、試しにやってみると、社員が思っていた数字にしかならないので。「こういうところは強くて、こういうところはダメだよね」「うちの弱点そのままだね」としかなりませんから、別にうちはそのようなサーベイはやらないんですね。

藤本:そうなると、さっきのご質問でいうと評価の仕方は(どうされていますか?)。例えばいろんな施策をやったときに、どう評価をして、それが働きがいのある会社にどうつながっていくかということは?

鈴木:施策の評価という意味ですよね。そうした意味では、当社は数値的な評価は弱いかもしれません。ただ、すごくおもしろかったのが、うちは今、20時以降は絶対に残っちゃいけないというITの会社なのですが、昔はそこまで厳しくはなかった。

「残れ9(のこれナイン)」というルールがあって、夜9時以降も残る場合は上司2人の許可が必要になりました。次に1時間早めようとなって「帰ろう8(かえろうや)」という制度ができて、夜8時以降残る場合は上司の許可が必要ということにして。「ここまでいったのなら、もう次はこうするしかないね」といって、「帰ろう8」制度も廃止にして、8時以降はいっさい残せないというようにして、本当にうまくいきましたね。

昔は、私が入った頃などは、深夜0時を超えることもあった会社なのですが、「それはダメだよね」ということになって、制度でそのように強制していくとなんとかなったという。そうしたところはありますよね。

藤本:でも、それこそエンジニアが多い会社で、仕事を8時に終わらせるのは、かなり難しいんじゃないかというイメージがあるのですが。

鈴木:昔は絶対無理だと思っていましたよ。お客さんはこういう要望を言うし、などもあったのですが、そこも、どうお客さんに話をするかということを社員が学びました……(笑)。

藤本:ご自身の、例えばエンジニア自身のパフォーマンスが出る時間帯というのは、(人によって)けっこう違うんじゃないかという見方をしているのですが。

鈴木:そうですね。朝弱くて夜強い社員ももちろんいますが、やっぱり夜働くのはよくないだろうと。

昔はうちの会社もみんな若くて独身が多かったので、どこまでも働けたのですが、やっぱり結婚して子どもができてとなっていくと、「そうもいかないんじゃないか」という話になっていって、短く短くしていったという流れですかね。

藤本:まぁでも、できないことはないということですよね。

鈴木:そうですね。

藤本:「本当はそうなんじゃないか?」という実感値も含めてあったけれども、まぁやってみたら意外とできるよね、というのは。

鈴木:相当頭を使いました。「どうやって今の仕事を短くするの?」と。それで当然、利益は下げてはいけないわけですし、中ではいろんなことを考えたり。

ムダな時間を”見える化”する「アクロノート」

鈴木:うちは日々の進捗というか、日々の管理自体もアナログで、うちで作ったノートなんですが、「アクロノート」というのがあるんですね。

藤本:はいはい、黄色いノートでしたね。

鈴木:15分単位で予定と実績をアナログで書いて、上司が始めと最後に承認するというノートなんですが、15分単位にすることによって、やっぱりムダをものすごく省けるんですよね。

エンジニアは放っておくと、1時間やってもうまくいかなくてぜんぜん成果が上がらなかった、コードを書けなかったなどもあると思いますが、そういうときに「どうして1時間も放っておいたんだ?」という話が(アクロノートを使えば上司と)できるんですよね。そうやって、ムダな時間をどんどん削っていって短くしました。

藤本:そういうところも見える化していくと、より何をやらなければいけないかがお互いにわかってくるということですね。

鈴木:そうです。「これは今日じゃなくていいよね」という話になったり。

藤本:なるほど。おもしろいですね。あえて制度の評価をしないというところですね。ありがとうございます。

声を出しやすくするための文化の醸成

藤本:もう1人、その前のさっき手を挙げられた方、はい。女性の方どうぞ。

質問者3:すいません。ありがとうございます。いくつか質問がありまして。1つ目が、全社的に話をして、自分が作りたい制度に声を上げていくことであったり、あるいはボランティアでアンバサダーさんが、たぶんなにかしらの制度のご提案などをされていくと思います。

そういった声を出しやすくするための文化の醸成であったり、あるいはボランティアをやってくださっている人に対して、何かしらのリワードを払っているのか、むしろ払わないほうがいいのかなど、いろいろあると思いますが、まずそちらについておうかがいしたいです。

藤本:はい。「声を出やすくする文化づくりをどうされているか」というところですね。じゃあ金澤さん、いかがですか?

金澤:そうですね。先ほどいろんな調査を行っていると言いましたが、年に1回、コンストラクティブ・フィードバックというのをやっています。もうそれは「前向きな気持ちで建設的な意見を言おう」というテーマでやっているのですが、そこがかなり社員の声がいろいろ出てくるような仕組みになっているんですね。

それは1つの例なのですが、そういったいろんな取り組みで社員の声を吸い上げる仕組みを取っています。そこからヒントを得て、先ほどお話ししたような、全社で集まるオフサイトミーティングというのもそうです。そうしたところから、社員が感じている危機感や、なにかアイデアですとか、そういったものを吸い上げるようにしています。

藤本:なるほど。意見を出しやすくする仕組みを作りつつも、それがちゃんとなにかに反映されるようなことを感じると、より出すというインセンティブになるという感じですかね。

金澤:ええ、そうですね。それでいうと、例えば、いろんな意見が出てきて、こういった要望、ああいった要望と、いろいろ出てきますが、やっぱりできることとできないことはあると思うんですね。

できることはもう「このようになりましたのでやっていきます」と、そのまま伝えられるのですが、できなかったことに対しても「こういった意見がありました。検討を重ねた結果、こういった理由でできませんでした。しかし、今後長い目で見たときにはできるようにしたいと思います」といったフィードバックを必ずするように心がけています。

藤本:いいですね。そうすると出し甲斐がありますよね。出したけどなにも起きていないと、出した側は一番寂しいですもんね。

金澤:そうですね。そう思います。

藤本:なるほど。ありがとうございます。

入り口から企業文化を徹底的に伝える

藤本:鈴木さんいかがですか?

鈴木:うちはそもそもスタートというか、社員の85パーセントが新卒で採った社員なので、もう始めから(企業文化として浸透している)んですよね。

だからもう、新入社員(になる)前の内定者期間も、1年間の内定者研修というのがあって、「当社はこういう会社だから、自由に意見を言っていいんだよ」ということをわかった状態で入ってきますし、それはもう採用の段階から言っているので、その考えに合わない人は採りません。だから、もうあとから「意見言っていいよ」だとやっぱり遅いと思うので、始めからそういうものだと思って入社してきます。

藤本:入口からということですね。

鈴木:はい。「当社はこういう文化だから」と、ずっと教育をしていくというものです。だから「意見が言いにくい」といったことはぜんぜんありませんし、「なんでも意見言っていいよ」と、実際に新人の意見も聞いてあげますし、そのようなかたちでやっていました。

だから逆にいうと、私、中途採用の担当をしているのですが、なかなか採れないですよ。やっぱり、ほかの会社の文化が根付いちゃっていると、当社の文化には「えっ?」となるので。

藤本:そうですね。「いいよ」と言われても、「まぁまぁ、そんな建前」というような感じになりますもんね(笑)。

鈴木:「そんなオープンなの?」という戸惑いがあるので、なかなかそこはうまく採用できないんですが、新卒は本当に真っさらな状態で、ある意味、どれだけうち色に染められるかという感じなので、やりやすいですね。

藤本:ありがとうございます。

社員同士が称え合う「コネクテッド・リコグニション」

藤本:では、宮川さんはいかがでしょうか?

宮川:弊社のカルチャーをふた言で示すと「オープン」と「コラボレーション」。会社として非常に大切にしているカルチャーです。弊社は逆に、新卒が2割いるかいないかで、中途が8割というかたちなのですが、当然どの採用であっても、弊社のカルチャーにフィットするかどうかを非常に見ています。

あとは、そのカルチャーが土台として非常に根付いているので、あとから中途等で入ってきた人も、そのように自分の行動を変化せざるをえない環境に置かれるというところはありますね。

さらに、そのコラボレーションカルチャーを促進するための施策がいくつかありまして。先ほどの2つ目のご質問にも関連すると思いますが、例えばアンバサダーが非常にいい活動をしてくれたときに、社員同士が自由に上げあえる報奨制度があるんですね。

藤本:ピア・ボーナスですか?

宮川:ええとですね、「コネクテッド・リコグニション」と言いまして、お互いに自由にリコグニションをし合いましょうと。お互いを称え合いましょう、ということです。

藤本:よかったね、という感じですよね。

宮川:そうですね。そのブラボーという「よかったね」という言葉だけではなく、ちゃんと金銭的な報酬もついてきます。しかも、5,000円ぐらいまでの報奨金であれば、上司の承認が必要ありません。というところで、逆にブラボーだけだと「ああ、お金なかった」(笑)。

藤本:なるほど、段階があるわけですね(笑)。

宮川:そうなんです。上はもう本当に何十万というのがあって、それは上司の承認などがきちんと必要なのですが。ただ、報奨制度というと通常私たち上司から、上から下にあげるものというイメージがありますが、そうやって横のつながりのコラボレーションをさらに後押しする。あとは、そういったアンバサダーや自分の業務外で活動してくれた人にきちんと報いるということをやっていますね。

藤本:お二人の会社では、そうしたリワードのようなものはありますか? ボランティアの方や、なにか発言した方に対して。

鈴木:基本、ボランティアという考え方はなくて、うちでやっていることはあらゆるものが仕事という感じで教えていますので、それをやってくれた人は当然、やっぱり査定で評価されるということですね。

藤本:仕事。

鈴木:エンジニアですが、社内のいろんなことをみんながやってくれるので、それはもう、そのまんまやってくれただけ評価されるということです。

藤本:ある意味、当たり前ということですよね。金澤さんはいかがですか?

金澤:そうですね。評価や査定に入れるということもお話ししましたが、あとは年に2回のアワードの制度の報奨制度がありますので、そのときにそうしたイニシアティブを取った人や、自分の業務以外のところも表彰の内容に入るような工夫はしています。

藤本:ありがとうございます。

働き方改革は経営戦略である

藤本:まだご質問があるというお話でしたが、実はあと5分しかありませんので、懇親会のときにぜひ直接お聞きいただければと思います。最後に、もう絶対これだけは質問したいという方はいらっしゃいますか? はい。では、最後のご質問をお願いします。

質問者4:貴重なお話をありがとうございました。さっそくやってみたいという具体的なアイデアもたくさんいただいた一方で、お三方の会社の場合は、なんとなく経営陣の、まさしくスポンサーといいますか、経営陣のコミットが大前提にあるような気もしたんですね。

一方で、弊社も含めて、経営陣がなかなか乗ってきてくれません。まさしくこの働き方改革という文脈で話すと、「そんなことをしたら売上が下がるだろ」というようなところについて、どうやれば会社にとっていいことなのか、社員にとっていいことなのかという、そこを訴求するためのコミュニケーションのポイントを教えていただけますでしょうか?

藤本:それでは短めにお一人ずついきましょうか。

宮川:弊社では、簡単にいいますと、働き方改革というのは人事戦略ではなくて、経営戦略としてやっています。それが会社の今のステージにおいて、どうして役に立つのかという部分を明確にして、それをやることによって、さらに売上をあげていく。

それはカルチャーも一緒で、カルチャーというのは「あったらいいな」というようなものではなくて、「あるからこそ会社が伸びる」という位置付けで、経営戦略としての会話を心がけるようにしています。

藤本:経営戦略であると。はい。

社長にもいっさい忖度しない

藤本:鈴木さんはいかがでしょうか?

鈴木:これはうちにとっては非常に難しい質問で、経営者がまずそのようなポリシーがありましたから、経営者が動いてくれないということはないのですが、もし……。あっ、ひとつだけあるのは、その昔、2000年に全社禁煙にしたんですね。煙草を吸わない。喫煙者を採用するのもやめようと言ったのですが、そのとき社長がヘビースモーカーだったんですよ。

藤本:(笑)。

鈴木:それでも、それは全体会議で決めたことだからということで、社長も「わかった」と言ってくれました。なにがあってもみんなで話すという、「社長、こうですよ」と言うのがうちのやり方ですよね。そういう意味では、社長に対しても、いっさい忖度しません。

藤本:忖度しない。いいですね。

必要がなければやらなくていい

藤本:では、金澤さんはいかがでしょうか?

金澤:いや、今の私どももちょっと答えにくいところです。というのは、やっぱりうちの会社も社長自らがすごくこういったことへのコミットが強いものですから。

「Great Place to Work」も、結果がExcelで戻ってくると、それを(社長が)私と一緒にもう1問1問、「ここには評点が上がった」「ここは何ポイント下がった」「この部門がこうだ」というように、本当に一つひとつ細かく見ていくんですね。

というぐらいにかなりコミットが強いので、それがいろんなところで生きてきているということがありますから。すいません。

藤本:(笑)。

金澤:ちょっとアドバイスにはなっていませんけど。

藤本:at Will Workでもよくそういうご質問をいただきますが、やっぱり1つはさっきの経営戦略というのはまさにそのとおりで、でも「必要がなければやらなくていいんですよ」という話をよくしています。

みんながやらなきゃいけない気分になったり、制度を作らなきゃいけないとなりがちですが、会社の経営戦略上、それが必要なかったら基本的にはやる必要がない。ただし、経営戦略として本当に必要であれば、本当にコミットしてやりましょう。

それでも「わからない」というような社長さんの場合は、あちこち連れ回して、いろんな会社の経営者同士で話していただいて、「なるほど、経営者同士で話したらちょっとわかるかも」というような企業さんは、何社かいらっしゃいました。

働き方改革をしようと思っていなかったのに

藤本:では、すごく名残惜しいのですが、最後にお1人ずつ簡単に今日のまとめをいただいて、懇親会に移っていきたいと思います。では鈴木さんからお願いします(笑)。

鈴木:まとめ……(笑)。

藤本:(笑)。

鈴木:はじめに言ったとおり、当社は働き方改革をしようと思ってやってきたわけではないのですが、結局は「うちがやってきたことは正しかったんだな」ということを、最近はすごく思うようになっています。

どこも参考にしない会社なんですよ。まぁ本などは読みますが、とにかくうちの会社で目の前で起こっていることを1個1個解決しようとしてきた会社のやり方が、おかげさまでGPTW(Great Place to Work)で1位をいただいたり。

あとは、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の審査委員会特別賞をいただいたり、世間様のほうが評価してくださるので、社員が喜ぶようになりました。

当社としては、もう少し人数を多くしたいとは思っていますが、限界までやっぱりみんなで話し合うということは、ずっと続けていきたいと思っています。

あっ、最後にすみません。うちは本当に小さかった頃から試行錯誤でずっとやってきたので、とくに中小企業のみなさん向けになにか実践的なお手伝いができるんじゃないかということで、先ほどのビラの「組織いきいき実践勉強会」というものを開催しています。

中小企業の経営者は、いろいろな理論ではこうするべきと聞くけれども、「じゃあ、うちの会社はどうすればいいの?」というまさにそういう質問ばかりです。今開催中ですので、もしご興味がある方がいらっしゃったら、実は、明日第4期の第2回でお試し参加ができます。

藤本:はい、明日ですね。

鈴木:そういうものがありますので、ぜひ声をかけていただければと思います。今日はどうもありがとうございます。

藤本:ありがとうございました。

継続的に続けていくために学び続ける

藤本:では金澤さん。

金澤:本日は、いろいろと私のお話を聞いてくださって大変ありがたいなと思いながらも、私の中では、やっぱりお二人の会社の中での施策というのが本当に興味深くて。やっぱり、いろいろなことをなさっていて、似ているところもあれば、また違うところもあって、大変勉強になりました。ありがとうございます。

私たちの会社も1位をとったといえども、人数が増えてきて、やっぱりいろいろと違った課題が見えてきているところがあり、このあともこうして継続的にずっとやっていかなければいけないことだと思っているので、今後も勉強していきたいと思っています。ありがとうございました。

藤本:はい、ありがとうございました。

人事は経営を支えるコンサルティング的な役割を担っている

藤本:では、最後にお願いします。

宮川:私も本日、非常に勉強になりました。それと同時に、会社規模に関わらず、やはりそこには共通項目がいっぱいあるんだなということを改めて実感させていただきました。会社がどんどん大きくなればなるほど、ぶら下がり社員というのはどうしても出てきまして、そこは難しいところではあるのですが。

やはり働き方改革であったり、働きがいのある会社づくりというのは、終わりがない旅路といいますか、常にやり続けていくもの。そのなかで、過去から比べると人事の役割は非常に大きく変わってきているのだと思います。

先ほどちょっと経営戦略という話をしましたが、人事がバックオフィスで経営とまったく離れているのではなく、こういった取り組みが、いかに経営として会社の成長を支えるものなのかというところで、やはりコンサルティング的な役割として私たちの役割が大きく変わってきているなかで、こうした機会をいただけたことを本当にありがたく思っています。今後ともよろしくお願いいたします。

藤本:ありがとうございました。改めて3名に大きな拍手をお願いいたします。ありがとうございました。

(会場拍手)

藤本:では、バトンタッチをしたいと思います。

野田洋輔氏:ありがとうございました。非常に三者三様の具体的な施策が聞けて、うちでもやってみようかと思えるような話もいろいろあったのではないかと思います。お疲れさまでした、ありがとうございました。

(会場拍手)

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